投資用不動産の営業は「待ち」から「攻め」へ
投資用不動産の営業といえば、かつては電話営業やセミナー集客が中心でした。しかし、知らない番号からの電話営業はお客様の印象を損ねやすく、断られた後も連絡を続けると苦情や法令上の問題にもつながります。
現在は、Webで見込み客を集め、情報提供を通じて信頼を構築し、お客様が相談したくなったタイミングで応えるというファネル型のマーケティングが基本です。ただし、うまくいかない原因は発信の量ではなく、誰に向けて書くかが決まっておらず、連絡先をもらった後の道が引かれていないことがほとんどです。
ターゲットの明確化
年収や職業で切るより、投資の経験と、いま困っていることで切るほうが、書く内容が決まります。
| ターゲット | 最初に調べる疑問 | 適切なアプローチ |
|---|---|---|
| 初めて買う会社員 | 自己資金はいくら要るか、ローンは組めるか、失敗例は何か | 入門記事、初心者向けセミナー |
| 買い増しを考える経験者 | 次の物件の選び方、融資の組み直し、売り時 | 物件情報、市場の動き、個別相談 |
| 相続・資産の組み替えを考える方 | 持ち方(個人・法人)、税金の扱い | 個別面談、税理士との連携 |
| 医師・士業など多忙な方 | 管理の手間、時間をかけずに判断する方法 | 管理体制の説明、紹介 |
最初は1つに絞ります。 全員向けに書いた記事は、誰の疑問にも深く答えられません。
マーケティングファネルの設計
認知段階:見込み客に知ってもらう
- SEOコンテンツ: 「不動産投資 始め方」「ワンルーム投資 利回り」などの疑問に答える記事
- YouTube動画: 投資の基礎知識、物件の見方
- SNS(X・Instagram): 投資に関する基礎知識
- リスティング広告: 検索連動型広告で見込み客を自社サイトへ
キーワードの選び方や広告の設計は教科書に譲ります(→ SEOの教科書 4章、Web広告運用の教科書)。
興味段階:見込み客の連絡先を獲得する
- 無料セミナー: オンラインセミナーで連絡先を受け取る
- ホワイトペーパー: 「初めての不動産投資で確認すること」などのPDF資料
- 収支シミュレーション: 賃料・空室・金利を変えて試せる表
- メルマガ登録: 市場の動きの定期配信
検討段階:信頼を構築する
- メールの定期配信: 週1回程度の情報提供(売り込みを3通続けて反応がなければ止める)
- 個別相談の案内: Webカレンダーから予約
- オーナーの声: 掲載の了承を得たものだけ
- セカンドオピニオン: 他社の提案に対する客観的な見方
配信の自動化は不動産会社のMA入門、LINEで追う場合の設計はLINE運用の教科書 2章にまとめています。
成約段階:購入をサポートする
- 物件提案: ターゲットに合った物件の個別提案
- 融資の相談: 金融機関の紹介
- 税務の相談: 税理士の紹介(税額の判断は税理士に任せる)
- 契約手続き: 契約〜引渡しまでの段取りの案内
段階ごとに数える件数
| 段階 | 次に進んだ印 | 数える場所 |
|---|---|---|
| 認知 | 資料請求・メール登録 | フォーム・顧客台帳(入口別) |
| 興味 | セミナー参加・シミュレーション依頼 | 申込台帳 |
| 検討 | 個別相談の予約と実施 | 予約台帳 |
| 成約 | 申込・契約 | 顧客台帳 |
それぞれの件数に加えて、登録から個別相談までの日数を記録します。これが、メールを何週分用意すればよいかの答えになります。
具体的なコンテンツ戦略
ブログ記事のテーマ例
初心者向け:
- 不動産投資で失敗しないための5つの基本
- ワンルーム投資 vs 一棟アパート投資の違い
- 不動産投資ローンの審査で見られる項目
- 会社員が不動産投資を始める前に確認すること(勤務先の副業規定など)
中級者向け:
- 利回りの計算方法(表面・実質の違い)
- 空室対策の具体的な方法
- 管理会社の選び方と見直しのタイミング
- エリア分析の方法
失敗例とリスクの記事を必ず入れてください。 空室・修繕・金利の変化で起きることを書かない発信は、慎重な見込み客ほど信用しません。
記事の下書きにAIを使う場合は、次の型を使うと断定や出どころのない数字が入りにくくなります。
投資用不動産を初めて検討する会社員向けに、「表面利回りと実質利回りの違い」の
記事の構成案を3つ出してください。
- 市場の平均利回りなど、具体的な相場の数字は書かない
- 例の数字は「架空の例」と明記する
- 「必ず」「確実に」「値下がりしない」などの断定をしない
- 空室・修繕・金利の変化によるリスクの節を必ず入れる
セミナーのテーマ例
- 「初めての不動産投資セミナー(90分)」
- 「不動産投資のリスクと、始める前に確認すること」
- 「融資の相談の前に準備する書類」
- 「税理士に聞く、不動産投資と税金の基本」
業態で何が変わるか
| 業態 | 主な見込み客 | マーケティングの重心 |
|---|---|---|
| 投資用販売(新築・中古区分) | 初めて買う会社員 | 学ぶ段階が長い。入門記事とセミナー、断られた後に連絡しない仕組み |
| 売買仲介(収益物件) | 買い増しの経験者 | 物件情報の速さと、条件で出し分けた配信 |
| 買取再販 | 売主と、再販先の投資家の両方 | 売主向けの査定の窓口と、投資家向けの物件配信を分ける |
| 賃貸管理 | 管理を任せたいオーナー | 管理の報告の見本、空室対策の考え方の記事 |
デジタルツールの活用
| ツール | 用途 |
|---|---|
| HubSpot など | MA(マーケティング自動化) |
| Mailchimp など | メール配信 |
| Zoom など | オンラインセミナー |
| WordPress など | ブログ・LP作成 |
| kintone | 顧客管理・追客管理 |
料金は各社で改定されるので、最新は各社の公式サイトで確認してください(2026年9月確認)。 道具より先に、段階ごとの件数を1つの顧客台帳で追えることが条件です。
当社でのやり方
代表の宇田川は2014〜2018年、投資用不動産販売会社のバックオフィスで、経理・契約・督促を担当し、kintoneで社内アプリを作っていました。契約や督促は販売の後工程です。集客の段階で示した収支の見込みは、契約の場面でもお客様が確かめる内容になるので、発信の段階で断定を避けておくことは、後工程を守ることでもあります。
よくある失敗
セミナー後の連絡が担当者任せになった(投資用販売の従業員20名ほどの会社で起きやすい例)——月に数回セミナーを開いていたが、参加者への連絡は各営業が手元のリストで行っていた。連絡の漏れと、逆に同じ人へ複数の営業から電話が重なることが起き、苦情が出た。なぜ:参加者と連絡の記録が1つの台帳になかった。どうすればよかったか:参加者を台帳に登録し、担当者と連絡の結果(つながった・見送り・連絡不要)を残す。「連絡不要」の方は配信と架電から外す。
勧誘の方法や広告の表現がどこまで許されるかは、当社では判断しません。確認する先は、国土交通省の公表資料(宅地建物取引業法の勧誘に関する規定)、不動産公正取引協議会連合会、所属団体、顧問の弁護士です。
まとめ
- ターゲットは経験と困りごとで1つに決める
- 認知→興味→検討→成約の段階ごとに、次に進んだ印と件数を記録する
- 失敗例・リスクの記事を必ず入れ、将来の利益を断定しない
- 目標値は他社の目安ではなく、自社の数か月分の記録から作る
- 断られた方に連絡しない仕組みを、顧客台帳に持たせる
関連リンク
- 不動産DX支援
- 不動産会社のMA(マーケティング自動化)入門
- kintoneの不動産向け見本(物件台帳・反響/顧客など6アプリ)
- 2026年の不動産テックトレンド5選|業界を変えるテクノロジーの最前線
- AIで物件説明文を自動生成する方法|不動産会社の業務効率化テクニック
よくある質問
投資用不動産の集客は何から始めればいいですか
誰に売るか(初めて買う会社員か、買い増しを考える経験者か)を1つ決め、その人が最初に調べる疑問に答える記事か資料を1本作るところからです。広告やセミナーは、連絡先を受け取った後の流れができてから始めます。
セミナーの参加率や成約率の目安はありますか
出典のある形で使える目安はありません。商品・価格帯・集め方で大きく変わるためです。セミナー申込・参加・個別相談・契約の各段階の件数を自社で記録し、数か月分たまったら自社の目標にしてください。
広告や資料で気をつける表現はありますか
将来の利益や値上がりを断定する表現は避けてください。宅地建物取引業法や不動産の表示に関する公正競争規約に関わります。どこまでが問題になるかは、国土交通省の公表資料、不動産公正取引協議会連合会、所属団体、顧問の弁護士で確認してください。


