kintoneのグラフは標準機能で、追加費用なしで使えます。ただしグラフ作りでつまずくのは操作ではなく、データの持ち方です。集計軸にしたい項目が文字列の自由入力になっていると、「A商事」「A商事」「A商事 」が3本の棒に割れます。
この記事では、先に「できること・できないこと」を確定させ、そこから逆算してどうデータを持つかを並べます。
できること・できないこと
| 標準のグラフ機能 | |
|---|---|
| グラフの種類 | 棒・積み上げ棒・折れ線・面・曲線・曲線面・円・集計表 |
| 集計の方法 | レコード件数/合計/平均/最大/最小 |
| 分類(軸) | 最大2つまで(集計表なら行と列) |
| 日付の単位 | 日・月・年・週・四半期など |
| 絞り込み | 一覧と同じ条件を付けられる |
| クリック | グラフをクリックすると該当レコードの一覧に移動できる |
| 保存 | 一覧と同じように名前を付けて保存、共有できる |
| アプリをまたいだ集計 | できない |
| サブテーブルの中と親の項目を混ぜた集計 | 制約がある |
| 目標線・前年比の自動表示 | できない |
| グラフを定期的にメールで送る | できない |
| 複数のグラフを1画面に並べる | 標準ではできない |
太字の5つが、標準で足りなくなる場所です。とくに「アプリをまたいだ集計ができない」が設計に効きます。
アプリをまたいだ集計をどうするか
「案件アプリで、発注アプリの原価を合計したい」はグラフ機能ではできません。現実的な手段は3つです。
| やり方 | 向いている場面 | 注意 |
|---|---|---|
| 集計したい側のアプリでグラフを作り、キーで分類する | 全体を俯瞰する。月次会議 | 発注アプリ側で「案件番号ごとの合計」を出す |
| 必要な値をルックアップでコピーしておく | 受注時の標準原価、顧客の地域区分など | コピーなので後から変わらない(→ルックアップの使い方) |
| JavaScriptで詳細画面に合計を出す | 1レコードを開いたその場で見たい | 件数が多いとAPIの取得回数が増える |
2つめが設計の勘所です。「あとで集計軸にしたい項目は、記録側にコピーしておく」と、グラフが作れるようになります。たとえば発注アプリに「顧客の地域」をコピーしておけば、地域別の原価を集計できます。
関連レコード一覧には合計が出ません。これはレコードを並べる機能なので、集計はグラフ側で行います。具体例は建設業の原価管理をkintoneで作る方法に書きました。
見たい数字から、必要なフィールドを決める
先にグラフを作ろうとせず、「毎週どの数字を見るか」を3つだけ決めてから逆算します。
| 見たい数字 | グラフ | 分類(軸) | 集計 | 必要なフィールド |
|---|---|---|---|---|
| 月別の売上推移 | 折れ線 | 売上日(月) | 金額の合計 | 日付・数値 |
| 担当者別の売上 | 棒 | 担当者 | 金額の合計 | ユーザー選択 or ドロップダウン |
| 商品カテゴリの構成比 | 円 | カテゴリ | 金額の合計 | ドロップダウン |
| 月×カテゴリの内訳 | 集計表/積み上げ棒 | 売上日(月)×カテゴリ | 金額の合計 | 日付・ドロップダウン・数値 |
| 反響元ごとの件数 | 棒 | 反響元 | レコード件数 | ドロップダウン |
| 反響元ごとの成約率 | 集計表 | 反響元×対応状況 | レコード件数 | ドロップダウン2つ |
| 平均単価 | 棒 | カテゴリ | 金額の平均 | 数値 |
| 工種別の発注額 | 棒 | 工種 | 発注金額の合計 | ドロップダウン(見積と同じ選択肢) |
| 不良の原因別件数 | 棒 | 原因区分 | レコード件数 | ドロップダウン |
太字にしたドロップダウンが共通して出てきます。集計軸にする項目は、文字列の自由入力にしないでください。
作成の手順
- アプリの一覧画面を開き、上部のグラフのアイコンをクリック
- グラフの種類を選ぶ
- 分類する項目(横軸)と集計方法(縦軸)を選ぶ
- 必要なら絞り込み条件を設定する(「状況 が 受注」「売上日 が 今年度」など)
- 「保存」で名前を付ける。よく見るものは一覧の並び順を上にしておく
4の絞り込みを入れないグラフは、ほぼ使われません。 キャンセル分や見込みが混ざった数字は、見ても行動が決まらないためです。
クリックして中身を見る
グラフの棒や扇をクリックすると、その内訳のレコード一覧に移動できます。「この月だけ落ちているのはなぜか」をその場で追えるので、会議で説明するときに効きます。
集計が割れる・合わない原因
| 原因 | 症状 | 対処 |
|---|---|---|
| 集計軸が文字列の自由入力 | 同じ会社が複数の棒に割れる | ドロップダウンにする。過去分は一覧からの一括更新でそろえる |
| 全角・半角・前後の空白が混在 | 同上 | 入力値の整形で保存時にそろえる |
| 金額が文字列フィールド | 合計が出せない | 数値フィールドに変える |
| 同じ内容が二重に登録されている | 合計が実態より大きい | 重複チェック Pro |
| キャンセル・見込みが混ざっている | 実績と合わない | 絞り込み条件を入れる |
| 日付が空欄のレコードがある | 月別グラフから抜け落ちる | 条件付き必須 |
| 見積と発注で工種の言葉が違う | 予算と実績を比べられない | 同じ選択肢を使う |
| マイナスや桁違いの金額が入っている | 1本だけ突き抜ける | 範囲チェック |
プラグインはすべて無料・会員登録不要で、外部と通信しません(→kintone無料プラグイン一覧)。
「見積と発注で工種の言葉が違う」は建設業でほぼ必ず起きます。 見積では「木工事」、発注では「大工」と書いていると、機械では突き合わせられません。選択肢を1つにそろえるところから始めてください。
グラフを見てもらうための運用
作ったグラフが見られないのは、置き場所の問題です。
| やること | 効果 |
|---|---|
| ポータルに一覧・グラフへのリンクを貼る | ログイン直後に目に入る |
| アプリの既定の一覧を「今月の実績」にする | 開いた瞬間に絞り込まれた状態になる |
| グラフのURLをブックマーク・共有 | 会議のたびに作り直さなくてよい |
| 月次の会議の議題をグラフの名前と一致させる | 「このグラフを見る時間」が業務に入る |
数字ではなく色で気づかせる
グラフは振り返り用です。その場で気づいてほしいものは、一覧の色で出します。
考え方はkintoneの一覧で条件に合う行に色を付ける方法にまとめています。
標準で足りないとき
| 足りないこと | 選択肢 |
|---|---|
| 複数のグラフを1画面に並べたい | krewDashboard などの有料プラグイン、またはJavaScript+Chart.jsで作る |
| 社外の人に見せたい | kViewer などの外部公開ビューを作るサービス |
| 前年比・目標線を出したい | CSVで出してスプレッドシートで作る、またはJavaScript |
| 定期的にメールで送りたい | APIで取得して外部で組む(→13章 JavaScript・API・外部連携) |
| Excelと同じピボット操作をしたい | CSVで出してExcel |
| 他システムのデータと合わせたい | APIでLooker Studio・Tableau等のBIツールに渡す |
有料プラグインを入れる前に、CSVで出して1回作ってみることをおすすめします。毎月見る数字が固まっていない段階でダッシュボードを買うと、使わないものが残ります。
実務での例
建設:実行予算に対する原価の消化
発注アプリで案件番号ごとに発注金額を合計すると、全現場の消化状況が1枚で見えます。工種別の内訳は集計表で出します(→建設業の原価管理をkintoneで作る方法/建設会社のkintone)。
不動産:反響元ごとの成約
反響・顧客アプリで、反響元(ポータル/飛び込み/紹介)×対応状況の集計表を作ると、どの媒体からの問い合わせが成約しているかが出ます。ポータルの費用対効果の判断材料になります(→不動産会社のkintone)。
製造:不良の原因別
不良・是正アプリで原因区分ごとの件数を棒グラフにします。件数の多い順に並べて、上位2つだけ対策するのが現実的です(→製造業のkintone)。
費用と進め方
グラフ機能自体は追加費用なしで使えます。データの持ち方から作る場合、COTSUBUでは初回30分で業務を聞き、その場で画面の形をお見せします。構築は1業務1アプリまで最大1か月0円、使うと決めていただいた場合だけ月額5万円から(最低12ヶ月)です。
kintoneのライセンス料(スタンダードコース 1ユーザー月1,800円・税抜/最小10ユーザー)は別途、サイボウズ社とのご契約です(→2章 費用の全体像)。
まとめ
- グラフ機能は標準で追加費用なし。つまずくのは操作ではなくデータの持ち方
- アプリをまたいだ集計はできない。集計したい値は記録側にコピーしておく
- 関連レコード一覧に合計は出ない。合計はグラフ側で出す
- 集計軸にする項目は必ずドロップダウン。自由入力だと棒が割れる
- 絞り込み条件のないグラフは使われない。キャンセルと見込みを外す
- グラフは振り返り用。その場で気づいてほしいものは一覧の色で出す
- 有料のダッシュボードを買う前に、CSVで出して1回作ってみる
→ kintone導入支援の詳細 → kintone無料プラグイン一覧 → kintoneの一覧で条件に合う行に色を付ける方法 → 建設業の原価管理をkintoneで作る方法 → 13章 JavaScript・API・外部連携
よくある質問
kintoneのグラフ機能は追加費用がかかりますか
かかりません。グラフ機能は標準で搭載されており、追加費用なしでデータを可視化できます。棒グラフ、折れ線グラフ、円グラフ、クロス集計表、積み上げ棒グラフが使えます。
月別の売上推移を見るにはどのグラフを使いますか
折れ線グラフです。横軸に売上日を月単位で、縦軸に金額の合計を設定します。トレンドの把握と季節性の分析に向いています。担当者ごとの比較なら棒グラフ、商品カテゴリの構成比なら円グラフを選びます。
グラフを作るにはどんなフィールドが必要ですか
日付(契約日・売上日)、金額、商品カテゴリ(ドロップダウン)、担当者、顧客名があれば一通りのグラフが作れます。集計軸に使う項目はドロップダウンなど選択肢が決まった形にしておくと、表記ゆれで集計が割れません。
複数のグラフを1つの画面にまとめられますか
標準のグラフ機能では物足りない場合、krewDashboardを使えば複数のグラフを1画面に表示できます。JavaScriptとChart.jsなどのライブラリでkintone上に独自のダッシュボードを作ることも可能です。
kintoneのデータを社外の人にも見せられますか
kViewerを使うと外部公開可能なダッシュボードを作れます。ほかに、CSVでエクスポートしてExcelやGoogle スプレッドシートで分析する方法や、APIでLooker StudioやTableauと連携する方法もあります。


