株式会社COTSUBU

CHAPTER 04

ホームページ制作会社の選び方と相見積

この章で分かること

  • 声をかける社数を3社以内にする理由と、比較が成立する条件
  • 価格以外に何を見るか(相手の形ごとの向き不向き・10項目の選定基準)
  • 契約書に書いてもらうこと(著作権・写真の使用範囲・フォント・ID・保守・途中解約)
この章の目次(9)
  1. 1声をかけるのは3社以内
  2. 2相手の形ごとの向き不向き
  3. 3価格以外に、何を見るか
  4. 4契約書に書いてもらうこと
  5. 5修正回数と保守契約の中身
  6. 6頼まない・今の会社に頼み続ける判断
  7. 7買うものが変われば、契約前に決めるものが変わる
  8. 8よくある間違いを5つ
  9. 9この章の出口

発注先選びは、金額の比較ではありません。比較が成立する条件をそろえる作業です。 全社に同じ資料(2章の5枚)を渡していなければ、並んだ見積書は同じものの値段ではありません。一番安く見える見積書は、たいてい一番抜けが多い見積書です。 そして契約で先に決めるのは、価格ではなく権利とIDです。ここが書面に無いと、公開後に自社でサイトを動かせず、次に頼む相手も選べなくなります。

この章で分かること

  • 声をかける社数を3社以内にする理由と、比較が成立する条件
  • 価格以外に何を見るか(相手の形ごとの向き不向き・10項目の選定基準)
  • 契約書に書いてもらうこと(著作権・写真の使用範囲・フォント・ID・保守・途中解約)

声をかけるのは3社以内

多く集めるほど良い、とは限りません。相見積もりは、集めた社数ではなく、比較が成立しているかどうかで価値が決まります。

社数 起きること
1社 金額が妥当か分からない。提案の幅も出ない
2〜3社 提案の違いが読める。やりとりの負担が現実的
5社以上 資料の説明と質問対応だけで数十時間。判断の精度は上がらない

3社以内にする理由は単純で、1社あたり「資料を渡す・質問に答える・提案を聞く・見積を読む」で合計5〜8時間かかるからです。5社に声をかけると、それだけで社内工数が1人日を大きく超えます。1章の3年総額でいう6行目(社内工数)がここで膨らみます。

そして最も大事な条件です。

全社に、同じ資料(2章の表1〜表5)を渡す。

渡さないと、A社は原稿込み・B社は原稿別途・C社は撮影込みの見積もりが並びます。並んでいるだけで、比べたことにはなりません。口頭で説明を変えるのも同じです。 同じPDFを渡してください。

もうひとつ、当社を含め断るのは普通のことだと書いておきます。初回相談と構成の提案を無料にしている会社は、断られる前提で提案しています。「提案してもらったから頼まないといけない」と考える必要はありません。

相手の形ごとの向き不向き

サイト制作を受ける相手にはいくつか形があります。どれが優れているかではなく、自社の案件に向いているかで選びます。

相手の形 向く案件 気をつける点
制作会社(数名〜) 10ページ前後の制作・リニューアル全般 担当者が誰か、実作業を再委託しないかを確認
大手制作会社・広告代理店 大規模サイト、全国規模の広告と一体の案件 中小規模だと管理費の比率が上がりやすい
フリーランス LP1枚・部分改修・継続的な更新 1人なので、病気や繁忙で止まるときの代替を決めておく
印刷会社・看板屋の付帯サービス 名刺・パンフレットと一括で揃えたいとき Web公開後の運用・計測まで見られるかを確認
ノーコードツールの構築代行 短期・小規模・自社更新が前提 ツールの月額と、ツールを乗り換えるときの移行可否
知人・社員の知り合い — 最も揉めます。 無償・値引きで受けると、修正も納期も言い出せない

この表は、行を選ぶための表ではなく、声をかけようとしている相手がどの行かを確かめるための表です。すでに候補が頭にある状態で開いて、その相手の行の右端だけを読んでください。向き不向きは案件の側で決まっているので、左の2列を眺めて回っても選択肢は絞れません。

規模で迷ったときは、自社の案件が1年後にどれだけ動くかで決めてください。公開したらほとんど触らない案件なら、窓口が1人の相手でも困りません。毎月更新が発生する案件では、担当者が抜けたときに代わりが立つかどうかが効いてきます。

いちばん下の行は経験からの忠告です。知人に頼むなら、他社と同じ契約書と金額で頼んでください。 金額を下げた関係は、途中で止まったときに誰も責任を負えません。

価格以外に、何を見るか

提案を聞くときに確認する10項目です。すべて、発注側がその場で確かめられます。

# 確認すること ○の状態
1 「どんなサイトが欲しいか」ではなく「今どうやって売っているか」を聞いたか 業務と商材の現状を聞かれた
2 原稿は誰が書くかを、聞く前に説明したか 取材するのか、発注側が書くのかが明言された
3 写真の扱いを説明したか 撮影の有無・費用・代替案(イラスト・図)が出た
4 公開後に自社で更新できる範囲を具体名で言えたか 「管理画面から全部」ではなく、項目名で答えた
5 自社と同じ規模・業種の事例を、ページ単位で説明できたか 「実績多数」ではなく具体名と中身が出た
6 実作業を誰がやるか(再委託の有無)を答えたか 作る人が分かっている
7 できないこと・勧めないことを言ったか 「全部できます」だけで終わっていない
8 公開後の数字を誰が見るかを説明したか 計測の設置と、見る担当が決まる形になっている
9 連絡の手段と返信の目安を決められるか 窓口と、返信までの日数が決まる
10 断れる前提で提案しているか 相見積もりであることを伝えても態度が変わらない

この10項目は、提案を聞きながらその場で○×を付ける表です。後から思い出して採点しようとすると、印象のよかった会社に甘くなります。手元に印刷して、聞きながら埋めてください。

点数で順位を付ける必要はありません。見るのは×が付いた項目の中身です。1番や5番の×は準備不足なので、次の面談までに直ります。7番と10番の×はその会社の姿勢なので、直りません。同じ1つの×でも、待てるものと待てないものがあります。

7番は軽く見えて重要です。 要望を全部「できます」と答える会社は、できない理由を公開直前まで言いません。当社も、検索されていない商材や価格が市場と合っていない場合は「サイトを直しても数字は動きません」と先に言います。ここを言わずに受注すると、公開後に必ず揉めます。

なお、見積書そのものの読み方は2章に書いた11行(ページ数・原稿・撮影・デザインの案数と修正回数・CMSの構築範囲・移行本数・転送設定・フォーム・公開後の修正・保守・サーバードメイン)で足ります。業務システムを含む発注では kintoneの教科書 3章 の見積書チェック10項目が同じ形で使えます。

契約書に書いてもらうこと

ここからが、この章の本体です。権利まわりは「一般的にこうなっている」で済ませず、契約書に書いてもらってください。

法律上どう扱われるかの解説は、この教科書ではしません(個別の事情で変わり、最終的には弁護士の領域です)。発注側がやることは1つで、下の6行が書面にあるかどうかを確かめることだけです。

この6行を契約前に確かめる理由は、どれも後から交渉にならないものだからです。価格や納期は、揉めても途中で話し合う余地があります。権利とIDは、必要になった時点ですでに相手が持っているので、こちらに交渉材料がありません。相手が応じなければ、それで終わりです。

しかも、必要になるのはたいてい数年後です。会社案内を作り直すとき、広告を出すとき、制作会社を替えるとき——契約した時点では想像していない場面で効いてきます。「いま使う予定がないから」は、書かない理由になりません。

決めること 書面に書いてもらう形 書いていないと起きること
制作物の著作権 「譲渡する」か「この範囲で使ってよい(利用許諾)」のどちらかを明記 自社サイトのデザインを、自社の資料やチラシに使えるか分からない
ソースコード・デザインデータ 納品物に含むか含まないかを明記 他社に引き継げず、同じ会社に頼み続けるしかない
管理画面・サーバー・ドメインのID 自社に渡ると明記 連絡が取れなくなった時点でサイトとメールを同時に失う
撮影した写真の使用範囲 使ってよい媒体(Web・印刷・SNS・広告)と期間を明記 サイトの写真を会社案内に流用できない/広告に使えない
使うフォント ライセンスの種類と、費用を誰が払い続けるかを明記 年額の支払いが止まった時点で表示が変わる
途中でやめるとき そこまでの費用と、渡されるものを明記 払ったのに何も残らない

順に補足します。

著作権は「譲渡」だけが正解ではありません。 利用許諾(この範囲で使ってよい、という許可)でも、自社が必要な使い方ができるなら問題ありません。大事なのは、「自社がやりたいことを書いて、それができるかを確認する」ことです。たとえば「サイトのデザインを会社案内のPDFにも使いたい」「実績写真を営業資料に載せたい」を先に伝えてください。

写真は、撮影した人(カメラマン)に権利があるのが普通です。 発注側が使える範囲は契約で決まります。よく抜けるのが「Webだけ」で契約していて、後から印刷物や広告に使えないと分かるパターンです。使う予定のある媒体を先に列挙して、契約書に入れてもらってください。 社員や顧客が写る場合は、被写体本人の許諾も別に必要です(6章で扱います)。

フォントには、無償のもの・買い切りのもの・年額のものがあります。 Webフォントは、多くが「1年ごと・表示回数ごと」の契約です。誰の名義で契約し、誰が払い続けるのかを決めておかないと、支払いが切れた日にサイトの見た目が変わります。制作会社の名義で契約している場合は、他社に移るときに引き継げるかも確認してください。

「自社サイトなのに、自社で触れない」状態が最悪です。 5行目(ID)と1行目(著作権)が×の会社には、金額に関係なく発注しないでください。初期費用が安くても、以後ずっと相手に依存します。

当社の形も書いておきます。管理画面のIDは発注側にお渡しし、ドメイン・サーバーの契約名義も発注側にしていただきます(当社が管理を代行する形)。名義が制作会社にあると、その会社と連絡が取れなくなった時点で、サイトとメールを同時に失うためです。

修正回数と保守契約の中身

揉める金額の話は、ほぼこの2つです。

決めること 合格の書き方 曖昧な書き方
デザインの案数 「トップページ◯案」 「ご納得いくまで」
修正の回数 「デザイン確定まで◯回。以降1回◯円」 「軽微な修正は無償」
公開後の無償修正 「公開後◯日以内の誤字・リンク修正は無償」 記載なし
保守の中身 「月◯時間まで」「月◯回まで」+含む作業の一覧 「保守費 月◯円」だけ
保守に含まれないこと 「デザイン変更・ページ追加は別途」 記載なし
連絡手段と返信の目安 「メール・チャット、営業日◯日以内」 記載なし

この表は、右の列から読んでください。見積書や契約書に右の書き方が出てきたら、真ん中の形に書き直してもらう、という使い方です。曖昧な書き方は、悪意で使われているとは限りません。多くは、決めずに済ませたまま慣例で書かれています。こちらから真ん中の形を示せば、たいていはその形に直してもらえます。

「ご納得いくまで修正」は、発注側に有利な条件ではありません。 回数が決まっていないと、制作側は時間の予算を持てないので、後半の対応が遅くなります。回数と単価が決まっているほうが、結果として早く終わります。

保守契約は必須ではありません。判断は2章の表3と同じで、更新する人が社内にいるかで決めます。

状態 判断
WordPressなどCMSが入っていて、社内に触れる人がいない 保守を頼む(更新を止めたCMSは改ざんの対象になる)
CMSが入っていて、社内に触れる人がいる 手順書を受け取って自社対応でもよい
CMSなしの固定ページだけ 保守は必須ではない。変更時にその都度頼む
公開後に数字を見て直したい 保守ではなく改善の契約(別物。11章)

当社の場合、保守・運用は月5万円〜です。社内で更新できる方がいる場合は、手順書だけ受け取って自社対応でも構いませんとお伝えしています(WordPress構築)。保守を「質問窓口代」にしないために、含まれる作業を一覧にしてもらってください。

頼まない・今の会社に頼み続ける判断

この章にも「頼まない」があります。

状況 頼まないで済ませる方法
文言や価格の差し替えだけ 管理画面から自社で直す。手順書をもらう
今の制作会社と連絡が取れて、対応にも不満が無い 乗り換えない。 移行の手間と学習コストが新規発注と同じだけかかる
不満が「返信が遅い」だけ 契約の連絡手段と返信の目安を決め直す。作り直しではない
社内に作れる人がいて、時間も確保できる 自社で作る。ただし公開後の更新担当まで決めてから
次にやることが決まっていない 発注しない。1章に戻る

2行目は、実際によくある判断です。 「なんとなく別の会社に聞いてみたい」で乗り換えると、過去の経緯を知らない相手に一から説明し直すことになります。不満の中身を先に1行で書いてください。書けなければ、乗り換える理由はまだありません。

買うものが変われば、契約前に決めるものが変わる

同じ「Webの発注」でも、後から直せなくなるものは、買うものによって違います。当社の教科書では、それぞれ別の章で扱っています。

買うもの この章と共通する考え方 この章では扱わない、その領域で最も大事なこと 行き先
SEO対策 同じ条件を渡さないと比較にならない 月額の中身を時間に割り戻すこと。 順位保証・成果報酬型をどう扱うか SEOの教科書11章
Web広告の運用 解約したあとに何が残るかで選ぶ アカウントの名義。 手数料20%が何に対する20%か Web広告運用の教科書12章
kintoneの構築 見積書の「書いていないこと」を読む 3年後に項目を1つ足すとき、誰が触るか。 ここを決めずに発注すると、ずっと見積を取り続けることになる kintoneの教科書3章

4つとも、金額の比較から始めない点は同じです。 違うのは、契約前に紙にしておくべき1点です。制作では権利とID、SEOでは時間の使われ方、広告では名義、kintoneでは保守の担い手。ここだけは、あとから交渉になりません。

よくある間違いを5つ

「相見積もりは多いほど良い」 ——5社に声をかけると、資料説明と質問対応で数十時間が消えます。しかも同じ資料を渡していなければ、比べたことにはなりません。直し方:3社以内にする。そのかわり、全社に同じPDF(2章の5枚)を渡し、同じ質問をする。

「一番安い見積もりを選ぶ」 ——安い見積書は、原稿・撮影・移行・転送設定・公開後の修正のどれかが入っていないことがほとんどです。差額は、後から追加見積もりか、自社の作業時間として出てきます。直し方:2章の11行を全社の見積書に照らし、抜けている行を「別途いくらか」で聞き直す。それから金額を比べる。

「権利の話は、揉めそうだから聞きにくい」 ——聞かれて嫌がる会社のほうが危険です。まともな会社は、聞かれる前に説明します。直し方:「自社の資料や広告にも使いたいので、使ってよい範囲を契約書に書いてください」と用途から伝える。権利の争いではなく、使い方の確認として話す。

「保守契約は入っておけば安心」 ——中身が書かれていない保守費は、何も起きない月には何も起きません。逆に、本当に直したいときに「それは範囲外です」となります。直し方:含まれる作業の一覧と、月◯時間・月◯回を書いてもらう。含まれないことも書いてもらう。

「知人に安く頼む」 ——値引きや無償で受けてもらうと、修正も納期も言い出せなくなります。途中で止まっても催促できず、結局作り直しになります。直し方:知人でも、他社と同じ契約書・同じ金額で頼む。どうしても難しければ、最初から頼まない。

この章の出口

この章を終えたとき、手元に残っているべきものは3つです。

  1. 同じ資料を渡した3社以内の見積書(2章の11行が揃っていて、比べられる状態)
  2. 契約書の6行(著作権・データ・ID・写真の使用範囲・フォント・途中解約)
  3. 修正回数と保守の中身(回数・単価・月◯時間・含まれない作業)

ここまでで「決める」区分は終わりです。何のために作り、何が載っていて誰が直し、何を作り、誰に頼むかが決まりました。 この4つが決まっていれば、以後の工程で揉めても、必ず判断の基準が書面にあります。

ここから先は「作る」区分です。最初にやるのは、デザインでも原稿でもなく、ページをどう並べ、どこへ人を運ぶかを決めることです。

次の章へ:5章 サイトの構成と導線の設計

この章の点検リストを開く(自社の状態を○×で判定する用)

点検リスト:発注先の選定と契約(10項目)

契約書に押印する前に、発注側だけで埋められます。

# チェック項目 ○の条件(合格の状態)
1 全社に同じ資料(2章の5枚)を渡した 渡した資料が同一である
2 声をかけた社数が3社以内 3社以内(増やすほど比較の手間が成果を上回る)
3 「原稿は誰が書くか」を全社に聞いた 回答が見積書に反映されている
4 公開後に自社で更新できる範囲を聞いた 更新できる項目が具体名で示された
5 管理画面・サーバー・ドメインのIDが自社に渡ると明記 書面にある
6 制作物の著作権と、使用範囲が書面にある 譲渡か利用許諾か、どちらかが明記されている
7 保守の中身が時間・回数で書かれている 「月◯時間まで」「月◯回」の形
8 修正が何回・いつまで無料か書かれている 期限と回数が書面にある
9 途中解約時の費用と、渡されるものが書かれている 書面にある
10 担当者が誰か(再委託の有無)を確認した 作る人が誰か分かっている

合格ライン=10項目中8つ以上。ただし 5・6 が×の会社には発注しない。

  • 5が×:公開後、パスワードを持っている会社にしかサイトを触れません。ドメインの名義が相手にあれば、サイトとメールを同時に失う可能性があります
  • 6が×:作ったものを自社の他の用途に使ってよいか分からず、他社に引き継ぐこともできません。初期費用が安くても、以後ずっと相手に依存します

この2つは、金額や提案の良し悪しで埋め合わせが利かない項目です。「口頭では大丈夫と言われた」は×です。書面にあるかどうかだけで判定してください。

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更新日 2018年10月20日