不動産のMAツールとは、反響があったお客様に検討段階に合わせたメールを自動で送り、動きがあったときに営業担当へ知らせる道具です。 導入で効くのは「送り漏れを無くすこと」と「今動いているお客様を知らせること」の2つで、その前提として、反響から契約までが1つの顧客台帳にまとまっている必要があります。
MAとは何か
MA(Marketing Automation)とは、マーケティング活動を自動化するツールやその仕組みのことです。見込み客の行動(メール開封、Webサイト閲覧、資料ダウンロードなど)を記録し、その行動に応じたタイミングでメッセージを自動配信します。
不動産業界で言えば、反響があったお客様に対して、検討段階に応じたフォローメールを自動で送り、動きがあったタイミングで営業担当に通知するという仕組みです。
なぜ不動産会社にMAが必要なのか
不動産の購入・賃貸は、反響から成約までの検討期間が長くなりやすい商材です。一般に、賃貸より売買、実需より投資用のほうが長くなります。ただし期間は会社・エリア・価格帯で大きく違うので、自社の台帳で「反響日から契約日までの日数」を数えてください。 それが、シナリオを何週分用意すればよいかの答えになります。
この長い検討期間中、営業担当が手動で全員をフォローし続けるのは困難です。MAを使えば、検討中のお客様への情報提供を自動化し、営業担当は今動いているお客様への対応に集中できます。
MAでできること
| 機能 | 不動産での活用例 |
|---|---|
| メール自動配信 | 新着物件情報、お役立ちコンテンツの配信 |
| シナリオ分岐 | 行動に応じたメール内容の自動切替 |
| スコアリング | 見込み客の行動を点数にする |
| Web行動追跡 | どの物件ページを見たか把握 |
| 通知機能 | 点数が一定を超えた見込み客を営業に通知 |
| フォーム作成 | 資料請求、セミナー申込フォーム |
自動にしてよいのは「誰に送っても同じ情報」と「通知」までです。物件の提案、価格や条件の相談、電話をかけるかどうかの判断は人に残します。
導入する前に決める4つ
| 決めること | 中身 | 決めないうちは |
|---|---|---|
| 顧客台帳の場所 | 反響・来店・契約が1か所に記録されている | MAを契約しない。中と外で顧客が二重になる |
| 状態の区分 | 反響/連絡済み/内見済み/申込/契約/休眠 | 自動配信を始めない。契約済みの方に募集が届く |
| 営業への引き渡し条件 | どの行動があったら誰に通知するか | 通知を出さない。出しても誰も動かない |
| 配信を止める条件 | 契約・クレーム対応中・配信停止の申し出 | 配信を始めない |
1つ目が一番の前提です。反響がポータルごとの通知メールに散り、契約が別のExcelにある状態では、MAに何を入れても片側しか見えません。→ 反響管理の属人化を防ぐ3つのポイント
状態の区分は同時に2つ付かないようにし、付け替わるきっかけ(予約フォームの送信・契約の記録)を決めます。考え方はLINE運用の教科書 2章と同じです。
不動産会社向けMAシナリオの具体例
日数は例です。どのシナリオも、売り込みを3通続けて反応がなければ止め、月1回のお知らせだけに戻します。
シナリオ1:反響後の自動フォロー(賃貸)
Day 0: 反響 → お礼メール(担当者名・内見予約の方法)
Day 1: 希望条件の確認(回答があれば担当者が物件を選んで送る)
Day 3: 部屋探しのポイント記事
Day 5: 内見予約の案内メール
Day 14: 検討状況確認メール
Day 30以降: 月1回の新着のお知らせ
内見予約が入った時点で、このシナリオから外します。
シナリオ2:売却検討客のフォロー
入口がサイトのAI査定なら、査定の結果を幅で伝える文面をお礼メールに入れておきます(→ AI不動産査定ツールの使い方)。
Day 0: 査定の申込へのお礼と、査定の進め方
Day 3: 「査定価格の見方」解説記事
Day 7: 同エリアの成約事例紹介(掲載の了承を得たものだけ)
Day 14: 「売却の流れと費用の項目」ガイド
Day 21: 個別相談の案内
Day 30以降: 月1回の地域のお知らせ
シナリオ3:投資用不動産のフォロー
投資用は検討が長く、資料請求からセミナー、個別相談へと段階を踏みます。集客から含めた考え方は投資用不動産のマーケティング戦略にまとめています。
Week 1: 不動産投資の基礎知識
Week 2: 利回りの計算方法(表面と実質の違い)
Week 3: 融資の基礎知識
Week 4: 失敗例とリスク(空室・修繕・金利)
Week 5: セミナー・個別相談の案内
Week 6以降: 月1回の物件情報
自動の本文には、空き状況・賃料・価格のように送る日に変わっているかもしれない情報を書きません。
業態で何が変わるか
| 業態 | 主なシナリオ | 判断の分かれ目 |
|---|---|---|
| 賃貸仲介 | 反響→内見予約までの短いフォロー | 検討が短く、メールよりLINEや電話が早いことが多い。MAより先に反響への初回連絡を速くする |
| 賃貸管理 | 更新・退去の案内 | 期日が決まった案内は、MAより台帳の期日通知で足りることが多い |
| 売買仲介 | 査定後の長いフォロー | 検討が長い。MAが一番効きやすい |
| 買取再販 | 売却相談へのフォロー | 件数が少なく、担当者が直接追えるうちは不要 |
| 投資用販売 | 資料請求・セミナー後のフォロー | 断られた方への連絡を止める仕組みを必ず入れる |
スコアリングの設計
見込み客の行動に点数を付け、一定を超えたら営業担当に通知します。次は仮置きの例です。
| 行動 | スコア(仮) |
|---|---|
| メール内のリンクをクリック | +3 |
| 物件ページの閲覧 | +5 |
| 資料請求 | +15 |
| 問い合わせフォーム送信 | +20 |
| 内見予約 | 点数に関係なく即通知 |
数か月たったら、実際に内見・申込に進んだお客様が、その前にどんな行動をしていたかを台帳から拾い、点数と通知の線を付け直します。メールの開封は、端末の設定で正しく数えられないことがあるため、点数に入れないか軽く扱います。
不動産会社向けMAツールの比較
| ツール | 特徴 | 向く不動産会社 | 確かめること |
|---|---|---|---|
| HubSpot | 顧客管理と一体で使える | 顧客台帳ごと入れ替えたい会社 | 今の台帳からの移し方 |
| SATORI | 日本製、匿名の訪問者の追跡に強い | 売却・投資用でサイトの訪問者を追いたい会社 | 自社サイトにタグを入れられるか |
| Account Engagement(旧Pardot) | Salesforceの顧客管理と組み合わせて使う | すでにSalesforceを使っている会社 | Salesforce側の契約と設定の担当 |
| BowNow | 中小企業向けで、小さく始めやすい | まず試したい会社 | 自動配信の分岐がどこまでできるか |
| Mailchimp | メール配信に特化 | 月1回のお知らせが中心の会社 | 営業への通知の仕組みは別に要る |
選ぶ順番は、①今の顧客台帳とつながるか → ②メールの自動配信と営業への通知ができるか → ③費用です。機能の多さから選ぶと、使わない機能に費用を払い続けることになります。
料金とプランの中身は改定されるため、最新は各社の公式サイトで確認してください(2026年10月確認)。 中小の不動産会社なら、まずはメールの自動配信と通知ができれば十分です。顧客台帳をすでにkintoneなどで持っているなら、台帳側の通知とメール配信だけで足りるかを先に検討します。
Pardot(Account Engagement)を不動産会社が導入する費用と流れ
PardotはSalesforceのMAで、現在の名前は「Marketing Cloud Account Engagement」です。不動産会社で検討されるのは、すでに顧客管理にSalesforceを使っている場合がほとんどです。
Pardotの費用
Salesforceの公式サイトに載っている月額料金は次のとおりです(税抜・年間契約、2026年10月確認)。
| エディション | 月額(税抜) |
|---|---|
| Growth+ | 150,000円 |
| Plus+ | 330,000円 |
| Advanced+ | 528,000円 |
| Premium+ | 1,800,000円 |
出典:Marketing Cloud Account Engagementの価格(Salesforce公式)。料金は改定されることがあるので、契約前に必ず公式サイトと営業担当に確認してください。
この月額のほかにかかるものも先に並べておきます。
| 費用の項目 | 中身 |
|---|---|
| 顧客管理の契約 | Salesforceの顧客管理(Sales Cloudなど)を使う場合、その利用料 |
| 導入支援 | 初期設定や連携を外部に頼む場合の費用。依頼範囲で大きく変わる |
| コンテンツ制作 | お礼メール、お役立ち記事、物件紹介メールのテンプレート |
| 運用の人手 | シナリオの見直し、配信停止の管理、営業との連携ルールの運用 |
月額だけで比べず、1年間の総額を、追客で取りこぼしていた反響の数と比べて判断してください。取りこぼしの数は、反響台帳で「初回連絡のあと、2回目の連絡をしていないお客様」を数えると出ます。
Pardotの導入の流れ
| 順番 | やること |
|---|---|
| 1 | Salesforceの顧客・反響の項目と、状態の区分(反響〜契約・休眠)を整える |
| 2 | 配信するメールと記事を用意する(シナリオの本数分) |
| 3 | 自社サイトにトラッキングのコードを入れ、フォームをつなぐ |
| 4 | シナリオ1本(反響後のフォロー)だけで始める |
| 5 | 1か月、通知の件数と実際に連絡した件数を週1回並べる |
| 6 | 問題がなければ、売却・投資用のシナリオを足す |
Salesforceを使っていない会社が、Pardotのために顧客管理ごと入れ替えるのは、費用も手間も大きくなります。その場合は、今の台帳(kintoneやExcel)で通知とメール配信だけで足りるかを先に確かめます。→ 不動産の反響・追客管理をkintoneで作る方法
当社でのやり方
代表の宇田川は2014〜2018年、投資用不動産販売会社のバックオフィスで、kintoneで社内アプリを作っていました。そのころから変わらないのは、追客の仕組みより先に、顧客の台帳が1つになっていることが要るという点です。台帳が1つになっていれば、「契約した人に募集を送らない」「断られた人に連絡しない」を仕組みで止められます。
MA導入の注意点
コンテンツの準備が先
配信するコンテンツがなければ意味がありません。最低限、以下を先に準備します。
- お礼メールのテンプレート
- お役立ち記事(シナリオの本数分)
- 物件紹介メールのテンプレート
- 内見予約の案内メール
営業との連携ルール
- 通知を受けたら、いつまでに連絡するか(自社で守れる線)
- 電話かメールかLINEか
- 連絡した結果(つながった・不在・見送り)を台帳に残すこと
最初の1か月は、通知の件数と、実際に連絡した件数を週1回並べてください。
データの衛生管理と配信停止
無効なメールアドレスや古いデータは定期的に整理します。配信停止の申し出が確実に反映されるかは、テストで1回通して確かめます。同意の取り方や停止方法の表示は特定電子メール法などに関わるため、総務省・消費者庁の公表資料と、使うツールの提供元で確認してください。
よくある失敗
契約済みのお客様に募集メールが届き続けた(売買仲介の従業員10名ほどの会社で起きやすい例)——MAに反響を取り込んで自動配信を始めたが、契約はExcelの別台帳に記録していた。契約後も「新着物件のお知らせ」が届き、お客様から苦情が来た。なぜ:MAの中の状態と、実際の契約状況がつながっていなかった。どうすればよかったか:契約を記録する台帳とMAの状態を同期させるか、同期できるまでは自動配信の対象を反響直後のシナリオだけに絞る。
まとめ
- MAが担うのは、送り漏れを無くすことと、動いたお客様を知らせることの2つ
- 導入前に、顧客台帳・状態の区分・引き渡し条件・止める条件を決める
- 売り込みは3通で止める。送る日に変わる情報は自動の本文に書かない
- スコアは仮置きで始め、実際の申込と照らして付け直す
- 検討期間は他社の平均ではなく、自社の台帳で数える
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- kintoneの不動産向け見本(物件台帳・反響/顧客など6アプリ)
よくある質問
中小の不動産会社にMAツールは必要ですか
反響後の追客メールを担当者が手で送っていて、送り漏れが出ているなら検討する価値があります。反響が少なく、担当者が全員の状況を把握できているうちは、顧客台帳と送信の予定表で足ります。どちらの場合も、反響から契約までが1つの顧客台帳にまとまっていることが先です。
MAとLINE公式アカウントはどう使い分けますか
メールは資料や長い情報を送る、LINEは内見予約やリマインドのような短い連絡、と役割で分けるのが基本です。同じお客様に両方から同じ内容が届かないよう、どちらで追うかを顧客台帳に記録します。
スコアリングの点数はどう決めればいいですか
最初は仮の点数で始め、数か月たったら、実際に内見や申込に進んだお客様がその前にどんな行動をしていたかを台帳から拾って付け直します。他社の点数表をそのまま使っても、自社の反響の質には合いません。
Pardot(Account Engagement)の費用はいくらですか
Salesforceの公式サイトでは、いちばん下のGrowth+が月額150,000円(税抜・年間契約)と案内されています(2026年10月確認)。これに加えて、顧客管理に使うSalesforceの契約、初期設定を頼む場合の導入支援費、配信するメールや記事を作る手間がかかります。最新の料金は公式サイトで確認してください。
不動産会社向けのMAツールはどう選べばいいですか
まず顧客台帳をどこで持っているかで絞ります。Salesforceを使っているならPardot、台帳ごと入れ替えるならHubSpot、匿名の訪問者も追いたいならSATORI、小さく試すならBowNowのように、今の台帳とつながるかを最初の条件にします。そのうえで、メールの自動配信と営業への通知ができれば、中小の不動産会社には十分なことが多いです。


