CHAPTER 09
kintoneのプロセス管理と通知の設計
この章で分かること
- プロセス管理を使う業務・使わない業務の分かれ目と、使わないときの締め方
- ステータスの数・名前・作業者の決め方(個人名で固定すると何が起きるか)
- 通知が読まれなくなる境目と、通知を減らしてまとめる5つの手
この章の目次(10)
- 1まず、使う/使わないを決める
- 2使わないときは、入力の縛りで締める
- 3ステータスは5つ以内、動作ではなく状態の名前
- 4作業者は、個人名で指定しない
- 5標準でできないことと、埋め方
- 6通知:多すぎる通知は、無視される
- 7止まったものに気づく3点セット
- 8よくある間違いを5つ
- 9費用について
- 10この章の出口
プロセス管理の価値は、承認を電子化することではなく、「今この件が誰のところで止まっているか」が一覧で見えることです。紙とメールの承認がつらいのは押印そのものではなく、どこで止まっているか分からないことだからです。 ただし、多くの業務はプロセス管理を使わないほうが速く回ります。 当社の見本3業種18アプリでは、1つも使っていません。 この章は、使う/使わないを先に決め、使わない場合の締め方と、通知の出し方まで決め切るための章です。
この章で分かること
- プロセス管理を使う業務・使わない業務の分かれ目と、使わないときの締め方
- ステータスの数・名前・作業者の決め方(個人名で固定すると何が起きるか)
- 通知が読まれなくなる境目と、通知を減らしてまとめる5つの手
まず、使う/使わないを決める
プロセス管理を有効にすると、レコードに「ステータス」と「作業者」の2つが自動で追加され、一覧の絞り込みにも使えるようになります。逆に言えば、この「作業者」が要らないなら、使う理由はありません。
「ステータスを持ちたい」と「承認フローを回したい」は別の要件です。選択肢は3つあります。
| 状況 | 選ぶもの |
|---|---|
| 次に動く人が決まっていて、その人に知らせたい | プロセス管理 |
| 権限のない人に勝手に進められたくない | プロセス管理 |
| 段階を飛ばされると困る(承認を飛ばして支払済にされる) | プロセス管理 |
| 状態を記録しているだけ(未着手/進行中/完了) | ドロップダウン |
| 担当者が自分の判断で状態を変えてよい | ドロップダウン |
| 状態が進んだあと、特定の項目を書き換えられたくない | ドロップダウン+条件付き入力禁止 |
| 状態が同時に複数あり得る(Aは完了、Bは未着手) | 項目を分ける(1つのステータスで表さない) |
見本3業種がすべて下段——つまりドロップダウンで状態を持っているのは、どのアプリも「次に動く人」が決まっていないからです。受注の 状況(受付/生産中/出荷済/完了/キャンセル)は、営業も工場も見て、気づいた人が進めます。ここにプロセス管理を入れると、作業者に指名された人が動くまで誰も進められなくなり、かえって止まります。
判断の順番は、①次に動く人が1人(または1グループ)に決まるか → ②その人に知らせないと止まるか → ③飛ばされると事故になるか。 3つとも「はい」ならプロセス管理、1つでも「いいえ」ならドロップダウンで始めます。あとから有効化できます(ただし後述の注意あり)。
使わないときは、入力の縛りで締める
ドロップダウンで状態を持つ場合、ステータスが進んだあとに中身を書き換えられるという穴が残ります。見本ではここを無料プラグインで塞いでいます。実際の設定値です。
| アプリ | 条件 | 何をするか |
|---|---|---|
| 建設② 見積 | 提出状況 = 受注 |
明細の 単価 と 数量 を編集不可にする |
| 建設② 見積 | 提出状況 = 失注 |
失注理由 を必須にする |
| 製造③ 製造指示 | 進捗 = 完了 |
指示数量・完了予定日・工程の 工程名・予定時間 を編集不可 |
| 製造② 受注 | 状況 = キャンセル |
キャンセル理由 を必須 |
| 製造⑥ 不良・是正 | 状態 = 完了 |
対策・完了日・確認者 を必須 |
| 建設⑥ 安全・是正 | 状態 = 完了 |
完了日・確認者 を必須 |
| 不動産② 反響・顧客 | 対応状況 = 成約 |
成約日・物件コード を必須 |
この形には法則があります。入力の途中では縛らず、状態が進んだときだけ縛る。 そして縛り方は2種類——「終わったものは触らせない」(入力禁止)と「終わったと言うなら根拠を書かせる」(条件付き必須)です。プロセス管理を使わなくても、この2つを入れれば「受注済の見積の単価が書き換わっていた」「完了になっているのに対策が空欄」は起きません。
プロセス管理は状態を進める機能であって、入力の中身には関与しません。 つまりプロセス管理を入れる場合も、この2つは結局必要になります。
ステータスは5つ以内、動作ではなく状態の名前
ステータスにするのは業務の全工程ではなく、「人が変わるところ」だけです。ここを間違えると15個並んで誰も選べなくなります。「レシートを貼る」「金額を入れる」は工程ですが、人は変わらないのでステータスにしません。
見本のステータス(ドロップダウン)は、すべて5つ以内に収まっています。
| アプリ | 選択肢 | 数 |
|---|---|---|
| 製造② 受注 | 受付/生産中/出荷済/完了/キャンセル | 5 |
| 製造③ 製造指示 | 未着手/進行中/完了/遅延 | 4 |
| 製造⑥ 不良・是正 | 未対応/対応中/完了 | 3 |
| 建設① 案件台帳 | 見積中/受注/施工中/完工/失注 | 5 |
| 建設② 見積 | 作成中/提出済/受注/失注 | 4 |
| 不動産② 反響・顧客 | 新規/対応中/内見済み/成約/見送り | 5 |
太字に注目してください。どれも「終わり方」を2つ持っています。 正常に終わる(完了・成約・受注)と、そうでなく終わる(キャンセル・失注・見送り)です。ここを1つしか作らないと、失注した案件が「対応中」のまま永久に一覧に残り、8章の「赤が常時二桁」になります。終わらせる出口を必ず2つ用意する——これがステータス設計で最も忘れられる1点です。
名前は動作ではなく状態で付けます。「申請する」ではなく「申請中」。ボタン(アクション)の名前が動作、ステータスの名前が状態です。混ぜると一覧の絞り込みが読めなくなります。
プロセス管理を使う場合の、最小で実用になる形はこれです。
未申請 → 申請中 → 承認済 → 完了
↘ 差し戻し(行き先は「未申請」の1箇所だけ)
差し戻しの行き先は1箇所に固定します。 「経理から差し戻したら上長承認済に戻す」のようにルートを増やすと、半年後に誰も全体像を説明できなくなります。そして差し戻し理由は必ず必須にします(条件付き必須で「ステータスが差し戻しなら理由を必須」)。理由が書かれないまま戻った申請は、何を直せばよいか分からず放置されます。
作業者は、個人名で指定しない
ここが運用の生死を分けます。
| 指定のしかた | 使いどころ | 不在のとき |
|---|---|---|
| ユーザー(個人名) | — | 止まる。使わない |
| 組織 | 部署の誰かが処理すればよい | 誰でも進められる |
| グループ | 部署をまたぐ役割(経理担当・承認者) | 誰でも進められる |
| フィールドの値(ユーザー選択) | レコードごとに承認者が変わる | 入れ替えれば進む |
| 作成者・作成者の上長 | 申請系の標準的な形 | 組織の設定に従う |
「部長が出張だから承認が3日止まる」は、設計ミスです。グループか組織を作り、そこに複数人を入れておきます。点検リストで唯一の必須項目がこれです。
なお、人を指す項目には5章で触れた注意があります。kintoneのアカウントを持っていない職人・パート・外注先はユーザー選択で選べません。見本の工程実績・作業日報が 作業者(ユーザー選択)と 作業者名(文字列・必須)を両方持っているのはそのためです。アカウントを持たない人が作業者になる業務では、プロセス管理は回りません。
条件分岐(金額で承認ルートを変える)と並列承認(全員/誰か1人)は標準でできますが、分岐は1箇所までに抑えてください。2箇所以上あるとテストすべきルートが一気に増え、作った本人しか直せなくなります。最初は2段階+差し戻しで1か月回し、詰まったところだけ段階を足すほうが、結果的に早く固まります。
標準でできないことと、埋め方
結論だけ先に書きます。プロセス管理は状態を進める機能で、入力の中身には一切関与しません。 差し戻し理由の必須化、承認後の金額のロック、滞留の色付け、経過日数の表示、申請番号の採番、承認済みの一括更新——どれもプロセス管理には無く、すべて無料プラグイン側で埋めます。どの要望をどのプラグインで埋めるかの対応表と、承認ルートの設計パターン(2段階・多段階・並列・差し戻し付き)は、記事kintoneプロセス管理で承認フローを自動化するにあります。
この章で決めるのは、そもそもプロセス管理を使うかと、ステータスと作業者をどう決めるかの2つだけです。
もう1つ、運用中のアプリで注意することがあります。プロセス管理を有効にすると、既存のレコードはすべて最初のステータスになります。 100件の案件が全部「未申請」に戻ります。運用中に有効化するときは、必ずデータを書き出してから行ってください。
通知:多すぎる通知は、無視される
kintoneの標準の通知は3種類です。役割が違うので、分けて使います。
| 種類 | いつ届くか | 何に使うか | 向かないこと |
|---|---|---|---|
| アプリの条件通知 | 登録・更新・コメントのとき、条件に合えば | 「自分の担当に割り当てられた」を知らせる | 全レコードの更新を全員に流すこと |
| レコードの条件通知 | そのレコードが更新されたとき | 自分が関わる件だけ追う | 一括での設計 |
| リマインドの条件通知 | 日付・日時を基準に「○日前の○時」 | 期限が来る前に本人に届ける | 過ぎたあとの追跡 |
宛先にはユーザー・組織・グループのほか、フィールドの値(ユーザー選択・作成者・更新者)を指定できます。作業者や担当者フィールドを宛先にすれば、「その件を持っている人」にだけ届きます。
ここからが設計です。当社の決めごとは「1人あたり1日5件まで」。 理由は単純で、通知の一覧が1画面に収まらなくなると、人は中身を読まずにまとめて既読にする習慣を作るからです。その習慣が一度つくと、本当に必要な通知も読まれません。 5件は「1件ずつ開いても1分で終わる」量として決めています。10件を超える設計は、通知が無いのとほぼ同じです。
超えそうなときに減らす手は5つあります。上から順に効きます。
- 宛先を「関係者全員」から「次に動く人」に絞る。 通知先にグループを指定して10人に配ると、10人とも「自分の番ではない」と思って読まなくなります
- 条件を「登録・更新・コメントのすべて」から、状態が変わったときだけに絞る。 「
状況が 生産中 に変わったとき」のように、条件にステータスを入れます。誤字の修正で通知は飛ばさない - 毎日届くものは、朝1回のリマインドにまとめる。 対象も絞ります(「未完了かつ期限3日以内」)。1件ごとに飛ばさず、1通を見て一覧を開かせる形にする
- 「見れば分かる」ものは通知しない。 一覧の色に回します(8章)。通知は本人に届ける道具、色は取り残しを見つける道具です
- 個人設定を使う。 自分の操作による通知を受け取らない設定にし、関係の薄いアプリはメール転送を切る
通知だけにすると、休暇中の1通を逃した件がそのまま沈みます。色だけにすると、その一覧を見る習慣が無い人には届きません。 通知で気づかせ、色で取り残しを潰す二段構えが、実務では最も確実です。
止まったものに気づく3点セット
プロセス管理を入れただけでは、止まっている件は見えません。次の3つをセットにします。
- 自分が作業者の一覧を作る。 絞り込み条件に「作業者 が ログインユーザー」を入れた一覧を作り、既定の一覧にします(8章の点検項目2)
- 止まっている日数を数字で出す。 期限・残日数で、申請日や期限からの日数を出します
- 一定日数を超えたら色を付ける。 条件書式で赤くします。閾値は8章の考え方どおり「手を打つのに要る日数」で決めます
この3つが揃うと、承認の遅い人を、人が催促しなくてよくなります。 これが入っていないプロセス管理は、紙の決裁をそのまま画面に移しただけで、止まる場所が見えないという元の問題が残ります。
よくある間違いを5つ
1. 紙の決裁ルートをそのまま写す——押印欄が5つあるからステータスを5段階にする。押印が5つあったのは紙が1枚しかなく順番に回すしかなかったからで、デジタルでは同時に見せられます。 → 直し方:「本当に止める必要がある人」だけ残します。段階を減らす相談から始めるのが、いちばん効く改善です。多段階でも3段階までに抑えます。
2. 業務の全工程をステータスにする——15個並び、現場が選べなくなります。
→ 直し方:人が変わるところだけを残して5つ以内にします。工程の細かい記録が要るなら、それはステータスではなく別アプリの記録です(5章の 工程実績)。
3. 終わり方を1つしか作らない——「完了」しか無いと、失注・キャンセル・見送りになった件が「対応中」のまま一覧に残り続けます。
→ 直し方:正常に終わる出口と、そうでない出口の2つを必ず作ります。見本のステータスはすべてこの形です。あわせて、そうでない出口には理由を必須にします(失注理由・キャンセル理由)。
4. 作業者を個人名で固定する——不在・異動・退職で止まります。退職者が作業者のまま残ったレコードは、誰も進められません。 → 直し方:組織かグループで指定します。1人しかいない役割でも、グループを作ってその1人を入れます。増員や交代のときに設定を直さなくて済みます(10章の権限設計と同じ考え方です)。
5. 通知を「とりあえず全部」設定する——登録・更新・コメントのすべてを関係者全員に流すと、1日20件を超え、2週間で誰も読まなくなります。 → 直し方:1人1日5件を上限に、宛先を次に動く人へ、条件をステータスが変わったときだけに絞ります。減らしたぶんは一覧の色で拾います。
費用について
プロセス管理・条件通知・リマインドはすべて標準機能で追加費用なしです(プロセス管理はスタンダードコース以上)。条件付き必須・条件付き入力禁止・条件書式・期限・残日数・自動採番・一括更新は当社の無料プラグインで、無料・会員登録不要・外部と通信しません。
kintoneのライセンス料はスタンダードコース 1ユーザー月1,800円(税抜)・最小10ユーザーでサイボウズ社とのご契約、当社の構築は1業務1アプリまで最大1か月0円、使うと決めていただいた段階で月5万円から(最低12ヶ月)です。
この章の出口
ここまでで、状態の持ち方が決まり、次に動く人が決まり、止まった件が見え、通知が読まれる量に収まりました。1つの業務が、人を挟んで最後まで流れるようになっています。
残っているのは、その流れを「誰に見せるか」です。見積の金額を全員が見てよいのか、他部署の案件を編集できてよいのか、退職者のアカウントはどう止めるのか。作業者をグループで指定したのと同じ考え方が、そのまま権限の設計にも効いてきます。
この章の点検リストを開く(自社の状態を○×で判定する用)
点検リスト:流れの点検(10項目)
業務を回し始める前、または「止まっている」と相談を受けたときに○×を付けます。
| # | チェック項目 | ○の条件 |
|---|---|---|
| 1 | プロセス管理を使う/使わないを、3つの問いで判断したか | 次に動く人・知らせる必要・飛ばされる事故の3つで判断した |
| 2 | ステータスが5つ以内か | 5つ以内 |
| 3 | ステータス名が動作ではなく状態になっているか | 「申請する」でなく「申請中」 |
| 4 | 終わり方が2つあるか(完了と、失注・キャンセル) | ある。そうでない出口には理由を必須にしている |
| 5 | 作業者が個人名ではなく組織・グループで指定されているか | 異動・退職で止まらない |
| 6 | 差し戻しの行き先が1箇所に決まり、理由が必須か | 決まっている・必須 |
| 7 | 状態が進んだあと、書き換えられては困る項目を守っているか | 条件付き入力禁止で対応済み |
| 8 | 条件分岐が1箇所以内か | 1箇所以内、または不要と判断済み |
| 9 | 1人あたりの通知が1日5件以内に収まる設計か | 件数を数えた |
| 10 | 止まっている件が一覧で見えるか(自分の一覧・日数・色) | 3点セットが入っている |
合格ライン=10項目中8つ以上。5は必須(×なら運用が止まります)。
4と9は、導入直後には×でも困りませんが、3か月後に必ず効いてきます。 終わらせる出口が無いアプリは一覧が膨らみ続け、通知が多いアプリは誰も通知を見なくなります。どちらも「使われなくなった」と言われる典型的な壊れ方です。
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更新日 2018年10月20日
