株式会社COTSUBU
kintone

kintone vs Excel|いつ切り替えるべきか

宇田川 将也|10分
kintoneExcel比較データ管理業務改善

「Excelで十分では」への答えは、その表を同時に触る人が何人いるかでほぼ決まります。1人ならExcelのほうが速く、2人以上で、かつ「誰がいつ変えたか」を後から知りたいなら、Excelでは構造的に足りません。

この記事では、どちらを選ぶかの判定基準、Excelでやっていたことがkintoneの何にあたるかの対応表、そして移行しないほうがよい条件を並べます。

まず、機能で比べる

項目 Excel kintone
同時に入力する 共有設定次第。ロックが起きる レコード単位で同時に入力できる
変更履歴 上書きされる。誰が変えたか残らない レコードごとに更新者・更新日時・履歴が残る
権限 ファイル単位(開ける/開けない) アプリ・レコード・項目の単位
入力の制限 入力規則(解除できる・コピペで抜ける) 選択肢・必須・プラグインで保存前に止める
検索 ファイルを開いてから Ctrl+F 全アプリ横断。条件を保存した一覧
集計・分析 ピボットテーブル・関数が強力 グラフ機能(種類と自由度はExcelに劣る)
帳票 そのまま印刷できる 標準では出力できない
自動化 マクロ・VBA(作った人しか直せない) ノーコード+JavaScript
通知 なし 条件通知・リマインダー通知
スマホ 実質使えない ブラウザと専用アプリに標準対応
数式の自由度 非常に高い 計算フィールドは他アプリを参照できない
費用 すでに持っている 1ユーザー月1,800円・最小10ユーザー(税抜)

Excelが勝っているのは、集計の自由度・帳票・費用の3つです。この3つが業務の中心なら、無理に移す必要はありません。

切り替えを検討すべき5つのサイン

数を数えられる形にしておきます。どれか1つでも当てはまれば、検討する時期です。

1. 「最新版どれ?」が週に1回以上起きている

見積管理_v3_最新_田中修正.xlsx のようなファイルが並んでいる状態です。判定のしかた:共有フォルダで同じ業務のファイル名を検索し、コピーが3つ以上あれば該当します。

2. ファイルを開くのに10秒以上かかる

行数が増えて重くなっている状態です。数式が全列に入っていると、数千行で体感が変わります。

3. 集計しようとすると、表記ゆれで数が合わない

「(株)」「株式会社」「㈱」が混在している、日付が 2026/9/1 と 2026.9.1 と 9月1日 で混ざっている、などです。判定のしかた:会社名の列をピボットテーブルにかけて、同じ会社が2行以上に割れていれば該当します。

4. 同時に編集したくてロックされている

「田中さんが開いているので読み取り専用で開きますか」が日常になっている状態です。

5. 承認が紙・押印・メール添付で回っている

Excelを印刷して押印、またはメールに添付して承認をもらっている状態です。どこで止まっているかを誰も把握できていないなら、プロセス管理で解決できる領域です(→kintoneプロセス管理で承認フローを自動化する)。

移行しないほうがよい条件

逆に、次に当てはまるなら今は移さないでください。

条件 理由
使うのが1人だけ 同時編集も権限も履歴も要らない。kintoneの利点が出ない
表の中身が毎回違う(その場限りの集計) アプリの項目を決められない
VBAで数百行の処理が動いていて、作った人が社内にいる 動いているものを止めるリスクのほうが大きい
業務の中心が「印刷して渡す帳票」 kintoneは標準で帳票を出せない
使う人が5名未満で、月18,000円を投資と見なせない 最小10ユーザーの契約が重い
取引先とファイルをやり取りするのが業務そのもの Excelファイルの受け渡しが前提の業務

「VBAが動いている」は迷うところです。判断の軸は、そのVBAを直せる人が社内にいるかどうかです。作った人が退職していて誰も触れないなら、それは資産ではなく時限爆弾なので、移す理由になります。

Excelでやっていたことは、kintoneの何になるか

移行の見積もりで一番効く表です。「これができなくなるのでは」の大半は、ここで解決します。

Excelでやっていたこと kintoneでの対応
入力規則(リスト) ドロップダウン・ラジオボタン・チェックボックス(標準)
入力規則(数値の範囲・日付の範囲) 範囲チェックで保存前に止める
入力規則(メール・電話番号の形式) 入力形式チェック
条件付き書式(条件で色を変える) 条件書式
VLOOKUP / XLOOKUP ルックアップ(→使い方)
連番を手で振る/ROW関数 自動採番
重複の条件付き書式・COUNTIF 重複チェック Pro
DATEDIF で残日数を出す 期限・残日数
WORKDAY・和暦の表示・曜日 日付計算
IF で「該当するときだけ入力させる」 条件付き必須
シート保護で特定セルを触らせない 条件付き入力禁止
行を非表示にして見せない 項目の表示切替
明細の行番号を手で振る テーブル行番号
TRIM・ASC・JIS で表記をそろえる 入力値の整形
フィルタして一括で書き換える 一覧からの一括更新
ピボットテーブル グラフ機能の集計表(→グラフ・レポート機能)
SUMIF・COUNTIF の集計 グラフ機能、または関連レコード一覧+集計
別シートを参照する数式 ルックアップでコピーする(計算フィールドは他アプリを参照できない)
マクロ(VBA) JavaScriptカスタマイズ(→13章 JavaScript・API・外部連携)
印刷用のシート 標準では不可。帳票プラグインか外部サービス

プラグインはすべてCOTSUBUが無料・会員登録不要で公開しているものです(→一覧)。外部と通信しないので、閉じた社内ネットワークやLGWAN環境でも使えます。

残るのは「ピボットテーブル」と「帳票」の2つです。ピボットは集計表である程度まかなえますが、Excelほど自由ではありません。ここは割り切って、CSVで出してExcelで分析するのが現実的です。

併用の設計

「どちらか」ではなく、役割を先に決めるのが定着の近道です。

置く場所 何を置くか
kintone 正となるデータ、入力、承認、履歴、期限の管理
Excel kintoneから出したデータの分析、社外提出用の資料、一度きりの試算

このとき守るルールは1つだけです。Excelに出したデータを編集して、それを正としない。 編集したくなったらkintone側を直してから出し直します。これを崩すと、移行前と同じ「どれが最新か分からない」状態に戻ります。

費用の目安

項目 費用
kintoneライセンス(サイボウズ社) スタンダードコース 1ユーザー月1,800円・税抜/最小10ユーザー(月18,000円〜)
自社でテンプレートから作る 0円(かかるのは自社の工数)
COTSUBUに依頼する(構築) 1業務1アプリまで、最大1か月0円
COTSUBUに依頼する(使うと決めた後) 月額5万円から・最低契約12ヶ月
データ移行 CSVの取り込みで対応。かかるのはExcel側の掃除の工数

見落とされがちなのは、Excel側を掃除する工数です。表記ゆれの統一や結合セルの解除は、kintoneの外の作業として残ります。手順は11章 Excelからの移行にまとめました。使い続けるといくらかかるかは2章 費用の全体像をご覧ください。

移行の順番

  1. 今のExcelで、実際に埋まっている列だけを書き出す(空欄だらけの列は移さない)
  2. 1つの表を「マスタ」と「記録」に分ける(顧客の一覧と、その顧客への対応履歴は別アプリ)
  3. 記録側のアプリを先に作り、10件だけ手で入れて現場に触ってもらう
  4. 出た不満を直してから、残りをCSVで取り込む
  5. 1ヶ月はExcelと並行で回す。kintoneだけで回ったら、Excelのファイルを読み取り専用にする
  6. Excelのファイルを消さない。アーカイブとして残す

3を飛ばして全件移行すると、項目の作り直しが発生します。 10件で形を確かめてから移すのが、結局いちばん早い順番です。

移行でつまずく原因

原因 起きること
Excelの列をそのまま項目にする 使われない項目が並び、入力画面が長くなって現場が離れる
1シートに複数の表が入っている どこからどこまでが1レコードか決まらない
結合セルを解除していない CSVにした時点で列がずれる
横持ち(4月・5月・6月…が列)のまま移す 月が増えるたびに項目を足すことになる。縦持ちに直す
色で意味を持たせている(赤=至急) CSVに色は残らない。先に「区分」の列に起こす
マスタより先に記録を取り込む ルックアップの参照先が見つからずエラーになる

横持ちを縦持ちに直すのがいちばん大きい作業です。Excelでは「1行=1顧客、列=月」が読みやすいのですが、kintoneでは「1レコード=1顧客1ヶ月」にしないと集計も絞り込みもできません。

現場での実例

島根県海士町の健康福祉課では、電話受付のメモとExcelの名簿を突き合わせる作業が毎日発生していました。これを1つのアプリに統合し、料金判定の自動化と案内の一括出力までを1本にしています(→海士町の事例)。

業種ごとに、Excelから移したあとの実際の画面も公開しています。データはすべて架空です。

まとめ

  • 判断の軸は「同時に触る人が2人以上か」「誰がいつ変えたかを知りたいか」
  • Excelが勝つのは、集計の自由度・帳票・費用の3つ
  • 5つのサインは数えられる。ファイルのコピー3つ以上、開くのに10秒以上、集計時に会社名が割れる、ロック、紙の承認
  • 1人で使う・その場限りの集計・動いているVBAがある・帳票が業務の中心なら、移さない
  • 入力規則、条件付き書式、VLOOKUP、連番、重複チェックは、無料プラグインで置き換えられる
  • 残るのはピボットテーブルと帳票。ここはCSVで出してExcelに任せる
  • 全件移行の前に、10件だけ入れて現場に触ってもらう

→ kintone導入支援の詳細 → kintone無料プラグイン一覧 → 11章 Excelからの移行 → 2章 費用の全体像 → kintoneとは?中小企業のための入門ガイド

よくある質問

Excelからkintoneに切り替えるタイミングはいつですか

次の5つのサインが出たときです。最新版がどれかわからないファイルのコピーが増えている、データ量が増えてExcelが重い、自由入力のせいで入力ミスが頻発して集計できない、複数人で同時に編集したいのにファイルがロックされる、承認フローが紙やメールで回っている。1つでも当てはまるなら検討する時期です。

Excelのままの方がいいのはどんな場合ですか

1人で完結する分析や計算、プロジェクト単位の一時的なデータ整理、関数やマクロを多用する複雑な集計、ピボットテーブルでのグラフ作成、取引先へのファイル提出はExcelが適しています。データ量が少なく管理者が1人だけの場合や、複雑なVBAマクロに依存している場合も、無理に移行しない方がよいです。

kintoneの導入にはいくらかかりますか

kintoneのスタンダードコースは1ユーザー月1,800円(税抜)で、最小10ユーザーからの契約です。これはサイボウズに支払うライセンス費用です。初期構築は自社でテンプレートを使えば0円、COTSUBUにご依頼いただく場合は1業務1アプリまで最大1か月0円で、使うと決めていただいてから月額5万円から(最低契約12ヶ月)です。データ移行はCSV取り込みで対応できます。

kintoneに移行したらExcelは使えなくなりますか

使えます。kintoneにはCSVエクスポート機能があるため、蓄積したデータをExcelに出して自由に分析・加工できます。データの蓄積・共有・ワークフローはkintone、詳細分析や提出資料はExcel、という併用をしている企業が多いです。

kintoneはExcelと比べて何ができるようになりますか

複数人での同時入力、誰がいつ何を更新したかの履歴管理、役職や部署ごとのアクセス権限設定、申請から承認までのワークフロー、外出先からのモバイルアクセスができるようになります。入力フォームで値を制御できるため、表記のばらつきによる集計不能も防げます。

宇田川 将也/ 代表取締役

2024年に総務省の地域活性化起業人として島根県海士町に着任。役場に住み込んで業務改善に従事し、kintoneで電子決裁や定期健診管理を構築しました。

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