ポータルサイトの費用対効果、正しく把握していますか?
多くの不動産会社にとって、SUUMOやHOME'Sなどのポータルサイトは集客の柱です。しかし、「毎月いくら使って、何件の成約につながっているか」を、媒体ごとに言える状態になっていない会社は少なくありません。
原因は分析の手法ではなく、反響が成約までつながった記録が、どこにも残っていないことです。反響はポータルの管理画面に、来店は店舗のメモに、契約は別の台帳にあると、成約単価は計算できません。感覚で判断していると、費用対効果の悪い掲載に払い続けることになります。
ROI分析に必要な3つの指標
1. 反響単価(CPR: Cost Per Response)
反響単価 = 月間掲載費用 ÷ 月間反響数
計算の例(架空の数字):月20万円の掲載で反響が40件なら、反響単価は5,000円です。
2. 来店単価(CPV: Cost Per Visit)
来店単価 = 月間掲載費用 ÷ 月間来店数
反響があっても来店に繋がらなければ売上にはなりません。同じ例で来店が10件なら、来店単価は20,000円です。
3. 成約単価(CPA: Cost Per Acquisition)
成約単価 = 月間掲載費用 ÷ 月間成約数
判断に使うのはこの指標です。同じ例で2件成約すれば、成約単価は100,000円です。1件あたりの粗利(仲介手数料など)が分かるなら、成約単価が1件の粗利に対してどれくらいかを並べると、続けるかどうかの線が引けます。
成約は件数が少なく、1件の差で大きく動きます。1か月の数字では判断せず、3か月分をまとめて見てください。
ポータルサイト別のROI比較表
各指標をポータルサイトごとに並べる表の形です。数字は自社の台帳から入れます。
| 指標 | SUUMO | HOME'S | at home | 自社サイト |
|---|---|---|---|---|
| 月間費用 | ||||
| 反響数 | ||||
| 反響単価 | ||||
| 来店数 | ||||
| 来店率 | ||||
| 成約数 | ||||
| 成約単価 |
自社サイトの「月間費用」には、制作・保守・サーバー・広告など、その月にかかった費用を入れます。0円として並べると、自社サイトだけが実力以上に安く見えます。
どの媒体の成約単価が安いかは、会社・エリア・扱う物件で変わります。「ポータルより自社サイトのほうが効率がよい」といった一般論ではなく、この表の自社の数字で判断してください。
正確な計測のために必要なこと
反響の出所を正確に記録する
いちばん大事で、後から取り返せない作業です。今日から記録した反響しか、分析には使えません。
| 反響の種類 | 記録のしかた |
|---|---|
| ポータルからのメール反響 | 通知メールの差出人・件名で媒体が分かる。台帳に転記するとき媒体を選択肢で入れる |
| 電話 | 受電時に「何をご覧になってお電話を」と聞き、選択肢で入れる |
| 来店(飛び込み) | 来店カードに「何でお知りになりましたか」の欄を作る |
| 自社サイト・LINE | フォームに流入元の項目を入れるか、入口ごとにURLを分ける |
流入元は自由記入にしないのがポイントです。「スーモ」「SUUMO」「すーも」が別々に集計されます。選択肢は、掲載中の媒体+自社サイト+紹介+その他で足ります。
反響から成約までを一気通貫で追跡する
反響の1行に、来店日・申込日・成約日を同じ行に書き足していく形にします。反響台帳と成約台帳が別々だと、どの反響が成約したかを毎月探すことになり、続きません。kintoneなどの台帳なら、流入元を選択肢で揃え、状態(反響→来店→申込→成約)を同じレコードで進められます。
ポータルの管理画面の反響数と、台帳の反響数は一致しません。数える立場も日付の付け方も違うためです。判断には台帳の件数を使い、管理画面の数字は併記します。→ ずれの分け方は計測の教科書 7章 媒体との突き合わせ
毎月の手順(月1回・同じ日に)
- 各ポータルの請求額を、媒体ごとに表の「月間費用」へ入れる
- 台帳を流入元で絞り込み、その月の反響・来店・成約の件数を数える
- 3つの単価を計算し、直近3か月の合計でも出す
- 管理画面の反響数を横に併記し、大きくずれた媒体は表の下に理由を書く
- 「判断の分かれ目」の表に当てはめ、翌月やることを1つだけ決める
業態で何が変わるか
| 業態 | 分母にする成約 | 注意すること |
|---|---|---|
| 賃貸仲介 | 賃貸借契約 | 件数が多く、月次でも傾向が見える。反響への初回連絡の速さの影響が大きい |
| 賃貸管理(入居者募集) | 管理物件の成約 | 空室期間の短縮も効果に入る。オーナーへの報告と同じ数字を使う |
| 売買仲介 | 売買契約 | 成約が少なく、賃貸より長い期間でまとめないと判断できない |
| 買取再販 | 再販物件の売買契約 | 物件ごとの掲載期間と値下げの履歴も並べる |
判断の分かれ目
| 集計表で見えたこと | 次にやること |
|---|---|
| 反響は多いが来店が少ない | 反響日時と初回連絡日時の差を台帳で測る |
| 来店は多いが成約が少ない | 媒体ではなく、提案・物件の合い方を疑う |
| 反響が少ない物件が多い | 写真・説明文・条件を見直す。改善しなければ掲載枠を別の物件に回す |
| 成約単価が1件の粗利に近い | 掲載枠を減らし、数か月の変化を見る |
費用対効果を改善する5つの施策
施策1:掲載物件の入れ替え
反響が来ない物件は、写真や説明文を見直すか、掲載を止めて別の物件に予算を回します。
施策2:反響対応スピードの改善
初回連絡が早いほど来店につながりやすい、というのは各社の実感として語られますが、どれだけ差が出るかは会社ごとに違います。台帳に反響日時と初回連絡日時を残し、「何分以内に連絡できたか」と「来店したか」を突き合わせて、自社の数字で確かめてください。
施策3:物件写真の品質向上
写真は、お客様が物件を比べるときの主な材料です。明るい時間帯に撮る、部屋を片付けてから撮る、同じ部屋を複数の角度から撮る、を撮影の決まりにします。
施策4:自社サイトへの投資
自社サイト経由の反響の成約単価を、ポータルと同じ表で並べます。自社サイトの費用を正しく入れたうえで安いなら、ポータルの一部を自社サイトのSEOやコンテンツに回すことを検討します。
施策5:成約率の分析と営業改善
来店から成約までのどこでお客様が離れているかを特定します。提案の問題か、物件の合い方か、競合に負けているのかを、台帳の「見送りの理由」の欄から見極めます。
当社でのやり方
当社の代表は、不動産事業の広告運用(月予算200万円規模)を担当してきました。集計で気をつけているのは、集計の形を途中で変えないことです。途中で変えると、過去と比べられなくなります。キャンペーンごとに計測の名前を分けていくと合計を誰も見なくなる、という形の失敗は計測の教科書 3章に書きました。ポータルの集計表も、列を固定し、毎月同じ日に作ってください。
よくある失敗
電話の多い媒体を止めてしまった(従業員10名ほどの賃貸仲介会社で起きやすい例)——メール反響の数だけで媒体を比べ、反響の少ない媒体の掲載を減らした。翌月から電話の問い合わせが減った。なぜ:その媒体からは電話の反響が多かったが、受電時に流入元を聞いておらず、台帳に残っていなかった。どうすればよかったか:受電のメモに流入元の欄を作り、数か月分たまってから判断する。
まとめ
ポータルサイトの費用対効果は、反響単価だけでなく、来店単価・成約単価まで一気通貫で計測することが重要です。
- 流入元は今日から、選択肢で記録する
- 反響から成約までを同じ行でつなぐ
- 成約単価は数か月分をまとめて見る。自社サイトの費用も入れる
- 管理画面と台帳の数字は一致しない。判断は台帳で
ポータル費用を削って別のところに回すなら、回す先の相場も一緒に見ておいてください。ツール費・システム構築費・IT顧問・社内研修の目安は不動産DXの費用相場にまとめています。
関連リンク
- 不動産DX支援
- 計測の教科書 7章 媒体との突き合わせ
- 反響管理の属人化を防ぐ3つのポイント
- 2026年の不動産テックトレンド5選|業界を変えるテクノロジーの最前線
- AIで物件説明文を自動生成する方法|不動産会社の業務効率化テクニック
よくある質問
ポータルの費用対効果は何で判断すればいいですか
反響単価だけでなく、成約単価(掲載費÷成約数)まで出して判断します。反響が多くても来店・成約につながらない媒体は、反響単価が安くても成約単価は高くなります。成約は件数が少ないので、数か月分をまとめて見てください。
ポータルの管理画面の反響数と、自社の記録が合いません
数える立場や日付の付け方が違うため、完全には一致しません。判断には自社の台帳の件数を使い、管理画面の数字は参考として並べます。ずれの理由の分け方は計測の教科書 7章にまとめています。
電話の反響はどう記録すればいいですか
受電時に「何をご覧になってお電話いただきましたか」と聞き、台帳の流入元の欄に選択肢で記録します。媒体ごとに専用の電話番号を出せる仕組みがあるかは、各ポータルの担当窓口で確認してください。


