株式会社COTSUBU

CHAPTER 11

Excelからkintoneへの移行手順

この章で分かること

  • 移すデータと移さないデータの線引き、そして「10件だけ先に入れる」を掃除より前に置く理由
  • 横持ちのExcelをkintoneの形に直す判断と、取り込みでプラグインが効かないことへの備え
  • CSVのエラー原因の一覧、並行運用の終わらせ方、移行前の点検12項目
この章の目次(12)
  1. 1移行の順番
  2. 2移さないものを先に決める
  3. 3表の形を直す
  4. 4Excel側を掃除する
  5. 5取り込みでは、プラグインが効かない
  6. 6CSVを作って取り込む
  7. 7よくあるエラーと原因
  8. 8取り込んだら、必ず突き合わせる
  9. 9並行運用の終わらせ方
  10. 10よくある間違いを5つ
  11. 11費用について
  12. 12この章の出口

移行で時間を食うのは、kintoneの操作ではありません。Excel側の掃除です。CSVの取り込みそのものは数分で終わります。 そして取り込みは、7章で書いたとおり画面のチェックが1つも効かない経路です。条件付き必須も、重複チェックも、整形も、採番も、CSVからは一切動きません。汚れたまま数千件を入れれば、10章までに作った設計は初日に破られます。 この章は、移さないものを決め、表の形を直し、掃除し、取り込む順番と後始末までを決め切るための章です。

この章で分かること

  • 移すデータと移さないデータの線引き、そして「10件だけ先に入れる」を掃除より前に置く理由
  • 横持ちのExcelをkintoneの形に直す判断と、取り込みでプラグインが効かないことへの備え
  • CSVのエラー原因の一覧、並行運用の終わらせ方、移行前の点検12項目

移行の順番

順 やること 目安
1 移すデータと、移さないデータを決める 半日
2 表の形をkintoneの形に直す(設計) 1〜2日
3 アプリを作り、10件だけ手で入れて現場に触ってもらう 2〜3日
4 Excel側を掃除する 3〜7日
5 マスタ → 記録の順にCSVで取り込む 1日
6 件数と合計を突き合わせる 半日
7 1か月並行運用し、Excelを読み取り専用にする 1か月

3を4より前に置いているのが要点です。 全件を掃除してから取り込むと、現場の指摘で項目を作り直したときに、掃除をやり直すことになります。10件で形を確かめてから、本格的な掃除に入ります。

全体の日数は、Excelのファイル数でおおよそ読めます。

移すExcelのファイル数 全体の目安 内訳の目安
1〜3ファイル 1〜2週間 掃除3日+運用テストと並行運用
3〜10ファイル 2〜4週間 掃除5〜7日+運用テストと並行運用1〜2週間
10ファイル以上 1〜3か月 掃除だけで数週間。まず範囲を削る相談から

どの規模でも、いちばん長いのは4(掃除)です。 フィールドを50個並べる作業より、Excelの表記ゆれを直す作業のほうが長くかかります(3章の見積チェック2番)。3行目に当たるなら、日数を延ばすより「移さないもの」を増やすほうが、必ず早く終わります。

3で出る指摘は、ほぼ「この項目は要らない」「この順番で入力しない」「これは選択肢にしてほしい」の3つです。最後の1つは、移行の前にやると掃除が軽くなります。 自由入力のまま取り込んだ値は、あとから選択肢に直そうとしても、選択肢に無い値が残って直せません。

移さないものを先に決める

全部移す必要はありません。移さないと決めることが、移行でいちばん効く一手です。

移さないもの 代わりにどうするか
3年以上前の完了済みデータ Excelのままアーカイブとして残す
集計用のシート(ピボット・グラフ) kintoneのグラフで作り直す(8章)
数式だけが入った作業列 値にして、必要なものだけ移す
誰も使っていない表・一度きりの試算メモ 移した瞬間に負債になる
個人が自分用に作ったメモ 全社アプリに入れても、他人が触れず放置される
動いているVBAが前提の表 VBAを直せる人が社内にいるなら、急がない
人事・給与の個人情報 10章の権限設計を先に決めてから入れる
色で意味を持たせているセル 先に「区分」の列に起こしてから移す

最後の「色」は毎回出てきます。CSVに色は残りません。赤=至急、黄=要確認という意味を、人間の頭からデータに移す作業が必要です。列として書き出しておけば、kintone側では条件書式で付け直せます(8章)。

迷ったときの基準は1つ。「その行を、これから検索するか・数えるか」。 どちらもしないなら移しません。

表の形を直す

Excelの「読みやすい形」と、kintoneの「集計できる形」は違います。ここが移行の本体です。

横持ちを縦持ちにする

顧客名 | 4月売上 | 5月売上 | 6月売上     ← 横持ち(Excelでよくある形)
A商事  |  120000 |   95000 |  130000

顧客名 | 年月     | 売上         ← 縦持ち(kintoneで持つべき形)
A商事  | 2026-04 | 120000
A商事  | 2026-05 |  95000
A商事  | 2026-06 | 130000

判定は機械的にできます。列の名前に日付・月・担当者名などのデータが入っていたら、縦持ちに直す対象です。 横持ちのまま移すと、月が変わるたびに項目を足すことになります。

マスタと記録を分ける

1枚のシートに「相手の情報」と「その相手とのやり取り」が混ざっていたら、2つのアプリに分けます(6章)。

元のシート 分けたあと
顧客名・住所・電話・最終訪問日・訪問メモ 顧客マスタ + 訪問記録
案件名・受注額・発注先1・金額1・発注先2・金額2… 案件台帳 + 発注(1発注=1レコード)

2つめのように「〜1」「〜2」「〜3」と番号が振られた列が並んでいたら、確実に分ける合図です。

分けた先をサブテーブルにするか別アプリにするかは、6章の判断がそのまま使えます。横断して集計したい・一覧の列に出したい・行が何十行にもなるなら別アプリ、親レコードの中でしか意味を持たない明細行ならサブテーブルです。

キーが無いなら、移行のときに作る

kintoneの形に直すとき、Excelには無かった「キー」を1本作ることがほとんどです。見本の不動産 ① 物件台帳 は 物件コード を必須・重複禁止(サーバー側)にしています。元のExcelに物件コードが無ければ、移行の作業として P-0001 から振ります。

キーを作らずに 物件名 だけで運用すると、7章で見たとおり「サンプルハイツ大井町」の101号室と203号室が区別できません。キーを作るのは移行の前です。あとでは、既存レコードに手で振ることになります。

Excel側を掃除する

掃除する対象 やること kintone側で以後防ぐ
結合セル 解除して値を埋める ―
空白行・空白列・小計行 削除する ―
前後の空白 TRIM 入力値の整形
全角・半角の混在 ASC / JIS でそろえる 入力値の整形
「(株)」「株式会社」「㈱」 置換でそろえる ドロップダウン化、またはマスタ参照
日付の表記ゆれ YYYY-MM-DD に統一 日付フィールドにする
重複行 削除、または統合 重複チェック Pro
メール・電話の形式違い 直す 入力形式チェック
マイナスや0が入るべきでない金額 直す 範囲チェック
改行が入ったセル 残してよい(CSVで引用符に入る) ―

表記ゆれの見つけ方は決まっています。会社名の列をピボットテーブルにかけ、件数が1件しかない行を上から見る。1件しかない会社名は、たいてい別の会社名の打ち間違いです。

大事なのは、掃除とセットで、kintone側に「以後こうならない仕組み」を入れることです。3列目が空欄のまま掃除だけすると、半年で元に戻ります。7章の「守る場所」は、移行のタイミングで一度に入れてしまうのがいちばん安上がりです。

取り込みでは、プラグインが効かない

7章の表の2行目を、移行の言葉に直すとこうなります。CSV取り込みは画面を通らないので、プラグインが自動で入れてくれる値は入りません。

見本の不動産で、実際に何が起きるかを並べます。

項目 ふだん埋めているもの CSV取り込みでは
④ 契約 の 契約番号 自動採番(K-FY2026-0001) 採番されない。 CSVに番号列を用意する
⑤ 賃貸管理 の 入居日_和暦 日付計算 空のまま。 取り込み後に一括で入れ直す
④ 契約 の 更新までの残日数 期限・残日数 空のまま(次に開いて保存すれば入る)
会社名の全角半角 入力値の整形 整形されない。 Excel側で揃える
物件名+部屋番号 の重複 重複チェック Pro 止まらない。 Excel側で重複を消す
⑥ 原状回復・修繕 の 見積合計 計算フィールド CSVに入れない。 取り込み後に自動で計算される

対処は2つです。CSVに自分で値を入れておくか、取り込んでから一括更新で埋める。「プラグインが入っているから大丈夫」は、移行では成立しません。

最後の行は逆向きの注意です。計算フィールドは取り込めません。 列に入れても無視されるので外します。レコード番号、作成者・更新者、作成日時・更新日時も、原則そのままでは持ち込めません。「Excelの更新日時をそのまま残したい」は叶わないと先に決めておくと、揉めません。

CSVを作って取り込む

  • 文字コードはUTF-8。 Excelの「CSV UTF-8(コンマ区切り)」を選びます。CSV(コンマ区切り) はShift-JISなので文字化けします
  • 1行目は項目名。 kintone側のフィールド名と同じにすると、割り当てが自動で当たります
  • 日付は YYYY-MM-DD、日時は YYYY-MM-DDTHH:mm:ss にそろえます
  • 先頭が0の番号(電話番号・郵便番号・品番)は、Excelが数値にしていないか確認し、文字列にします
  • 1回の取り込みには件数の上限があります(2026年9月時点で10,000件)。超えるならファイルを分割するか、APIで入れます(13章)

取り込む順番は、マスタが先

  1. マスタアプリ(物件台帳・顧客マスタ・品目マスタ・案件台帳)
  2. 記録アプリ(内見予約・契約・受注・発注・日報)

逆にすると、ルックアップの参照先が見つからず空になります。見本の ② 反響・顧客 の 物件コード は ① 物件台帳 を引くので、①が空のまま②を入れれば、全件が空で入ります。エラーにならず、静かに空で入るのがいちばん厄介です。取り込み後に空欄の件数を必ず数えてください。

サブテーブルを含むCSVの形

明細を持つアプリは、同じ親の行を明細の数だけ繰り返します。 親側の項目も全行に入れます。

見積番号,得意先,工事項目,数量,単価
Q-0001,A商事,クロス張替,10,1200
Q-0001,A商事,クリーニング,1,30000
Q-0002,B工業,鍵交換,2,15000

見積番号が同じ行が、1レコードのサブテーブルにまとまります。見本の ⑥ 原状回復・修繕 で言えば 工事明細 がこれで、金額・見積合計(どちらも計算)は列に入れません。No(行番号)も入れず、取り込み後にテーブル行番号で振ります。分割するときは、同じ親の行が境目で切れないよう注意してください。

よくあるエラーと原因

症状 原因 対処
文字化けする Shift-JISで保存している UTF-8で保存し直す
日付が取り込めない 2026/9/1 や 9月1日 になっている YYYY-MM-DD に統一
数値が取り込めない カンマ区切りや「円」が入っている 数字だけにする
先頭の0が消えた Excelが数値として扱っている 列を文字列にしてから保存
ルックアップが空になる マスタ側にキーが無い/表記がゆれている マスタを先に入れ、キーの空白・全角半角をそろえる
ドロップダウンに入らない 選択肢に無い値がある 選択肢を足すか、値を直す
ユーザー選択に入らない 表示名ではなくログイン名が必要 ログイン名の列を用意する
重複禁止でエラー 元データに重複がある 取り込む前に重複を消す
重複禁止をONにできない すでに重複データが入っている 掃除してから設定する(7章)
列がずれる 結合セルを解除していない 解除して値を埋める
計算の列が入らない 計算フィールドは取り込めない 列から外す

取り込んだら、必ず突き合わせる

確認すること やり方
件数が合っているか Excelの行数と、kintoneのレコード数を比べる
金額の合計が合っているか Excelの合計と、kintoneのグラフの合計を比べる
必須の項目に空欄がないか 一覧の絞り込みで「〇〇 が 空」を確認
ルックアップが空でないか キーの項目で「空」を絞り込む

金額の合計を突き合わせると、先頭0で落ちた品番や、文字列として入った金額が見つかります。 件数だけ合っていて中身が壊れている、がいちばん多い失敗です。失敗したら全件を消してやり直します。やり直せるのは本番運用を始める前だけです。

並行運用の終わらせ方

並行運用は1か月を上限にします。それ以上続けると二重入力が当たり前になり、どちらも中途半端になります。「使われなくなった」と言われるアプリの多くは、ここで止まったものです。終わらせ方は4手です。

  1. kintoneだけで1週間回す日を、先に決める(始める前にカレンダーに入れる)
  2. 問題が出なければ、Excelファイルを読み取り専用にする
  3. ファイル名の先頭に _アーカイブ_ を付け、別フォルダに移す
  4. 削除はしない

肝は1です。終了日を決めずに始めた並行運用は、終わりません。 移行の計画書に、取り込み日と同じ重さで「Excelを閉じる日」を書いてください。

よくある間違いを5つ

1. 全部移そうとする——10年分を入れたせいで掃除が2か月に伸び、現場は待たされて熱が冷めます。 → 直し方:「これから検索するか・数えるか」で線を引き、3年以上前の完了データは移さない。残すのはExcelのアーカイブで十分です。

2. 掃除してから10件を触らせる——項目を作り直すたびに、掃除をやり直すことになります。 → 直し方:順番を入れ替えます。10件で形を確定させてから、全件を掃除します。自由入力を選択肢に変えるのも、掃除の前に決めます。

3. Excelのシートを、そのまま1枚=1アプリにする——横持ちのまま入り、月が変わるたびに項目が増えます。マスタと記録も混ざったままになります。 → 直し方:列名にデータ(月・担当者名)が入っていたら縦持ちに、「〜1」「〜2」が並んでいたら別アプリに分けます(6章)。

4. プラグインが入っているから大丈夫だと思う——採番も整形も重複チェックもCSVでは効かず、番号が空・表記ゆれあり・重複ありの状態で数千件が入ります。 → 直し方:取り込み前に「この項目は誰が埋めるか」をCSVの列ごとに決めます。埋まらない項目は、CSVに値を入れるか、一括更新で後から入れます。

5. 並行運用の終了日を決めない——半年たってもExcelが本番のまま、kintoneは誰も見ない箱になります。 → 直し方:始める前に終了日を決め、その日にExcelを読み取り専用にします。片方を止めるまでが移行です。

費用について

CSVの取り込み・書き出しは標準機能で追加費用なしです。掃除の受け皿として使うもの(入力値の整形・重複チェック Pro・入力形式チェック・範囲チェック・一括更新・テーブル行番号・日付計算・期限・残日数)は当社の無料プラグインで、無料・会員登録不要・外部と通信しません(プラグインの利用はスタンダードコース以上)。

移行の相談は、1業務1アプリまで最大1か月0円の構築の中で行います。使うと決めていただいた段階で月5万円から(最低12ヶ月)です。kintoneのライセンス料はスタンダードコース 1ユーザー月1,800円(税抜)・最小10ユーザーで、サイボウズ社とのご契約です。

この章の出口

残っているべきものは5つ。移さないデータの一覧、掃除を終えたCSV(UTF-8・日付形式統一・キー入り)、マスタ → 記録の取り込み順、取り込みで埋まらない項目の扱いを書いた列ごとのメモ、並行運用の終了日。そして点検リストが12項目すべて○であること。

ここまでで、中身の入ったアプリが動き出しました。この章で何度も出てきたのが、標準では足りない部分を埋める道具——プラグインです。7章から11章まで、当社の無料プラグインを実名で使ってきましたが、それを「どう選ぶか」の基準はまだ書いていません。 他社の有料プラグインも含めて、入れる前に何を確かめるのかを決めます。

次の章へ:12章 kintoneプラグインの選び方と入れ方

この章の点検リストを開く(自社の状態を○×で判定する用)

点検リスト:移行前チェック(12項目)

取り込みを始める前に全部付けます。 途中で気づくと、消してやり直すしかなくなります。

# チェック項目 ○の条件
1 移行する範囲(何年分)を決めたか 決めた
2 移さないデータの一覧を作ったか 作った(色・集計シート・作業列・個人メモを含む)
3 結合セル・小計行・空行をすべて外したか 外した
4 1行=1レコードの形になっているか(横持ちを縦持ちに直したか) なっている
5 日付が YYYY-MM-DD にそろっているか そろっている
6 全角半角・前後の空白・法人格の表記ゆれをそろえたか そろえた
7 重複行を事前に除いたか 除いた
8 キーの項目が全レコードに入っているか(無ければ採番したか) 入っている
9 マスタ → 記録の順に取り込む段取りになっているか なっている
10 取り込みで埋まらない項目(採番・整形・和暦・計算)の扱いを決めたか 列ごとに決めた
11 取り込み後の件数照合・合計照合をする段取りがあるか ある
12 並行運用の終了日を決めたか カレンダーに入っている(1か月以内)

合格ライン=12項目すべて。1つでも×なら取り込みを始めない。

とくに10と12は、他の章とつながっています。10が×なら7章の守りが移行で素通りされ、12が×なら15章の定着が始まりません。

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更新日 2018年10月20日