物件説明文の作成に時間をかけていませんか?
ポータルサイトに掲載する物件説明文は、物件ごとに書くため件数が多く、担当者によって書き方もばらつきます。しかも「南向きで日当たり良好」「駅から徒歩5分の好立地」といった定型の表現に頼りがちで、物件ごとの違いが伝わりにくくなります。
ChatGPTやClaudeなどの生成AIを使えば、物件情報から説明文の下書きをすぐに作れます。ただし、つまずくのは指示文の書き方ではありません。AIに渡す物件情報が整っていないことと、出てきた文を何と照らして確かめるかが決まっていないことです。AIは物件を見ていないので、渡していない情報を「それらしく」足します。
文章の仕事全般で、人が確かめる場所の決め方はAI活用の教科書 6章に譲り、この記事では物件説明文に固有の部分を書きます。
AI活用の基本的な流れ
ステップ1:物件の基本情報を整理する
AIに入力する物件情報を、ポータルに入力する項目と同じ並びの箇条書きにします。自由な文章で渡すと、どれが事実でどれが感想か区別できなくなります。
- 物件種別(マンション/戸建/土地など)
- 所在地、最寄り駅、徒歩分数(台帳の値をそのまま。AIに計算させない)
- 間取り、専有面積
- 築年数、階数
- 価格/賃料
- 設備・特徴(台帳にある設備だけ)
- 周辺環境(距離は自社で確かめた値)
- 担当者のメモ(現地で見た人が1〜2行。「南側の窓が大きい」など)
最後の担当者のメモが、説明文の差になります。AIが書けない部分を人が渡します。
売主・貸主・入居者の氏名や連絡先は入れません。 → 入力してよい情報の線引きはAI活用の教科書 3章 生成AIの社内ルール
ステップ2:プロンプトを入力する
指示文の例です。
以下の物件情報だけを使って、ポータルサイトに掲載する物件説明文を作成してください。
【条件】
- 文字数: 400〜600文字
- ターゲット: 30代の共働き夫婦
- トーン: 丁寧だが親しみやすい
- 物件情報に書かれていない設備・眺望・日当たり・周辺施設は書かない
- 徒歩分数・面積・築年数は、物件情報の値をそのまま使う
- 「最高」「完璧」「日本一」「格安」などの強い語を使わない
- 担当者のメモの内容を1か所以上入れる
- 最後に、物件情報から使った項目と使わなかった項目を一覧で出す
【物件情報】
・東京都世田谷区XX 2LDK マンション
・東急田園都市線 三軒茶屋駅 徒歩8分
・築12年 5階/10階建
・専有面積 58.5平米
・賃料 18.5万円(管理費 1.2万円)
・オートロック、宅配ボックス、浴室乾燥機
・2024年にキッチンリノベーション済み
・徒歩3分にスーパー、徒歩5分に公園
・担当者メモ:リビングの窓が2面で明るい
最後の「使った項目の一覧」が確認を軽くします。 一覧に無い内容が本文にあれば、それがAIの足した部分です。
ステップ3:生成結果を確認・修正する
AIが生成した文章はそのまま使わず、物件台帳と照らして確認します。
| チェック項目 | 照らす先 | よくある間違い |
|---|---|---|
| 数字(徒歩分数・面積・築年・賃料) | 物件台帳 | 別の物件の数字が混ざる、丸められる |
| 設備・改装 | 物件台帳、現地の写真 | 無い設備が足される |
| 周辺施設 | 自社で確かめた値 | 閉店した店、実在しない店名 |
| 表示のルールに関わる語 | 自社の禁止語リスト | 強い語、根拠のない「人気」 |
| 物件の取り違え | 物件番号 | 前の物件の情報が残る |
| 読みやすさ | — | 句読点、改行 |
強い語は目で探すと漏れるので、自社の禁止語リストを作って検索で探します。
実践的なプロンプトテンプレート集
どの型にも、ステップ2の「物件情報に書かれていないことは書かない」「使った項目を一覧で出す」の2行を足して使います。
賃貸マンション向け
あなたは不動産会社のベテラン営業担当です。
以下の物件情報をもとに、20代〜30代の一人暮らし向けの
物件説明文を400文字以内で作成してください。
生活利便性と通勤のしやすさを中心に書いてください。
売買戸建向け
あなたは不動産会社のベテラン営業担当です。
以下の物件情報をもとに、子育て世代向けの
戸建物件の説明文を500文字以内で作成してください。
子育て環境と周辺の暮らしやすさを中心に書いてください。
将来の資産価値については書かないでください。
投資用物件向け
あなたは不動産投資に詳しいアドバイザーです。
以下の物件情報をもとに、投資家向けの
物件説明文を400文字以内で作成してください。
利回りは物件情報にある値だけを使い、計算し直さないでください。
立地の特徴とリスク要因(空室・修繕)をバランスよく記載してください。
文体を自社に寄せたいときは、形容詞を足すより、社内で「これで良い」と決まった過去の説明文を1つ添えて「この文体に合わせる」と書くほうが効きます。
業態で何が変わるか
| 業態 | 説明文で重くなるところ | 人が特に確かめること |
|---|---|---|
| 賃貸仲介・賃貸管理 | 件数が多く、同じ建物の別の部屋も多い | 部屋番号・階・賃料の取り違え |
| 売買仲介 | 1件ずつの情報量が多い | 売主から預かった情報のうち、公開してよい範囲 |
| 買取再販 | リフォームの内容が売りになる | 改装の時期と範囲が工事の記録と合っているか |
| 投資用販売 | 利回り・賃料の数字 | 数字の出どころ。将来の収益を断定していないか |
注意すべきポイント
表示のルールへの対応
不動産広告には、不動産の表示に関する公正競争規約などのルールがあります。使い方に制限のある用語、徒歩分数の出し方、おとり広告の扱いなどが定められていますが、どの表現が問題になるかは当社では判断しません。 確認する先は、不動産公正取引協議会連合会の公表資料と所属団体です。AIが書いた文章でも、掲載する責任は自社にあります。
AIの弱点を理解する
AIは物件を実際に見ていません。そのため、以下の点は人間が補う必要があります。
- 実際の日当たりや眺望の感想
- 近隣の雰囲気(静かさなど)
- 内装の質感や匂い
- 共用部の管理状態
AIはたたき台を作るツールであり、最終判断は人間が行います。
効率化の効果の測り方
「1物件何分が何分に」という一律の目安は、物件の数や元の情報の整い方で大きく変わるため書きません。自社で次のように測ります。
| 測るもの | 測り方 |
|---|---|
| 導入前の時間 | 2週間、1物件の説明文にかかった時間を記録 |
| 導入後の時間 | 同じく2週間。下書き+確認+修正の合計で記録 |
| 修正の多い箇所 | 確認で直した項目(数字・設備・周辺など)を数える |
修正の多い箇所が分かれば、指示文か物件情報の渡し方のどちらを直せばよいかが決まります。
当社でのやり方
当社が公開しているkintoneの不動産向け見本では、物件台帳に「物件名+部屋番号」の二重登録を防ぐ仕組みを入れています。説明文をAIで作るときも、元になる物件台帳が1物件1件で整っていることが前提です。台帳の値をそのまま箇条書きに書き出してAIに渡せば、取り違えと数字の間違いの多くは入口で防げます。
よくある失敗
前の物件の設備が混ざった(従業員10名ほどの賃貸仲介会社で起きやすい例)——同じAIとの会話の中で、続けて何件もの説明文を作らせていた。ある物件の説明文に、直前の物件にあった「宅配ボックス」が入り、掲載後にお客様からの指摘で気づいた。なぜ:同じ会話の中で前の物件の情報が残っていた。確認も数字だけを見ていた。どうすればよかったか:1物件ごとに新しい会話で始める。「使った項目の一覧」を出させ、台帳と照らす。
まとめ
- AIに渡すのは、台帳と同じ項目の箇条書き+現地で見た人のメモ
- 「物件情報に無いことは書かない」「使った項目を一覧で出す」を指示文に入れる
- 数字・設備・周辺施設・強い語・取り違えを、台帳と照らして確かめる
- 表示のルールの判断は、協議会の公表資料と所属団体で確認する
- 効果は、確認の時間も含めて自社で測る
関連リンク
よくある質問
AIが書いた物件説明文をそのまま掲載してもいいですか
そのままは避けてください。AIは物件を見ていないので、渡していない設備や眺望を足すことがあります。掲載前に物件台帳と1項目ずつ照らし、表示のルールに関わる語が入っていないかを人が確認します。
AIに入力してはいけない情報はありますか
売主・貸主・入居者の氏名や連絡先、交渉の経緯などは入力しません。説明文に要るのは、公開する予定の物件情報だけです。入力してよい範囲は、社内で1枚の表にしてから使い始めてください。
どれくらい時間が短くなりますか
物件の数や元の情報の整い方で変わるため、一律の目安はありません。導入前の2週間、1物件の説明文にかかった時間を記録し、導入後と比べてください。確認にかかる時間も含めて比べないと、効果を大きく見誤ります。


