株式会社COTSUBU

CHAPTER 08

kintoneの一覧・グラフ設計|期限と色で気づく

この章で分かること

  • 一覧を用途で分ける基準と、列を何本まで出すか(5章で決めた「毎朝これを見る」一覧の続き)
  • 色と期限の設計。3色まで・赤は当日動くものだけを、見本3業種の実際の設定値で
  • 標準のグラフでできること・できないことの境目と、壁に当たったときの逃げ方
この章の目次(9)
  1. 1起点は「誰が・いつ見て・何を決めるか」
  2. 2一覧は、用途で3種類に分かれる
  3. 3色は3色まで、赤は当日動くものだけ
  4. 4期限は「手を打つのに要る日数」で決める
  5. 5グラフ:できることの外側を先に知る
  6. 6ダッシュボードは「置き場所」で作る
  7. 7よくある間違いを5つ
  8. 8費用について
  9. 9この章の出口

見える化は、きれいな画面を作ることではなく、見た人がその場で1つ決められる状態を作ることです。 決めることが無い画面は、色を足してもグラフを足しても見られません。逆に「毎朝これを見て、今日追うものを決める」が決まっていれば、一覧は1つ、色は2色で足ります。 この章は、見る人と決めることを先に置き、そこから一覧・色・期限・グラフの順に組み立てるための章です。

この章で分かること

  • 一覧を用途で分ける基準と、列を何本まで出すか(5章で決めた「毎朝これを見る」一覧の続き)
  • 色と期限の設計。3色まで・赤は当日動くものだけを、見本3業種の実際の設定値で
  • 標準のグラフでできること・できないことの境目と、壁に当たったときの逃げ方

起点は「誰が・いつ見て・何を決めるか」

画面を作る前に、1文だけ書きます。

この一覧は、(誰が)(いつ)見て、(何を)決めるためのものである。

「工場長が、朝礼の前に見て、今日どの指示を優先するかを決める」。「経理が、月初に見て、今月どれを支払うかを決める」。 この文が書けない一覧は作りません。決めることが無いなら、それは一覧ではなく検索で足ります。

道具は4つあり、役割が違います。混ぜると、毎朝グラフを見せられて誰も見なくなります。

道具 効くこと 苦手なこと
一覧(絞り込み・並び順) 対象を減らす。優先順を作る 切り替えないと気づけない
色(条件書式・期限) 開いた瞬間に気づかせる 増やすと全部が目立たなくなる
グラフ 振り返る。傾向を見る 今日の行動は決まらない
通知(9章) 忘れる前に本人に届く 埋もれたら終わり

一覧は、用途で3種類に分かれる

5章では「一覧は最初1〜3個」「これから対応するものは昇順、すでに起きたものは降順」まで決めました。次は用途で分ける話です。

種類 何のためか 並び順 見本での例
作業の一覧 今日やることを決める 期限の昇順 受注一覧(納期 昇順)/製造指示一覧(完了予定日 昇順)/不良・是正一覧(是正期限 昇順)
確認の一覧 取り残しを見つける 期限の昇順 内見予定(開始 昇順)/安全・是正
記録の一覧 直近に何が起きたかを追う 日付の降順 工程実績一覧(開始 降順)/入出庫一覧(日付 降順)/修繕一覧(退去日 降順)

見本スペース(不動産・建設・製造の各6アプリ)では、全アプリに日本語の一覧を1つずつ作っています。既定の (All records) のままだと列名が英語で出て、全項目が横に並び、誰も読めないからです。実際の定義です。

一覧 出している列 並び順
内見予定(不動産③) 開始/終了/顧客名/物件名/担当者/結果 開始 昇順
入居中の一覧(不動産⑤) 契約番号/顧客名/物件名/入居日/入居日_和暦/退去日/解約通知期限/月額賃料 入居日 降順
受注一覧(製造②) 受注番号/得意先/品番/品名/数量/受注金額/納期/納期までの残日数/状況 納期 昇順
不良・是正一覧(製造⑥) 指示番号/品名/発生日/不良内容/不良数/是正期限/期限までの残日数/状態 是正期限 昇順

列は6〜9本に収まっています。 意図的な上限です。10本を超えると横スクロールが出て、その先は誰も見ません。色を付けても画面外です。

列を決める3問。①その列を見て判断が変わるか(変わらないなら出さない)、②その列で絞り込むか並べ替えるか、③1件を特定するのに要るか。備考・住所・メモは詳細画面に置き、一覧からは外します。

一覧を増やすのは、色を足すより先です。「遅延だけ見たい」なら、色を付けるより「遅延一覧」を作るほうが速い。色が要るのは、複数の状態を1つの画面で同時に見たいときだけです。

色は3色まで、赤は当日動くものだけ

kintoneの一覧の設定画面には、そもそも色の項目がありません。条件で色を変えるにはJavaScriptか、設定だけで済む無料プラグイン条件書式・期限・残日数を使います。道具の前に、決めごとを3つ置きます。

1. 色は3色まで(赤・黄・色なし)。 4色目が要るなら、それは色ではなく一覧を分けるべき別の軸です。人は「例外」に気づくのであって、色そのものに気づくわけではありません。塗られている行が全体の2割を超えたら、その色は機能していません。

2. 赤は、その日のうちに動くものだけ。 赤が10件並ぶ一覧は、翌週には誰も赤を見ません。「気にしておくもの」は黄色にします。赤が常時二桁になったら、条件がゆるすぎます。

3. 背景はうすく、文字は黒のまま。 黒いままなら必ず読めます。そして色だけに意味を持たせない——色が見分けにくい方には赤も黄も同じに見えます。状況・状態 の列を一覧に出しておけば、文字で読めます。色は気づかせるもので、伝えるのは値の役目です。

見本3業種で、実際に入れている色

18アプリのうち色を付けているのは10アプリ。どのアプリもルールは1本だけです。

アプリ 条件 塗る場所 色(文字/背景)
製造① 品目マスタ 在庫の余裕 ≦ 0 在庫数・安全在庫・在庫の余裕 #b3261e / #fdecea
製造② 受注 状況 = 生産中 納期・納期までの残日数 #8a5000 / #fdf0dc
製造③ 製造指示 進捗 = 遅延 行全体(一覧のみ) / #fdecea
製造④ 工程実績 不良数 ≧ 1 不良数 #b3261e / #fdecea
製造⑤ 在庫入出庫 区分 = 出庫 区分・数量 #14508c / #e6f0fa
製造⑥・建設⑥ 是正 状態 ≠ 完了 是正期限・期限までの残日数 #b3261e / 背景なし
建設① 案件台帳 状況 = 施工中 完工までの残日数 #b00020 / #ffe5e5
建設③ 発注・原価 支払状況 = 未払い 支払予定日・発注金額 #8a5a00 / #fff3c4
建設④ 工程 進捗 = 遅延 行全体(一覧のみ) / #ffe5e5

読み取れる決めごとが4つあります。

  • 1アプリ1ルール。 条件を2本以上入れているアプリは1つもありません。増えるほど「なぜこの色か」を説明できなくなります
  • 行全体を塗るのは「遅延」だけ。 行を塗ると強すぎるので、業務が止まっている状態にだけ使い、それ以外は列を指定して塗ります(納期と残日数の2列だけ、など)
  • 件数が多くなる条件は、背景を塗らず文字色だけ。 「完了していない是正」は常に何件もあるので、背景まで塗ると一覧が真っ赤になります
  • 青は警告ではない。 入出庫の 区分 の青は、入庫と出庫を読み分けるためで急ぐ意味はありません。赤・黄は「手を打て」、青・灰は「種類が違う」と決めると、色の意味が崩れません

そして何色が何かをアプリの説明欄に1行書きます(「赤=期限超過/黄=3日以内」)。引き継がれない色のルールは、半年で誰も触れなくなります。

期限は「手を打つのに要る日数」で決める

kintoneの計算フィールドには今日を返す関数がありません。だから「あと何日」は標準では作れません。一方、一覧の絞り込み条件では「今日」が使えます。「期限 が 今日 以前」で期限切れ一覧は標準だけで作れるので、まずここまでは標準でやってください。

残日数を数字で持ち、色まで付けるときに期限・残日数プラグインを使います。肝は「残り何日から黄色にするか」で、見本では業種ごとに変えています。

アプリ 期限の項目 残日数の入れ先 何日前から黄色か 理由
不動産④ 契約 契約終了日 更新までの残日数 90日 更新案内・条件交渉・書類に3か月要る
建設① 案件台帳 完工予定日 完工までの残日数 14日 職人と資材を手配し直せる最短が2週間
製造② 受注 納期 納期までの残日数 7日 出荷の段取りと運送の手配に1週間
製造③ 製造指示 完了予定日 完了までの残日数 5日 残りの工程を詰め直せる日数
製造⑥・建設⑥ 是正 是正期限 期限までの残日数 3日 対策を打って確認者が見るのに3日

閾値は気分ではなく「手を打つのに要る日数」で決めます。 90日と3日が同居しているのは、打てる手の重さが違うからです。全部「7日前」に揃えると、契約更新は間に合わず、是正は早すぎて忘れられます。

もう1つ、残日数の値は保存したときの値です。翌日には1日ずれます。だから見本の一覧は並べ替えをすべて期限の日付で行っています。残日数は「詳細画面で目安を見る」「CSVに出して報告に使う」用途です。一覧の色だけは開いた日で判定し直されるので、こちらは常に正しく出ます。

日付の見せ方も同じ道具立てです。和暦・曜日は標準の DATE_FORMAT では作れないので、日付計算で別フィールドに入れます。不動産の見本では 入居日 から 入居日_和暦、退去日 の30日前を 解約通知期限 に自動で入れています。役所・金融機関に出す書類がある業務だけ和暦を持ちます。

グラフ:できることの外側を先に知る

グラフは標準機能で追加費用なし。つまずくのは操作ではなくデータの持ち方です。

標準のグラフ機能
グラフの種類 棒・積み上げ棒・折れ線・面・曲線・曲線面・円・集計表
集計の方法 レコード件数/合計/平均/最大/最小
分類(軸) 最大2つまで(集計表なら行と列)
日付の単位 日・月・年・週・四半期など
絞り込み・保存・共有 一覧と同じようにできる。クリックで内訳の一覧に移動できる
アプリをまたいだ集計 できない
サブテーブルの中と親の項目を混ぜた集計 制約がある
目標線・前年比・定期メール送信 できない
複数のグラフを1画面に並べる 標準ではできない

太字はいつか必ず当たる壁です。当たったときの手は決まっています。

足りないこと 現実的な手
アプリをまたいだ集計 集計したい側でグラフを作り、キー(案件番号・品番)で分類する。または集計軸にしたい値をルックアップで記録側にコピーしておく
サブテーブルの中を集計 5章の判断に戻り、別アプリに出す(製造の 工程実績 がそれ)
前年比・目標線 CSVで出してスプレッドシートで作る
複数グラフを1画面に 有料のダッシュボード系プラグイン。買う前にCSVで1回作る

関連レコード一覧に合計は出ません。 レコードを並べる機能なので、合計はグラフ側で出します。見本の ① 品目マスタ に 受注の履歴・入出庫の履歴 を置いているのは、1件開けばその先が全部見えるようにするためで、数字を出すためではありません。

見たい数字を3つ決めてから、軸を作る

先にグラフを作ろうとせず、「毎週どの数字を見るか」を3つだけ決めます。そこから必要な項目が決まります。

見たい数字 グラフ 分類(軸) 軸に要る型
月別の受注金額 折れ線 受注日(月) 日付・数値
工種別の発注額 棒 工種 ドロップダウン(見積と同じ選択肢)
反響元ごとの成約 集計表 反響元 × 対応状況 ドロップダウン2つ
工程別の不良数 棒 工程名 ドロップダウン

見本の 工程名 が6択のドロップダウン(材料切断/旋盤加工/熱処理/組立/検査/梱包)なのは、工程別に数えるためです。文字列にすると「旋盤」「旋盤加工」「センバン」に割れ、集計が永久に出せません。

集計が合わない原因は、だいたいこの5つです。

原因 対処
集計軸が文字列の自由入力 ドロップダウンにする。過去分は一括更新でそろえる
全角・半角・空白が混在 入力値の整形で保存時にそろえる
二重登録がある 重複チェック Pro
キャンセル・見込みが混ざる 絞り込み条件を入れる
見積と発注で言葉が違う 同じ選択肢を使う

そして最大の原因が基準日です。同じ「9月の売上」でも、受注日 で数えるか 納期 で数えるかで金額が変わります。見本の受注アプリは両方を持っているので、どちらでも作れてしまいます。アプリごとに基準日を1つ決めて、説明欄に書いてください。 決めないと、営業会議と製造会議で違う数字が出ます。

ダッシュボードは「置き場所」で作る

標準に「複数グラフを1画面に並べる」機能はありません。置き場所を決めて同じ効果を出します。

  1. 既定の一覧を「毎朝見る一覧」にする。 開いた瞬間に絞り込まれた状態になる。これが一番効きます
  2. スペースのお知らせにリンクを貼る。 お知らせ欄はHTMLが書けるので、見出しとリンクを並べた簡易ダッシュボードになります(当社の開発環境も、見本スペースとプラグイン一覧へのリンクをここに置いています)
  3. グラフを保存してURLを共有する。 会議のたびに作り直さない
  4. 月次会議の議題名を、グラフの名前と一致させる。「このグラフを見る時間」が業務に入ります

有料のダッシュボードを買うのは、毎月見る数字が固まってからです。 順番は、①既定の一覧を直す → ②CSVで出して1回作る → ③3か月同じ数字を見続けた → ④そこで初めて買う。

よくある間違いを5つ

1. 一覧に列を20本出す——「全部見えたほうが安心」で全項目を並べると、横スクロールの先は誰も見ません。 → 直し方:列ごとに「見て判断が変わるか」を問い、外します。6〜9本が目安。備考・住所・メモは詳細画面へ。

2. 色を5色以上使う——赤・黄・青・緑・紫が並ぶと、どれも目立ちません。半年後には誰も意味を説明できません。 → 直し方:赤・黄・色なしに戻し、4色目が要る理由を書き出す。たいていは「別の一覧に分けるべき軸」です。色を足す前に一覧を足し、意味を説明欄に書きます。

3. 赤がいつも二桁並んでいる——赤は異常を示す色なので、常態になった時点で情報量がゼロです。 → 直し方:閾値を上げるか条件を絞る。見本の是正が背景を塗らず文字色だけなのは、件数が多くなると分かっているからです。30件溜まっているなら、色ではなく流れの問題(9章)です。

4. 残日数フィールドで並べ替える——保存時の値なので、翌日には1日ずれ、順番が狂います。 → 直し方:並べ替えと絞り込みは期限の日付で。 残日数は「見る」数字、期限は「並べる」数字と割り切ります。

5. グラフに絞り込み条件を入れない——キャンセルと見込みが混ざった数字は行動が決まらないので、3回見たら開かれなくなります。 → 直し方:保存前に必ず絞り込みを1つ入れる(「状況 が キャンセル でない」)。あわせて基準日を説明欄に書きます。

費用について

一覧・絞り込み・グラフ・お知らせは標準機能で追加費用なしです。条件書式・期限・残日数・日付計算・一括更新・入力値の整形は当社の無料プラグインで、無料・会員登録不要・外部と通信しません(プラグインの利用はスタンダードコース以上)。kintoneのライセンス料はスタンダードコース 1ユーザー月1,800円(税抜)・最小10ユーザーでサイボウズ社とのご契約、当社の構築は1業務1アプリまで最大1か月0円、使うと決めた段階で月5万円から(最低12ヶ月)です。

この章の出口

一覧が用途ごとに分かれ、赤と黄の意味が決まり、残日数が出て、毎週見る数字が3つ決まりました。見れば分かる状態にはなりました。

ただし、見えていても動きません。「期限が赤い」と気づいても、次に誰が何をするかが決まっていなければ赤いまま溜まります。点検項目6(赤が常時二桁)が×になる原因のほとんどは、色の設定ではなく流れが止まっていることです。

次の章へ:9章 kintoneのプロセス管理と通知の設計

この章の点検リストを開く(自社の状態を○×で判定する用)

点検リスト:見える化の点検(10項目)

現場に出す前、または「見えていない」と相談を受けたときに○×を付けます。

# チェック項目 ○の条件
1 「誰が・いつ見て・何を決めるか」を一覧ごとに1文で言えるか 全一覧について言える
2 「毎朝(毎週)これを見る」一覧が既定の一覧になっているか なっている
3 一覧が用途ごとに分かれているか(作業/確認/記録) 1つで全部を兼ねていない
4 一覧の列が10本以内か 横スクロールが出ない
5 色が3色以内で、意味をアプリの説明欄に書いたか 3色以内・説明あり
6 赤が付くレコードが常時二桁になっていないか 赤=その日に動くものだけ
7 期限のある業務で、残日数が数字で見え、色が付くか 見える・付く
8 「何日前から黄色か」を、手を打つのに要る日数で決めたか 業務ごとに根拠がある
9 並べ替え・絞り込みに、残日数ではなく期限の日付を使っているか 使っている
10 集計の軸が選択肢かマスタ参照で、基準日が1つ決まっているか 割れない・説明欄にある

合格ライン=10項目中8つ以上。1・2・10 は必須。

1と2が×なら、色もグラフも足す前にそこを決めます。見る人と決めることが無い画面は、どれだけ飾っても見られません。 10が×のまま数字を会議に出すと、部署ごとに違う数字が出て、そのあと誰もkintoneの数字を信用しなくなります。作り直しではなく信用の問題なので、先に潰します。

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更新日 2018年10月20日