不動産CRMとは何か
CRM(Customer Relationship Management)は、顧客との関係を管理するためのシステムです。不動産業界では、反響から内見、契約、アフターフォローまでの一連の顧客対応を一元管理するために使われます。
Excelや紙の顧客台帳と異なり、CRMでは以下のことが実現できます。
- 顧客情報と対応履歴を一箇所で管理
- 追客のタイミングを自動でリマインド
- 営業活動の進み具合をその場で確認
- 顧客の行動データ(メール開封、サイト閲覧など)を追跡(製品による)
ただし、CRMは入れれば顧客管理が整う箱ではありません。何を1件とし、どの状態で「終わり」とするかを決めないまま入れると、Excelのときと同じ散らかり方をします。
CRM導入で得られる5つのメリット
メリット1:対応漏れがなくなる
CRMにはタスク管理・リマインド機能があります。「3日後にフォロー電話」「1週間後に新着物件を送る」といった追客アクションを知らせてくれるため、対応漏れを防げます。
メリット2:引き継ぎがスムーズになる
営業マンの異動や退職時、CRMに対応履歴が残っていれば、後任者がスムーズに引き継げます。「前の担当者にはこう言われた」というクレームも防止できます。
メリット3:営業会議が効率化する
CRMのダッシュボードを見れば、各営業マンの案件状況がすぐに分かります。「今月の見込み案件は何件?」「追客が止まっている案件は?」を会議の前に把握できます。
メリット4:成約率が向上する
追客の仕組み化により、タイミングの良いアプローチができるようになります。どのくらい成約率が上がるかは、反響の量と追客のやり方で変わります。まずは「反響から初回連絡までの時間」を数えるところから始めると、効果を確かめやすくなります。
メリット5:広告効果の分析ができる
「どの広告媒体からの反響が、最も成約につながっているか」を分析できます。ただし反響元を選択肢で持ち、成約した記録と同じ顧客にひも付けている場合だけです。反響元を自由入力にすると「SUUMO」「スーモ」が別物として数えられ、この分析は永久にできません。
不動産向けCRMの主要サービス比較
| 種類 | 例 | 向いている会社 | 注意すること |
|---|---|---|---|
| 不動産業向けのクラウド | いえらぶCLOUD など | ポータル連動と物件管理を一体で使いたい | 自社の独自の流れに合わせにくいことがある |
| 汎用のCRM・営業支援 | Salesforce、HubSpot など | 設定できる人が社内にいる/Web集客に力を入れる | 不動産の項目は自分で作る |
| 自分で作れる業務アプリ | kintone など | 中小規模で独自の業務の流れがある | 最初の設計を誤ると使われない |
| データベース型のノート | Notion など | 少人数で、まず記録を1か所に集めたい | 権限や集計の細かい制御は苦手 |
料金とプラン、ポータルとの連携の範囲は変わるので、各社の公式サイトで最新を確認し、トライアルで自社の反響データを入れて確かめてください(2026年9月確認)。
CRM選びの4つのポイント
ポイント1:自社の規模と業態に合っているか
売買仲介と賃貸仲介では、業務フローが大きく異なります。業態ごとの違いは次の章の表にまとめます。
ポイント2:現場が使いこなせるか
高機能なCRMでも、現場の営業マンが使わなければ意味がありません。
- 操作が直感的か
- スマートフォンで使えるか
- 入力項目が多すぎないか
導入前に必ず無料トライアルで現場に使ってもらいましょう。
ポイント3:既存ツールとの連携
すでにポータルサイトや物件管理システムを使っている場合、CRMとの連携ができるかを確認します。データの二重入力が発生すると、運用が定着しません。連携ができない場合は、CSVで取り込む手順を誰がいつやるかまで決めてから選びます。
ポイント4:費用対効果
CRMの費用は、月額費用だけでなく以下も考慮します。
- 初期設定・カスタマイズ費用
- データ移行費用
- 研修費用
- オプション機能の追加費用
業態で何が変わるか
| 業態 | 1件の顧客とのつきあい | CRMに必要なこと |
|---|---|---|
| 賃貸仲介 | 短く、件数が多い。繁忙期に集中する | 反響が入った時刻と初回連絡の時刻。担当の振り分け |
| 賃貸管理 | 顧客がオーナーと入居者の2種類。契約が続く | 契約更新・解約の期限。顧客と物件(部屋)のひも付け |
| 売買仲介 | 長い。買主と売主の両方が顧客になる | 次の連絡日と、希望条件の変化の履歴 |
| 買取再販 | 仕入れ(売主・業者)と販売(買主)の両方を追う | 物件ごとに仕入れ側と販売側の記録を分けてつなぐ |
| 投資用販売 | 契約後も入金・管理の連絡が続く | 契約後の記録を同じ顧客に積む |
代表の宇田川が投資用不動産の販売会社でバックオフィス(経理・契約・督促)を担当していたころ、社内のアプリをkintoneで作っていました。販売の顧客は契約で終わらず、その後の入金や督促の記録が続きます。営業だけが使う前提でCRMを選ぶと、契約後の記録の置き場所がなくなります。 契約後に誰が何を記録するかも、選ぶ前に書き出してください。
選ぶ前に決める4つ
製品を比べる前に、次の4つを紙に書きます。これが決まらないうちはトライアルに進みません。
| 決めること | 決め方 |
|---|---|
| 1件を何にするか | 反響1件か、顧客1人か。同じ人の2回目の反響をどう扱うか |
| 反響元の選択肢 | ポータル・自社サイト・来店・紹介など。媒体までにし、キャンペーン名は別の項目に |
| 対応状況と終わり方 | 「成約」と「見送り」の2つの終わり方を持たせる。見送りがないと、追わない顧客が「対応中」のまま残る |
| 誰が入力するか | 反響を受けた人か、担当者か。電話で受けた反響を誰が入れるか |
→ 台帳を1つ決めて記録をぶら下げる考え方はkintoneの教科書 14章 業種別の型に書いています。
CRM導入のステップ
- 現状の課題整理: 何を解決したいかを明確にする
- 要件定義: 必須機能とあれば嬉しい機能を分ける
- サービス選定: 2〜3社に絞って無料トライアル
- 初期設定: マスタデータ・ユーザー設定・権限設定
- データ移行: 既存のExcel等からデータを移行
- 研修: 入力する人全員が、実際に1件ずつ登録してみる
- 運用開始: まず1チームから開始し、段階的に拡大
3のトライアルでは、直近の反響を20件ほど実際に入れて次を確かめます。
| 確かめること | ×なら |
|---|---|
| 反響1件を営業がスマホで入れ終えられるか | 入力項目を減らすか、別の製品に |
| 反響元別の反響数と成約数を並べて出せるか | 広告の判断に使えない |
| 次の連絡日が来た顧客だけを一覧にできるか | 追客の漏れが残る |
| 既存のExcelをそのまま取り込めるか | 移行の作業量を見積もり直す |
よくある失敗
営業10名ほどの売買仲介会社で、高機能なCRMを入れたのに半年でExcelに戻った、という形の失敗があります。起きたことは、入力項目が多く、営業が外出先で入れられずに事務所に戻ってからまとめて入れるようになり、やがて入れなくなったことです。原因は、項目を「後で分析に使えそうなもの」で決め、営業が毎回入れられる量で決めなかったことでした。最初は反響元・対応状況・次の連絡日・担当者くらいに絞り、使われてから足すのが正しい順番です。
当社での顧客管理の持ち方
当社が公開している不動産会社のkintoneの見本では、反響・顧客を物件台帳にぶら下げ、反響元をドロップダウンで持っています。項目の設定は不動産の反響・追客管理をkintoneで作る方法で公開しています。
まとめ
CRMは不動産会社の営業力を底上げするための基盤です。選定のポイントは「高機能かどうか」ではなく「現場が使いこなせるか」です。
- 製品を比べる前に、1件の単位・反響元の選択肢・終わり方・入力する人を決める
- 業態で必要な記録が違う。賃貸管理と投資用販売は契約後の記録まで考える
- トライアルでは自社の反響を実際に入れ、反響元別の成約まで出せるか確かめる
まずは自社の課題を整理し、無料トライアルで試してみることから始めてみてください。
関連リンク
- 不動産DX支援
- 反響管理の属人化を防ぐ3つのポイント
- 不動産の反響・追客管理をkintoneで作る方法
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よくある質問
不動産CRMとは何ですか
CRM(Customer Relationship Management)は顧客との関係を管理するためのシステムで、不動産業界では反響から内見、契約、アフターフォローまでの一連の顧客対応を一元管理するために使われます。顧客情報と対応履歴を一箇所で管理し、追客のタイミングを知らせ、営業活動の進み具合を見える形にします。
CRMを導入すると成約率は上がりますか
追客が仕組み化され、タイミングの良いアプローチができるようになります。ただし、どのくらい成約率が上がるかは反響の量と追客のやり方で変わります。まずは「反響から初回連絡までの時間」を数えるところから始めると、効果を確かめやすくなります。
不動産会社にはどのCRMが向いていますか
会社の規模と業態によって変わります。独自の業務の流れがある中小規模ならkintoneのように自分で作れる道具、ポータル連動と物件管理を一体で使いたいなら不動産業向けのクラウド、Web集客に力を入れるならマーケティング機能のある汎用CRMが候補になります。売買仲介は長期の追客、賃貸仲介は反響対応の速さが重要なので、業態に合うものを選びます。料金は各社の公式サイトで最新を確認してください(2026年9月確認)。
CRM選びで一番大事なポイントは何ですか
「高機能かどうか」ではなく「現場が使いこなせるか」です。操作が直感的か、スマートフォンで使えるか、入力項目が多すぎないかを確認し、導入前に必ず無料トライアルで現場に使ってもらいましょう。あわせて、既存のポータルサイトや物件管理システムと連携できるかも確認します。データの二重入力が発生すると運用が定着しません。
CRM導入はどんな手順で進めますか
現状の課題整理から始め、必須機能とあれば嬉しい機能を分けて要件定義し、2〜3社に絞って無料トライアルを行います。その後、マスタデータ・ユーザー・権限の初期設定、既存Excel等からのデータ移行、入力する人全員が実際に1件ずつ登録してみる研修と進み、まず1チームから運用を開始して段階的に拡大します。


