株式会社COTSUBU
kintone

kintoneプロセス管理で承認フローを自動化する

宇田川 将也|10分
kintoneプロセス管理承認フローワークフロー自動化

プロセス管理は「承認フローを作る機能」と説明されがちですが、実際に効くのは「今この申請は誰のところで止まっているか」が一覧で見えるようになることです。紙とメールの承認がつらいのは、押印そのものではなく、どこで止まっているか分からないことです。

一方で、プロセス管理を使わないほうがよい場面もあります。 ここを先に切り分けます。

使う・使わないの判断

状況 プロセス管理 ドロップダウンで十分
次に動く人が決まっている ○
「誰が処理すべきか」を本人に知らせたい ○
権限のない人に勝手に進められたくない ○
状態を記録しているだけ(進行中/完了) ○
誰でも状態を変えてよい ○
状態が同時に複数あり得る(Aは完了、Bは未着手) ○(項目を分ける)

「ステータスを持ちたい」と「承認フローを回したい」は別の要件です。案件の進捗(商談中/受注/失注)のように、担当者が自由に変えてよいものはドロップダウンで十分で、プロセス管理にすると逆に手間が増えます。

プロセス管理を有効にすると、レコードに「ステータス」と「作業者」の2つが自動で追加され、一覧の絞り込み条件にも使えるようになります。この「作業者」が要らないなら、使う理由はありません。

設定の順番

Step 1: ステータスを洗い出す

業務の全工程ではなく、「人が変わるところ」だけをステータスにします。ここを間違えると15個並んで破綻します。

経費精算の例です。

未申請 → 申請中 → 上長承認済 → 経理確認済 → 支払済
          ↘ 差し戻し ↗

「レシートを貼る」「金額を入れる」は工程ですが、人は変わらないのでステータスにしません。

Step 2: プロセス管理を有効にする

アプリの設定 →「プロセス管理」→「プロセス管理を有効にする」。既存のレコードは、有効にした時点ですべて最初のステータスになります。 運用中のアプリで有効にするときは、いったんデータを書き出してから行ってください。

Step 3: アクション(遷移)を作る

現在のステータス アクション 次のステータス 作業者
未申請 申請する 申請中 作成者
申請中 承認する 上長承認済 申請者の上長(組織)
申請中 差し戻す 未申請 申請者の上長(組織)
上長承認済 確認する 経理確認済 経理グループ
上長承認済 差し戻す 未申請 経理グループ
経理確認済 支払う 支払済 経理グループ

差し戻しの行き先を「未申請」にそろえているのがポイントです。「経理から差し戻したら上長承認済に戻す」のようにルートを増やすと、あとから誰も全体像を説明できなくなります。

Step 4: 作業者の指定のしかた

ここが運用の生死を分けます。

指定のしかた 使いどころ 不在のとき
ユーザー(個人名) 1人しかいない役割 止まる。使わない
組織 部署の誰かが処理すればよい 誰でも進められる
グループ 部署をまたぐ役割(経理担当、承認者) 誰でも進められる
フィールドの値(ユーザー選択) レコードごとに承認者が変わる 入れ替えれば進む
作成者・作成者の上長 申請系の標準的な形 組織の設定に従う

個人名で固定しないでください。 「部長が出張だから承認が3日止まる」は、プロセス管理の設計ミスです。グループか組織を作って、そこに複数人を入れておきます。

Step 5: 条件分岐

アクションごとに「このアクションを使える条件」を設定できます。金額で承認ルートを変える例です。

アクション 条件 次のステータス
承認する(少額) 金額 ≤ 100000 経理確認済
承認する(高額) 金額 > 100000 部長承認待ち

分岐は1箇所までに抑えてください。2箇所以上あると、テストすべきルートが一気に増えます。

Step 6: 並列の承認

1つのステータスに複数の作業者を設定し、「全員がアクションを実行したら次へ進む」か「誰か1人で進む」かを選べます。

  • 全員 — 営業部と技術部の両方の同意が要る稟議
  • 誰か1人 — 経理チームの誰かが確認すればよい業務

標準でできないこと

プロセス管理は「状態を進める」機能なので、入力の中身には関与しません。 ここを無料プラグインで埋めます。

やりたいこと プロセス管理では 埋め方
差し戻すときは理由を必須にしたい できない 条件付き必須で「ステータスが差し戻しなら理由を必須」
承認後に金額を書き換えられたくない できない 条件付き入力禁止で「承認済なら金額は編集不可」
一覧で「止まっている申請」を赤くしたい できない 条件書式
申請から何日止まっているかを出したい できない 期限・残日数
承認者にだけ追加の項目を見せたい できない 項目の表示切替
申請番号を自動で振りたい できない 自動採番
入力漏れを保存前にまとめて出したい できない 入力漏れサマリー
承認済みの申請をまとめて「支払済」にしたい 1件ずつ 一覧からの一括更新

いずれも無料・会員登録不要で、外部と通信しません(→kintone無料プラグイン一覧)。

とくに「差し戻し理由の必須化」は、入れないと運用が崩れます。 理由が書かれないまま戻ってきた申請は、申請者が何を直せばよいか分からず、そのまま放置されます。

よくある設計パターン

パターン 形 向いている組織
2段階 申請 → 承認 → 完了 10〜30名。承認者が1階層
多段階 申請 → 課長 → 部長 → 経理 → 完了 金額の大きい稟議。段階は3つまで
並列 申請 → 営業部+技術部 → 完了 部署横断の合意が要る案件
差し戻し付き2段階 申請 → 承認/差し戻し → 完了 最初に作るならこれ

最初から多段階を組まないでください。2段階+差し戻しで1ヶ月回し、詰まったところだけ段階を足すほうが、結果的に早く固まります。

設計を間違える原因

原因 起きること 直し方
業務の全工程をステータスにする 15個並び、現場が選べない 人が変わるところだけにする
作業者を個人名で固定 不在で止まる 組織・グループを使う
差し戻し先を分岐させる ルートが説明できなくなる 行き先は1箇所に固定
差し戻し理由を任意にしている 何を直せばよいか伝わらない 条件付き必須
紙の決裁ルートをそのまま写す 押印欄の数だけ段階ができる 「本当に止める必要がある人」だけ残す
通知を設定していない 自分のところに来たことに気づかない 条件通知+ポータルの一覧
運用中に有効化してテストしていない 既存レコードが全部先頭に戻る テスト環境か、書き出してから行う

「紙の決裁ルートをそのまま写す」がいちばん多い失敗です。押印が5つあるのは、紙が1枚しかなく順番に回すしかなかったからで、デジタルでは同時に見せられます。段階を減らす相談から始めてください。

滞留を見えるようにする

プロセス管理を入れただけでは、止まっている申請は見えません。次の3つをセットにします。

  1. 自分が作業者の一覧を作る — 絞り込み条件に「作業者 が ログインユーザー」を入れた一覧を作り、既定の一覧にします
  2. 止まっている日数を出す — 期限・残日数で申請日からの経過日数を出し、3日を超えたら条件書式で赤くします
  3. 通知を設定する — アプリの「条件通知」で、ステータスが変わったときに作業者へ通知します

この3つが揃うと、「承認が遅い人」を人が催促しなくてよくなります。

実務での例

経費精算

項目 型 備考
申請番号 文字列 自動採番で年度連番
申請日 日付
費目 ドロップダウン 交通費/会議費/消耗品など
金額 数値 範囲チェックで0以上
領収書 添付ファイル 「申請する」時点で必須にしたい → 条件付き必須
差し戻し理由 文字列(複数行) ステータスが差し戻しなら必須

稟議・電子決裁

自治体の電子決裁でも同じ形が使えます。COTSUBUは島根県海士町の役場で、kintoneによる電子決裁と入札関連情報の一元管理を構築しました(→海士町の事例/自治体のkintone活用)。

建設・製造の現場

建設では「見積 → 受注確定」で単価と数量を編集できなくする、製造では「製造指示の完了」で数量と工程を編集できなくする、という使い方をしています。実際の画面は建設会社のkintoneと製造業のkintoneで見られます。

費用と進め方

初回30分で業務を聞き、その場で画面の形をお見せします。そこから1〜4週目で構築し、現場の声で直します。ここまでが0円です(1業務1アプリまで、最大1か月)。1ヶ月後に使うか決めていただき、使うと決めた場合だけ月額5万円から(最低12ヶ月)で改善と追加を続けます。

kintoneのライセンス料(スタンダードコース 1ユーザー月1,800円・税抜/最小10ユーザー)は別途、サイボウズ社とのご契約です(→2章 費用の全体像)。

まとめ

  • プロセス管理の価値は「どこで止まっているか」が見えること。状態を記録するだけならドロップダウンでよい
  • ステータスは業務の全工程ではなく「人が変わるところ」だけ。5〜7個が目安
  • 作業者を個人名で固定しない。組織かグループを使う
  • 差し戻しの行き先は1箇所に固定し、理由を必須にする
  • 入力の中身はプロセス管理では制御できない。必須・編集禁止・色分けは無料プラグインで埋める
  • 紙の決裁ルートをそのまま写さない。段階を減らす相談から始める
  • 滞留は「自分の一覧」「経過日数」「通知」の3点セットで見える化する

→ kintone導入支援の詳細 → kintone無料プラグイン一覧 → 5章 アプリ設計の基本 → kintoneの一覧で条件に合う行に色を付ける方法 → 自治体のkintone活用

よくある質問

kintoneのプロセス管理で何ができますか

申請から承認、完了までのワークフローをkintone上で管理できます。ステータスに応じた担当者の自動設定、金額などによる条件分岐、進捗状況の可視化が可能です。紙やメールで回していた承認フローをkintoneだけで完結させられます。

金額によって承認ルートを変えることはできますか

できます。プロセス管理の条件分岐を使えば、金額が10万円以上の場合は部長承認を追加する、といった設定が可能です。承認段階を増やす多段階承認や、営業部と技術部の両方の同意が必要な並列承認のパターンも組めます。

ステータスはいくつくらい作るのが適切ですか

5〜7個程度に抑えるのがおすすめです。ステータスが多すぎると運用が煩雑になり、現場が使わなくなります。経費精算であれば、未申請・申請中・上長承認・経理確認・承認完了・差し戻しといった構成が目安です。

承認者が不在のときに業務が止まらないようにできますか

代理承認者をあらかじめ設定しておけば止まりません。あわせて、ステータスが変わった際に関係者へメール通知が届くよう設定しておくと、承認の滞留を防げます。

差し戻しのフローも作るべきですか

必ず用意してください。申請内容に不備があった場合にどうするかを事前に設計しておかないと、運用が回らなくなります。差し戻し時にコメントで理由を記載するルールもあわせて決めておきます。

宇田川 将也/ 代表取締役

2024年に総務省の地域活性化起業人として島根県海士町に着任。役場に住み込んで業務改善に従事し、kintoneで電子決裁や定期健診管理を構築しました。

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