株式会社COTSUBU

CHAPTER 06

AIで議事録・報告書を作る|人が確かめる場所

この章で分かること

  • 資料の種類ごとに、確認の重さが違うこと(議事録・報告書・社外文書)
  • 人が必ず確かめる3つ(数字・固有名詞・出してよいか)と、その確かめ方
  • 自社の型に寄せる方法(説明を足すのではなく、完成物を1つ渡す)
この章の目次(10)
  1. 1速くなる部分と、速くならない部分
  2. 2資料の種類ごとに、確認の重さを変える
  3. 3人が必ず確かめる3つ
  4. 4資料の型に入れる3行
  5. 5自社の型に寄せる(説明ではなく完成物を渡す)
  6. 6議事録だけは、直す場所を固定する
  7. 7メールと問い合わせ返信は「送信前」に全部が懸かる
  8. 8文章の仕事でAIを使わないほうがよい場合
  9. 9よくある間違いを5つ
  10. 10この章の出口

文章の仕事で速くなるのは、構成と初稿です。事実の確認は1分も速くなりません。むしろ、確認の場所を決めていないと全体では遅くなります。 だからこの章でやるのは、書かせ方を覚えることではなく、資料の種類ごとに「人が確かめる場所」を先に決めることです。 決め方を間違えると、社外に出た資料の中に、実在しない数字が残ります。

この章で分かること

  • 資料の種類ごとに、確認の重さが違うこと(議事録・報告書・社外文書)
  • 人が必ず確かめる3つ(数字・固有名詞・出してよいか)と、その確かめ方
  • 自社の型に寄せる方法(説明を足すのではなく、完成物を1つ渡す)

速くなる部分と、速くならない部分

文章の仕事を工程に割る理由は、速くなる部分と速くならない部分が混ざっているからです。混ざったまま「文章作成が速くなる」と考えると、期待と結果がずれます。実際に起きるのは、初稿が15分で出てきて、そのあと確認に90分かかる、という形です。全体では遅くなっているのに、初稿が速く出たという印象だけが残るので、原因が分かりません。

割ってみると、速くなるのは白紙の時間だということが見えます。何をどの順で書くかを考える時間、最初の1行が出てこない時間。この2つが消えるのは大きく、文章を書き慣れていない人ほど効きます。一方で、数字が正しいかを元データに当たって確かめる作業は、1分も短くなりません。むしろ、自分で書いた文章なら数字の出どころを覚えているので確認は速いのに、出てきた文章では全部を疑う必要があり、確認は長くなります。

だからこの章の本題は、書かせ方ではなく確認のしかたです。確認を軽くする方法ではなく、確認する場所を先に決めて、そこだけを見る方法を扱います。場所が決まっていない確認は、全文を読み直す作業になり、自分で書いたほうが速かったという結論に行き着きます。

工程 速くなるか 理由
構成を決める 速くなる 白紙から考える時間が消える。案を3つ出させて選ぶ
初稿を書く 速くなる 書き始めの停滞が無くなる
書式を整える 速くなる 項目名・順番を指定すれば揃う
事実を確かめる 速くならない 元データに当たる作業は人がやる
数字の裏を取る 速くならない むしろ増える(AIが数字を作ることがあるため)
社外に出してよいか判断する 速くならない 判断は任せない(1章の段階4)

合計で速くなるかどうかは、確認の手順が決まっているかで決まります。 決まっていないと、全文を疑って読み直すことになり、自分で書いたほうが速かったという結論になります。 手順の作り方そのものは記事(AIで提案書・報告書を自動作成する方法)にまとめてあります。この章では、どこを人が見るかの決め方を扱います。

資料の種類ごとに、確認の重さを変える

すべての資料を同じ重さで確認すると、続きません。照らす先(元の事実)があるかどうかで重さを変えます。

資料 元になる事実 人が必ず確かめる場所 確認の重さ
議事録 録音・文字起こし 決定事項、宿題(担当・期限)、社名・人名 中(照らす先がある)
社内メモ・手順書 実際の作業 手順の順番、例外の扱い 軽
問い合わせの一次返信 過去の回答・FAQ 事実関係、金額、納期。送信前に全文 重(社外に出る)
月次報告書 自社の元データ すべての数字、前月比の計算 重
提案書 打ち合わせメモ・自社の実績 数字、他社事例、固有名詞、約束した範囲 最重
サイト原稿・広報文 自社の事実 数字と出典、固有名詞、公開の可否 最重

この表は、上から順に取り組む表ではありません。右端の「確認の重さ」を先に見て、自社がいま使おうとしている資料がどの重さかを確かめる表です。軽いものから始めるのが原則なので、最初に手を付けてよいのは上から2行だけだと考えてください。

自社の資料名で書き直すと、もっと使えるようになります。「月次報告書」ではなく「営業部の月次売上報告」、「提案書」ではなく「見積添付の提案書」のように、社内で実際に呼んでいる名前で並べてください。一般名のままだと、誰も自分の資料のことだと思いません。書き直す作業は30分で終わり、この章の成果物1つ目になります。

どの資料から始めるかで迷ったら、照らす先があるほうを選んでください。判断の基準は、重要度でも件数でもありません。間違っていたときに、それを間違いだと確かめられるかどうかです。提案書は重要で件数も多いかもしれませんが、照らす先が薄いので、間違いが間違いのまま社外に出ます。議事録は重要度では劣りますが、元の音声があるので、必ず気づけます。気づける仕事から始めるのが、この本全体の順番です。

議事録から始めるのが定石なのは、照らす先があるからです。 元の音声があるので、間違っていれば確かめられます(1章の問い2)。 反対に、提案書と広報文は照らす先が薄く、間違いが社外に出ます。最初の1業務にしないでください(2章)。

人が必ず確かめる3つ

確認は、全文を読み直すのではなく、3か所に絞ります。

# 確かめるもの 確かめ方 見つかる事故
1 数字 自社の元データと突き合わせる。一次情報に当たる 実在しない統計、計算の合わない前月比、古い自社の数字
2 固有名詞 名刺・登記情報・自社サイトと照合する 社名の表記ゆれ、実在しない製品名、役職の間違い
3 出してよいか 他社名・金額・個人情報が本文に紛れていないか見る 別の案件の情報が混ざる、社外秘の数字が残る

1つ目が最重要です。 AIは、市場規模・導入効果・業界平均のような数字を、それらしい形で出すことがあります。出典のURLが実在しないこともあります。 当社の決めごと:数字は、自社のデータか一次情報(官公庁・業界団体の公表資料)で裏を取る。取れない数字は資料から落とす。 理由は、取引先に出した資料の数字が誤りだったときに、訂正で失うものが大きすぎるためです。

そのために、資料の型に「出典」欄を作ってください。 欄があると、埋められない数字が目に見えます。埋まらない行は落とすだけです。

たとえば、従業員40名ほどの機械部品の会社が、取引先に出す提案書の冒頭に、AIが書いた市場規模と成長率の数字を載せたとします。もっともらしい数字で、出典らしき調査会社の名前も添えられています。提案が通り、話が進んだ段階で、相手の担当者から「この数字の出どころを教えてほしい」と連絡が来る。調べると、その調査自体が見つからない——これが典型的な形です。

訂正の連絡を入れ、資料を差し替えれば、取引は続くかもしれません。それでも、以降その会社が出す資料は、相手の側で数字を確認されるようになります。失うのは1つの数字の信用ではなく、資料全体の信用です。作成は30分でも、回復には長い時間がかかります。

この事故を防ぐ仕掛けが、出典欄です。欄があるだけで、書いている本人が「ここは埋められない」と気づきます。気づいた行を落とすのは一瞬です。厄介なのは、欄が無いために誰も違和感を持たないまま、それらしい数字が資料に残り続けることのほうです。

資料の型に入れる3行

自社の資料テンプレートに、次の3行を足します。これだけで事故が減ります。

足す欄 書くこと
出典 各数字の出どころ(ファイル名・公表資料名・確認日)
確認者 社外に出す前に読んだ人の氏名(1章の点検項目5)
材料 この資料を作るときに使った材料(議事録・元データのファイル名)

3つ目は見落とされますが、後から効きます。何を材料に作ったかが分かれば、間違いが出たときに原因を追えます。 材料が書いていない資料は、間違いの原因が「AIが変なことを言った」で止まり、指示文を直せません(5章)。

自社の型に寄せる(説明ではなく完成物を渡す)

出てきた文章が「自社らしくない」ときの直し方は、形容詞を足すことではありません。

やりがちな直し方 効く直し方
「もっと自然な日本語で」 過去の完成物を1つ添えて「この文体に合わせる」
「専門的すぎるので分かりやすく」 読み手を具体的に書く(「製造業の総務部長。IT担当ではない」)
「硬すぎる」 禁止する言い回しを列挙する(社内で使わない語を書き出す)
「もっと簡潔に」 文字数と項目数を数字で指定する

完成物を1つ渡すのが一番速い方法です。 当社が記事や教科書を書くときも、過去の章を例として渡しています。説明を何行足すより効きます。 このとき渡すのは、社内で「これで良い」と決着した資料にしてください。迷って直し続けている資料を渡すと、その迷いごと再生産されます。

議事録だけは、直す場所を固定する

議事録は最も使われる用途なので、確認の形を決めておきます。

項目 扱い
発言の要約 AIの出力のままでよい
決定事項 人が直す。「決まったこと」と「話に出たこと」は違う
宿題 人が直す。担当者名と期限を入れる
保留 人が確認する。結論が出ていないことを、出たように書かないか見る
社名・人名 人が照合する

決定事項と宿題だけは、必ず人が直してください。 議事録の価値はここにしかありません。ここが曖昧なまま配られると、次の打ち合わせで同じ話が繰り返されます。

メールと問い合わせ返信は「送信前」に全部が懸かる

社外への返信は、文章の仕事の中で最も件数が多く、最も取り消せません。扱いを1つに固定してください。

決めること 当社の形
任せ方 段階1(下書き)のまま。段階3にしない
人が見る場所 送信前に全文。事実関係・金額・納期を特に見る
自動送信 しない。下書きまでで止める
過去の回答を材料にする する。FAQ・過去の返信をまとめたファイルを材料に渡す
判断が要る内容 下書きも作らせない(お断り・値引き・クレーム)

この表は、5行がまとまって1つの運用になっています。どれか1行だけを採用しても効きません。たとえば「過去の回答を材料にする」だけを取り入れて、送信前の全文確認を省くと、過去の回答に含まれていた古い金額がそのまま相手に届きます。材料を渡すほど文面の精度は上がりますが、それは確認を省いてよい理由にはなりません。

件数が多い部署から「下書きまででは追いつかない」という声が出たら、任せ方を進めるのではなく、対象を絞ってください。判断の要らない定型の問い合わせだけを対象にし、それ以外は従来どおりにする。この絞り込みは、任せ方を段階3に進めるより安全で、効果もほとんど変わりません。速さを1段上げるより、扱う範囲を1つ減らすほうが、事故の確率を下げたまま件数を捌けます。

「下書きまでで止める」を崩さないでください。 返信の自動化は効果が大きく見えますが、間違った返信は取り消せず、相手にはその1通しか見えません。 件数が多くて追いつかない場合に手を付けるのは、返信の自動化ではなく、問い合わせが来る前の情報(サイトのよくある質問)です。こちらはサイト制作の教科書の範囲になります。

文章の仕事でAIを使わないほうがよい場合

状況 判断
お詫び・お断り・条件交渉の文面 使わない。言葉の重みと関係性が判断のすべて。1章の段階4
200字以内の短い連絡 使わない。指示を書くほうが長い
社内の誰も事実を確かめられない内容 書かない。照らす先が無い(1章の問い2)
人事評価・処分に関する文書 使わない。判断が中心で、記録として残る

1行目は、実務で最もよく相談される場面です。謝罪文をAIに書かせると、文面は整いますが、相手が受け取るのは「整った文面」ではありません。 誰が判断して、誰の言葉で言うかが本体です。

よくある間違いを5つ

「出てきた文章をそのまま社内資料にした」 ——数字と固有名詞が確認されないまま、社内の共通認識になります。半年後、別の資料に引用されて広がります。直し方:出典欄を型に入れる。埋まらない数字は落とす。

「AIが出した出典URLを、開かずに信じた」 ——実在しないURLが出ることがあります。直し方:URLは必ず開く。開いて、その数字がそのページにあることを確認する。確認日を書く。

「文章の質を上げようとして、指示を長くし続けた」 ——指示が長くなるほど更新されなくなり、結局その人しか使えません。直し方:完成物を1つ渡す(5章の要素6)。指示は構造だけにする。

「議事録をそのまま配って、決定事項の齟齬が後で出た」 ——「話に出たこと」が「決まったこと」として配られた結果です。直し方:決定事項と宿題は人が直す。配る前に、出席者1人に確認してもらう。

「社外に出す資料も、本人が確認して終わりにした」 ——書いた本人は、自分が見落とした場所を見つけられません。直し方:社外に出る資料は、本人以外が1人読む。氏名を残す(1章の点検項目5)。

この章の出口

この章を終えたとき、手元に残っているべきものは3つです。

  1. 資料の種類×確認の重さの表(自社の資料名で書いたもの)
  2. 出典欄・確認者欄・材料欄を足した資料テンプレート
  3. 社外に出る資料の確認者の氏名と、議事録の直す場所(決定事項・宿題)

文章の仕事は、照らす先があれば確かめられました。次は数字です。 データの仕事は、間違いが静かに混ざります。文章と違って読んでも気づけないので、確かめ方をあらかじめ作っておく必要があります。

次の章へ:7章 AIでExcelデータを集計・分類する

この章の点検リストを開く(自社の状態を○×で判定する用)

点検リスト:文章・資料の仕事(12項目)

資料1本あたり15分で通ります。 社外に出る資料には、毎回通してください。

# チェック項目 合格ライン
1 資料の種類ごとに確認の重さを決めた 種類×確認の表が1枚ある
2 元になる事実がある資料から始めている 照らす先(音声・元データ・原本)がある
3 数字の出どころを書く欄がある 資料の型に「出典」欄がある
4 AIが出した数字をそのまま載せていない 自社データか一次情報に当たった。出典URLは開いて確認した
5 固有名詞を原本と照合した 社名・人名・役職を名刺や公開情報と照合した
6 議事録の決定事項と宿題は人が直している 担当と期限が入っている
7 社外に出す前に本人以外が読んでいる 氏名が記録されている
8 社外秘が本文に紛れていないか確認した 他社名・金額・個人情報の混入を確認した
9 自社の型に寄せている 完成物を例として指示に添えている
10 指示文が保存されている 5章の形(ファイル・置き場所・更新日・担当)
11 作業時間を記録している 着手前と着手後の時間を記録した(確認時間を含む)
12 出せない資料の条件が決まっている 「事実確認が取れない行は削る」と明記してある

合格ライン=12項目中10以上。ただし 4・5・7 のどれかが×なら社外に出さない。

  • 4が×:実在しない数字が社外に出ます。訂正は、作成にかかった時間より高く付きます
  • 5が×:相手の社名や役職を間違えた資料を出すことになります。内容以前の問題として扱われます
  • 7が×:本人の見落としは本人には見えません。確認者が0人の資料は、確認していない資料です

11(作業時間)が×でも社外には出せますが、11章で効果を語れなくなります。 着手前の数字は2章で取ってあるはずなので、突き合わせてください。

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更新日 2018年10月20日