株式会社COTSUBU
不動産DX

不動産DXの型3パターン|小規模でもできるデジタル化の進め方

宇田川 将也|6
不動産DX中小企業業務改善kintoneDXの進め方

大企業だけがDXできるわけではない

DXの話題というと、大手不動産会社のAIやIoT活用が紹介されがちです。しかし中小の不動産会社でも、身の丈に合ったやり方で十分に効果は出ます。

この記事では、従業員10名以下の不動産会社が現実的に取り組める不動産DXを、3つのパターンに整理して紹介します。いずれも高額なシステム投資を前提とせず、既存のツールの組み合わせで組めるものです。

なお、ここに書くのは「こういう構成が組める」という型の説明です。実際にどれだけ改善するかは、今の業務のやり方と反響量によって変わります。

パターン1:反響管理をkintoneに集約する

向いている会社

  • 業種: 賃貸仲介
  • 規模: 従業員10名以下(営業と事務が分かれている)
  • 反響をExcelや紙で管理している

よくある課題

  • 反響をExcelで管理しているが、対応漏れが起きる
  • 営業マンごとに追客のやり方がバラバラ
  • 月末の反響集計に事務スタッフが丸一日かかる
  • 「あの反響、誰が対応してる?」の確認に毎日時間がかかる

組む仕組み

kintoneで反響管理アプリを作り、次の要素を載せます。

施策 内容
反響の一元管理 ポータルサイト・自社サイト・電話の全反響をkintoneに集約
ステータス管理 未対応→連絡済→内見済→成約の進捗を可視化
期限アラート 未対応が24時間を超えるとSlack通知
追客テンプレート 連絡メールのテンプレートをkintoneに登録
自動集計 反響数・成約率をリアルタイムでグラフ表示

何が変わるか

  • 対応漏れが「気づいたら放置されていた」から「アラートで拾える」状態になる
  • 誰がどの反響を持っているかが、聞かなくても分かる
  • 月末に手で集計していた数字が、常に見えている状態になる
  • 追客の質が人によってばらつきにくくなる

成約率のような最終的な数字がどこまで動くかは、反響の量と質、営業体制によって変わります。まず効果が出やすいのは「対応漏れが減る」「集計の手間が消える」という、作業そのものが無くなる部分です。

進め方のポイント

最初からすべてを作り込まないことです。まず「反響の一元管理」だけで始め、運用が回ってから追客テンプレート、その次にアラートと足していきます。段階的に追加した方が、現場が無理なく慣れます。

パターン2:LINE公式アカウントを連絡手段に加える

向いている会社

  • 業種: 賃貸・売買仲介
  • 規模: 従業員10名以下
  • 反響後の連絡が電話とメール中心

よくある課題

  • 反響後の連絡は電話が中心だが、つながらないことが多い
  • メールを送っても開かれない
  • 若い世代の顧客との連絡手段が合っていない
  • 追客の電話を嫌がる営業マンがいる

組む仕組み

LINE公式アカウントを開設し、反響後の連絡手段として使います。

  • 反響後の初回連絡をLINEメッセージで実施
  • 物件情報をカード形式でLINE配信
  • 内見予約もLINE上で完結する仕組みを構築
  • ステップ配信で自動追客を設定

費用はLINE公式アカウントの公表プラン料金の範囲で始められます(配信数が少ないうちは無料枠、増えたら有料プラン)。

何が変わるか

一般にメールよりチャットの方が読まれやすく、電話より相手の時間を奪いません。反響から初回接触までの時間が短くなり、営業マンが電話をかけ直し続ける時間が減ります。

進め方のポイント

営業マンの個人LINEではなく公式アカウントを使います。個人アカウントだと退職時に顧客との接点ごと失われます。またお客様には「LINEでも、メールでも、電話でも、ご希望の方法で連絡します」と選択肢を示し、強制感を避けます。

パターン3:Googleツールでバックオフィスを整える

向いている会社

  • 業種: 不動産管理
  • 規模: 従業員10名以下
  • 書類が紙、報告書が手作業

よくある課題

  • 社内の書類がすべて紙ベースで、探し物に時間がかかる
  • オーナーへの報告書を毎月手作業で作成している
  • 入金管理をExcelで行い、照合に時間がかかる
  • 社員間の連絡が電話とメールのみで、情報の共有漏れが発生する

組む仕組み

Google Workspaceを軸に、バックオフィス業務をデジタル化します。

施策 ツール 内容
ファイル管理 Google Drive 全書類をクラウドに移行
社内連絡 Google Chat 物件別のチャットスペースを作成
入金管理 Google Sheets + Apps Script 銀行明細のCSV取込→自動照合
オーナー報告書 Google Docs + Apps Script テンプレートから自動生成
スケジュール Google Calendar 全員の予定を共有

何が変わるか

書類を探す時間と、毎月決まった形で作っている報告書の作成時間が、まとめて削れます。ここは「人が手で転記していた作業を機械に置き換える」タイプなので、効果が読みやすい領域です。逆に、判断が要る業務は自動化しても時間はあまり減りません。

進め方のポイント

Google Apps Script(GAS)でスプレッドシートの処理を自動化するのが要になります。プログラミングの経験がなくても、生成AIにGASのコードを書かせて動かすところまでは現実的に届きます。ただし、動いた後に誰も中身を理解していない状態にならないよう、何をしているスクリプトなのかは残しておいてください。

3つのパターンに共通する考え方

  1. 高額なシステムに頼らない: kintone、LINE、Googleなど、月額数千〜数万円のツールで組める
  2. 小さく始める: 最初から全業務をデジタル化せず、1つの業務から着手する
  3. 現場が使いやすいことを優先する: 高機能よりも「毎日使える」シンプルさ
  4. 効果を自社で測る: 導入前の状態を記録しておき、後から比較できるようにする
  5. 継続的に改善する: 導入して終わりではなく、運用しながら直す

4番目が抜けやすいところです。導入前の作業時間や対応漏れの件数を控えていないと、後から「良くなった気がする」以上のことが言えなくなります。

まとめ

不動産DXに、大きな予算や高度なIT知識は必須ではありません。

  • 自社の最大の課題を特定する
  • その課題を解決できるシンプルなツールを選ぶ
  • 小さく始めて、効果を確認しながら拡大する

この記事で紹介した3パターンは、いずれも月額数千〜数万円のツールで組める範囲です。「うちにもできるかも」と感じたら、まず最も困っている業務から着手してみてください。どこから手をつけるべきか判断がつかない場合は、現状の整理からご相談いただけます。


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宇田川 将也/ 代表取締役

2024年に総務省の地域活性化起業人として島根県海士町に着任。役場に住み込んで業務改善に従事し、kintoneで電子決裁や定期健診管理を構築しました。

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