株式会社COTSUBU
不動産DX

不動産会社がIT顧問を持つべき3つの理由|DX推進のパートナー選び

宇田川 将也|7分
IT顧問CTO代行不動産DXDX推進IT人材

不動産会社にIT部門がないのは当たり前

不動産会社、特に中小規模の会社には、専任のIT担当者がいないケースがほとんどです。社長や事務スタッフが「なんとなくITに詳しい人」として、パソコンのトラブル対応からシステム選定まで兼任しています。

しかし、ポータル・顧客管理・電子契約・会計と使う仕組みが増えるほど、IT投資の判断を専門知識なしに行うのは危うくなります。「営業マンに売らせるのは得意だけど、ITのことはよくわからない」という経営者は少なくありません。

そこで選択肢になるのが、IT顧問(CTO代行) です。

IT顧問が要る会社・要らない会社

先に、置くべきかどうかの分かれ目を書きます。

状態 判断
契約中のシステム・ツールが3つ以上あり、誰が管理者か即答できない 置く価値がある
今後1年以内に、基幹システムの入れ替えや数百万円規模の発注を控えている 発注前から置く
見積が1本あるだけで、それ以外の相談ごとはない 顧問ではなく単発の見積診断で足りる
社内に判断できる担当者がいて、相談相手だけがいない 月1〜2回の定例で足りる。常駐は要らない

「困ったときに聞ける人」を月額で抱える必要があるかは、判断が必要な案件の数で決まります。 案件が年に1回なら、そのときだけ外部に頼むほうが安く済みます。

IT顧問を持つべき3つの理由

理由1:ITベンダーとの交渉力が上がる

不動産会社がシステム会社やSaaSベンダーと商談する際、IT知識の非対称性が問題になります。

  • 本当に必要な機能がわからず、過剰なプランを契約してしまう
  • 見積もりの妥当性が判断できない
  • 「技術的に難しい」と言われると反論できない

IT顧問がいれば、ベンダーの提案内容を技術的な視点でレビューし、要らない機能を外したり、同じことを別の方法で実現できないかを問えたりします。削れる額は見積によって違うので、効果は「診断の前後で見積額がどう変わったか」で自社で確かめてください。

理由2:DXの全体設計ができる

DXは単にツールを導入することではありません。業務フロー全体を見直し、どの業務をどの順番でデジタル化するかの設計が必要です。

IT顧問は、不動産業務の全体像を理解した上で、以下のような設計を行います。

  • 現状の業務フローの可視化
  • ボトルネックの特定
  • ツール選定と導入優先順位の策定
  • システム間連携の設計
  • 段階的なロードマップの作成

業務のどこから手を付けるかの決め方そのものは、業務棚卸しの教科書 1章にまとめています。

理由3:社内のITリテラシーが向上する

IT顧問は単にシステムを導入するだけでなく、社員のITリテラシー向上にも貢献します。

  • 新しいツールの使い方を社員に教える
  • 「なぜこのツールを使うのか」を丁寧に説明する
  • 社員からのIT関連の質問に答える
  • セキュリティ意識を高める

外部のIT顧問だからこそ、社内の力関係に関係なく、客観的なアドバイスができます。

業態で頼むことが変わる

同じ「IT顧問」でも、業態によって相談の中心が違います。

業態 相談の中心になりやすいこと
売買仲介 反響管理と追客の仕組み、査定書の作り方、広告費と反響の突き合わせ
賃貸仲介・賃貸管理 入居者・契約・更新・退去の管理、オーナー報告書、修繕の手配と記録
買取再販 仕入れ判断の材料集め、物件ごとの収支管理、リフォーム工程の管理
投資用販売 顧客への追客と契約書類、入金・督促の管理、広告の運用

代表の宇田川は2014〜2018年、投資用不動産販売会社のバックオフィスで経理・契約・督促を担当し、kintoneで社内アプリを作っていました。そのころ困ったのは、ツールの選定よりも「どの契約を誰が管理していて、いつ更新なのかが誰にも分からない」ことでした。業態が違っても、最初に一覧を作る必要がある点は変わりません。

最初の3か月でやること

時期 やること 出るもの
1か月目 使っているシステム・アカウント・契約を洗い出す 契約一覧(管理者・費用・更新日)
1か月目 退職者のアカウントや共有パスワードが残っていないか確認する 止めるアカウントの一覧
2か月目 困りごとを業務ごとに書き出し、数えられるものは数える 着手する業務の候補
2〜3か月目 最初の1業務を決め、見積を取る/作る 発注するか自作するかの判断

ベンダーに見積の中身を確認するときは、次の文面を使ってください。

いただいたお見積について、判断のため次の3点を教えてください。
1. 各項目の作業内容と、想定している工数
2. 月額費用のうち、使う人数やデータ量で変わる部分
3. 契約を終えるときに、データをどの形式で受け取れるか

3つ目が抜けやすい項目です。解約時にデータを持ち出せない契約は、あとで乗り換えられなくなります。

IT顧問の活用範囲

IT顧問は、以下のような幅広い領域をカバーします。

領域 具体的な内容
ツール選定 CRM、物件管理、会計ソフトなどの選定支援
システム構築 kintoneアプリの構築、Webサイト改善
セキュリティ 情報漏洩対策、パスワード管理の指導
インフラ クラウド移行、Wi-Fi環境の整備
マーケティング Web広告、SEO、SNS活用のアドバイス
業務改善 ペーパーレス化、承認フローのデジタル化

宅建業法や個人情報保護法に当たるかどうかの判断は範囲外です。そこは顧問の宅建士・弁護士や所属団体に確認し、IT顧問はその結論を仕組みに落とす役割と考えてください。

COTSUBUでは社外CxO・IT顧問として、月額制のIT顧問をお引き受けしています(月2回の定例+チャット相談で月15万円から、税別)。まず見積の妥当性だけを見てほしいという場合は、単発の見積診断を5万円から承っています。

IT顧問の選び方

選定基準1:業界理解があるか

ITの知識だけでなく、不動産業界の商慣習やワークフローを理解しているかが重要です。レインズ、ポータルサイトの仕組み、宅建業法の基本など、業界特有の知識がないと的外れな提案になりがちです。

選定基準2:技術とビジネスの両方がわかるか

「技術的に最先端のもの」が最適とは限りません。自社の規模や予算に合った、現実的な提案ができる人を選びましょう。

選定基準3:小さく始められるか

最初から大きな契約を求めるIT顧問は要注意です。まずは月1〜2回のミーティングから始め、信頼関係を築きながら徐々に範囲を広げていくのが理想的です。

選定基準4:ベンダーロックインがないか

特定のツールやサービスの販売代理店を兼ねているIT顧問は、中立的なアドバイスが難しくなります。あくまでクライアントの立場で最適な選択肢を提案してくれる人を選びましょう。

契約形態の違い

契約形態 内容 向いている会社
月1〜2回の定例 定例+メールやチャットでの相談 判断が必要な案件が月に数件ある
週1回の定例 定例+手を動かす支援 導入や移行のプロジェクトが動いている
常駐型 週に数日、社内で推進 複数のプロジェクトを同時に進めている

料金は依頼先と関与の量で大きく変わるため、相場より「月に何回・何をしてもらうか」を先に決めて、複数から見積を取るほうが確実です。中小の不動産会社なら、月1〜2回の定例から始めて足りなければ増やす順番で十分です。

よくある失敗

従業員10名ほどの賃貸仲介会社で、IT顧問が提案資料だけを出し続ける、という形の失敗です。 毎月の定例で改善案は出るものの、作る人が社内にいないため、半年たっても何も変わりませんでした。原因は、契約の時点で「誰が手を動かすか」を決めていなかったことです。助言だけの顧問を選ぶなら社内に実行担当を置く、置けないなら実行まで引き受ける相手を選ぶ、のどちらかに決めてから契約してください。

まとめ

不動産会社がIT顧問を持つ理由は、ITベンダーとの交渉力、DXの全体設計、社内ITリテラシーの向上の3つです。

  • 判断が必要な案件の数で、顧問か単発診断かを決める
  • 最初の仕事は契約とアカウントの一覧づくり
  • 法令の判断は宅建士・弁護士へ。IT顧問はそれを仕組みに落とす
  • 助言だけか実行までかを、契約前に決める

フルタイムのIT人材を雇用するのが難しい中小企業にとって、IT顧問は現実的な選択肢です。まずは月1回のミーティングから、気軽に相談できる関係を築いてみてはいかがでしょうか。


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よくある質問

IT顧問はどんな不動産会社に必要ですか

システムやツールの契約が3つ以上あり、見積の妥当性を社内で判断できる人がいない会社です。逆に、使っている仕組みがポータルの管理画面と会計ソフトくらいで、新しい投資の予定もないなら、顧問を置かずに単発の見積診断で足ります。

IT顧問に頼んではいけないことはありますか

宅建業法や個人情報保護法に当たるかどうかの判断は、IT顧問ではなく顧問の宅建士・弁護士や所属団体に確認してください。IT顧問が担うのは、その結論を受けて仕組みをどう作るか、どのツールで実現するかの部分です。

契約したら最初に何をしてもらえばいいですか

使っているシステム・アカウント・契約の一覧づくりです。誰が管理者で、いくら払っていて、いつ更新なのかが1枚にまとまると、解約してよい契約や、退職者のアカウントが残っている箇所が見えてきます。改善の提案はその一覧ができてからです。

宇田川 将也/ 代表取締役

2024年に総務省の地域活性化起業人として島根県海士町に着任。役場に住み込んで業務改善に従事し、kintoneで電子決裁や定期健診管理を構築しました。

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