株式会社COTSUBU

CHAPTER 04

kintoneを最初に入れる業務の選び方

この章で分かること

  • 業務の棚卸しを、どの粒度で・どの列で書き出すか
  • 最初の1業務を決める点数表(6項目・18点満点)と、着手してよい点数
  • 点数に関係なく外す「やめておく条件」と、最初の2週間でどこまで作るか
この章の目次(10)
  1. 1棚卸しは、表1枚で足りる
  2. 2点数表:最初の1業務を選ぶ(6項目・18点満点)
  3. 3やめておく条件(点数に関係なく外す)
  4. 4全社展開から始めない理由
  5. 5実例:見本の3業種は、どこから作られているか
  6. 6最初の2週間で、どこまで作るか
  7. 7比較:どの業務を選ぶか(よくある候補)
  8. 8比較:選び方の2つのやり方
  9. 9よくある間違いを5つ
  10. 10この章の出口

最初の1業務は、一番困っている業務ではなく、一番点数の高い業務から選びます。 困りごとの大きさは人によって違いますが、頻度・人数・転記の回数・紙の量は数えられます。数えられるものだけで決めれば、社内で揉めません。 この章は、業務を書き出し、18点満点で点数を付け、11点以上の業務を1つだけ選び、2週間で動く画面を出すまでの章です。

この章で分かること

  • 業務の棚卸しを、どの粒度で・どの列で書き出すか
  • 最初の1業務を決める点数表(6項目・18点満点)と、着手してよい点数
  • 点数に関係なく外す「やめておく条件」と、最初の2週間でどこまで作るか

棚卸しは、表1枚で足りる

付箋を貼って業務フロー図を描く進め方は、時間の割に判断材料が増えません。必要なのは1行=1業務の表です。

粒度は「始まりと終わりを言える単位」にそろえます。「営業」は粗すぎ、「見積書の単価を入力する」は細かすぎます。「問い合わせを受けてから見積を出すまで」「現場から日報を受け取って集計するまで」——この大きさです。

書き出す列は次の8つだけです。業務名/頻度/触る人数/今の入れ物(Excel・紙・メール・人の頭)/転記の回数/紙の枚数/やり方が変わる頻度/困っていること(1行)。 業務名は動詞で終えると粒度がそろいます。残りの6列はそのまま次の点数表の材料になり、「困っていること」は効果を数える種になります。

1部署あたり10〜20行出れば十分です。全社で200行集める必要はありません。最初の1業務を選ぶだけなら、いま一番苦しい部署の1枚から始めます。

書けない列があったら、それは「誰も数えたことがない」という事実です。空欄のまま残し、点数は0点で付けます。推測で埋めないことが棚卸しの唯一のコツです。

点数表:最初の1業務を選ぶ(6項目・18点満点)

各項目を0〜3点で付けます。表に並べた業務すべてに付け、点数順に並べ替えます。

# 見る点 3点 2点 1点 0点
1 頻度 毎日発生する 週に数回 月1回 年に数回
2 触る人数 5人以上 3〜4人 2人 1人だけ
3 転記の回数 3回以上(同じ数字を3か所に書く) 2回 1回 転記なし
4 紙の量 毎回10枚以上/原本を持ち歩く 数枚ある 印刷はするが保管しない 紙なし
5 やり方の変わりやすさ 年に数回ルールが変わる 年1回は変わる 数年に一度 10年変わっていない
6 効果の数えやすさ 時間も件数も数えられる どちらか1つ数えられる 感覚では言えるが数えられない 何も数えられない

合格ライン

合計点 判断
14〜18点 迷わずここから始める
11〜13点 最初の1業務として適切。着手してよい
7〜10点 2番目以降に回す。今は選ばない
6点以下 kintoneにしない。Excelか紙のままでよい

1章の点検リストが「箱に入る形をしているか」を見るのに対し、この点数表は「入る業務のうち、どれを先にやるか」を決めるものです。1章で3点以下だった業務は、ここで18点でも対象外です。

項目6が0点の業務は、点数が高くても保留にしてください。効果を数えられない業務は、作ったあとに「で、よくなったの?」に答えられず、2業務目の予算が出ません。

やめておく条件(点数に関係なく外す)

次の5つに当たる業務は、合計点が何点でも最初の1業務にしません。

条件 なぜ外すか
部署をまたぐ 合意形成の時間が構築の時間を上回る。1部署で回して、動く画面を見せてから広げる
基幹システムの置き換え・全社勤怠・給与計算 1章の失格条件。計算そのものをkintoneに持たせると費用も期間も跳ね上がる
月1回以下しか発生しない 作っても慣れる前に次が来る。入力の手順を毎回忘れる
現場の担当者が「作る」に参加できない 情シスや管理職だけで決めた項目は、現場で埋まらない。入力する本人が画面を見ていない業務は外す
いま制度・ルールが変更の途中 仕様が動いている最中に作ると、完成前に作り直しになる。決まってから着手する

4つ目について、失敗の型は導入で失敗する5つのパターンに詳しくあります。入力した本人がその場で楽になるか——これが使われるかどうかの分かれ目です。

全社展開から始めない理由

「せっかく契約するのだから、全部門で一斉に」は、ほぼ必ず止まります。理由は3つ。要件が足し算で膨らむ(部署ごとの例外を全部拾うと項目が50を超え、誰も入力しません)、決める人が増える(合意を取りに回るうちに最初の熱が冷めます)、失敗したときに引き返せない(1業務なら作り直せますが、全社だと「kintoneはダメだった」で次がなくなります)。

正しい順番は、1業務 → 動く画面 → 隣の業務です。島根県海士町でも、最初に作ったのは電子決裁の1業務でした(自治体のkintone活用事例)。3つのアプリは同時にではなく、1つずつ増えています。

実例:見本の3業種は、どこから作られているか

当社が実際に作った3業種の見本スペース(不動産・建設・製造)は、いずれも6アプリで構成されています。どの業種でも、①番のアプリが他の全部の起点になっています。

業種 ①番のアプリ 起点になっているキー項目 ②以降がぶら下がる形
不動産 ① 物件台帳 物件コード(重複禁止・必須) 反響・顧客/内見予約/契約/原状回復が、すべて物件コードでつながる
建設 ① 案件台帳 案件番号(重複禁止・自動採番 C-FY2026-0001) 見積/発注・原価/工程/作業日報/安全・是正が、すべて案件番号でつながる
製造 ① 品目マスタ 品番(重複禁止・必須) 受注/在庫入出庫が品番でつながり、製造指示以降は受注番号・指示番号でつながる

ここから読み取れることが1つあります。最初の1業務に選ぶべきは、他の業務がぶら下がる「台帳」を持つ業務だということです。

物件台帳を先に作れば、次に内見予約を作るときは「物件を選ぶ」だけで物件名も住所も入ります(見本では内見予約の物件コードがルックアップで、物件名と住所を持ってきます)。逆に内見予約から作ると、物件名を手入力することになり、あとで台帳を作ったときに全件つなぎ直す作業が発生します。

つまり、点数表で同点の業務が2つ並んだときは、台帳側を先に選びます。

最初の2週間で、どこまで作るか

当社の構築は1業務1アプリまで最大1か月0円で、使うと判断いただいた段階から月5万円から・最低12ヶ月の継続に移ります。その最初の2週間の標準的な進め方は次のとおりです。

週 やること 出口(できていること)
1週目・前半 棚卸しの表を見ながら、対象業務の1レコードが何かを決める。今のExcelの列のうち、実際に埋まっている列だけを数える 項目一覧(案)が1枚。空の列は持ち込まない
1週目・後半 アプリを1つ作る。キーになる項目を決め、重複禁止を付ける。一覧を1つ作る 実データ10件を入れた画面が動いている
2週目・前半 現場の担当者3人に、その場で入力してもらう 「この項目は要らない」「これが足りない」が出る
2週目・後半 出た指摘を直す。入力チェック(重複・条件付き必須)を足す 明日から本番で使える状態

2週目前半の「その場で入力してもらう」を飛ばさないでください。 画面を見せて説明するのではなく、担当者に触ってもらって、手が止まった場所を直します。また、最初の2週間で作るのはアプリ1つです。見本の6アプリ構成は「最終的にこうなる」という絵であって、初日からこれを作るものではありません。

比較:どの業務を選ぶか(よくある候補)

候補 点数が出やすい理由 注意 最初の1業務に向くか
日報・作業報告 毎日発生・人数が多い・紙が多い 集計したい軸(現場名・作業者)を選択肢かマスタ参照にしないと、あとで集計できない ◎
問い合わせ・反響の記録 毎日発生・転記が多い・効果を件数で数えられる 1人しか触っていない会社では点数が伸びない ◎
見積の作成 転記が多く、紙も多い 帳票(PDF出力)が要るかを先に決める。要るなら2章の費用に入れる ○
顧客・取引先の台帳 他の業務がぶら下がる起点になる 単体では効果を数えにくい(項目6が0点になりやすい) ○(記録側とセットで)
勤怠・給与、在庫の引き当て 毎日発生し、困りごとも大きい 法定計算・計算エンジンが絡む。1章の失格条件 ×

比較:選び方の2つのやり方

「一番困っている業務」から選ぶ 「点数の高い業務」から選ぶ(本章)
決め方 声の大きい人・役職の高い人の実感 頻度・人数・転記・紙・変更・効果の6項目
かかる時間 会議1回で決まる(ように見える) 表を書く半日が要る
社内の納得 「なぜその部署が先なのか」が説明できない 点数表を見せれば説明が終わる
選ばれがちな業務 難しい業務・重い業務(基幹の置き換え等) 回数が多く、転記が多い業務
2業務目への続き方 1業務目が重すぎて続かない 点数順に次がすでに決まっている

困っている業務が点数も高いなら、それが答えです。食い違ったときに点数を優先するのがこの表の使い方です。

よくある間違いを5つ

1. 一番難しい業務から手を付ける 「これができればkintoneの価値が証明できる」という理屈で、基幹システムの置き換えを1業務目に選んでしまいます。 → 直し方:点数表の合計が高くても、やめておく条件に当たれば外します。難しい業務は、簡単な業務で社内の信用を作ってから3業務目以降に回します。

2. 今のExcelの列をそのまま項目にする 100列あるExcelをそのまま移すと、100項目のアプリができます。実際に埋まっているのは30列だけ、ということがほとんどです。 → 直し方:移行前に、直近3か月分のデータで列ごとの入力率を数えます。5割を切る列は持ち込まず、必要になったら足します。足すのは簡単、減らすのは大変です。

3. 効果を測る数字を決めずに始める 「業務効率化」を目的にすると、終わったときに成功したかどうか誰も判定できません。 → 直し方:着手前に数字を1つだけ決めます。「探す時間が月◯時間」「二重入力が週◯件」「漏れが月◯件」。1つで十分です。測り方も同時に決めます(誰が・いつ数えるか)。

4. 現場に見せるのが完成してから 完成品を見せると、現場は「もう決まったこと」として受け取り、本音を言いません。 → 直し方:半分できた状態で触らせます。10件だけデータを入れた画面で、実際の1件を登録してもらう。このとき出る「この項目、うちは使わない」が一番価値のある指摘です。

5. 管理者の時間を確保しないまま始める 作ったあと、直す人の時間が業務として認められていないと、3か月で更新が止まります。 → 直し方:着手の前に、社内で直す担当を1人決め、週に何時間使ってよいかを上長に認めてもらいます。時間の確保は15章の必須項目でもあります。

この章の出口

この章を終えたとき、手元にあるべきものは4つです。

  1. 棚卸しの表(10行以上、8列)
  2. 点数表の結果(全候補に点数が付き、順位が出ている)
  3. 選んだ1業務の名前が1つと、その点数
  4. 効果を測る数字1つと、その測り方

4つが揃ったら、次はその業務をどういう形のアプリにするかです。ここを間違えると、2週間で作ったものを3か月後に作り直すことになります。作り直しになる決定と、あとから直せる決定を分けて扱うのが次の章です。

次の章へ:5章 kintoneのアプリ設計|1レコードの決め方

この章の点検リストを開く(自社の状態を○×で判定する用)

点検リスト:最初の1業務の選定(8項目)

点数表で候補を絞ったあと、着手の直前にこの8項目を付けます。

# チェック項目 ○の条件
1 毎日または毎週、決まった人が触る業務か 月1回の業務ではない
2 今はExcelか紙で、転記が1回以上あるか 転記の回数を実際に数えた
3 1つの部署で完結するか 部署をまたぐ合意が要らない
4 触る人が3人以上いるか 1人専用ではない
5 効果を測る数字を1つ決めたか 時間・件数・金額のどれかで、測り方まで決めた
6 今の項目のうち、実際に埋まっている列を数えたか 入力率を数え、空の列を外した
7 現場の担当者が「作る」に参加しているか 入力する本人が画面を見る予定になっている
8 基幹システムの置き換え・全社勤怠を選んでいないか 選んでいない

合格ライン=8項目中7つ以上。ただし3と8は必須(×なら別の業務を選び直す)。

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更新日 2018年10月20日