CHAPTER 02
kintoneの費用|ライセンス・構築・運用の内訳
この章で分かること
- 払う相手が何社あり、どれが固定でどれが増えるのか
- 初期費用だけを見て決めると、何を見落とすのか(見落としが起きる6か所)
- 2年間の総額を1つの数字にする計算の型と、金額を社内に出してよい合格ライン
この章の目次(8)
- 1払う相手は3つに分かれている
- 2サイボウズに払う分(ここだけは確定できる)
- 3費用が漏れるのは、この6か所
- 42年間の総額を出す計算の型
- 5総額を下げる手は、4つしかない
- 6「構築無料」をどう読むか
- 7よくある間違いを3つ
- 8この章の出口
kintoneの費用は「月いくら」では決まりません。決まるのは、払う相手が3つに分かれていることと、そのうち2つが後から増えることを先に知っているかどうかです。 初期費用だけを並べた比較表は、ほぼ確実に間違えます。金額の議論は、期間を切って総額にした瞬間に正しくなります。 この章は、費用を6つの箱に分け、2年間の総額を1つの数字にし、8項目の点検リストで見落としを潰すための章です。
この章で分かること
- 払う相手が何社あり、どれが固定でどれが増えるのか
- 初期費用だけを見て決めると、何を見落とすのか(見落としが起きる6か所)
- 2年間の総額を1つの数字にする計算の型と、金額を社内に出してよい合格ライン
払う相手は3つに分かれている
kintoneの費用が分かりにくい最大の理由は、請求書が1枚で来ないことです。
| 払う相手 | 何に対して払うか | 性質 |
|---|---|---|
| サイボウズ | kintone本体のライセンス | 人数×月数で必ず増える。止めない限り続く |
| 構築する相手(外部 or 自社の人件費) | アプリを作る作業・直し続ける作業 | 業務が増えるたびに発生する |
| プラグイン・外部サービスの提供元 | 帳票、フォーム、社外公開、連携 | 要件が増えた時点で後から足される |
重要なのは、3つ目が後から出てくることです。検討の初期には「ライセンス+構築費」しか見えません。帳票を出したい、社外に見せたい、会計ソフトとつなぎたい——これらは作り始めてから出る要件で、その時点で請求先が増えます。費用の見積もりは、金額を積み上げる作業ではなく、後から増える箱を先に開けておく作業です。
サイボウズに払う分(ここだけは確定できる)
3つのうち、契約前に正確に出せるのはここだけです。
| コース | 1ユーザー月額(税抜) | 最小ユーザー数 | アプリ数の上限 | プラグイン・API |
|---|---|---|---|---|
| ライト | 1,000円 | 10 | 200 | 使えない |
| スタンダード | 1,800円 | 10 | 1,000 | 使える |
2026年9月時点。最新はサイボウズの料金ページで確認してください。ゲストユーザー(社外の人)は別料金で、1ユーザー月1,200円からです。
押さえる点は3つです。
- 最小10ユーザー。 触るのが3人でも10人分を払います(1章の問い5)。
- ライトとスタンダードの差は、プラグインとAPIが使えるかどうかです。アプリ数の上限ではありません(詳細はライトとスタンダードの違い)。
- 後から上げられます。 迷ったらライトで始めて構いません。ただし、帳票・社外公開・外部連携・JavaScriptのどれか1つでも予定にあるなら最初からスタンダードです。上げること自体は無料でも、「ライトで足りる前提の設計」を作り直す手戻りが発生します。
費用が漏れるのは、この6か所
見積もりで抜けやすいのは、いつも同じ場所です。
| # | 箱 | よくある抜け方 | 先に決めること |
|---|---|---|---|
| 1 | ライセンス | 実際に触る人数で計算している | 10ユーザー未満では契約できない |
| 2 | 構築 | 1業務目の金額だけを見ている | 2業務目以降の単価を書面で確認する |
| 3 | プラグイン・外部サービス | 月額を月額のまま見ている | 年額に直して足す |
| 4 | 移行 | 「Excelを取り込むだけ」と思っている | 件数と、表記ゆれ・重複の整理を誰がやるか |
| 5 | 運用・保守 | 「使い始めたら終わり」と思っている | 3ヶ月後に必ず出る改修を誰がやるか |
| 6 | 教育 | ゼロで計上している | 誰が使い方を教え、誰が直せるようになるか |
4と5と6は、金額として見積書に載らないことが多い箱です。 載らないからゼロなのではなく、社内の誰かの時間として払っています。ここを外部に出すか社内で持つかを決めるのが、次の3章です。
費用が何で上下するか(アプリ数・移行・カスタマイズの影響度)は、記事見積もり相場と料金体系3つに分解してあります。この章では金額そのものではなく、箱の数だけを扱います。
2年間の総額を出す計算の型
比較の単位は「初期費用」でも「月額」でもなく、2年間の総額にします。理由は単純で、初期費用と月額の組み合わせは会社ごとに違い、片方だけでは逆転するからです。
次の6行を埋めると、総額が1つの数字になります。
| 行 | 項目 | 計算 |
|---|---|---|
| A | ライセンス | 契約ユーザー数(最低10)× 単価 × 24ヶ月 |
| B | 初期構築 | 1業務目の初期費用 |
| C | 2業務目以降 | 追加する業務数 × 1業務あたりの単価 |
| D | プラグイン・外部サービス | 月額の合計 × 24ヶ月(買い切りならその額) |
| E | 運用・保守 | 月額 × 24ヶ月 |
| F | 移行・教育 | 外部に出す分の金額(社内で持つなら「何時間」と書く) |
| 計 | 2年間の総額 | A+B+C+D+E+F |
Fを空欄のままにしないこと。 金額が0円でも、「社内の誰が何時間払うか」は必ず書きます。ここを書かない見積もりは、2年後に「思ったより高かった」になります。
当社の形を、この型に当てはめると次のようになります(1業務・10ユーザー・スタンダード・プラグインなしの場合。2026年9月時点)。
| 行 | 金額 |
|---|---|
| A ライセンス | 10人 × 1,800円 × 24ヶ月 = 432,000円(サイボウズへ) |
| B 初期構築 | 0円(1業務1アプリまで、最大1か月) |
| C 2業務目以降 | 1業務30万円から |
| D プラグイン | 0円(当社の無料プラグイン23本はMITライセンスで、kintoneの画面内で動くため追加費用なし) |
| E 運用・保守 | 50,000円 × 24ヶ月 = 1,200,000円(最低契約12ヶ月) |
| F 移行・教育 | 継続サポートの中(月2時間の改善・追加、質問対応、月1回の定例) |
| 計 | 1,632,000円(1業務・2年) |
この数字を出す目的は当社を選んでもらうことではなく、他社の見積もりを同じ6行に置き直して比べられる形にするためです。埋まらない行があれば、そこが質問すべき場所です。
総額を下げる手は、4つしかない
6行が埋まったら、次は下げ方です。実際に効くのは4つで、上2つはB・C行(構築)に、下2つはE行(運用・保守)に効きます。
| 手 | やること | どの行が下がるか |
|---|---|---|
| テンプレートから始める | kintoneには100種類以上のアプリテンプレートがある。ゼロから作らず、近いものを直す | B |
| 業務を1つずつ足す | 全業務を一度に頼まず、効果の大きい業務から順に作る。使われなかった分の構築費が出ない | B・C |
| 標準機能の範囲は社内で直す | 項目の追加・一覧の変更はノーコードでできる。ここを社内で持つと改修の依頼回数が減る | E |
| プラグインで済むものをJavaScriptで書かない | 設定で済ませたものは、作った人が辞めても動く。コードは直せる人を抱え続けることになる | B・E |
下2つは金額が消えるのではなく、「誰の時間で払うか」の付け替えです。 F行に「月何時間」と書いたうえで判断してください(線引きは3章、社内で直せるようにする道筋は15章)。
減る側も、金額にする前に時間で数えます。kintoneで減るのは転記の時間・探す時間・間違いを直す時間・承認を待つ時間・同じ表を毎月作る時間で、ライセンス料そのものは増えます(1章の誤解1)。当社が関わった案件でも、浮いたのは転記と集計をやめた分でした。「この作業に何分かかっているか」を1つだけ実測してから、金額に直してください。 推計から入ると、必ず社内で否定されます。
「構築無料」をどう読むか
構築まで無償で提供する事業者が出てきています。当社もその1つです。無料が成立する理由は、要件整理・アプリ設計・フィールド定義・テストデータ生成をAIで行い、1社あたりの工数が下がったことです(詳細は無料で作ってもらう方法はあるか)。
判断する側がすべきことは、疑うことではなく、条件を6つ確認して2年総額の表に入れることです。
| 確認すること | なぜ |
|---|---|
| 対象範囲(1アプリか、1業務か) | 範囲外の作業がどこから有料になるか |
| 期間 | 何日・何ヶ月で作るのか |
| 打ち合わせ回数 | 無制限ではないことが多い |
| ライセンス費の負担 | kintone本体は誰が契約するか |
| 使わないと決めた場合 | 費用が発生しないか、作ったものはどうなるか |
| 納品後の月額と最低契約期間 | ここで2年総額が決まる |
「構築0円・納品時に高額」という形も、「構築0円・月額のみ」という形もあります。無料かどうかではなく、2年総額の6行が埋まるかどうかで見てください。
よくある間違いを3つ
「ライセンス料が安いから安く済む」 ——逆です。3つの払い先のうち、ライセンスは最も小さく、最も正確に読める箱です。総額を動かすのは構築と運用・保守で、これは人の時間に比例します。安い箱を比べても総額は変わりません。
「自社で作れば0円」 ——0円ではなく、人件費に付け替えただけです。しかもその人は本来の業務を持っています。2年総額の表のF行に「月何時間」と書いてみると、外注費と同じ桁になることがよくあります。判断すべきは「払うか払わないか」ではなく「誰の時間で払うか」です。この線引きが3章です。
「まず全社分のライセンスを契約する」 ——最も高くつく間違いです。最小10ユーザーは下限であって推奨値ではありません。1業務・1部署で始めれば10ユーザーで足り、効果を確認してから増やせます。先に50人分を契約すると、使われないまま月9万円(税抜)が2年で216万円になります。ライセンスは後から増やせます。減らすときのほうが面倒です。
「プラグインは全部有料」 ——そうとは限りません。kintoneの画面の中だけで動くものはサーバー代がかからないため、無料で配布されているものがあります(当社の23本はMITライセンス)。選び方は12章で扱います。
この章の出口
この章を終えたとき、手元に残っているべきものは次の3つです。
- 2年間の総額が1つの数字(6行すべてが埋まっている。0円の行も「なぜ0円か」が書いてある)
- 点検リスト8項目がすべて○(1つでも空欄なら、まだ社内に出さない)
- ライトかスタンダードか、その理由が1行で書ける状態
この3つが揃えば、金額は社内で議論できる形になっています。残っているのは、その金額を誰に払うか——外注するのか、自社でやるのか、混ぜるのかという判断です。
この章の点検リストを開く(自社の状態を○×で判定する用)
点検リスト:費用の見落としチェック(8項目)
社内に金額を出す前に付けてください。
| # | チェック項目 | ○の条件(合格の状態) |
|---|---|---|
| 1 | 契約ユーザー数を最小10ユーザーで計算したか | 10未満の人数で試算していない |
| 2 | ライト/スタンダードの選択理由を書けるか | プラグイン・API・帳票・社外公開の要否で判断済み |
| 3 | 有料プラグイン・外部サービスの月額を年額に直して足したか | 24ヶ月分の合計が出ている |
| 4 | 帳票(見積書・請求書のPDF)の要否を決めたか | 必要/不要が決まっている |
| 5 | 運用・保守の月額を24ヶ月分足したか | 2年総額が1つの数字になっている |
| 6 | 2業務目以降の単価を確認したか | 書面に単価がある |
| 7 | ゲストユーザー(社外)の要否と人数を決めたか | 要否と人数が決まっている |
| 8 | 解約とデータ持ち出しの条件を確認したか | CSVで全件出せることを確認済み |
合格ライン=8項目すべて。1つでも空欄なら、まだ社内に金額を出さない。
特に8番を飛ばさないでください。kintoneは標準機能でCSV書き出しができますが、プラグインや外部サービスに預けたデータが同じように出せるとは限りません。 出口を確認してから入ります。
この章に関係する記事
更新日 2018年10月20日
