株式会社COTSUBU
不動産DX

不動産DXの始め方|まず何から手をつけるべきか

宇田川 将也|8分
DXの始め方不動産DXデジタル化中小企業業務改善

「DXを始めたいけど、何からやればいいかわからない」

これは、不動産会社の経営者からよくいただく相談です。DXという言葉は知っている。必要性も感じている。でも、具体的な第一歩がわからない。

この記事は、そんな方のために書きました。難しいことは後回しにして、今日からできる「最初の一歩」を具体的にお伝えします。

まず「DX」の定義をシンプルにする

DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉は大げさに聞こえますが、本質はシンプルです。

「アナログでやっている業務を、デジタルツールに置き換えて、もっと楽に、もっと正確に、もっと速くする」

これだけです。AIやIoTのような最先端技術を導入することだけがDXではありません。Excelの手入力をやめてクラウドツールに変える。紙の書類をPDFにする。電話連絡をチャットに変える。これらもすべてDXです。

DXを始める前にやるべきこと:業務の棚卸し

ツールを探す前に、まず社内の業務を棚卸ししましょう。以下のテンプレートを使って、主な業務を書き出します。

業務 現在の方法 困っていること 頻度 関わる人数
物件情報管理 Excel 最新版がわからない 毎日 5人
反響対応 メール+メモ 対応漏れがある 毎日 3人
契約書作成 Word手入力 転記ミスがある 週2〜3回 2人
月次集計 Excel手集計 丸1日かかる 月1回 1人
社内連絡 電話+メール 伝達漏れがある 毎日 全員

書き出したら、「困っていること」が大きく、「頻度」が高く、「関わる人数」が多い業務から優先的にデジタル化を検討します。棚卸しを何のためにやり、どこまでで止めるかは教科書 業務の棚卸し 1章にまとめています。

「困っていること」の欄は、人の名前ではなく起きていることで書いてください(×「Aさんの入力が遅い」→○「同じ物件情報を3か所に入力している」)。人の名前が入った表を配ると、次から本当の困りごとが出てこなくなります。

業態で変わる「最初の一歩」

3つのアクションは共通ですが、どこに一番効くかは業態で変わります。

業態 最初に困りやすい業務 最初の一歩で優先すること
売買仲介 反響の追客漏れ、長い検討期間の記録 反響の一元管理(アクション3)と次回連絡日
賃貸仲介 反響の量、内見の日程調整 チャットでの情報共有(アクション1)と反響の一元管理
賃貸管理 入居者対応、更新・退去の期限管理 部屋ごとのファイル整理(アクション2)と期限の一覧
買取再販 仕入れ判断の記録、工事と販売の進み具合 物件ごとのフォルダと、仕入れ理由を書き残す欄

賃貸管理では、更新や解約通知の期限を落とすことが一番痛い失敗です。期限は人の記憶ではなく、一覧から毎週確認する形にしてください。

最初の1ヶ月で実行する3つのアクション

アクション1:ビジネスチャットを導入する(所要時間:1日)

社内連絡を電話やメールからチャットに変えると、「言った・言わない」が記録に残り、外出中の営業にも同じ情報が届きます。

おすすめ:

  • Chatwork: 日本企業向け、タスク管理機能付き、無料プランあり
  • LINE WORKS: LINEに慣れた社員なら即座に使える
  • Slack: チャンネル機能で情報整理がしやすい

導入のコツ:

  • 全社員のアカウントを作成する
  • 「物件情報」「反響対応」「雑談」などチャンネル(グループ)を作る
  • 「業務連絡はすべてチャットで」というルールを宣言する
  • 最初の1週間は電話も併用し、徐々にチャットに移行
  • お客様の個人情報をどこまで書くかを先に決める(迷ったら個人情報保護委員会の資料や顧問に確認)

アクション2:クラウドストレージでファイルを共有する(所要時間:2〜3日)

デスクトップやUSBに散在しているファイルを、Google DriveまたはOneDriveに集約します。

手順:

  1. Google WorkspaceまたはMicrosoft 365のアカウントを開設
  2. フォルダ構成を決める(物件資料/契約書/社内書類/営業資料)
  3. 既存ファイルをクラウドにアップロード
  4. アクセス権限を設定する
  5. 「ファイルは必ずクラウドに保存する」ルールを徹底

アクション3:反響をGoogleスプレッドシートで一元管理する(所要時間:半日)

本格的なCRMの前段階として、Googleスプレッドシートで反響を一元管理します。

作成する項目:

  • 反響日時
  • お客様名
  • 連絡先
  • 流入元(SUUMO/HOME'S/自社サイト/電話/来店)
  • 担当者
  • ステータス(未対応/連絡済/内見済/成約/見送り)
  • 次回アクション日
  • メモ

これだけで「全体で何件反響があり、どんな状態か」を全員が把握できるようになります。

流入元とステータスは、自由入力にせず選択肢にしてください。 「SUUMO」「スーモ」「suumo」が混ざると、月末に数えられなくなります。1か月続けると、流入元別の反響数が手に入ります。

1か月の進め方

週 やること 次に進む条件
1週目 チャットのアカウント作成、部屋を3つだけ作る 全員が1回は書き込んだ
2週目 1部署の共有ファイルをクラウドに移す 探せない・開けないが出ていない
3週目 反響の表を作り、新しい反響から入れる 入力漏れがその日のうちに気づける
4週目 流入元別・ステータス別に数えてみる 数字が出た。困ったことを1枚に書いた

過去の反響をさかのぼって入れる作業から始めないでください。新しいものから入れ、過去分は必要になってから足します。

2〜3ヶ月目以降のステップ

最初の3つのアクションが定着したら、次のステップに進みます。

ステップ2:反響管理を本格化する

Googleスプレッドシートでの反響管理に限界を感じたら、kintoneやCRMの導入を検討します。スプレッドシートで運用した経験があると、「何が必要で何が不要か」が明確になっているため、ツール選定がスムーズです。

移る目安は次のどれかに当てはまったときです。

  • 同じ表を2人が同時に直して、内容が消えたことがある
  • 次回連絡日を過ぎた反響を、毎朝自分で探している
  • 反響・内見・契約を別々の表で持ち、同じお客様を何度も入力している

当社がkintoneで公開している不動産向けの見本は、物件台帳・反響/顧客・内見予約・契約・賃貸管理(入居)・原状回復/修繕の6アプリで、内見の時間が重なると警告する仕組みや、物件名と部屋番号の二重登録を防ぐ仕組みを入れています。

ステップ3:集客のデジタル化

Googleビジネスプロフィールの最適化(MEO対策)から始めます。無料で始められ、地域からの集客に即効性があります。

ステップ4:営業の可視化

反響数、成約率、広告効果などの数字をダッシュボードで可視化します。ステップ1で選択肢を揃えていないと、ここで数字が合わなくなります。

よくある失敗

よくあるのが、従業員10名ほどの売買仲介会社が、最初から高機能なCRMを契約する形です。項目が多すぎて入力が続かず、営業は結局手元のメモに戻り、システムには古いデータだけが残ります。原因は、自社に必要な項目が分からないうちに道具を選んだことです。スプレッドシートで1〜2か月回し、実際に使った項目だけを持って選べば、この失敗は起きにくくなります。

よくある質問

Q: ITに詳しい社員がいないのですが、できますか?

A: できます。この記事で紹介した3つのアクションは、いずれもITの専門知識がなくても実施できます。困ったときは、ツールのヘルプページやYouTubeの解説動画を参考にしてください。それでも難しい場合は、IT顧問に相談するのも一つの手です。

Q: 社員が新しいツールを嫌がりそうです

A: 最初は抵抗があって当然です。大切なのは、「なぜ変えるのか」を丁寧に説明すること。「みんなの仕事を楽にするために変える」というメッセージを、経営者自身の言葉で伝えてください。

Q: どのくらいの費用がかかりますか?

A: 最初の3つのアクションであれば、小さな費用で始められます。料金は改定があるため、最新は各社の公式サイトで確認してください(2026年9月確認)。

アクション 費用のかかり方
チャットツール 無料プランがある製品が多い。有料はユーザー数ごと
クラウドストレージ ユーザー数ごとの月額が中心
反響管理スプレッドシート 既存のアカウントで作れる

Q: 補助金は使えますか?

A: 国や自治体の補助金を使える可能性があります。名称・対象・補助率は年度ごとに変わるため、契約の前に公募要領で確認してください(→DXに使える補助金まとめ)。

まとめ

不動産DXの始め方は、3つのアクションから。

  1. ビジネスチャットを導入する(社内連絡のデジタル化)
  2. クラウドストレージでファイルを共有する(情報の一元管理)
  3. 反響をスプレッドシートで管理する(営業の可視化)

この3つは、いずれも小さな費用で始められ、ITの専門知識も不要です。

大切なのは、「完璧な計画を立ててから始める」のではなく、「まず1つやってみる」ことです。今日の帰りに、チャットツールのアカウントを作ることから始めてみてください。


関連リンク

よくある質問

不動産DXはまず何から手をつければいいですか

ツールを探す前に、社内の業務を棚卸しするところから始めます。業務・現在の方法・困っていること・頻度・関わる人数を書き出し、困りごとが大きく、頻度が高く、関わる人数が多い業務から優先的にデジタル化を検討します。最初の1か月で取り組むなら、ビジネスチャットの導入、クラウドストレージでのファイル共有、反響のスプレッドシート管理の3つです。

最初の一歩にはいくらかかりますか

最初の3つのアクションは小さな費用で始められます。チャットツールは無料プランがある製品が多く、クラウドストレージは1ユーザーごとの月額が中心、反響管理のスプレッドシートは既存のアカウントで作れます。料金は改定があるため、最新は各社の公式サイトで確認してください。

ITに詳しい社員がいなくてもDXはできますか

できます。ビジネスチャット、クラウドストレージ、反響のスプレッドシート管理という最初の3つのアクションは、いずれもITの専門知識がなくても実施できます。困ったときはツールのヘルプページやYouTubeの解説動画を参考にし、それでも難しい場合はIT顧問に相談する方法もあります。

社員が新しいツールを嫌がりそうな場合はどうすればいいですか

最初は抵抗があって当然だと考えてください。大切なのは「なぜ変えるのか」を丁寧に説明することです。「みんなの仕事を楽にするために変える」というメッセージを、経営者自身の言葉で伝えてください。

IT導入補助金は使えますか

国や自治体の補助金を使える可能性があります。ただし名称・対象・補助率は年度ごとに変わり、申請前に契約したものは対象外になることが多いため、契約の前に公募要領で最新の条件を確認してください。

宇田川 将也/ 代表取締役

2024年に総務省の地域活性化起業人として島根県海士町に着任。役場に住み込んで業務改善に従事し、kintoneで電子決裁や定期健診管理を構築しました。

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