作業日報が続かない理由は、ほぼ1つです。現場で出せないからです。事務所に戻らないと書けない形にした時点で、日報は「あとでまとめて書くもの」になります。
kintoneのモバイルアプリなら現場から出せます。ただし大事なのは項目を5〜6個まで減らすことで、これをやらないとスマホにしても続きません。実際に動かしている見本は建設会社のkintoneにあります。
紙・LINE・Excelの日報は、何が問題か
| 出し方 | 現場での出しやすさ | あとで困ること |
|---|---|---|
| 紙 | 出しやすい | 事務所で入力し直す。翌週にまとめて出てくることがある |
| LINE・チャット | 一番出しやすい | 集計できない。過去を探せない。書式がばらばら |
| Excel(共有フォルダ) | 出しにくい | 現場から開けない。同時に開けない。ファイルが人ごとに分かれる |
| Excel(1人1ファイル) | まあまあ | 集めるのが手作業。月末に全部開いて足す |
LINEの日報がとくに厄介です。出しやすいので集まるのに、集計だけができないからです。「今月この現場に何人日入ったか」を出すために、スクロールして数えることになります。
日報を貯める目的は3つに整理できます。
- 労務費(誰が何時間、どの現場に入ったか)
- 進捗の記録(何をやったか。あとで揉めたときの根拠)
- 安全の記録(天候、立会い、指摘)
集計が必要なのは1つめだけです。1つめを機械が読める形にして、2つめと3つめは自由記入でよい、と割り切ると設計が決まります。
入力項目を減らす設計
見本の日報アプリは6項目です。これ以上増やすと、現場では出ません。
| 項目 | 種類 | 入力の手間を減らす工夫 |
|---|---|---|
| 作業日 | 日付 | 初期値を「レコード登録時の日付」にする(触らなくてよい) |
| 現場名 | ドロップダウン/ルックアップ | 案件台帳から選ぶ。打ち込ませない |
| 作業者名 | ユーザー選択または文字列 | 初期値をログインユーザーにする |
| 作業時間 | 数値 | 初期値を8にする。違う日だけ直す |
| 天候 | ドロップダウン | 晴・曇・雨・雪の4つ。自由記入にしない |
| 作業内容 | 文字列(複数行) | ここだけ自由記入 |
ポイントは「初期値でほぼ埋まっていて、直すのは1〜2か所」の状態を作ることです。
打ち込ませない
現場名を手で打たせると、「見本邸」「見本邸新築」「見本邸 新築工事」が混ざります。表記がずれると集計できません。選択肢から選ばせるか、案件台帳からのルックアップにしてください(→kintoneルックアップ機能の使い方)。
どうしても手入力が残る項目は、無料プラグイン入力値の整形で前後の空白と全角半角を保存時にそろえておくと、あとの集計が効きます。
前回の入力を引き継ぐ
パソコンなら、詳細画面の「レコードを再利用する」で前回の日報をコピーして日付だけ直せます。モバイルでも同じことをしたい場合は、JavaScriptで初期値を入れます。
(() => {
'use strict';
const SITE = '現場名';
const WORKER = '作業者名'; // 文字列(1行)
const HOURS = '作業時間';
// モバイルとPCの両方で、新規作成画面が開いたとき
kintone.events.on(
['app.record.create.show', 'mobile.app.record.create.show'],
async (event) => {
const r = event.record;
if (r[SITE].value) return event; // 再利用で開いたときは触らない
const me = kintone.getLoginUser().name;
const resp = await kintone.api('/k/v1/records', 'GET', {
app: kintone.app.getId(),
query: `${WORKER} = "${me.replace(/"/g, '\\"')}" order by 作業日 desc limit 1`,
fields: [SITE],
});
if (resp.records.length) r[SITE].value = resp.records[0][SITE].value;
r[WORKER].value = me;
if (!r[HOURS].value) r[HOURS].value = '8';
return event;
}
);
})();
30行ほどです。前回と同じ現場が最初から入っているので、違う現場のときだけ選び直します。モバイル用のJavaScriptは、アプリの設定でPC用とは別の欄にアップロードします(→13章 JavaScript・API・外部連携)。
二重登録を止める
日報でいちばん多い事故は、同じ人が同じ日に同じ現場の日報を2回出すことです。電波が悪くて送信し直した、朝と夕方に分けて出した、という理由で普通に起きます。そのまま集計すると、人日も労務費も水増しされます。
kintone標準の「値の重複を禁止する」では止められません。標準の重複禁止は1つのフィールドにしか設定できないためです。
| 判定したいこと | 標準の重複禁止 | どうするか |
|---|---|---|
| 同じ日報番号が2つある | 使える | 標準でよい |
| 同じ作業日+作業者+現場が2つある | 使えない(3項目の組み合わせ) | プラグインかJavaScript |
| 同じ作業者が同じ日に2つの現場の日報を出す | 使えない(これは正しい登録の場合もある) | 止めない。一覧で気づく形にする |
無料プラグイン重複チェック Proは、複数フィールド(最大5つ)の組み合わせで重複を判定します。設定は4ステップです。
- アプリの設定 →「プラグイン」→「重複チェック Pro」の歯車アイコン
- 「+ ルールを追加」で、判定する項目に「作業日」「作業者名」「現場名」を選ぶ
- 「保存を止める」か「確認して保存できる」かを選ぶ
- 「保存する」→「アプリを更新」
重複している既存レコードへのリンクが出るので、「昨日の分を上書きしたつもりが新規だった」もその場で分かります。重複チェックの考え方はkintoneで重複を禁止・チェックする方法にまとめています。
モバイル対応の、正直な注意
ここは隠さずに書きます。
当社の無料プラグインは、パソコンの画面で動くものです。kintoneのモバイルアプリ・スマホのブラウザには未対応です。
つまり、スマホから日報を出した場合、重複チェック Proは動きません。現実的な対処は次のどれかです。
| 対処 | 向いている場面 |
|---|---|
| 一覧で作業日順に並べ、目で気づく形にする | 日報が1日数件の会社。いちばん手間がない |
| 重複チェックをJavaScript(モバイル用イベント)で書く | 日報が毎日数十件あり、集計の精度が要る |
| 日報の提出はスマホ、確認はパソコンと分ける | 事務担当が毎朝まとめて見る運用がある |
やってはいけないのは、「プラグインが動くからパソコンで出してください」と現場に言うことです。それでは紙に戻ります。スマホで出せることを優先し、重複は運用か個別のJavaScriptで拾ってください。
モバイルで効くもの・効かないものを整理します。
| 機能 | モバイル |
|---|---|
| レコードの登録・編集・写真の添付 | 効く |
| フィールドの初期値・必須・入力制限(標準機能) | 効く |
| 標準の「値の重複を禁止する」(1フィールド) | 効く(サーバー側の判定) |
| 当社の無料プラグイン | 効かない |
mobile. から始まるイベントを書いたJavaScript |
効く |
労務と原価への集計
日報が貯まったら、集計します。kintoneのグラフ機能で作れるものを並べます。
| 見たいもの | 分類する項目 | 集計する項目 |
|---|---|---|
| 現場ごとの投入人日 | 現場名 | レコード数 |
| 現場ごとの労務時間 | 現場名 | 作業時間の合計 |
| 月ごとの推移 | 年月 | 作業時間の合計 |
| 作業者ごとの稼働 | 作業者名 | 作業時間の合計 |
「年月」で集計したい場合は、日付フィールドから 2026-09 の形を自動で作っておくと楽です。無料プラグイン日付計算は、日付から年月・曜日・和暦を別のフィールドへ自動で入れられます。グラフの作り方はkintoneのグラフ・レポート機能にまとめています。
労務費まで出す場合は、職種ごとの標準単価を持ち、作業時間 × 単価 の計算フィールドを置きます。個人ごとの単価を日報に持たせると給与情報になり、閲覧権限の設計が一気に重くなります。案件ごとの原価との突き合わせ方は建設業の原価管理をkintoneで作る方法に書きました。
実際の画面
日報アプリの一覧です。作業日・現場名・作業者名・作業時間・天候・作業内容が並びます。

日報は案件台帳とつながっているので、現場を開けばその現場の日報だけが並びます。

データはすべて架空です。全部の画面は建設会社のkintoneで見られます。
定着させるためのコツ
- 最初の2週間は項目を増やさない。 出してもらうことだけを目標にします
- 出していない人を責める前に、項目を疑う。 出ない日報は、たいてい項目が多すぎます
- 返信する。 コメント機能で「ありがとう」と返すだけで、提出率が変わることが多いです
- 写真は1枚だけ必須にしない。 電波の弱い現場では送信に失敗します。添付は任意にしておくのが無難です
- 集計を毎月見せる。 「入れたものが何に使われたか」が見えないと、入力は止まります
進め方と費用
初回30分で業務を聞き、そこから1〜4週目で構築します。ここまでが0円です(1業務1アプリまで、最大1か月)。1ヶ月後に使うか使わないかを決めていただき、使うと決めた場合だけ月額5万円から(最低12ヶ月)で改善と追加を続けます。kintoneのライセンス料(スタンダードコース 1ユーザー月1,800円・税抜/最小10ユーザー)は別途、サイボウズ社とのご契約です。
まとめ
- 日報が続かないのは、現場で出せないから。まずスマホで出せる形にする
- 項目は5〜6個まで。初期値でほぼ埋まっていて、直すのは1〜2か所にする
- 現場名は打たせない。選択肢かルックアップにしないと集計できない
- 同じ人・同じ日・同じ現場の二重登録は、標準の重複禁止では止められない。重複チェック Proを使う
- 無料プラグインはパソコンの画面のみ対応。 スマホ入力を優先し、重複は運用かモバイル用JavaScriptで拾う
- 集計は現場ごとの人日と作業時間から。労務費は職種ごとの標準単価で出す
→ 建設会社のkintone(実際の画面つき) → kintone導入支援の詳細 → 建設業の工程管理をkintoneで作る方法 → 工程実績(作業時間・良品数・不良数)をkintoneで取る方法
よくある質問
現場の職人がスマホから日報を出せますか
出せます。kintoneのモバイルアプリ(iOS・Android)から登録できます。入力項目を5〜6個まで絞り、選択式と初期値を使えば、現場で1分ほどで出せる形になります。
同じ人が同じ日に同じ現場の日報を二重に出すのを止められますか
無料プラグインの重複チェック Proで、複数フィールドの組み合わせ(作業日+作業者名+現場名)の重複を保存前に止められます。ただしこのプラグインはパソコンの画面で動くもので、モバイルには未対応です。
kintone標準の「値の重複を禁止する」では足りませんか
足りません。標準の重複禁止は1つのフィールドにしか設定できないため、「作業日+作業者名+現場名」のような組み合わせを表せません。ただし標準の重複禁止はサーバー側の判定なので、設定できる場面ではモバイルでも効きます。
日報の作業時間から労務費を出せますか
出せます。作業時間に職種ごとの標準単価を掛ける計算フィールドを置き、現場ごと・月ごとにグラフ機能で集計します。個人ごとの単価を持つと給与情報になるので、職種単位の標準単価にする設計が多いです。
作るのにいくらかかりますか
構築は1業務1アプリまで最大1か月0円です。使うと決めていただいた場合だけ、月額5万円から(最低12ヶ月)で改善と追加を続けます。kintoneのライセンス料(スタンダードコース 1ユーザー月1,800円・税抜/最小10ユーザー)は別途、サイボウズ社とのご契約です。


