反響管理で最初に決めるべきなのは、「反響元」を選択肢にすることと、「受付日時」と「初回対応日時」の2つを持つことの2点だけです。この2つがないと、出稿の判断も、対応の速さの改善も、あとから数字で語れません。
対応状況を細かく作り込むのはそのあとで構いません。数えられない項目を増やしても、追客は速くなりません。
実際に動かしている見本は不動産会社のkintoneにあります。この記事は、その中の「反響・顧客」をどう設計したかの話です。
反響が散っているときに起きること
| 詰まるところ | 現場で起きること |
|---|---|
| ポータルの反響は担当者のメール、電話はメモ | 「今月、反響が何件来たか」を集めるのに1日かかる |
| 反響元を自由入力している | 「SUUMO」「スーモ」「suumo」が混ざり、集計できない |
| 初回連絡した時刻を残していない | 「すぐ折り返した」の基準が人によって違う |
| 対応状況が担当者の頭の中にある | 担当が休むと、誰も続きを引き取れない |
| 成約したことが顧客側に残らない | どの反響が成約したのか、媒体別に数えられない |
最後の一行が、出稿費の判断を止めています。反響数は数えられていても、成約まで紐づいていないことがほとんどです。
反響・顧客アプリに持つ項目
見本の反響・顧客アプリは、次の項目で動いています。
| 項目 | 型 | 役割 |
|---|---|---|
| 顧客番号 | 文字列1行(必須・重複禁止) | 内見予約・契約はこの値でつなぐ |
| 顧客名 | 文字列1行(必須) | ー |
| 電話番号・メール | 文字列1行 | 形の確認は入力形式チェックで |
| 反響元 | ドロップダウン | ポータルサイト/来店/紹介/自社サイト |
| 希望条件 | 文字列複数行 | エリア・間取り・予算 |
| 対応状況 | ドロップダウン | 新規/対応中/内見済み/成約/見送り |
| 成約日 | 日付 | 成約にしたときだけ必須(後述) |
| 担当者 | ユーザー選択 | 絞り込み・集計に使う |
| 物件コード | ルックアップ(物件台帳) | 成約した部屋。物件名が自動で入る |
反響元をドロップダウンにするのが、この記事で一番言いたいことです。フリーテキストにした瞬間、表記ゆれで集計ができなくなります。媒体を増やすときは選択肢を足します(既存レコードの値は変わりません)。

反響元ごとの成果を数える
反響元がドロップダウンなら、kintoneのグラフ機能だけで数えられます。作るのは2つです。
| グラフ | 設定 |
|---|---|
| 反響数 | 集計方法=レコード数、分類項目=反響元、期間で絞り込み |
| 成約数 | 同じ設定に「対応状況 = 成約」の絞り込みを足す |
成約率は、この2つを並べて割り算します。kintoneのグラフは2つの集計の比を1枚では出せません。比まで自動で出したい場合は、集計結果を別アプリに月次で書き出すか、JavaScriptで計算することになります。グラフ機能の使い方はkintoneのグラフ・レポート機能にまとめています。
ここで出た数字を出稿費と突き合わせる話はポータルサイトの費用対効果を数字で見るに書きました。
反響元は「媒体」だけにする
「SUUMOの◯◯キャンペーン」のようにキャンペーン名まで反響元に入れると、選択肢が増え続けて集計が細かくなりすぎます。反響元は媒体、キャンペーンは別フィールドに分けてください。
初回反応までの時間を持つ
反響への初回反応が早いほうがよい、というのは言われますが、自社が実際に何時間かかっているかを知らないまま改善はできません。数えるには、2つの日時が要ります。
| 項目 | 型 | 入れ方 |
|---|---|---|
| 受付日時 | 日時 | 反響が来た時刻。転記時に手入力するか、フォームからの登録時に自動で入れる |
| 初回対応日時 | 日時 | 電話・メールで最初に連絡した時刻。ボタンで入れると現実的 |
| 初回反応時間 | 数値(時間) | 上の2つの差。自動で入れる |
作成日時をそのまま受付日時に使わないでください。ポータルの反響を翌朝まとめて転記していると、作成日時は「転記した時刻」になり、実態より短く出ます。
差を自動で入れる(JavaScript)
標準の計算フィールドは、日時フィールドの差を時間で出せません。保存時に入れます。
(() => {
'use strict';
const FROM = '受付日時'; // 日時フィールド
const TO = '初回対応日時'; // 日時フィールド
const DEST = '初回反応時間'; // 数値フィールド(単位:時間)
const events = [
'app.record.create.submit',
'app.record.edit.submit',
'app.record.index.edit.submit',
];
kintone.events.on(events, (event) => {
const rec = event.record;
const from = rec[FROM] && rec[FROM].value;
const to = rec[TO] && rec[TO].value;
if (!from || !to) {
rec[DEST].value = '';
return event;
}
const diffMs = new Date(to).getTime() - new Date(from).getTime();
if (diffMs < 0) {
event.error = '初回対応日時が受付日時より前になっています';
return event;
}
rec[DEST].value = String(Math.round((diffMs / 3600000) * 10) / 10); // 0.1時間単位
return event;
});
})();
30行ほどです。数値で入れておくと、一覧の並べ替えも、担当者別・反響元別の平均もグラフ機能で出せます。JavaScriptの入れ方は13章 JavaScript・API・外部連携にまとめています。
なお、この値は保存した時点の計算結果です。あとから受付日時を直したら、もう一度保存し直す必要があります。
対応状況の持ち方
見本では、対応状況をドロップダウン(新規/対応中/内見済み/成約/見送り)にしています。
| やり方 | 向いている場面 | 注意 |
|---|---|---|
| ドロップダウン | 状況が前後する追客。誰でも戻せる | 誰が次に動くかは決まらない |
| プロセス管理 | 承認・引き継ぎを伴う流れ | 前の状態に戻すのに設定が要る。選択肢の追加も影響が大きい |
追客は「内見済み → 再提案 → 内見済み」のように行ったり来たりします。プロセス管理で縛ると、現場が実態と違う状態のまま放置するようになります。プロセス管理の考え方はkintoneのプロセス管理に書きました。
放置されている反響を、色で出す
数字が並んでいても、人は見ません。見てほしいものだけ色を変えるのが、追客を続けるコツです。
条件書式で「対応状況 が 新規 と等しい」行に色を付ければ、一覧を開くだけで未対応が浮き上がります。次に動く日を持たせている場合は、期限・残日数で「次回連絡予定日」までの残日数を出し、過ぎたものを赤くする形も使えます。色の付け方はkintoneの一覧で条件に合う行に色を付ける方法に詳しく書きました。
成約にしたときだけ、項目を必須にする
成約の記録が抜けると、反響元ごとの成果が数えられません。かといって成約日を常に必須にすると、新規の反響を登録できなくなります。
「対応状況が成約なら、成約日と物件コードを必須にする」を、条件付き必須の設定だけで作れます。手順は4つです。
- アプリの設定 →「プラグイン」→「条件付き必須」の歯車アイコン
- 「+ ルールを追加」で「もし 対応状況 が 成約 と等しいなら」を作る
- 必須にする項目に「成約日」「物件コード」を選ぶ
- 「保存する」→「アプリを更新」
未入力のまま保存しようとすると、項目の下に「必須です(『対応状況』が『成約』と等しいため)」と理由が出ます。理由が出ることが大事で、ただ止まるだけだと現場は別の値を入れて逃げます。条件付き必須の考え方はkintoneで条件によって必須項目を変える方法にまとめています。
内見予約とのつなぎ
内見予約は反響・顧客とは別アプリにします。1人の顧客が何度も内見するためです。顧客のサブテーブルに持つと、日付での絞り込みも担当者別の集計もできなくなります(→6章 複数アプリのつなぎ方)。
つなぎ方は2つです。
- ルックアップ:内見予約で顧客番号を選ぶと顧客名が入り、物件コードを選ぶと物件名・住所が入ります(→kintoneルックアップ機能の使い方)
- 関連レコード一覧:物件台帳を開くと、その部屋の内見予定が下に並びます

担当者のダブルブッキングを止める
同じ担当者の予定が重なると、当日になって気づきます。期間重複チェックで、開始・終了が重なる予定を保存前に検出します。見本では「保存を止める」ではなく「確認して保存できる」にしています。物件を2件続けて案内するときなど、意図的に近い時間に入れることがあるためです。
10:00〜11:00 の次に 11:00〜12:00 は入れられます(日時の場合、終了と次の開始が同時刻なら重ならない扱いが既定)。判定の考え方はkintoneで予約のダブルブッキングを防ぐ方法に詳しく書きました。
内見予約そのものをお客様側から取れるようにする話(オンライン予約・リマインド)は内見予約管理のデジタル化に、追客を属人化させない運用の話は反響管理の属人化を防ぐ3つのポイントに分けて書いています。
正直に言っておく限界
| 限界 | どうするか |
|---|---|
| 反響メールの自動取り込みは標準にない | 転記の運用にするか、フォーム経由での登録にする。自動化は運用が固まってから |
| ステップメールの自動配信は標準にない | 次回連絡予定日を持ち、一覧で拾って人が送る形から始める |
| 成約率の比を1枚のグラフで出せない | 反響数と成約数の2枚を並べる。比が要るならJavaScriptか月次の集計アプリ |
| 顧客情報は個人情報 | 担当者以外に見せない場合はアプリ単位・レコード単位の権限を設計する(→kintoneの権限設計) |
| 無料プラグインはパソコンの画面のみ対応 | 外出先からの登録はkintoneのモバイルアプリで。プラグインの判定は事務所のPCで |
重要事項説明や契約に関わる記録をこの台帳で兼ねる場合は、宅地建物取引業法上の要件を満たすかの確認が必要です。最終的な適合判断は御社の顧問(宅建士・行政書士等の専門家)にご確認ください。
進め方と費用
初回30分で業務を聞き、その場で画面の形を出します。そこから1〜4週目で構築し、動くアプリを現場の声で直します。ここまでが0円です(1業務1アプリまで、最大1か月)。1ヶ月後に使うか使わないかを決めていただき、使うと決めた場合だけ月額5万円から(最低12ヶ月)で改善と追加を続けます。
kintoneのライセンス料(スタンダードコース 1ユーザー月1,800円・税抜/最小10ユーザー)は別途、サイボウズ社とのご契約です。使い続けるといくらかかるかは2章 費用の全体像にまとめています。
まとめ
- 反響元はドロップダウンにする。フリーテキストにした時点で集計できなくなる
- 受付日時と初回対応日時の2つを持ち、差を数値で入れる。作成日時で代用しない
- 対応状況は行ったり来たりするのでドロップダウン。プロセス管理は承認を伴う流れ向き
- 成約したときだけ成約日と物件を必須にする(条件付き必須)
- 内見予約は別アプリ。担当者の重なりは期間重複チェックで保存前に気づく
- 未対応の反響は条件書式で色を付ける
- 個人情報を持つアプリなので、権限の設計を後回しにしない
→ 不動産会社のkintone(実際の画面つき) → 不動産の物件管理をkintoneで作る方法 → 賃貸管理(入居中〜退去・原状回復)をkintoneで作る方法 → 反響管理の属人化を防ぐ3つのポイント → 建設業の工程管理をkintoneで作る方法 → 不動産業のDX(全体の考え方) → kintone導入支援の詳細 → kintone無料プラグイン一覧
よくある質問
kintoneで不動産の顧客管理(反響管理)はできますか
できます。反響・顧客アプリを1つ作り、反響元・希望条件・対応状況・担当者を持たせ、内見予約と契約を顧客番号でつなぐ形になります。専用CRMのような自動メール配信は標準にはありませんが、「どの媒体から来た反響がどうなったか」を数えるところまでは作れます。
反響元ごとの成約率はどうやって出しますか
反響元をドロップダウンにしておけば、kintoneのグラフ機能(集計)で反響元ごとのレコード数が出ます。成約数は対応状況で絞り込んでから同じ集計をかけます。反響元をフリーテキストで書いていると集計できないので、選択肢にしておくことが前提です。
初回反応までの時間は計測できますか
受付日時と初回対応日時の2つを持てば計測できます。標準の計算フィールドは日時の差を時間で出せないため、JavaScriptか日付系のプラグインで別フィールドに入れる形になります。作成日時をそのまま受付日時として使うと、ポータルから転記した時刻とずれる点には注意が必要です。
対応状況はドロップダウンとプロセス管理のどちらがよいですか
追客の状況を頻繁に前後させるならドロップダウンが扱いやすいです。プロセス管理は「誰が次に動くか」を決める機能なので、承認や引き継ぎを伴う流れに向きます。反響の追客は行ったり来たりするため、見本ではドロップダウンにしています。
作るのにいくらかかりますか
構築は1業務1アプリまで最大1か月0円です。使うと決めていただいた場合だけ、月額5万円から(最低12ヶ月)で改善と追加を続けます。kintoneのライセンス料(スタンダードコース 1ユーザー月1,800円・税抜/最小10ユーザー)は別途、サイボウズ社とのご契約です。


