株式会社COTSUBU

CHAPTER 03

kintoneの見積の読み方と開発会社の選び方

この章で分かること

  • 全部自社・全部外注・最初だけ外注の3つを、どの条件で選び分けるか
  • 見積書に「書かれていないもの」を見つける10項目と、社内に回してよい合格ライン
  • 相手を選ぶ8項目と、それを確かめるための5つの質問
この章の目次(6)
  1. 1先に決めるのは「3年後に誰が直しているか」
  2. 2料金体系は3つ。自社に合うのはどれか
  3. 3買うものが変われば、契約前に決めるものが変わる
  4. 4期間は、作る工程では決まらない
  5. 5よくある間違いを3つ
  6. 6この章の出口

外注するか自社でやるかは、作る作業をどちらが持つかの話ではありません。作り終わった後、項目を1つ足したいときに誰が触るかの話です。 ここを決めずに発注すると、安く作れても、3年間ずっと見積もりを取り続けることになります。kintoneを選んだ意味がなくなるのはこの瞬間です。 この章は、3つの持ち方から1つを選び、見積書の抜けを10項目で見抜き、会社を8項目で選び切るための章です。

この章で分かること

  • 全部自社・全部外注・最初だけ外注の3つを、どの条件で選び分けるか
  • 見積書に「書かれていないもの」を見つける10項目と、社内に回してよい合格ライン
  • 相手を選ぶ8項目と、それを確かめるための5つの質問

先に決めるのは「3年後に誰が直しているか」

kintoneは作った時点では完成しません。運用を始めて3ヶ月以内に、項目が足りない・一覧の並びを変えたい・集計の軸を足したいが必ず出ます。これは設計の失敗ではなく、正常な動きです。1章の問い3(やり方が変わり続ける業務に向く)で選んだ以上、変わるのは前提です。

したがって最初の判断は「いくらで作れるか」ではありません。

その改修を、3年後に誰がやっているか。

この答えで、持ち方が決まります。

持ち方 選ぶ条件 強み 弱み
全部自社 触れる人が社内に1人いて、その人に月数時間の余裕がある 改修が即日。費用が人件費だけ 最初の1つで設計を間違えると全部やり直し。その人が辞めると止まる
全部外注 社内に触れる人がおらず、当面作る予定もない 手が空く。品質が安定する 改修のたびに見積もり。3年後の総額が最大になる
最初だけ外注(推奨) 触れる人を今から育てる意思がある 1つ目で型を学び、2つ目から自分で作れる 引き継ぎを設計に入れていない会社に頼むと成立しない

中小企業の現実解は3つ目です。 理由は2章で見たとおりで、費用の総額を動かすのは構築費そのものではなく、2年目以降の改修だからです。1つ目のアプリを「教材として」作ってもらい、2つ目から自分で作る。この形なら、外注費は1回で止まります。

ただし、これは引き継ぎを歓迎する会社に頼んだ場合に限って成立します。囲い込む会社に頼むと、形だけ同じで結果は「全部外注」になります。見抜き方は後半の8項目です。

料金体系は3つ。自社に合うのはどれか

金額の相場は見積もり相場と料金体系3つに置いてあります。ここでは体系の選び方だけを扱います。

体系 何を買っているか 向く場面 危ない場面
定額パッケージ 決まった範囲の完成物 作るものが決まっている。予算を先に固定したい 要件が動くと追加見積もりが積み上がる
時間単価 作業時間 要件が読めない。調査や連携が多い 上限が読めない。中小企業の1つ目には向かない
月額(保守・継続) 直し続ける体制 業務が変わり続ける。改修が前提 中身(何時間・何が含まれるか)が書面にないと、質問窓口代になる

最初の1業務は、定額か月額のどちらかにしてください。 時間単価は、要件が固まらない段階では総額が読めず、社内の承認が通りません。

月額を選ぶ場合、確認するのは金額ではなく中身です。「月◯時間までの改修」「質問対応」「定例◯回」が書面にあるか。時間の記載がない月額は、実質的に質問窓口の料金です。参考までに当社の月5万円(最低12ヶ月)には、改善・追加開発が月2時間まで、質問対応、月1回の定例が含まれます。

買うものが変われば、契約前に決めるものが変わる

同じ「外注」でも、後から直せなくなるものは、買うものによって違います。当社の教科書では、それぞれ別の章で扱っています。

買うもの この章と共通する考え方 この章では扱わない、その領域で最も大事なこと 行き先
ホームページの制作 見積書の「書かれていないもの」を見つける 著作権・写真の使用範囲・フォント・各種IDを契約書に書くこと。 書面に無いと、公開後に自社でサイトを動かせない ホームページ制作の教科書4章
SEO対策 仕事を分解してから見積を読む 月額の中身を時間に割り戻すこと。 順位保証・成果報酬型をどう扱うか SEOの教科書11章
Web広告の運用 解約したあとに何が残るかで選ぶ アカウントの名義。 手数料20%が何に対する20%か Web広告運用の教科書12章

4つとも、金額の比較から始めない点は同じです。 違うのは、契約前に紙にしておくべき1点です。kintoneでは保守の担い手、制作では権利とID、SEOでは時間の使われ方、広告では名義。ここだけは、あとから交渉になりません。

期間は、作る工程では決まらない

規模ごとの目安は導入にかかる期間にあります。押さえるのは1点だけです。

時間がかかるのは「作る工程」ではなく「何を作るか決める工程」です。 kintoneはノーコードなので、決まってさえいればフィールドを並べるだけです。数ヶ月かかっている案件の原因は、ほぼ次の4つに入ります。

期間が延びる原因 対処
要件を全部決めてから作ろうとする 先に動くものを作り、触りながら直す
関係者が多すぎる 最初の1業務は1部署で完結させる(1章の点検リスト7番)
例外を全部入れようとする 8割のケースだけ載せ、例外は運用で回す
既存システムとの連携から始める 連携は後回し。まずkintone単体で動かす

発注側がスケジュールを短くする方法は、急かすことではなく、この4つを自分の側で潰しておくことです。相手を選ぶ前に、決裁者が誰で、最初の1業務が何かを確定させてください(4章で扱います)。

よくある間違いを3つ

「相見積もりを3社から取れば安くなる」 ——金額は下がっても、比較が成立していません。見積書の書式が3社とも違うからです。比べられる形になるのは、2章の6行と本章の10項目に置き直した後です。置き直す前の3社比較は、最も抜けの多い見積書が最安に見えるだけです。

「安く作ってくれる会社を選ぶ」 ——安さで選んだ結果、6番(自社で直せる状態で渡されるか)が×になる会社を引くと、2年目以降の改修で逆転します。判断すべきは初期費用ではなく3年後の総額です。逆に言えば、初期費用が0円でも、自社で直せない状態で渡されるなら高いです。当社の形も、この基準で見てください。

「まず要件定義書を作ってから発注する」 ——実物を見ないと、本当に必要な項目は分かりません。時間をかけて書いた要件定義書は、動くものを触った瞬間に半分が書き直しになります。初回で画面の形が出る会社を選び、そこで認識のずれを潰すほうが速く、安く、質も上がります。

この章の出口

この章を終えたとき、手元に残っているべきものは次の3つです。

  1. 持ち方が1つ決まっている(全部自社/全部外注/最初だけ外注)。決め手は「3年後に誰が直しているか」
  2. 見積書チェック10項目が8つ以上○、かつ1・2・5が○
  3. 選定チェック8項目が6つ以上○、かつ5・6が○

この3つが揃えば、誰に、どの体系で、いくらで頼むかが決まっています。決まっていないのは何から作るかです。ここを間違えると、良い会社に、正しい金額で、使われないアプリを作ってもらうことになります。

次の章へ:4章 kintoneを最初に入れる業務の選び方

この章の点検リストを開く(自社の状態を○×で判定する用)

点検リスト1:見積書チェック(10項目)

見積書は、書いてあることではなく、書いていないことを読みます。 次の10項目で、抜けている行を探してください。

# チェック項目 ○の条件(合格の状態)
1 単位が「アプリ数」ではなく「業務」で書かれているか 何の業務が回るようになるかが書いてある(「kintone構築一式」は×)
2 データ移行が入っているか 件数と作業範囲(表記ゆれ・重複の整理を誰がやるか)が明記
3 JavaScriptカスタマイズの有無が分かれているか 標準機能/プラグイン/JSが別項目になっている
4 打ち合わせ回数の上限と、超過時の費用があるか 回数と追加単価が書面にある
5 納品後の修正が何回・いつまで無料か 期限と回数が書面にある
6 納品物にアプリ設定書(項目一覧)が含まれるか 含まれる
7 kintoneライセンス費が別であることが明記されているか 別記されている(ほぼ確実に別)
8 2業務目以降の単価があるか 単価が書面にある
9 月額に含まれる中身(時間・回数)が書かれているか 「月◯時間まで」の形で書いてある
10 途中でやめたときの費用が書かれているか 書面にある

合格ライン=10項目中8つ以上。ただし1・2・5が×なら、点数に関係なく差し戻す。 この3つは、後から必ず追加費用になる場所です。特に2(データ移行)は、見積書で最も頻繁に抜け、実作業では最も時間を食う項目です。フィールドを50個並べる作業より、Excelの表記ゆれを直す作業のほうが長くかかります。

○が8つ以上になったら、2章の「2年間の総額」6行に置き直してください。複数社を比べるのは、同じ6行に置き直した後です。

点検リスト2:開発会社の選定チェック(8項目)

見積書が整っていても、相手が合わなければ結果は変わりません。価格ではなく、作った後に自分たちで直せる状態にしてくれるかで見ます。

# チェック項目 ○の条件(合格の状態)
1 初回の打ち合わせで動く画面が出たか 提案書と見積もりだけで終わっていない
2 「どんなアプリが欲しいか」ではなく「今どうやっているか」を聞いたか 業務の現状を聞かれた
3 標準機能でどこまでできるかを先に説明したか 最初からカスタマイズを提案していない
4 自社と同じ規模・同じ業種の事例を、業務名のレベルで説明できたか 「業務システム全般」ではなく具体名が出た
5 内製化を歓迎するか(研修・引き継ぎの提示があるか) 「操作をお教えします」と答えた
6 管理者権限が自社に残り、自社で直せる状態で渡されるか 明言された
7 誰が作るのか(担当者か再委託か)を確認したか 作る人が誰か分かっている
8 実物を見てから断れるか 断る前提が明示されている

合格ライン=8項目中6つ以上。ただし5と6が×の会社には発注しない。 この2つが×だと、作ったものを自社で触れず、改修のたびに見積もりが必要な状態が3年続きます。安く作れても総額では最も高くなります。

これを確かめる質問は5つで足ります。

質問 答えで分かること
標準機能でどこまでできますか カスタマイズを売りたいだけの会社かどうか
作った後、項目を1つ足したいときはどうすればいいですか 内製化への姿勢(「ご連絡ください」か「操作をお教えします」か)
何を何日で作った実績がありますか 実装力(業務名で答えられるか)
データ移行は含まれますか 見積書の抜け
3年後の総額はいくらですか 月額での回収構造

2つ目の質問が、この章で最も重要です。「ご連絡ください」と答える会社と「操作をお教えします」と答える会社では、3年後の総額が変わります。

なお、サイボウズの公式パートナー認定は判断材料の1つですが、認定の有無が実装力を保証するものではありません。認定を持たずに自治体や企業で構築している会社もあれば、認定を持っていて調査と計画で終わる会社もあります。実績は業務名のレベルで確認してください。詳しくはパートナーの選び方7つの基準へ。

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更新日 2018年10月20日