ポータルサイト依存から脱却する選択肢
不動産会社の集客は、SUUMOやHOME'Sなどのポータルサイトに依存しがちです。ポータルでは競合他社と横並びで比較されるため、条件の比較だけで選ばれやすいという課題があります。
リスティング広告(Google広告)は、検索した人を自社サイトに直接連れてくる方法です。ポータルの代わりというより、ポータルでは取りにくい反響(売却相談、管理の相談、自社名での検索)を取りに行く道具と考えると判断を誤りません。
リスティング広告の基本的な仕組み
リスティング広告は、Googleの検索結果に表示される広告です。ユーザーが特定の語で検索したときに表示され、クリックされたときに費用が発生します。
クリック単価は、同じ語でも地域・時期・競合の数で変わり、一律の相場はありません。配信前にGoogle広告のキーワードプランナーで自社の地域・語の推定を見るのが、いちばん当てになる目安です。
業態によって何が変わるか
| 業態 | 狙う検索の例 | 着地先 | 反響1件の価値 |
|---|---|---|---|
| 賃貸仲介 | 駅名×間取り×条件 | 条件で絞った物件一覧 | 1件の価値は相対的に小さく、ポータルとの競合が強い |
| 賃貸管理 | 地域×管理会社、管理会社 変更 | オーナー向けの管理サービスのページ | 件数は少ないが、管理戸数につながる |
| 売買仲介 | 地域×売却・査定 | 売却相談・査定のページ | 1件の価値が大きい。査定フォームの設計が重要 |
| 買取再販 | 地域×買取、相続した家 売却 | 買取の流れと事例のページ | 急いでいる売主が多い。電話の受け方が成果を分ける |
| 投資用販売 | 物件種別×投資 | 物件・セミナーのページ | 審査ポリシーや表示の確認が他業態より多い |
賃貸と売買を両方扱う会社は、キャンペーンを必ず分けます。 反響1件の価値が違うものを1つの予算で回すと、クリックの安い賃貸の語に予算が吸われます。
リスティング広告を始める手順
手順1:計測を先に入れる
成果を数える設定が入るまでは、配信しません。 何を1件と数えるか(フォーム送信、電話、LINEの追加など)を決め、テスト送信で数えられることを確かめてから始めます。当社は不動産事業の広告運用(月予算200万円規模)を担当してきましたが、後から計測を直すほど、過去の数字と比べられなくなる手間が大きくなります。計測の設計は教科書「広告の計測」にまとめています。
手順2:予算を逆算する
予算は相場からではなく、自社の台帳の数字から決めます。
反響1件にかけてよい額 = 成約1件の粗利 × 反響から成約する割合(自社の実績)× 広告に回してよい割合
反響台帳に「反響から成約した割合」がない場合は、先に台帳を整えます。この数字がないまま広告を始めると、高いか安いかを誰も判断できません。
手順3:キーワードと除外を決める
- 地域名を必ず含める: 「賃貸マンション」だけでは広すぎる
- 業態ごとに語を分ける: 賃貸・売買・管理の語を同じ広告グループに混ぜない
- 自社名の検索は別のキャンペーンに: 指名検索の数字が混ざると、他の語の良し悪しが見えなくなる
- 除外キーワードを最初から入れる: 求人、賃貸のキャンペーンでの「売買」「分譲」など
除外の作り方と、配信後に検索語句を精査する手順は教科書「除外の設計」を参照してください。
手順4:広告文と着地先を揃える
- 見出しに地域名と物件種別・業務を入れる
- 検索した語と、着地先のページの中身を一致させる(「◯◯区 売却」ならトップページではなく売却相談のページ)
- 問い合わせフォームは必須項目を最小限にし、電話とLINEも選べるようにする
「物件数◯件以上」「仲介手数料半額」のような表現は、Google広告の審査とは別に、不動産の広告表示のルールや景品表示法が関係します。使う前に不動産公正取引協議会連合会の公正競争規約や所属団体、顧問の宅建士・弁護士で確認してください。
手順5:効果測定と改善
| 指標 | 見る場所 | 悪いときの判断 |
|---|---|---|
| クリック率 | 広告の管理画面 | 広告文と検索語がずれている。広告文を直す |
| 成果の件数・単価 | 広告の管理画面 | 着地先・フォーム・電話の受け方を先に疑う |
| 反響の中身 | 反響台帳 | 件数はあっても冷やかしが多いなら、語と除外を見直す |
| 成約 | 反響台帳 | 広告経由の成約を月ごとに数え、予算の増減を決める |
広告の管理画面の件数と社内の台帳の件数はずれるのが普通です。判断は台帳の件数で行い、ずれは月に1回突き合わせます。 着地先の直し方は教科書「受け皿」にまとめています。
費用の内訳と予算の考え方
| 費用 | 中身 | 確認すること |
|---|---|---|
| 広告費 | Googleに払うクリックの費用 | 上の逆算で決める |
| 運用手数料 | 代理店に払う費用 | 何に対する何%か、最低額があるか。最新は各社で確認 |
| 着地先の制作 | 売却相談のページなど | 既存ページの手直しで足りるか |
| 計測の設定 | タグ・電話の計測など | 誰の名義のアカウントに入れるか |
最初は主力の1業態・1エリアの語に絞って少額で始め、台帳の数字で反響1件の単価が見えてから広げます。
自社運用と代理店委託の比較
| 項目 | 自社運用 | 代理店委託 |
|---|---|---|
| 費用 | 広告費のみ | 広告費+運用手数料 |
| 専門知識 | 必要 | 代理店が持つ |
| 対応スピード | 即座に変更可能 | 依頼→対応のラグがある |
| ノウハウ蓄積 | 社内に蓄積される | 代理店に依存しやすい |
どちらを選んでも、広告アカウントと計測のアカウントは自社名義で持ちます。 代理店を替えたときに、過去の履歴ごと失わないためです。発注前に確認することは教科書「費用と発注」にまとめています。
失敗例:賃貸と売買を1つにまとめた不動産会社
賃貸と売買を両方扱う、従業員20名ほどの不動産会社で起こりがちな失敗です。
- 起きたこと: 1つのキャンペーンに賃貸と売却の語を入れて配信した。クリック数と成果の件数は増えたが、売却の相談はほとんど来なかった
- なぜ: 自動入札が、件数を取りやすい賃貸の語に予算を寄せた。成果も「問い合わせ」1種類で数えていたので、賃貸の1件と売却の1件が同じ扱いだった
- どうすればよかったか: 賃貸と売買でキャンペーンと予算を分け、成果も業態ごとに分けて数える。売却相談の件数は台帳で別に集計する
よくある失敗パターン
- 語が広すぎる: 「不動産」だけで出稿し、関係のないクリックが増える
- 着地先がトップページ: 検索した内容と合わず、すぐ離脱される
- 計測をしていない: 成果の設定をせずに配信を始める
- 一度設定して放置: 繁忙期や競合の動きに対応できない
まとめ
- 計測が入るまで配信せず、予算は台帳の数字から逆算する
- 業態ごとに狙う語・着地先・反響の価値が違うので、キャンペーンを分ける
- 広告表示のルールは、審査とは別に規約と専門家で確認する
- 判断は広告の管理画面ではなく、反響台帳の件数で行う
まずは反響台帳で、業態ごとの「反響から成約した割合」を出すところから始めてください。運用を任せたい場合は広告運用の支援もご覧ください。
関連リンク
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よくある質問
不動産のリスティング広告は月いくらから始められますか
少額から始めること自体はできます。ただしクリック単価は地域・語・時期で大きく違うため、一律の相場は言えません。キーワードプランナーで自社の語の推定を確認し、「反響1件にいくらまで出せるか」から逆算して予算を決めます。
賃貸と売買を両方扱っている場合、キャンペーンは分けるべきですか
分けます。反響1件の価値も、検索する人も、着地先のページも違うためです。同じキャンペーンに入れると、クリックの安い語に予算が寄り、価値の高い反響が取りにくくなります。
広告文に「仲介手数料半額」と書いてもよいですか
Google広告の審査とは別に、不動産の広告表示のルールや景品表示法が関係します。条件の書き方を含め、不動産公正取引協議会連合会の公正競争規約や所属団体、顧問の宅建士・弁護士に確認してから使ってください。


