株式会社COTSUBU
不動産DX

不動産DXで失敗する5つのパターン|よくある落とし穴と回避策

宇田川 将也|7分
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DXに取り組んだけど「失敗だった」と感じる会社が多い

不動産DXに取り組む会社が増えている一方で、「システムを入れたけど使われていない」「費用だけかかって効果がなかった」という声も少なくありません。

DXに取り組んだものの「期待した効果が出なかった」という話はよく聞きます。原因をたどると、多くは事前に避けられたパターンに当てはまります。

先に5つのパターンを一覧にします。どれも、始める前か最初の1か月で兆候が出ます。

パターン 早めに出る兆候 この時点で止めて決めること
1 ツール導入が目的 「何のアプリを作るか」の会議が2回続く 解決する業務課題を1行で書く
2 現場を巻き込まない 試用期間に現場が一度も触っていない 現場の推進役を1名決める
3 一度に全部やる 同時に動いている導入が2つ以上ある 1つを残して後ろに回す
4 データ移行を甘く見る 移行の作業日が日程表に無い 移行とテスト移行の日を先に入れる
5 導入後のフォローがない 本番開始後の定例の日付が決まっていない 月1回の振り返りの日を先に入れる

どの業務から手を付けるかを数で決める考え方は、業務棚卸しの教科書 1章にまとめています。この記事では、不動産会社で起きやすい形に絞って書きます。

失敗パターン1:ツール導入が目的になっている

症状

「DXといえばシステム導入」と考え、業務課題の整理をせずにツールを選定・導入してしまう。

具体例

  • 「kintoneが流行っているから導入しよう」と始めたが、何のアプリを作るか決まらない
  • 営業マンから「こんなツールがほしい」と言われるまま導入し、ツールが乱立
  • ベンダーの営業トークに乗せられて、自社には過剰な機能のシステムを契約

回避策

ツールの前に「業務課題」を明確にする

「何のために」「誰の」「どんな課題を」解決するのかを明文化してからツールを選定しましょう。

✕ 「kintoneを導入する」
○ 「反響の対応漏れを防ぐために、反響管理を一元化する。そのためにkintoneを導入する」

失敗パターン2:現場を巻き込まずにトップダウンで進める

症状

経営者やIT担当者だけでシステムを選定・導入し、現場の営業マンに「来月からこれを使って」と通達する。

具体例

  • 現場の業務フローを理解せずに設計したシステムが使いにくい
  • 「今までのやり方で問題ない」と現場が反発
  • 入力項目が多すぎて、営業マンが入力をサボる
  • 結局Excelとの二重管理になる

回避策

現場のキーパーソンを巻き込む

  • ツール選定の段階から現場の意見を聞く
  • 無料トライアル期間中に現場で試用してもらう
  • 「使いにくい点」のフィードバックを受けて改善する
  • 現場から「DX推進リーダー」を1名任命する

失敗パターン3:一度に全部やろうとする

症状

「せっかくDXするなら全部一気にやろう」と、物件管理・顧客管理・会計・ペーパーレス化を同時に進めようとする。

具体例

  • プロジェクトが大きすぎて、どれも中途半端に
  • 社員の負荷が高すぎて、通常業務に支障
  • システム間の連携が複雑になり、トラブルが頻発
  • 導入から半年経っても本番運用に移行できない

回避策

1つずつ、小さく始める

最も効果の高い1つの施策に集中し、成功体験を積んでから次に進みます。

おすすめの優先順位:

  1. クラウドストレージとチャットツール(基盤整備)
  2. 反響管理のデジタル化(営業に直結)
  3. 物件管理のデジタル化
  4. 集客・マーケティングのデジタル化
  5. バックオフィスの効率化

次に進む条件は「前の段階が、担当者が休んでも回っているか」です。入力が特定の1人に頼っているうちは、次の段階に進まないでください。 賃貸管理が主業なら、2の反響管理より先に、更新・解約の期限管理を入れても構いません。

失敗パターン4:データ移行を甘く見る

症状

既存のExcelや紙のデータを新システムに移行する作業を「すぐ終わる」と考え、十分な時間を確保しない。

具体例

  • Excelのデータに表記ゆれが大量にある(「渋谷区」「東京都渋谷区」「しぶやく」)
  • 重複データが大量にある
  • 必須項目が空欄のレコードが多い
  • 文字コードの問題で文字化けする
  • 移行後にデータの整合性が取れていないことに気づく

回避策

データクレンジングの工程を必ず設ける

  • 移行前にデータの品質チェックを行う
  • 表記ゆれのルールを定義して統一する
  • 重複データを排除する
  • テスト移行を最低2回は実施する
  • 移行後の検証期間を1〜2週間確保する

失敗パターン5:導入後のフォローがない

症状

システムの導入・設定が完了した時点で「DX完了」と考え、その後のフォローアップを行わない。

具体例

  • 操作方法がわからない社員が「なんとなく」使い、本来の機能を活かせない
  • 入力ルールが徐々に崩れ、データの品質が低下
  • 新しい社員が入社しても研修がなく、自己流で使う
  • 業務フローの変化に合わせたシステムの改善が行われない

回避策

運用体制と改善サイクルを構築する

  • 月1回のDX振り返りミーティングを実施
  • 入力ルールの遵守状況を定期チェック
  • 新入社員向けの操作研修を必ず実施
  • 四半期に1回、運用ルールの見直しを行う
  • ユーザーからの改善要望を収集し、反映する

業態で失敗しやすい場所が違う

業態 失敗しやすい場所 先に決めておくこと
売買仲介 反響管理を入れたが、営業マンが追客の記録を入れない 入力するのは「次にいつ連絡するか」だけ、と最小にする
賃貸仲介 繁忙期に導入し、入力が後回しになって定着しない 導入と切り替えは繁忙期を外す
賃貸管理 入居・契約・修繕を一度に移し、どれも途中で止まる 更新・解約の期限管理のように、漏れると困る1業務から
買取再販・投資用販売 物件ごとの収支が営業と経理で別々のExcelに残る 物件の番号を1つに決め、両方がそれで引く

当社のkintoneの不動産見本は、物件台帳・反響/顧客・内見予約・契約・賃貸管理(入居)・原状回復/修繕の6アプリで組んでいますが、6つを同時に入れることは勧めていません。 最初は1業務1アプリから始め、使い続けると決めたものだけ次に進みます。構築は最大1か月0円なので、使わないと分かった時点で止められます。

よくある失敗の形

従業員10名ほどの賃貸管理会社で、入居者管理を新しい仕組みに移す場合に起きやすい失敗です。 移行の日を決めずに「空いた時間に入力する」としたため、新旧の台帳が半年並び、更新の案内を旧台帳の担当者だけが出していました。原因は、パターン4とパターン5が重なったことです。切り替え日を決めて旧台帳を読み取り専用にし、切り替え後1か月は週1回、入力漏れを一覧で確認する時間を取っておくべきでした。

代表の宇田川も、投資用不動産販売会社のバックオフィスにいた2014〜2018年にkintoneで社内アプリを作っていました。そのころから変わらない教訓は、使われなくなるアプリは、作る前に「誰が、いつ入力するか」が決まっていないということです。

失敗を防ぐためのチェックリスト

DXプロジェクトを始める前に、以下を確認しましょう。

  • 解決すべき業務課題が明文化されている
  • 現場のキーパーソンがプロジェクトに参加している
  • 導入範囲を絞り、優先順位が決まっている
  • データ移行の計画と十分な期間が確保されている
  • 導入後の運用体制(担当者、振り返り頻度)が決まっている
  • 研修の計画がある
  • 予算に、データ移行と研修の費用・社内の作業時間が入っている
  • 旧いやり方をやめる日(切り替え日)が決まっている

まとめ

不動産DXの失敗は、技術的な問題よりも「進め方」の問題であることがほとんどです。

  1. ツール導入を目的にしない
  2. 現場を巻き込む
  3. 小さく始める
  4. データ移行を甘く見ない
  5. 導入後のフォローを怠らない

どのパターンも、始める前か最初の1か月で兆候が出ます。兆候が出た時点で止めて決め直すほうが、半年後にやり直すより手戻りが小さく済みます。


関連リンク

よくある質問

不動産DXが失敗する一番の原因は何ですか

技術ではなく進め方の問題がほとんどです。業務課題を整理しないままツール導入そのものが目的になると、何のアプリを作るかも決まらないまま止まります。「反響の対応漏れを防ぐために反響管理を一元化する」というように、誰のどんな課題を解決するのかを先に明文化してください。

システムを入れたのに現場が使ってくれません

現場を巻き込まずにトップダウンで導入したことが原因です。入力項目が多すぎて営業マンが入力をサボり、結局Excelとの二重管理になるパターンが典型です。ツール選定の段階から現場の意見を聞き、現場からDX推進リーダーを1名任命してください。

DXは全部一気に進めたほうが早いのではないですか

一度に全部やろうとするのは失敗パターンの1つです。物件管理・顧客管理・会計・ペーパーレス化を同時に進めると、どれも中途半端になり、半年経っても本番運用に移行できません。最も効果の高い1つに集中し、成功体験を積んでから次に進むほうが結果的に早く進みます。

Excelからのデータ移行はどれくらい時間を見ておけばいいですか

データクレンジングの工程を必ず別に確保してください。「渋谷区」「東京都渋谷区」のような表記ゆれ、重複データ、必須項目の空欄、文字コードによる文字化けが必ず出てきます。テスト移行は最低2回、移行後の検証期間は1〜2週間を見込むのが安全です。

導入が終わったらDXは完了ですか

導入完了はスタート地点で、その後のフォローがないと入力ルールが徐々に崩れてデータの品質が落ちます。月1回の振り返りミーティング、入力ルールの遵守状況の定期チェック、新入社員向けの操作研修、四半期ごとの運用ルール見直しをセットで用意してください。

宇田川 将也/ 代表取締役

2024年に総務省の地域活性化起業人として島根県海士町に着任。役場に住み込んで業務改善に従事し、kintoneで電子決裁や定期健診管理を構築しました。

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