営業会議、感覚で話していませんか?
「今月の調子はどう?」「まあまあです」——不動産会社の営業会議でよくある光景です。具体的な数字に基づかない会話では、正しい判断ができません。
営業ダッシュボードは、日々の営業活動を見える形にする仕組みです。PC画面やモニターに主要なKPIを出しておけば、チーム全体の状況がすぐに分かります。
ただし、見た人がその場で何かを決められない画面は、どれだけ整えても見られなくなります。 数字を並べる前に、「誰が・いつ見て・何を決めるか」を1行で書いてください。
→ 一覧・色・グラフの使い分けと、見える化の組み立て方はkintoneの教科書 8章 見える化にまとめています。この記事では不動産の数字に絞ります。
不動産会社が追うべきKPI
目標値は、他社の平均ではなく自社の過去の実績から決めます。下の表の「決めること」が言えないKPIは、ダッシュボードに出しません。
集客フェーズ
| KPI | 計算方法 | 見て決めること |
|---|---|---|
| 反響数 | ポータル+自社サイト+電話+来店 | 広告を増やすか減らすか |
| チャネル別反響数 | 各チャネルからの反響を分類 | どの媒体に予算を寄せるか |
| 反響単価 | 広告費 ÷ 反響数 | 媒体ごとの出稿を続けるか |
営業フェーズ
| KPI | 計算方法 | 見て決めること |
|---|---|---|
| 初回連絡率 | 初回連絡数 ÷ 反響数 | 担当の振り分けを変えるか |
| 初回連絡時間 | 反響受領〜初回連絡の時間 | 受付の体制を変えるか |
| アポ取得率 | 内見アポ数 ÷ 反響数 | 初回連絡の話し方を見直すか |
| 来店率 | 来店数 ÷ アポ数 | 前日の連絡を見直すか |
| 成約率 | 成約数 ÷ 来店数 | 物件の紹介の仕方を見直すか |
収益フェーズ
| KPI | 計算方法 | 見て決めること |
|---|---|---|
| 成約件数 | 月間の成約件数 | 会社の目標に届くか |
| 売上 | 仲介手数料等の合計 | 会社の目標に応じて |
| 顧客単価 | 売上 ÷ 成約件数 | 物件種別に応じて |
| 成約単価(CPA) | 総広告費 ÷ 成約件数 | 媒体ごとの費用対効果 |
チャネル別と成約単価は、反響元を選択肢で記録し、成約と同じ顧客にひも付けているときだけ出せます。 反響元が自由入力のままなら、ダッシュボードより先にそこを直してください。媒体ごとの費用対効果の出し方はSUUMO・HOME'Sの費用対効果を正しく測る方法にあります。
業態で何が変わるか
| 業態 | いちばん見る数字 | 見る頻度 |
|---|---|---|
| 賃貸仲介 | 反響数、初回連絡までの時間、内見数 | 毎日(繁忙期は特に) |
| 賃貸管理 | 空室数、更新・解約の期限が近い契約、原状回復の未完了 | 毎週 |
| 売買仲介 | 追客中の件数と次の連絡日が過ぎた件数、媒介契約の期限 | 毎週 |
| 買取再販 | 在庫物件の数と保有期間、物件ごとの粗利 | 毎月 |
同じ「成約率」でも、賃貸は月単位、売買は数か月単位で動きます。売買仲介で毎日成約率を見ても、行動は変わりません。 業態に合わない頻度で見る数字は、朝礼で読み上げるだけの数字になります。
ダッシュボード構築のステップ
ステップ1:データソースの整理
ダッシュボードに表示するデータの出所を整理します。
- 反響データ: CRM or 反響管理表
- 営業活動データ: CRM or 日報
- 売上データ: 会計システム or 売上管理表
- 広告費データ: 各広告媒体の管理画面
ここで基準日も決めます。「9月の成約」を申込日で数えるか契約日で数えるかで、件数が変わります。決めないと、営業会議と経理で違う数字が出ます。
ステップ2:ツールの選定
| ツール | 特徴 | 向いている場合 |
|---|---|---|
| Googleスプレッドシート+Looker Studio | 無料でグラフ化できる | 記録をスプレッドシートで持っている |
| kintone標準グラフ | kintone内で完結 | 反響・契約をkintoneで管理している |
| Notion | データベース+ビュー | 少人数で記録も同じ場所に置きたい |
| Tableau などのBIツール | 高度な可視化 | 複数のシステムの数字をまとめて見たい |
料金は各社の公式サイトで最新を確認してください(2026年9月確認)。記録がある場所の近くで作るのが基本です。kintoneのグラフでできること・できないことはkintoneのグラフ・レポート機能に書いています。
ステップ3:ダッシュボードの設計
効果的なダッシュボードの設計ポイント:
- 1画面に収める: スクロールが必要なダッシュボードは見てもらえない
- 重要な数字は大きく: 今月の成約件数と売上は最も目立つ位置に
- 比較ができるように: 前月比、前年比、目標比を表示
- 色は絞る: 赤はその日に動くものだけ。色だけに意味を持たせず、数字や文字でも読めるようにする
ステップ4:運用ルールの策定
ダッシュボードは、データが最新でなければ意味がありません。
- データ更新の担当者と頻度を決める
- 可能な限り自動更新の仕組みを構築する
- 営業会議でダッシュボードを見ながら議論する習慣をつける
ダッシュボード活用のコツ
朝礼で数字を共有する
毎朝短く、ダッシュボードを見ながら前日の実績を共有します。
- 昨日の反響数と対応状況
- 今週の成約見込み案件
- 追客が止まっている案件の確認
週次で振り返りを行う
週に1回、ダッシュボードのデータを分析し、改善策を議論します。
- 反響数が減っている場合 → 広告の見直し
- アポ取得率が低い場合 → 初回連絡の質の改善
- 成約率が低い場合 → 提案力・物件マッチングの改善
よくある失敗
営業8名ほどの売買仲介会社で、KPIを20個並べたダッシュボードを作り、3か月で誰も開かなくなった、という形の失敗があります。起きたことは、朝礼で全部を読み上げる時間がなくなり、見る数字が人によってばらばらになったことです。原因は、「出せる数字」を全部並べ、「見て何を決めるか」で選ばなかったことでした。最初は3〜5個に絞り、1か月見て行動が変わらなかった数字は外すのが正しい順番です。
当社でのやり方
当社は不動産事業の広告運用(月予算200万円規模)を担当してきました。広告費と反響を突き合わせるとき、最初に揃えるのは数字の名前と数え方です。媒体ごとに名前が違うまま並べると、合計が出せません。
また、代表が役員を務める空き家地方創生株式会社(AKIYATO)では、空き家を再生した一棟貸しの宿の予約データから繁閑を分析し、価格を決める基盤を作っています。宿でも仲介でも、見る数字は「次に何を決めるか」から逆算するのは同じです。
まとめ
営業ダッシュボードは、不動産会社の営業力を底上げするための基盤です。
- まずは3〜5個のKPIに絞り、それぞれ「見て何を決めるか」を言えるようにする
- 目標値は他社の平均ではなく、自社の過去の実績から決める
- 業態で見る数字と頻度が違う。基準日を1つに決める
- 無料ツールで十分始められる。有料は毎月見る数字が固まってから
「数字で語れるチーム」を作ることが、安定した業績を実現する鍵です。まずは今月の反響数と成約数を、反響元別に数えるところから始めてみましょう。kintoneで記録から作る場合、構築は1業務1アプリまで最大1か月0円です。
関連リンク
- 不動産DX支援
- SUUMO・HOME'Sの費用対効果を正しく測る方法
- 反響管理の属人化を防ぐ3つのポイント
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よくある質問
不動産会社の営業ダッシュボードには、何のKPIを出せばいいですか
最初は3〜5個に絞ります。反響数、初回連絡までの時間、内見数、成約数のように、反響から成約までの流れの中で「次に何を決めるか」がはっきりしているものを選んでください。業態によって重い数字は変わり、賃貸仲介は反響対応の速さ、売買仲介は追客中の件数、賃貸管理は更新・解約の期限が中心になります。
KPIの目標値はどう決めればいいですか
他社の平均や一般的な相場ではなく、自社の過去の実績から決めます。反響管理や日報から直近の数か月分を数え、それを基準に少し上の値を目標に置いてください。基準となる数字が出せないなら、ダッシュボードより先に、反響元と対応状況を選択肢で記録するところから始めます。
ダッシュボードのツールは何を使えばいいですか
記録をどこに持っているかで決めます。kintoneで反響や契約を管理しているなら標準のグラフから、スプレッドシートで管理しているならLooker Studioのような無料の可視化ツールから始められます。有料のBIツールは、毎月見る数字が固まってから検討します。料金は各社の公式サイトで最新を確認してください(2026年9月確認)。


