CHAPTER 12
kintoneプラグインの選び方と入れ方
この章で分かること
- プラグインを入れる前に「入れない」を検討する順番と、標準・運用で代替できるかの見方
- 無料と有料が分かれる境目(ブラウザの中で終わるか、外部にサーバーが要るか)
- 外部通信・対応コース・モバイル・作者・更新・ライセンス・やめ方の点検10項目
この章の目次(9)
- 1まず「入れない」を検討する
- 2プラグインが何をしているか
- 3無料と有料は、どこで分かれるか
- 4入れる前に確かめること
- 5入れ方と、やめ方
- 6当社の無料プラグインについて(事実だけ)
- 7よくある間違いを5つ
- 8費用について
- 9この章の出口
プラグインは「機能を足す道具」ではありません。他人が書いたJavaScriptを、自社の業務アプリの中で動かし続ける約束です。 だから選ぶときに見るのは、できることではありません。どこと通信するか、誰が作っていて更新が続くか、やめるときどうなるかの3つです。できることだけを見て入れたプラグインは、3年後に「誰も設定内容を知らないのに、外せないもの」になります。 この章は、入れる前に確かめる10項目を決め、無料と有料の線をどこで引くかを判断できるようにするための章です。
この章で分かること
- プラグインを入れる前に「入れない」を検討する順番と、標準・運用で代替できるかの見方
- 無料と有料が分かれる境目(ブラウザの中で終わるか、外部にサーバーが要るか)
- 外部通信・対応コース・モバイル・作者・更新・ライセンス・やめ方の点検10項目
まず「入れない」を検討する
7章・8章・9章で、当社の無料プラグインを実名で何本も使いました。あれは標準機能でできることを全部つぶしたうえで、残ったものだけを埋めた結果です。順番を逆にしてはいけません。
順番は3段です。
- 標準機能でできないか。 必須・値の重複を禁止・最大最小・文字数・計算・ルックアップ・アクセス権・プロセス管理・条件通知・条件書式の範囲でできるなら、そこで終わりです(7章の表)
- 運用ルールで足りないか。 月1回の点検で拾える程度の間違いに、プラグインは要りません
- それでも残ったものだけ、プラグインかJavaScriptで埋める(書くなら13章)
この順番を守ると、1アプリに入るプラグインの数が自然に減ります。減ること自体が目的です。理由は後述しますが、プラグインは増えるほど、動かなくなったときの原因が分からなくなります。
プラグインが何をしているか
プラグインは、kintoneの画面で動くJavaScriptと設定画面を、zipに固めたものです。 cybozu.com 共通管理でzipをアップロードし、アプリごとに有効化して設定します。設定はアプリごとに保存されます。
ここから、4つの事実が出てきます(2026年9月時点)。
- 利用にはスタンダードコース以上が必要です。ライトコースではプラグインを使えません
- 動いているのはブラウザの中だけです。7章の「守る場所」でいう2段目にあたり、CSV取り込み・API・同時保存の経路では効きません(11章)
- PC画面用とモバイル画面用は、別々に作られています。 作り手が両方に対応させていなければ、スマホでは何も起きません
- あとから入れたプラグインは、すでに入っているデータを直しません。 重複チェックを入れても、昨日までに入った重複は残ります
4つ目は移行と直結します。プラグインは「これから先」だけを守ります。過去は11章の掃除でしか直りません。
無料と有料は、どこで分かれるか
値段の差は、機能の高級さではありません。kintoneのブラウザの中で終わるか、外にサーバーが要るかです。
| ブラウザの中で終わる | 外にサーバーが要る | |
|---|---|---|
| 例 | 入力チェック、条件付き必須、重複チェック、採番、行番号、表記の整形、表示の出し分け、条件書式、期限・残日数、日付や営業日の計算、一覧からの一括更新 | 社外向けのWebフォーム、社外への閲覧共有、帳票のPDF出力、外部データの参照(住所・地図・OCR・AI)、メール/SMSの配信 |
| なぜそうなるか | kintoneの公式APIだけで完結する。提供側に維持費がかからない | 提供側がサーバーを持ち、稼働と障害対応を続ける必要がある |
| 費用の形 | 無料のものがある | 月額。使い続ける限り払う |
| kintone以外の前提 | 無い | 提供元との契約、外部への通信の許可 |
ここに、もう1つだけ有料の理由があります。作りが大きく、継続的な保守とサポートが要るもの(Excel風の一括編集画面、ダッシュボードの拡張など)です。これは外部サーバーの有無ではなく、サポート窓口を買っていると考えたほうが正確です。
だから判断はこうなります。社外に出す・社外から入れてもらう・紙にするなら、有料を前提に費用へ入れる。社内で完結する入力の守りと見せ方は、無料で足りることが多い。 代表的な有料プラグインの名前と価格帯はおすすめプラグインの記事にまとめていますが、価格は変わるので必ず提供元の料金ページで確認してください。
有料を検討するときは、2章と同じ計算の型に戻します。月額を年額に直し、2年分を足す。 月6,000円のものを3つ入れれば、年216,000円、2年で432,000円です。ライセンス料とは別に、これが毎年続きます。「便利だから入れる」ではなく、その金額に見合う手作業が今あるかを先に数えてください。
入れる前に確かめること
外部と通信するか
これがいちばん重要で、いちばん確認されていない項目です。プラグインはJavaScriptなので、書こうと思えばどこへでもデータを送れます。顧客名簿を開いた瞬間に、その内容が提供元のサーバーへ行く作りにもできます。
確かめ方は3つあります。
- 提供元の説明に「外部と通信しない」と明記されているかを見る。書いていなければ、通信すると考えて問い合わせる
- ブラウザの開発者ツールのネットワークタブで、そのアプリを開いたときに自社ドメイン以外への通信が出ないかを見る
- 社内に読める人がいるなら、ソースを読む(プラグインのzipは展開すればJavaScriptが読めます)
自治体・医療・金融のように外部通信が制限された環境(LGWANなど)では、通信しないことが使える/使えないの分かれ目になります。10章のセキュリティ設計と同じ表に載せて、情報政策の担当者に確認してもらう項目です。
誰が作っていて、更新が続いているか
| 見るところ | ○の状態 |
|---|---|
| 作者・提供元 | 法人名または個人名が分かる。連絡先がある |
| 最終更新日 | 1〜2年以内に更新がある |
| サポート窓口 | 問い合わせ先がある(無料のものは無いこともある) |
| ライセンス | 商用利用・改変・再配布の可否が書いてある |
| ソースの公開 | 公開されていれば、提供が止まっても自社で直せる |
無料のプラグインに、サポートを期待してはいけません。 その代わりに見るのが「ソースが読めるか」「ライセンス上、自社で直してよいか」です。MITライセンスのように改変が認められていれば、提供が止まっても自社または別の会社が引き取れます。これが「提供が止まったときの代替手段」の現実的な答えです。
対応コース・モバイル・ゲスト
- スタンダードコース以上(前述)
- モバイル画面で動くか。 現場がスマホで入力する業務なら、実機で1件登録して確かめます。 「PCでは動いたのに、現場では何もチェックされていなかった」は実際に起きます
- ゲストスペースのアプリで使えるか。 10章で社外に見せる設計をしたなら、そこで使えるかは別に確認が要ります
増やしすぎると何が起きるか
| 起きること | なぜ |
|---|---|
| 保存が遅くなる | 保存前に動く処理が、本数だけ積み上がる |
| どれが原因か分からなくなる | エラーが出ても、どのプラグインの仕業か切り分けられない |
| 順番で挙動が変わる | 同じ保存イベントを複数が取り合い、読み込み順で結果が変わる |
| 同じことを二重にやる | 整形と形式チェックが噛み合わず、保存できなくなる |
| 引き継げなくなる | 設定内容を知っている人が辞めると、外すことも直すこともできない |
目安は1アプリ3〜5本までです。それを超えるなら、アプリの設計が複雑すぎる可能性を先に疑ってください(5章)。入れる前と後で、保存・一覧表示・スマホ表示の3つを必ず試します。 増やすときは1本ずつ入れて、そのつど試すのが唯一の切り分け方法です。
入れ方と、やめ方
入れる手順
- zipをダウンロードし、先に開発用の別アプリかコピーしたアプリで試す(15章の「戻せない変更」と同じ考え方)
- cybozu.com 共通管理 →「プラグイン」でzipを読み込む
- 対象アプリの設定でプラグインを追加し、設定を入れる
- 「アプリを更新」を押すまで現場には反映されません。 その手前で、保存・一覧・スマホを試す
- 設定内容を引き継ぎ資料に書く(プラグイン名・バージョン・設定した条件)。15章の引き継ぎ5点セットの1つです
やめる手順と、やめたときに何が残るか
| もの | 外したあと |
|---|---|
| レコードに書き込まれた値(採番した番号・整形された文字・計算結果) | 残る |
| チェック(重複・必須・形式・範囲) | 効かなくなる。以後は素通りする |
| 画面の見た目(色分け・表示の出し分け) | 元に戻る。隠していた項目が全員に見えるようになる |
| プラグインの設定内容 | 消える。同じものを入れ直しても、設定し直しになる |
3行目が事故になります。表示の出し分けで隠していた項目は、プラグインを外した瞬間に見えます。 10章のとおり、隠す目的が「秘匿」ならフィールドのアクセス権で守っていなければなりません。4行目のために、設定内容は外す前に控える(できればスクリーンショット)のが実務の手順です。
当社の無料プラグインについて(事実だけ)
この教科書で実名で引いているものは、次の形です。判断の材料として、上の点検項目に当てはめた事実だけを書きます。
| 項目 | 事実 |
|---|---|
| 本数 | 23本(2026年9月時点。一覧) |
| 費用 | 無料・会員登録不要 |
| ライセンス | MIT(商用可・改変可・再配布可。全文) |
| 外部通信 | 無し。 kintoneの公式JavaScript API・REST APIだけを使い、画面のHTMLには触らない作り |
| 対応画面 | PC画面のみ(モバイル画面には未対応) |
| バージョン | すべて 0.1.0 |
| サポート | 保証は無し。問い合わせは受け付ける |
PC画面のみであることは、現場がスマホで入力する業務では採用できない理由になります。それが正しい判断です。プラグインは、自社のものであれ他社のものであれ、上の点検に通ったものだけを入れるという順番が変わってはいけません。
よくある間違いを5つ
1. 機能の一覧だけを見て入れる——外部通信の有無を確認しないまま、顧客名簿のアプリに入れてしまう。あとから情報政策の担当に聞かれて、答えられません。 → 直し方:入れる前に通信の有無を文書で確認し、開発者ツールのネットワークタブで実際に見ます。10章のセキュリティの表に、プラグイン名と通信の有無を並べて載せます。
2. 標準でできることをプラグインでやる——1項目の重複禁止をプラグインで掛けてしまい、CSV取り込みで素通りします。 → 直し方:1項目の重複は標準の「値の重複を禁止する」に寄せます(7章)。標準はサーバー側なので、どの経路でも効きます。
3. プラグインを入れたから守られたと思う——CSVとAPIでは効きません。移行のときに、まとめて破られます。 → 直し方:11章の点検10「取り込みで埋まらない項目の扱い」を決めます。プラグインは「これから先」だけを守る道具だと理解します。
4. 1アプリに10本入れる——保存が重くなり、エラーの原因を誰も切り分けられなくなります。 → 直し方:1アプリ3〜5本まで。 1本ずつ入れて、そのつど保存・一覧・スマホを試します。超えるなら、アプリの分け方(5章・6章)を疑います。
5. 設定内容をどこにも書かない——担当者が辞めた瞬間に、外すことも直すこともできない箱になります。 → 直し方:プラグイン名・バージョン・設定した条件を引き継ぎ資料に書く(15章)。設定を変えたらそのつど更新します。
費用について
プラグインの利用にはスタンダードコース以上が必要です(ライトコースでは使えません)。有料プラグインの月額は提供元との契約で、年額に直して2章の総額に足します(2章の点検リスト3)。当社の無料プラグイン23本は、無料・会員登録不要・MITライセンス・外部と通信しません。
kintoneのライセンス料はスタンダードコース 1ユーザー月1,800円(税抜)・最小10ユーザーでサイボウズ社とのご契約、当社の構築は1業務1アプリまで最大1か月0円、使うと決めていただいた段階で月5万円から(最低12ヶ月)です。
この章の出口
残っているべきものは3つ。アプリごとに入れているプラグインの一覧(名前・バージョン・設定内容・外部通信の有無)、有料のものの年額を足した金額、そして点検リストで2・3 が○になっていること。この一覧は、10章のセキュリティの説明資料にも、15章の引き継ぎ資料にも、そのまま使えます。
ここまでで、標準機能とプラグインの範囲は使い切りました。それでも残る要望があります。「基幹システムと自動でつなぎたい」「この画面だけ独自に作りたい」。 ここから先はコードを書く話になり、判断の基準がまったく変わります。書けるかどうかではなく、書いた人が辞めたあと誰が保守するかが先に来ます。
この章の点検リストを開く(自社の状態を○×で判定する用)
点検リスト:プラグイン導入の判断(10項目)
プラグイン1本ごとに付けます。 無料でも有料でも、自社製でも他社製でも同じです。
| # | チェック項目 | ○の条件 |
|---|---|---|
| 1 | 標準機能・運用ルールで代替できないか検討したか | した(できないと確認済み) |
| 2 | 外部サーバーと通信するかを確認したか | 確認済み(説明の明記+ネットワークタブで確認) |
| 3 | 個人情報・機微な情報が外部に出ないことを確認したか | 確認済み(閉域網ならここが採否を決める) |
| 4 | 作者・提供元が分かり、更新が続いているか | 名前・連絡先・最終更新日を確認した |
| 5 | ライセンスと利用条件を確認したか | 商用可・改変可の可否を確認した |
| 6 | 対応コース(スタンダード以上)とゲストスペースでの可否を確認したか | 確認済み |
| 7 | スマホ画面で動くかを実機で確認したか | 確認済み(PCのみのものを把握している) |
| 8 | 有料なら月額を年額に直し、2年分を費用に入れたか | 入れた |
| 9 | 1アプリの本数が多すぎないか、競合しないかを試したか | 3〜5本以内。保存・一覧・スマホを試した |
| 10 | 外したときに何が残り何が消えるかを確認し、提供が止まったときの代替を考えたか | 確認済み(設定内容を控えてある) |
合格ライン=10項目すべて。2・3 は必須(自治体・医療・金融は、ここが×なら採用できません)。
7は、現場がスマホを使う業務でだけ必須です。使わない業務では「―」で構いませんが、「確認していない」と「使わない」を混同しないでください。 10が×のまま入れたプラグインは、5年後に外せません。
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更新日 2018年10月20日
