DXの費用がわからないから踏み出せない
不動産会社の経営者がDXに二の足を踏む理由の一つが、「結局いくらかかるのかわからない」ということです。
先にお伝えすると、不動産DXの「相場」は一律には出せません。 人数、業態、対象業務、既存データの整い具合で、同じ「物件管理のシステム」でも金額が大きく変わるからです。
この記事では、金額そのものの代わりに、費用が何で決まるかと、自社の予算を自分で出す方法を項目別に整理します。
DX費用の全体像
不動産DXの費用は、大きく4つのカテゴリに分かれます。
| カテゴリ | 内容 | 金額が決まる要素 |
|---|---|---|
| SaaS・クラウドサービス | 月額利用料 | 使う人数、契約件数、プラン |
| システム構築・カスタマイズ | 初期開発費用 | アプリの数、外部連携の有無、データ移行の量 |
| コンサルティング・支援 | IT顧問、導入支援 | 月の打ち合わせ回数、実作業を含むか |
| 社内体制 | 研修、マニュアル整備、担当者の時間 | 使う人数、社内で担う範囲 |
4つ目の社内の時間は、見積書に載りません。 入力ルールを決め、データを移し、社員に教える時間を0と置いた予算は、途中で崩れます。
カテゴリ別の詳細費用
1. SaaS・クラウドサービスの月額費用
ツールの料金は改定が多く、プランの区切りも各社で違うため、ここでは金額を載せず課金の単位を整理します。最新は各社の公式サイトで確認してください(2026年9月確認)。
| ツール種別 | サービス例 | 課金の単位 |
|---|---|---|
| グループウェア | Google Workspace / Microsoft 365 | ユーザー数 |
| ビジネスチャット | Slack / Chatwork | ユーザー数(無料プランあり) |
| クラウドストレージ | Google Drive / Dropbox | ユーザー数と容量 |
| 物件管理 | kintone / 不動産業向けの専用システム | ユーザー数、または店舗・物件数 |
| CRM | kintone / HubSpot | ユーザー数、連絡先の数 |
| 会計ソフト | freee / マネーフォワード | プラン(機能)とユーザー数 |
| 電子契約 | クラウドサイン など | 月額+送信件数 |
| MA | HubSpot / BowNow | 連絡先の数、機能 |
| LINE公式アカウント | LINE | 月の配信数 |
月額の目安の出し方: 使う予定のツールを並べ、「単価×人数(または件数)」を足します。件数で課金されるもの(電子契約の送信、LINEの配信)は、直近1年の契約件数や配信対象の人数から見積もってください。
2. システム構築・カスタマイズ費用
| 項目 | 内容 | 見積もりが増える条件 |
|---|---|---|
| kintoneアプリ構築 | 物件管理・反響管理など | アプリ同士の連携、計算・自動採番、プラグインの設定 |
| 自社サイトリニューアル | デザイン・開発・CMS構築 | ページ数、物件検索機能、原稿を誰が書くか |
| ポータル連携開発 | API連携・データ自動取得 | 相手側の仕様確認が必要、連携先の数 |
| ダッシュボード構築 | Looker Studio等での可視化 | 元データの形がばらばら |
| 業務自動化(RPA等) | 定型業務の自動化 | 画面の変更への追従、例外の多さ |
どの項目も、元のデータと業務のルールが整っているほど安くなります。
3. コンサルティング・支援費用
| サービス | 内容 | 比べるときに確かめること |
|---|---|---|
| IT顧問(月次) | 月1〜2回のミーティング+相談 | 相談だけか、設定などの実作業も含むか |
| DXコンサルティング | 全体設計・ロードマップ策定 | 成果物が何か(計画書だけか、動くものまでか) |
| ツール導入支援 | 選定・設定・データ移行 | データ移行の件数と、移行後の修正の範囲 |
| 運用サポート | 月次の改善支援 | 月に何件まで直してもらえるか |
IT顧問の選び方は不動産会社がIT顧問を持つべき3つの理由にまとめています。
4. 社内体制の構築費用
| 項目 | 内容 | 社内でやる場合の手間 |
|---|---|---|
| 社員研修 | ツールの操作研修 | 1回の説明+最初の2週間の質問対応 |
| マニュアル作成 | 業務マニュアルの整備 | 入力のルールを1枚にまとめる |
| セキュリティ研修 | 情報セキュリティ教育 | 権限・共有・退職時の手順の確認 |
会社規模別のDX予算モデル
規模ごとの金額は前提次第で大きく変わるため、ここではどの費目を予算に入れるかを示します。
| 規模 | 予算に入れる費目 | 優先施策 |
|---|---|---|
| 小規模(1〜5名) | ツールの月額、1業務分の構築費、社長か事務担当の時間 | クラウド化、反響管理のデジタル化 |
| 中規模(5〜15名) | 上に加えて、IT顧問か運用サポート、研修 | CRM導入、営業ダッシュボード、Web集客 |
| 大規模(15名以上) | 上に加えて、システム開発、外部連携、全体設計 | 基幹システムの見直し、MA、データ分析基盤 |
自社の予算は、次の式に数字を入れて出してください。
1年目の総額 = ツールの月額 × 人数 × 12
+ 初期の構築費
+ 支援費(月額 × 12)
+ 社内の担当者の時間(時間 × 社内の時間単価)
kintoneの費用を2年分で出す型は教科書 kintone 2章 費用に詳しく書いています。
業態で変わる費用のかかり方
| 業態 | お金がかかりやすいところ | 抑えやすいところ |
|---|---|---|
| 売買仲介 | 反響・追客の管理、自社サイトや広告 | 契約件数が少なければ電子契約の送信費 |
| 賃貸仲介・賃貸管理 | 入居者・更新・修繕の管理、電子契約の件数 | 物件説明文などの下書き(AIで足りる) |
| 買取再販 | 物件ごとの原価・工事・販売の管理 | 大規模なMAや配信の仕組み |
賃貸管理は、管理戸数が増えるほど更新・退去・修繕の記録が積み上がるため、件数で課金される道具を選ぶと、戸数とともに費用も増えます。 課金の単位を先に確かめてください。
投資対効果の考え方
効果は3つの観点で見ますが、始める前の数字が無いと、どれも後から説明できません。
| 観点 | 始める前に数えること | 比べ方 |
|---|---|---|
| 1. 時間の削減 | 対象業務の件数、1件あたりの手数、やり直しの回数 | 導入後に同じ数え方で比べる |
| 2. 売上の増加 | 流入元別の反響数、成約数 | 前年の同じ月と比べる(季節の影響を除く) |
| 3. コストの削減 | 紙・印刷・郵送・保管の実費 | 請求書や購買記録から拾う |
時間を金額に換算する方法は、時間単価の置き方で結果が大きく変わるため、社内の説明では手数や件数の変化で示すほうが確実です。効果の測り方は教科書 業務の棚卸し 11章にまとめています。
見積もりを比べる手順
- 対象の業務を1つに絞る(例:反響管理)。複数を一度に見積もると比べられない
- 今のやり方と件数を1枚に書く(誰が、何で、月に何件)
- 同じ紙を2〜3社に渡して見積もりを取る
- 初期費用だけでなく、2年間の総額で並べる
- 「やめたいときに、データをどの形で持ち出せるか」を聞く
当社は代表の宇田川が2014年からkintoneに携わり、不動産向けに物件台帳・反響/顧客・内見予約など6アプリの見本を公開しています。これを自社の業務に合わせる形なら、構築は最大1か月0円で、使うと決めた場合だけ月5万円から(税別・最低契約12ヶ月)です。
よくある失敗
よくあるのが、従業員10名ほどの売買仲介会社が、初期費用の安さだけで物件管理システムを選ぶ形です。1年ほどたって、反響の管理や帳票を足すたびに追加費用が発生し、2年の総額では他の候補より高くなります。原因は初期費用だけを比べ、2年間の総額と追加の条件を並べなかったことです。見積もりを取る段階で「この機能を足すといくらか」を聞いておけば防げます。
費用を抑えるコツ
- 無料プランやトライアルを活用: 実際の業務を1週間流してから決める
- 補助金を検討: 国や自治体の補助金は年度ごとに名称・対象・補助率が変わるため、公募要領で最新を確認する(→DXに使える補助金まとめ)
- 段階的に導入: 一度に全部入れず、優先度の高い1業務から
- 過剰な機能を避ける: 「将来使うかも」で高額プランを契約しない
まとめ
不動産DXの費用は、会社規模や導入範囲によって大きく異なります。
- 相場表に頼らず、「月額×人数×12+構築費+支援費+社内の時間」で自社の数字を出す
- 見積書に載らない社内の時間を、必ず予算に入れる
- 投資対効果は、始める前に件数と手数を数えておく
- 見積もりは1業務に絞り、2年間の総額で比べる
「DXは高い」というイメージは、比べる材料が無いことから来ていることが多いです。まずは1業務だけ、自社の数字で予算を出してみてください。
関連リンク
- 不動産DX支援
- 2026年の不動産テックトレンド5選|業界を変えるテクノロジーの最前線
- AIで物件説明文を自動生成する方法|不動産会社の業務効率化テクニック
- 不動産DXの始め方|まず何から手をつけるべきか
よくある質問
不動産DXには年間いくらかかりますか
会社の人数、業態、どの業務までデジタル化するかで大きく変わるため、一律の相場は出せません。「ツールの月額×人数×12か月」「初期の構築費」「支援費」「社内の担当者が使う時間」の4つを足して、自社の数字で出してください。最初は1業務だけで出すと、見積もりの比較がしやすくなります。
不動産DXの費用は何に分かれますか
大きく4つです。SaaS・クラウドサービスの月額利用料、システム構築・カスタマイズの初期費用、IT顧問や導入支援などの支援費、研修やマニュアル整備などの社内体制づくりです。見落としやすいのは4つ目の社内の手間で、見積書には載りません。
kintoneで物件管理を作るといくらかかりますか
kintone本体のライセンスと構築費用の2つがかかります。ライセンスは1ユーザーごとの月額で、契約できる最小ユーザー数があり、サイボウズ社に直接支払います。最新の価格はサイボウズ社の公式サイトで確認してください。構築費は作るアプリの数と外部連携の有無で変わります。当社の構築は1業務1アプリまで最大1か月0円で、使うと決めた場合だけ月5万円から(税別)です。
DXの投資対効果はどう測ればいいですか
始める前に、対象業務の件数・手数・やり直しの回数を数えておき、導入後に同じ数え方で比べます。時間を金額に換算する方法は前提がぶれやすいため、まず手数や件数の変化で見るのが確実です。反響や成約の増減は、広告や季節の影響も受けるので、同じ時期と比べてください。
DXの費用を抑える方法はありますか
無料プランやトライアルで実際の業務を試すこと、国や自治体の補助金を検討すること、優先度の高い1業務から段階的に入れること、「将来使うかも」で高額プランを契約しないことの4つです。補助金は年度ごとに名称・対象・補助率が変わるので、公募要領で最新を確認してください。


