株式会社COTSUBU
不動産DX

不動産会社のクラウド化ガイド|ファイル管理から始めるDXの第一歩

宇田川 将也|8分
クラウドファイル管理不動産DXGoogle WorkspaceMicrosoft 365

「うちのサーバー、壊れたらどうしよう」

社内にファイルサーバーやNASを設置して、物件写真や契約書を管理している不動産会社は多いです。しかし、機器の故障、ウイルス感染、災害による損失のリスクを常に抱えています。

クラウド化とは、社内のデータやシステムをインターネット上のサービスに移行することです。不動産会社にとってクラウド化は、DXの最も基本的な第一歩です。

クラウド化で変わること

項目 オンプレミス(社内サーバー) クラウド
初期費用 サーバー・NASの購入、設置 ほぼ不要
運用費用 電気代、保守費用 月額利用料
アクセス 社内LANのみ どこからでも
バックアップ 自社で実施 自動
障害対応 自社で対応 サービス提供者が対応
セキュリティ 自社で管理 設備は提供者、設定と権限は自社
拡張性 ハードウェア追加が必要 プラン変更で即対応

クラウド化のステップ

ステップ1:ファイル管理のクラウド化

最も導入しやすく、効果を実感しやすい施策です。

おすすめサービス:

サービス 向いている会社 特徴
Google Drive (Google Workspace) Gmailやスプレッドシートを使っている Googleサービスとの連携
OneDrive (Microsoft 365) Word・Excelが業務の中心 Officeとの統合
Dropbox 写真・動画など大きいファイルが多い シンプルな操作性
Box 権限や操作記録を細かく管理したい 管理機能が充実

容量と料金はプランごとに違い、改定もあるため、最新は各社の公式サイトで確認してください(2026年9月確認)。不動産会社では物件写真のデータ量が大きくなりがちです。選ぶ前に、今の共有フォルダの容量を測っておきます。

どれを選ぶかの分かれ目は、メールと表計算を何で使っているかです。Gmailとスプレッドシートが中心ならGoogle、Outlookと Excel が中心ならMicrosoftを選ぶと、アカウントが1つにまとまり、退職時の停止も1か所で済みます。

フォルダ構成の例:

📁 会社共有
  📁 物件資料
    📁 売買
      📁 2026年
        📁 [物件名]
    📁 賃貸
  📁 契約書
    📁 2026年
  📁 営業資料
  📁 社内書類
    📁 マニュアル
    📁 稟議書

フォルダ構成を決めるときは、次の3つを先に決めてください。

  • 物件フォルダの名前の付け方(例:「所在地_物件名_部屋番号」)。人によって付け方が違うと、同じ物件のフォルダが2つできます
  • 記録は日付から始める(例:「2026-09-22_重説.pdf」)。並べ替えるだけで時系列になります
  • 「最新版」「修正版」を名前に付けない。版はクラウドの履歴機能に任せ、ファイルは1つにします

パスワードや口座情報のような秘密の情報は、物件フォルダに混ぜず、権限を絞った別の場所に置きます。置き場所のルールを先に1枚に書くと、移行後に散らかりません。

ステップ2:メールのクラウド化

社内メールサーバーを運用している場合は、クラウドメールに移行します。

  • Google Workspace(Gmail): シンプルで使いやすい
  • Microsoft 365(Outlook): Outlookに慣れている会社に最適

クラウドメールに移行することで、スマホからのメール確認、大容量の添付ファイル送受信、スパムフィルタリングが標準で利用できます。

ステップ3:業務システムのクラウド化

物件管理、顧客管理、会計などの業務システムもクラウド化を検討します。

  • 物件管理: kintone、不動産業向けの専用システム
  • 顧客管理: kintone、HubSpot
  • 会計: freee、マネーフォワード
  • 勤怠管理: ジョブカン、KING OF TIME

業務システムは、ファイル管理と違って業務の流れそのものを決める道具です。先に「誰が・何を・どの順で」入力するかを書き出してから選んでください。当社のkintone不動産向け見本は、物件台帳・反響/顧客・内見予約・契約・賃貸管理(入居)・原状回復/修繕の6アプリで、物件名と部屋番号の二重登録を防ぐ仕組みや、退去日から解約通知の期限を出す計算を入れています。

ステップ4:社内コミュニケーションのクラウド化

電話やメールだけの社内連絡から、ビジネスチャットに移行します。

  • Slack: チャンネル(話題別の部屋)で情報整理
  • Chatwork: 日本企業に人気、タスク管理機能付き
  • Microsoft Teams: Microsoft 365ユーザーに最適
  • LINE WORKS: LINEに慣れた社員に導入しやすい

業態で変わること

業態 多いファイル 先に決めること
売買仲介 物件資料・謄本・重説・契約書 物件ごとのフォルダ名。取引が終わった物件の移し先
賃貸仲介・賃貸管理 入居申込・契約・更新・退去時の写真 部屋単位のフォルダ。更新・退去の書類をどこに足すか
買取再販 仕入れ資料・工事写真・見積・販売資料 仕入れから販売までを1物件1フォルダで通すか

賃貸管理は部屋ごとに書類が何年も積み上がるので、物件の下に部屋、部屋の下に入居者(契約)の順で切ると探しやすくなります。代表の宇田川は投資用不動産の販売会社でバックオフィス(経理・契約・督促)を担当していました。その経験からも、契約と入金の記録は物件と部屋の単位でたどれる形にしておくことをおすすめします。督促や更新のたびに探す手間が変わります。

クラウド移行の手順

順番 やること 判断の分かれ目
1 今の共有フォルダの容量とファイル数を測る 容量がプランの上限に近いなら、写真を別にする
2 置き場所のルールを1枚に書く 書けないうちは移行しない
3 不要なファイルを消す・古い取引を別にまとめる 残すか迷う書類は、保存期間を所属団体や顧問に確認
4 1部署だけ先に移し、2週間使う 探せない・開けないが出たらルールを直す
5 全社で移し、古いサーバーは読み取り専用にする 一定期間だれも開かなければ停止を決める

古いサーバーを移行直後に止めないことが大事です。読み取り専用で残しておけば、移し漏れがあっても取り戻せます。

クラウド移行時の注意点

データ移行の計画を立てる

  • 移行対象のデータ量を把握する
  • 不要なファイルは事前に整理する
  • 移行スケジュールを決める(週末に一括移行など)
  • 移行後の動作確認期間を設ける

アクセス権限を設定する

クラウドではアクセス権限の管理が重要です。

  • 経営者のみ: 経営資料、財務データ
  • 管理者: 契約書、社内規程
  • 営業マン: 物件資料、営業資料
  • 全社員: マニュアル、連絡事項

セキュリティ対策を行う

  • 二要素認証の設定(必須)
  • パスワードポリシーの策定
  • 退職者のアカウント即時削除
  • 外部共有のルール策定(オーナーや取引先に渡すリンクは期限付きにする、など)

よくある失敗

よくあるのが、従業員10名ほどの賃貸仲介会社が、共有フォルダの中身をそのままクラウドにコピーする形です。「最新」「修正版」「コピー」の付いたファイルが並んだまま移り、どれが正しい契約書か分からない状態がクラウドでも続きます。さらに社外に渡した共有リンクが無期限のまま残ります。原因は、移行を「ファイルの引っ越し」と捉え、置き場所のルールを決めなかったことです。手順の2番目(ルールを1枚に書く)を先にやり、名前の重複を整理してから移せば防げます。

探す時間や、同じ書類が2か所にある状態をどう見つけるかは、教科書 業務の棚卸し 6章にまとめています。

よくある不安と回答

Q: クラウドにデータを預けて大丈夫? A: 設備の管理や暗号化、複数拠点への複製は提供者側が行います。ただし事故の多くは利用者側の設定から起きるので、二要素認証と共有のルールは自社で守る必要があります。

Q: インターネットが使えなくなったら? A: 多くのクラウドサービスにはオフラインで使う機能があり、事前に設定したファイルはネット接続がなくても開けます。また、万が一の際は、テザリング(スマホの回線をPCに共有)で対応可能です。

Q: 費用が高くなりませんか? A: 会社によって違います。社内サーバーの購入・買い替え、電気代、保守費、障害対応にかかる時間と、クラウドの人数分の月額を、同じ期間の総額で比べてください。

まとめ

クラウド化は不動産DXの基礎中の基礎です。

  • まずはファイル管理のクラウド化から始める
  • メール、業務システム、社内コミュニケーションと段階的に進める
  • アクセス権限とセキュリティ対策を忘れない

まずは1部署の共有フォルダから、置き場所のルールを書いて試してみてください。


関連リンク

よくある質問

不動産会社のクラウド化は何から始めればいいですか

ファイル管理のクラウド化からです。最も導入しやすく、効果を実感しやすい施策です。その後にメール、業務システム、社内コミュニケーションの順で段階的に進めます。

クラウドストレージの費用はどれくらいかかりますか

多くのサービスが1ユーザーあたりの月額制で、容量や管理機能によってプランが分かれます。料金と容量は変わりやすいので、最新は各社の公式サイトで確認してください。不動産会社は物件写真でデータ量が大きくなりがちなので、今の共有フォルダの容量を先に測り、容量の上限と、1ファイルの上限に注意して選んでください。

クラウドにデータを預けて大丈夫ですか

大手クラウドサービスは、データセンターの物理的な管理、データの暗号化、複数拠点への複製などを提供者側で行っています。一方で、事故の多くは利用者側の設定から起きます。二要素認証、退職者アカウントの即日停止、外部共有リンクのルールを自社で決めて守ることが前提です。顧客の個人情報の扱いは、個人情報保護委員会の資料や顧問に確認してください。

社内サーバーよりクラウドのほうが費用は高くなりませんか

会社によって違うので、同じ期間の総額で比べてください。社内サーバーは機器の購入・買い替え、電気代、保守契約、障害対応にかかる社員の時間が発生します。クラウドは初期費用が小さい代わりに、人数分の月額が続きます。5年程度の総額を並べ、バックアップと障害対応を誰が担うかも含めて判断します。

インターネットが使えなくなったらファイルは見られませんか

多くのクラウドサービスにはオフラインで使う機能があり、事前に設定したファイルはネット接続がなくても開けます。万が一の際は、スマホの回線をPCに共有するテザリングでも対応できます。

宇田川 将也/ 代表取締役

2024年に総務省の地域活性化起業人として島根県海士町に着任。役場に住み込んで業務改善に従事し、kintoneで電子決裁や定期健診管理を構築しました。

経歴を見る

この記事について相談する

貴社・貴団体の状況に合わせて、最適な進め方をご提案します。

30分相談を予約する