CHAPTER 14
kintoneの業種別の型(不動産・建設・製造・自治体)
この章で分かること
- 3業種に共通する骨(台帳・キー・ぶら下がる記録)と、型を自社に当てはめる順番
- 不動産・建設・製造で消える困りごとと、型のどこがそれを止めているか
- どこまでkintoneで足りて、どこから専用システムが要るか。自治体で進めるときの追加の段取り
この章の目次(10)
- 13業種に共通する骨
- 2不動産の型(6アプリ)
- 3建設の型(6アプリ)
- 4製造の型(6アプリ)
- 53業種に共通する、4つの仕掛け
- 6どこから先は、kintoneでやらないか
- 7自治体の型
- 8よくある間違いを5つ
- 9費用について
- 10この章の出口
業種の型といっても、アプリの並びを真似することではありません。型の正体は「台帳を1つ決めて、そこに起きたことをぶら下げる」という同じ骨で、不動産も建設も製造も、これが変わりません。 当社が実際に作った3業種の見本は、どれも台帳1つ+記録5つの6アプリで、キーになる番号が1本通っています。違うのは名前と、業種ごとに必ず出る困りごとの場所だけです。 この章は、その型をそのまま置き、自社の業務に当てはめるときに何を外して何を残すかを決めるための章です。
この章で分かること
- 3業種に共通する骨(台帳・キー・ぶら下がる記録)と、型を自社に当てはめる順番
- 不動産・建設・製造で消える困りごとと、型のどこがそれを止めているか
- どこまでkintoneで足りて、どこから専用システムが要るか。自治体で進めるときの追加の段取り
3業種に共通する骨
見本はすべて同じ形です。最初に作るのは台帳(マスタ)1つ。 台帳には重複禁止のキーを1本置き、そこから先のアプリはすべてそのキーをルックアップで引きます。台帳を開くと、その1件に起きたことが関連レコード一覧で下に並びます(6章)。
| 不動産 | 建設 | 製造 | |
|---|---|---|---|
| 台帳 | ① 物件台帳 | ① 案件台帳 | ① 品目マスタ |
| キー | 物件コード(重複禁止・必須) |
案件番号(重複禁止) |
品番(重複禁止・必須) |
| 番号の形 | 契約に K-FY2026-0001 |
C-FY2026-0001 |
受注 SO-FY2026-0001/指示 MO-FY2026-0001 |
| 台帳に並ぶ履歴 | 内見の予定/契約/修繕履歴 | 見積の履歴/発注と原価/工程/作業日報 | 受注の履歴/入出庫の履歴 |
| ぶら下がる記録 | 反響・顧客/内見予約/契約/賃貸管理/原状回復・修繕 | 見積/発注・原価/工程/作業日報/安全・是正 | 受注/製造指示/工程実績/在庫入出庫/不良・是正 |
番号は年度ごとの連番(FY+4桁、4月始まり)で自動採番しています。ここを手入力にすると、必ず重複と欠番が出ます。
作る順番も3業種で同じです。① 台帳 → ② いちばん件数の多い記録 → ③ その記録から派生するもの → ④ 期限と是正。最初の1か月で作るのは①と②だけで、③以降は使いながら足します(4章)。
不動産の型(6アプリ)
台帳は物件台帳、キーは 物件コード。そこに反響・顧客/内見予約/契約/賃貸管理/原状回復・修繕がぶら下がります。6アプリの並びと、実際に動いている画面は不動産会社のkintoneで公開しています。ここには同じ一覧を書きません。
この章で見るのは、消える困りごとと、型のどこがそれを止めているかの対応です。
| 消える困りごと | 型の中でそれを止めている場所 |
|---|---|
| 物件情報の二重管理 | 台帳を物件1つに決め、物件名+部屋番号 の組み合わせで二重登録を止める |
| 反響の取りこぼし(どの媒体が成約したか読めない) | 反響元 をドロップダウンにし、対応状況=成約なら 成約日・物件コード を必須にする |
| 内見のダブルブッキング | 同じ 担当者 の時間が重なったら、保存前に警告する |
| 更新・解約の期限が人の記憶頼り | 契約終了日 から残日数を出して90日前から色。退去日 の30日前を 解約通知期限 に自動計算 |
| 原状回復の見積が紙とExcel | 明細に行番号を自動。金額 = 数量*単価、見積合計 = SUM(金額) |
2行目が、この型でいちばん効きます。物件台帳の 状況 は 空室/申込あり/入居中、反響の 対応状況 は 新規/対応中/内見済み/成約/見送り。9章で書いたとおり、終わり方を2つ(成約と見送り)持たせているので、追わない顧客が「対応中」のまま残りません。反響元(ポータルサイト/来店/紹介/自社サイト)をドロップダウンにしてあるのは、媒体ごとの成約率を集計するためです。ここを自由入力にすると、その集計は永久に出ません(5章)。
アプリ1つずつの項目と設定値は、業務ごとに分けて書いています。物件台帳の作り方(1レコードを部屋にするか棟にするか)、反響・追客管理の作り方(反響元ごとの成果と初回反応の速さ)、賃貸管理の作り方(契約更新・解約通知の期限から原状回復まで)。
建設の型(6アプリ)
台帳は案件台帳、キーは 案件番号。そこに見積/発注・原価/工程/作業日報/安全・是正がぶら下がります。6アプリの並びと実際の画面は建設会社のkintoneにあります。
| 消える困りごと | 型の中でそれを止めている場所 |
|---|---|
| 見積のExcelが現場ごとに散らばる | 案件番号を自動採番し、見積を案件台帳にぶら下げる |
| 原価が完工まで分からない | 発注・原価を案件番号でひも付け、完工までの残日数(14日前から色)と未払いの行に色 |
| 職人の予定のダブルブッキング | 同じ 担当職人 の予定が重なったら警告。進捗=遅延 は行を赤く |
| 日報が紙で翌週に出てくる | 作業日+作業者名+案件番号 の二重登録を止める |
| 安全書類の是正期限が抜ける | 是正期限 の残日数(3日前から色)。完了にするなら 完了日・確認者 を必須 |
この表に入らないが、建設の型で最も効くのは見積の入力禁止です。提出状況=受注 になったら明細の 単価・数量 を編集不可にします。「受注が決まったあとに見積の単価が書き換わっていて、原価と合わない」は、この設定ひとつで止まります。
作業日報には、5章で触れた注意がそのまま出ます。作業者(ユーザー選択)と 作業者名(文字列・必須)を両方持っているのは、kintoneのアカウントを持たない職人・一人親方が日報を出すからです。ここを「ユーザー選択だけ」で設計すると、現場の半分が入力できません。
業務ごとの作り方は、原価管理の作り方(実行予算と実際原価の差を現場ごとに見る)、工程管理の作り方(職人の重複を防ぐ。ガントチャートは要るのか)、作業日報をスマホ入力にする方法に分けてあります。
製造の型(6アプリ)
台帳は品目マスタ、キーは 品番。そこに受注/製造指示/工程実績/在庫入出庫/不良・是正がぶら下がります。6アプリの並びと実際の画面は製造業のkintoneにあります。
| 消える困りごと | 型の中でそれを止めている場所 |
|---|---|
| 在庫が合わない | 品目マスタ(いま何個あるか)と在庫入出庫(その裏付け)を両方持つ。品番+区分+日付+ロット の二重登録を止める |
| 安全在庫を割っても気づかない | 在庫の余裕 = 在庫数 - 安全在庫 を計算フィールドで持ち、0以下なら一覧で赤く |
| 受注から製造指示への転記 | 品番を選ぶと 品名・標準原価 が入る。完了後は指示数量・工程を編集不可 |
| どの工程で遅れているか分からない | 工程実績を「1枚の指示の・1工程を・1人が・ある時間帯に作業した記録」として持つ。納期までの残日数(7日前から色) |
| 不良の原因が積み上がらない | 生産数 = 良品数 + 不良数。完了にするなら 対策・完了日・確認者 を必須 |
製造の型の肝は、1行目の品目マスタと在庫入出庫の関係です。品目マスタは「いま何個あるか」という結論を持ち、在庫入出庫がその裏付けを1件ずつ持ちます。どちらか片方だけにすると、数が合わなくなったときに原因をたどれません(5章)。そして 在庫の余裕 という計算フィールドを1つ足したことで、色の条件も「安全在庫を割ったか」の判定も、そこ1か所に集まりました。
工程実績の 工程名 が6択のドロップダウン(材料切断/旋盤加工/熱処理/組立/検査/梱包)なのは、工程別に不良率を数えるためです。
業務ごとの作り方は、町工場の生産管理の作り方(ERPが要る場合との線引き)、在庫管理の作り方(入出庫を記録する方式と在庫数を書き換える方式の違い)、工程実績の取り方(現場が入力を続けられる形)に分けてあります。
3業種に共通する、4つの仕掛け
型の中身を並べると、使っている道具はどの業種でも同じ4つに収まります。業種が違っても、困りごとの形は同じということです。
| 仕掛け | 何が防げるか | 3業種での例 |
|---|---|---|
| 年度ごとの自動採番 | 番号の重複・欠番・様式のばらつき | K-(契約)/C-(案件)/SO-・MO-(受注・指示) |
| 残日数+色 | 期限切れに気づかない | 更新90日前/完工14日前/納期7日前/是正期限3日前 |
| 状態が進んだら縛る | 終わったものが書き換わる・根拠が空欄 | 受注後の単価を編集不可/完了なら確認者を必須 |
| 重なりと二重登録を保存前に止める | ダブルブッキング・同じ記録が2件 | 内見と担当者/職人の工程/入出庫のロット/日報 |
閾値(90日・14日・7日・3日)に法則があります。「手を打つのに要る日数」で決めています。 契約更新は通知の期限があるので90日、是正は現場で直すだけなので3日。ここを全部30日などに揃えると、色が意味を失います(8章)。
どこから先は、kintoneでやらないか
型を当てはめるとき、最初に引くのがこの線です。ここを曖昧にしたまま作り始めると、費用も期間も跳ね上がります(1章の失格条件)。
| 業種 | kintoneでやること | 専用システム・外部に任せること |
|---|---|---|
| 不動産 | 物件・反響・内見・契約・賃貸・原状回復の記録 | ポータルサイトとの自動連携(標準ではできない。CSVでの一括更新が現実的)。宅建業法の帳簿は記載事項と保存年限を満たす設計が要り、最終的な適合判断は顧問(宅建士・行政書士等)へ |
| 建設 | 見積・原価・工程・日報・安全の社内管理 | 労務安全書類の提出そのもの(グリーンサイト等)、電子契約。会計ソフトとはCSVでの受け渡しから |
| 製造 | 受注・指示・実績・在庫の記録、遅れと不良に早く気づくこと | MRPでの所要量計算、原価の自動配賦は専用の生産管理システム |
| 共通 | 記録・進捗・期限・集計 | 会計・給与の計算そのもの、法令に従う帳票 |
「会計ソフトの数字をkintoneで見る」のは苦手ではありません。苦手なのは、計算そのものを担わせることです。
自治体の型
自治体は業種というより進め方が違います。 台帳1つ+記録5つという骨はそのまま使えます。増えるのは、作る前に誰と握るかのほうです。
当社は島根県海士町で電子決裁と定期健診管理を構築し、職員と島留学生への研修を行いました。そこで分かったのは、時間を食うのはアプリを作る作業ではないということです。食うのは次の4つです。
| 握ること | 相手 | 民間と違うところ |
|---|---|---|
| 契約と管理者アカウントの名義 | 情報政策担当 | 自治体名義にする。管理者は職員2人以上。事業者が持ったままにしない |
| 決裁・押印の規程との関係 | 総務・文書担当 | 情報政策担当だけでは決められない。規程を直す期間が工程に要る |
| 人事異動の月の手順 | 管理者の職員 | 4月に権限が実態とずれる。外す作業を付ける作業とセットにする |
| 基幹システムとの線 | 所管課 | 重複投資と見られる。手動のCSVの受け渡しから始めて、線を1行で書く |
この4つを点検12項目まで落としたものが、自治体DXの教科書 8章 庁内kintoneの型です。海士町で作った3つのアプリの項目・権限・効果は自治体のkintone活用事例に、1業務単位で発注する場合の費用と進め方は自治体向けkintone構築にあります。同じ説明を2か所に書きません。
閉域網(LGWAN)で使う場合は、プラグインもカスタマイズも外部と通信しないことが条件になります(12章・13章)。
よくある間違いを5つ
1. 型のアプリを全部作ってから始める——6アプリを一度に作ると、現場は何から入力してよいか分からず、どれも半端に埋まります。 → 直し方:台帳と、いちばん件数の多い記録の2つだけで始めます。見本の6アプリも、実務では①②から入れて、③以降は使いながら足す順番です。
2. 専用システムの仕事をkintoneに持ち込む——所要量計算、原価の自動配賦、法定の計算。作り込めばできるように見えて、費用も期間も跳ね上がり、法改正のたびに直すことになります。 → 直し方:線を先に紙に書きます。 「記録はkintone、計算は専用システム、受け渡しはCSV」。これが点検リストの必須項目です。
3. 他社の型の言葉をそのまま使う——「反響」「追客」「工種」「ロット」は会社ごとに指すものが違います。現場の言葉と違う項目名は、入力されません。 → 直し方:型は骨として使い、項目名は自社の言葉に置き換えます。 見本のフィールドコードがすべて日本語なのは、現場が読める名前にするためです(5章)。
4. 業種特有の番号を手入力のままにする——工事番号・契約番号・ロット番号。Excel時代からの様式を引き継いで手で振ると、重複と欠番が出ます。
→ 直し方:採番のルール(接頭辞・年度・桁数・リセット)を決めて、自動採番にします。 見本は C-FY2026-0001 の形で、4月始まりの年度でリセットしています。
5. 現場に見せずに作り込む——事務所で完成させてから現場に出すと、「これは違う」で終わります。特に建設・製造は、入力する人が現場にいます。 → 直し方:画面ができた段階で、入力する本人に触らせます。 スマホで入力する業務なら実機で1件登録してもらう。ここで出る「この項目が要らない」は、いちばん価値のある情報です。
費用について
見本3業種の18アプリは、標準機能と無料プラグイン23本だけで作っています。JavaScriptは1行も書いていません(13章)。つまり、この型をなぞる範囲ではプラグインの追加費用はゼロです。
見本はそのままコピーして使うものではなく、御社の言葉・件数・担当の分け方に合わせて作り直します。kintoneのライセンス料はスタンダードコース 1ユーザー月1,800円(税抜)・最小10ユーザーでサイボウズ社とのご契約、当社の構築は1業務1アプリまで最大1か月0円、使うと決めていただいた段階で月5万円から(最低12ヶ月)です。
実物の画面は 不動産・建設・製造 の各ページで公開しています。
この章の出口
ここまでで、台帳が1つ決まり、キーが1本通り、最初に作る2つが決まり、専用システムとの線が引けました。型の残りは、使いながら足していく部分です。
残っているのは、作ったあとの話だけになりました。この型のとおりに作っても、項目は必ず足りなくなります。一覧の並びは必ず変えたくなります。そのとき直せる人が社内にいなければ、現場は待つのをやめてExcelに戻ります。最後の章は、誰が直すかから始めます。
この章の点検リストを開く(自社の状態を○×で判定する用)
点検リスト:業種の型を自社に当てはめる(8項目)
型を見ながら、自社の業務に○×を付けます。
| # | チェック項目 | ○の条件 |
|---|---|---|
| 1 | 台帳になるアプリが1つ決まっているか | 物件/案件/品目にあたるものが1つ |
| 2 | そのキー(コード・番号)が重複禁止になっているか | 重複禁止が設定済み |
| 3 | 最初に作る2つ(台帳+いちばん件数の多い記録)を決めたか | 決めた。6つ同時に作らない |
| 4 | 専用システムが要る処理に踏み込んでいないか | 所要量計算・原価配賦・法定計算を持ち込んでいない |
| 5 | 既存の基幹システム・会計ソフトとの線引きを書いたか | 書いた(受け渡しはCSVから) |
| 6 | 型のアプリのうち、自社に要らないものを外したか | 外した |
| 7 | 業種特有の番号体系を採番のルールに落としたか | 接頭辞・年度・桁数・リセットが決まっている |
| 8 | 見本の画面を、入力する本人に見せたか | 見せて反応を取った(スマホ入力なら実機で) |
合格ライン=8項目中6つ以上。ただし4は必須(×なら、その部分を切り離して選び直す)。
3と8が×でも着手はできますが、どちらも「作ったのに使われない」に直結します。 6アプリを一度に作って現場に渡した案件は、まず定着しません。
この章に関係する記事
更新日 2018年10月20日
