なぜ不動産会社にkintoneが向いているのか
不動産会社の業務は、物件情報・顧客情報・契約情報など、多くのデータが複雑に関連し合っています。kintoneは、こうしたつながりのあるデータの管理を、プログラミングなしで構築できるクラウドサービスです。
特に中小の不動産会社にとって、kintoneが向いている理由は3つあります。
- 小さく始められる: 最初は数アプリから。ライセンス料は最新をサイボウズ社の公式サイトで確認してください
- カスタマイズが柔軟: 自社の業務フローに合わせた画面を作れる
- 段階的に拡張できる: 最初は物件管理だけ、後から反響管理も追加、という進め方が可能
逆に、ポータルサイトへの自動掲載や、法令に合わせた帳簿の適合判断はkintoneの仕事ではありません。 ポータルとのやり取りはCSVでの一括更新が現実的で、宅建業法の帳簿として使う場合の要件は、国土交通省の公表資料や顧問の宅建士・行政書士に確認してください。
作る前に決める3つ
画面を作り始める前に、次の3つを紙に書きます。ここが決まらないうちは作り始めません。
| 決めること | 分かれ目 |
|---|---|
| 1レコードを何にするか | 部屋で持つか、棟で持つか。賃貸で部屋ごとに募集するなら部屋、売買で1物件1件なら物件 |
| 物件を識別するキー | 物件コード を重複禁止にする。物件名は表記がぶれるのでキーにしない |
| 最初に作る2つ | 物件台帳と、いちばん件数の多い記録(反響か内見)。6つ同時に作らない |
1レコードの単位の決め方は、不動産の物件管理をkintoneで作る方法で詳しく書いています。
物件管理アプリの基本設計
kintoneで物件管理アプリを作る際の基本的なフィールド構成を紹介します。
必須フィールド
| フィールド名 | 種類 | 備考 |
|---|---|---|
| 物件名 | 文字列(1行) | 検索用にわかりやすい名称を |
| 物件種別 | ドロップダウン | 売買/賃貸/事業用 |
| 所在地 | 文字列(1行) | 住所を正規化して入力 |
| 最寄り駅 | 文字列(1行) | 路線名+駅名+徒歩分 |
| 価格/賃料 | 数値 | 単位は万円に統一 |
| 間取り | ドロップダウン | 1R/1K/1DK/1LDK... |
| 専有面積 | 数値 | 平米数 |
| ステータス | ドロップダウン | 募集中/商談中/成約/取下げ |
| 担当者 | ユーザー選択 | kintoneユーザーから選択 |
あると便利なフィールド
- 物件画像: 添付ファイルフィールドで写真を管理
- 備考欄: 内見時の注意点やオーナー情報
- 登録日/更新日: kintoneが自動で記録する項目を一覧に出す
- ポータル掲載状況: チェックボックスでSUUMO・HOME'S等の掲載有無を管理
- 鍵の保管場所・集合場所: 内見のたびに探さないため
業態で何が変わるか
| 業態 | 1レコードの単位 | 台帳に足す項目 |
|---|---|---|
| 賃貸仲介 | 部屋 | 募集条件(賃料・管理費・敷金礼金)、鍵の保管場所、ポータル掲載状況 |
| 賃貸管理 | 部屋(棟の情報はルックアップで引く) | オーナー、入居状況、契約番号。契約・更新は別アプリにぶら下げる |
| 売買仲介 | 物件 | 売主、媒介契約の種類と期限、価格の変更履歴 |
| 買取再販 | 物件 | 仕入価格・リフォーム費用・販売価格。仕入れから販売までの状態 |
買取再販は、物件台帳が収支の台帳を兼ねます。仕入れ・工事・販売の費用を物件コードでつなぐと、1件ごとの粗利が出せます。どこまでをkintoneで持ち、どこから会計ソフトに任せるかは先に線を引いてください(→kintoneの教科書 14章)。
設計時に押さえるべき3つのポイント
ポイント1:ルックアップを活用する
物件情報と顧客情報を紐づける際は、kintoneのルックアップ機能を活用します。ただし、ルックアップの設計順序には注意が必要です。
参照元のアプリ(物件マスタ)を先に作り、参照先のアプリ(反響管理など)を後から作るのが鉄則です。逆にすると、後からフィールドの修正が大変になります。ルックアップはコピーした時点の値を持つので、物件台帳の賃料を直しても、過去の反響の記録は自動では変わりません。これは不具合ではなく「その時の条件」を残すための仕様だと理解しておきます。
ポイント2:ステータス管理を明確にする
物件のステータスは、業務フローに沿って定義しましょう。
募集準備中 → 募集中 → 商談中 → 契約手続中 → 成約 → 引渡済
↘ 取下げ
ステータスが曖昧だと「この物件、まだ募集してるの?」という確認作業が増え、DXの効果が薄れます。
ポイント3:アプリを増やしすぎない
kintoneでやりがちなのが、アプリを細かく分けすぎることです。「物件基本情報」「物件詳細情報」「物件画像管理」のように分けると、データの一覧性が失われます。
COTSUBUでkintone構築を支援する際も、最初の設計でアプリの粒度を慎重に決めています。経験上、1つのアプリに情報を集約し、ビュー(一覧の表示条件)で見え方を変えるのが最も使いやすい設計です。
プラグインで機能を拡張する
kintoneは標準機能だけでも十分使えますが、物件台帳で「入力のぶれ」を止めるにはプラグインが効きます。当社が無料で公開しているものの中で、物件台帳によく使うのは次のとおりです。
| プラグイン | 物件台帳での使い方 |
|---|---|
| 重複チェック Pro | 物件名+部屋番号の組み合わせで二重登録を止める |
| 入力値の整形 | 住所・物件名の全角半角や空白を保存時にそろえる |
| 自動採番 | 物件コードや契約番号を年度ごとの連番で振る |
| 条件付き必須 | ステータスが成約なら成約日を必須にする |
Excel風の一覧編集や帳票出力、外部フォームとの連携には他社の有料プラグイン・サービスがあります。料金と機能は各社の公式サイトで最新を確認してください(2026年9月確認)。入れる前に、標準機能と無料のもので足りないのは何かを1行で書けるかを確かめます。書けないなら、まだ要りません。
導入スケジュールの目安
kintoneでの物件管理アプリ構築は、次の順で進めます。期間は業務の量と、既存データの整い具合で変わります。
- 業務ヒアリング・アプリ設計: 上の「作る前に決める3つ」を決める
- アプリ構築・テストデータ投入: 実際の物件を20件ほど入れてみる
- 社内テスト・修正: 入力する本人に触ってもらい、要らない項目を外す
- データ移行・本番運用開始: Excelの表記ゆれを整えてから取り込む
当社では、最初の1か月で物件台帳と、いちばん件数の多い記録の2つだけを作ります。残りは使いながら足します。
よくある失敗
従業員10名ほどの賃貸仲介会社で、Excelの物件台帳の列をそのまま全部kintoneに移した、という形の失敗があります。起きたことは、項目が多すぎて新規登録が面倒になり、営業が「とりあえずExcelに書いておく」を再開したことです。原因は、Excelの列が「過去に誰かが1回使った列」の積み重ねだったのに、それを仕分けずに移したことでした。移す前に、列ごとに「誰がいつ見て何を決めるか」を言えるかを確かめ、言えない列は移さないのが正しい順番です。移行の進め方は不動産会社のExcel管理からの脱却方法にまとめています。
当社でのやり方
代表の宇田川は2014年からkintoneを使っており、投資用不動産の販売会社でバックオフィスを担当していたころも、社内のアプリをkintoneで作っていました。現在は、不動産会社向けの見本として6つのアプリ(物件台帳・反響/顧客・内見予約・契約・賃貸管理・原状回復/修繕)を不動産会社のkintoneで公開しています。物件名+部屋番号の二重登録防止、契約番号の年度ごとの自動採番(K-FY2026-0001)など、上の表の仕掛けはすべてこの見本で動いています。
まとめ
kintoneは不動産会社の物件管理に非常に適したツールです。ポイントは以下のとおりです。
- 作る前に、1レコードの単位・物件コード・最初に作る2つを決める
- 業態で台帳の項目が変わる。買取再販は収支の台帳を兼ねる
- アプリ設計は「シンプルに、1つにまとめる」が基本。ルックアップの順序に注意する
- 最初から完璧を目指さず、運用しながら改善する
まずは物件管理アプリを1つ作って、社内で試してみることから始めてみてください。当社の構築は1業務1アプリまで最大1か月0円です。
関連リンク
- 不動産DX支援
- 不動産の物件管理をkintoneで作る方法
- 不動産CRMとは?導入メリットと選び方ガイド
- 2026年の不動産テックトレンド5選|業界を変えるテクノロジーの最前線
- AIで物件説明文を自動生成する方法|不動産会社の業務効率化テクニック
よくある質問
kintoneの費用は1か月いくらですか
kintoneのライセンス料は別途サイボウズ社に支払います。料金は1ユーザーごとの月額で、契約できる最小ユーザー数があります。最新の料金はサイボウズ社の公式サイトで確認してください。物件情報・顧客情報・契約情報といったつながりのあるデータの管理を、プログラミングなしで構築できます。
kintoneで物件管理アプリを作るにはどんな項目が必要ですか
物件名、物件種別(売買/賃貸/事業用)、所在地、最寄り駅、価格・賃料、間取り、専有面積、ステータス、担当者が必須の項目です。あわせて、物件画像の添付ファイル、内見時の注意点やオーナー情報を書く備考欄、登録日・更新日、SUUMOやHOME'S等の掲載有無を管理するポータル掲載状況があると便利です。
物件管理はアプリを細かく分けたほうがいいですか
分けすぎないほうがよいです。「物件基本情報」「物件詳細情報」「物件画像管理」のように分けると、データの一覧性が失われます。経験上、1つのアプリに情報を集約し、ビュー(一覧の表示条件)で見え方を変えるのが最も使いやすい設計です。
ルックアップはどの順番で作ればいいですか
参照元のアプリ(物件マスタ)を先に作り、参照先のアプリ(反響管理など)を後から作るのが鉄則です。逆の順序で作ると、後からフィールドを修正するのが大変になります。
kintoneで物件管理を作るのにどれくらいの期間がかかりますか
業務の量と、既存データの整い具合で変わります。進め方は、業務ヒアリングとアプリ設計、構築とテストデータの投入、社内テストと修正、データ移行と本番運用の順です。当社では最初の1か月で物件台帳と、いちばん件数の多い記録(反響など)の2つだけを作り、残りは使いながら足しています。


