CHAPTER 01
Web広告を出す前に決めること
この章で分かること
- 広告費で決まること・決まらないこと。広告が向く状況と、SEOや営業のほうが早い状況の切り分け
- 許容CPA(1件にいくらまで払えるか)の計算方法と、そこから逆算する月予算・判断までの期間
- 広告を出してはいけない5つの状態と、出してよいかを判定する10項目の点検リスト
この章の目次(8)
- 1広告費は「表示の機会」に払っている
- 2出す前に決める3つ
- 3許容CPAを自分で計算する
- 4いつ判断してよいか(件数が溜まるまで判断しない)
- 5広告を出してはいけない5つの状態
- 6広告・SEO・営業のどれを先にやるか
- 7よくある間違いを5つ
- 8この章の出口
Web広告は、順番を買う仕組みです。検索結果やSNSの画面に、お金を出した人から順に載せてもらう。 だから広告で決まるのは「見てもらえるかどうか」までで、買うかどうかは決まりません。 ここを混ぜると、出稿の判断を必ず誤ります。 この章は、広告費が何に対する支払いなのかを押さえ、1件の問い合わせにいくらまで払ってよいか(許容CPA)を自分で計算し、最後に10項目の点検リストで出す・出さないを決め切るための章です。
この章で分かること
- 広告費で決まること・決まらないこと。広告が向く状況と、SEOや営業のほうが早い状況の切り分け
- 許容CPA(1件にいくらまで払えるか)の計算方法と、そこから逆算する月予算・判断までの期間
- 広告を出してはいけない5つの状態と、出してよいかを判定する10項目の点検リスト
広告費は「表示の機会」に払っている
Web広告のほとんどは、クリックされたとき(または表示されたとき)に課金されます。 誰がいくら払うかは、毎回その場のオークションで決まります。Googleも Meta も、入札額だけで順番が決まるわけではなく、広告の品質(クリックされやすさ、広告と着地先の関連性など)を組み合わせて決めると公表しています。詳しい計算式は公表されていませんが、この設計から言えることが2つあります。
- お金を積めば必ず上に出る、ではない。 関係のない検索に無理やり出そうとすると、同じ位置を取るのに余計に払うことになります
- 良い広告と良い着地先は、費用を下げる方向に働く。 見出しと着地先の内容を揃える作業(10章)は、成約率だけでなく単価にも効きます
そのうえで、決定的に大事なのはここです。払った費用で買えるのは「見てもらう機会」までです。
| 広告費で決まること | 広告費では決まらないこと |
|---|---|
| 何人に見せるか | その人が読むかどうか |
| いつから出せるか(最短で当日〜数日) | 問い合わせるかどうか |
| どの検索・どの画面に出すか | 受注するかどうか |
| いつ止めるか(即日止められる) | 止めたあと何が残るか(何も残らない) |
広告の長所は「速い」ことと「止められる」こと、短所は「止めたら消える」ことです。SEOは逆で、遅いが積み上がります。当社が「今月の売上が要るなら広告、半年後の集客を作るならSEO」と言うのはこのためです。
出す前に決める3つ
出稿の作業は、ほとんどが出す前に終わります。次の3つが決まっていないまま管理画面を開くと、何を設定しても正解が分かりません。
| # | 決めること | 決まっていないと起きること |
|---|---|---|
| 1 | 何を売るか(1つに絞る) | 広告文も着地先も総花的になり、誰にも刺さらない |
| 2 | 1件にいくらまで払えるか(許容CPA) | 高いのか安いのか永久に判定できない。止める判断も増やす判断もできない |
| 3 | 誰が、いつまでに受けるか | 問い合わせが来ても取りこぼす。払った費用が全額捨て金になる |
1については、会社名ではなくサービス名・商品名で1つ選んでください。「うちは何でもやります」は、広告では最も弱い訴求です。 3は後回しにされがちですが、広告を出すこと自体より先に確認すべきです。フォームが壊れている、通知が誰にも届いていない、返信が1週間後、のどれかに当たっていれば、その状態で出す広告費は全額が損失になります(10章)。
2がこの章の本題です。
許容CPAを自分で計算する
CPA は Cost Per Acquisition、問い合わせ1件を取るのにかかった費用です。 「うちのCPAは高いですか」と聞かれることがありますが、他社と比べても意味がありません。 粗利も成約率も違うからです。比べる相手は1つだけ、自社の許容CPAです。
計算に必要な数字は2つだけです。どちらも自社の中にあります。
| 記号 | 数字 | どこから取るか |
|---|---|---|
| G | 1受注あたりの粗利(円) | 売上から仕入・外注・直接人件費を引いた額。継続取引なら1年分で見る |
| r | 問い合わせ→受注の率 | 直近6ヶ月の「受注件数 ÷ 問い合わせ件数」 |
この2つから、問い合わせ1件の粗利の期待値が出ます。
問い合わせ1件の価値 = G × r
例:1受注の粗利が30万円、問い合わせ10件のうち2件が受注(r = 0.2)なら、 問い合わせ1件の価値 = 300,000 × 0.2 = 60,000円。
この6万円が上限です。ここまで払っても、広告費と粗利がちょうど同じ(利益ゼロ)になります。 実際には利益を残す必要があるので、当社の決めごととして、最初は「1件の価値の3分の1」を許容CPAの初期値に置きます。
許容CPA(初期値) = G × r ÷ 3
上の例なら 20,000円。3分の1にする理由は3つです。①広告費以外の費用(人件費・制作費・運用費)がかかる、②最初の数ヶ月は無駄な配信を削る期間で、数字が悪い側に振れる、③上限ぎりぎりに設定すると、少し悪化しただけで赤字になる。 回り始めたら、実績を見ながら2分の1まで上げてよい、という順番にしています。最初から上限に置かないことが目的です。
許容CPAから月予算を出す
月予算 = 許容CPA × 目標の問い合わせ件数
許容CPA 2万円で、月10件ほしいなら、月20万円。これが広告費の目安です。 当社がサービスページで広告費月20万円からを推奨しているのは、この計算とは別の理由もあります。金額が小さすぎると、判断に必要なデータが集まらないためです(次節)。商材によっては月10万円から試すこともありますが、その場合は判断までの期間が延びると考えてください。
ここで「月20万円は出せない」となった場合、それは広告をやらない理由ではなく、"今はやらない"という正しい結論です。無理に少額で始めて、判断できない数字を眺め続けるのが一番もったいない使い方です。
いつ判断してよいか(件数が溜まるまで判断しない)
広告を始めた人が最初につまずくのは、数字が少ないうちに結論を出してしまうことです。 問い合わせが3件のときのCPAと、30件のときのCPAは、信頼度がまったく違います。3件なら、たまたま1件増えるか減るかで数字が3割動きます。
当社の決めごととして、主要なコンバージョンが30件たまるまで、CPAの良し悪しを判断しません。 30という数字に理論的な根拠はありません。「少数だと偶然で倍半分に振れるので、ある程度の数を決め打ちで置く」という実務上の線引きです。理由を添えたうえで、社内で別の数字にしても構いません。大事なのは、始める前に「何件たまったら判断するか」を決めておくことです。決めていないと、悪い数字が出た週に感情で止めることになります。
判断までの期間の目安は、当社のサービスページに書いているとおりです。
| 時点 | 見えるもの |
|---|---|
| 配信開始から1週間 | 反応の有無は見える(クリックされるか、着地先で読まれるか) |
| 1ヶ月目 | 無駄な検索を削る期間。CPAはまだ判断しない |
| 2ヶ月目から | 数字が安定し始める。ここから許容CPAと突き合わせる |
Meta広告やSNS広告では、配信の最適化にデータ量が必要なため、少額だと学習が進まず単価が高いまま安定しない、という事情も加わります(7章)。
広告を出してはいけない5つの状態
次のどれかに当たっている場合、広告は正しい道具ではありません。「まだ出さない」が正しい結論です。
1. 粗利と成約率が分からない。 許容CPAを計算できないので、高い・安いの判定が永久にできません。まず直近6ヶ月の問い合わせ件数と受注件数を数えてください。ここは1時間で終わります。
2. 問い合わせ窓口が壊れている。 フォームが送信できない、通知が届かない、自動返信が迷惑メールに入る、電話がつながらない。自分で1件送ってみるだけで分かります。 出す前に必ずやってください。
3. 返すのが遅い。 問い合わせが来てから3日後に返す体制で広告を出すと、払った費用の多くが他社への送客になります。返す人と返す時間を決めてから出します。
4. 着地先がトップページしかない。 コーポレートサイトのトップに広告を当てると、成約率が大きく下がります。会社概要を読みに来たわけではない人を、会社概要のページに送ることになるためです。当社は「始められますが、おすすめしません」と答えています。LPが無いなら、LPを作ってからです。
5. 3ヶ月分の予算の当てがない。 1ヶ月目は無駄を削る期間なので、1ヶ月でやめると「削り終わった状態」を一度も見ずに終わります。月予算×3の現金の当てがあるかを先に確認してください。
なお、「そもそも検索されていない」は、広告を出さない理由にはなりません。 検索広告には向きませんが、まだ探していない人に届けるSNS広告やディスプレイ広告という選択肢があります(4章)。SEOとは判断の分かれ方が違う点に注意してください。
広告・SEO・営業のどれを先にやるか
3つとも「問い合わせを増やす」手段ですが、効き方が違います。
| 手段 | 効き始める速さ | 止めたとき | 向く状況 |
|---|---|---|---|
| Web広告 | 数日〜1週間 | すぐ消える | 今月〜来月の件数が要る。検証を早く回したい |
| SEO | 3ヶ月〜6ヶ月 | しばらく残る | 半年以上続ける前提がある。積み上げたい |
| 営業・紹介 | 即日 | 属人的に残る | 対象企業が数十社など、検索されない領域 |
広告の隠れた効用は「検証が速いこと」です。 どの言葉に反応があるか、どの訴求で問い合わせが来るかが、1ヶ月で分かります。 ここで分かった「効いた言葉」は、そのままSEOのキーワード選定にも、LPの見出しにも使えます。広告を、検証の道具として先に1ヶ月回してからSEOの方針を決めるのは、費用対効果の高いやり方です。
よくある間違いを5つ
「クリック単価が高いから、安い語に変えた」 ——単価が安い語は、たいてい発注から遠い語です。「◯◯とは」「◯◯ 自分で」は安く大量にクリックされますが、問い合わせません。見るべきはクリック単価ではなくCPA(1件の獲得費用)です。単価が3倍でも、10倍の確率で問い合わせるなら、そちらが正解です。 → 直し方:クリック単価の列でソートするのをやめ、成果件数と費用で見る。成果0で費用の大きい語から除外する(6章)。
「クリック数は増えているのに、問い合わせが増えない」 ——ほぼ2つのどちらかです。①関係ない検索に出ている(6章の除外の問題)、②着地先とずれている(10章の受け皿の問題)。広告の設定をこれ以上いじっても直りません。 まず実際に検索された語を90日分見て、次に自分の広告を実際にクリックして着地先を見てください。 → 直し方:2章の工程4(検索語句)と工程7(着地先との一致)をやる。
「いいねと再生回数が伸びたので、この素材は当たり」 ——SNS広告で最も多い錯覚です。反応が多い素材と、問い合わせが来る素材は別物です。おもしろい動画は最後まで見られますが、それは購入の意思とは関係ありません。 → 直し方:判断材料を問い合わせ件数と獲得単価だけに絞る。当社も「いいねや再生回数は判断材料にしません」と明記しています。
「同じ広告をずっと出している」 ——検索広告はまだしも、SNS・ディスプレイでは反応が落ちます。同じ人に何度も表示されるためです。当社は毎月2〜3本を入れ替え、同じ素材を3ヶ月以上出し続けないことにしています。 → 直し方:次に出す案を常に1本以上ストックしておく。素材が切れて配信が止まる状態を作らない(8章)。
「代理店に全部任せているので、管理画面は見たことがない」 ——最も危険な状態です。報告書の数字が正しいかを誰も確かめられず、アカウントが代理店名義だと解約時にデータごと失います。 → 直し方:閲覧権限をもらう。名義を自社に変える(または自社名義で作り直す)。当社は当社名義でアカウントを作りません。データも履歴も御社に残り、合わないと思われたらそのまま他社に引き継げる形にしています。
この章の出口
この章を終えたとき、手元に残っているべきものは4つです。
- 対象にする売りたいものが1つ(会社名ではなく、サービス名・商品名)
- 許容CPAの金額(粗利 × 成約率 ÷ 3)
- 月予算と目標件数(許容CPA × 件数)
- 判断する時期(何件たまったら判断するか。当社の決めごとは30件)
この4つが紙に書けていれば、管理画面を開いてよい状態です。書けないなら、開いても正解が分かりません。 広告に向く商材が自社に1つも無い、という結論も正しい結論です。 その場合は、営業か、SEOか、既存客への深耕を先にやってください。
すでに広告を出している方は、次の章で今のアカウントを点検します。150分で、無駄になっている金額が実額で出ます。
この章の点検リストを開く(自社の状態を○×で判定する用)
点検リスト:広告を出してよい状態か(10項目)
対象は会社全体ではなく、売りたいものを1つ決めて付けてください。
| # | チェック項目 | ○の条件 |
|---|---|---|
| 1 | 売りたいものが1つに決まっている | 会社名ではなく、サービス名・商品名で1つ言える |
| 2 | 1受注あたりの粗利が金額で言える | 「1件受注で粗利◯円」と即答できる |
| 3 | 問い合わせ→受注の率が分かる | 直近6ヶ月の受注数÷問い合わせ数が出せる |
| 4 | 許容CPAを計算した | 粗利×成約率÷3 の金額が出ている |
| 5 | 月の目標件数が決まっている | 「月◯件」と数字で言える(許容CPA×件数=月予算) |
| 6 | 問い合わせを受ける窓口が生きている | 実際に自分で送信し、社内に届くことを確認した |
| 7 | 翌営業日までに返せる体制がある | 返す人と返す時間が決まっている |
| 8 | 広告の着地先が専用ページかLPになっている | トップページ直撃ではない |
| 9 | 3ヶ月続ける予算がある | 月予算×3の現金の当てがある |
| 10 | 広告以外の集客が0ではない | 広告に全部を賭けていない |
合格ライン
| ○の数 | 判断 |
|---|---|
| 7つ以上 | 出してよい。既存アカウントがあれば2章の点検、無ければ3章の計測から |
| 4〜6つ | 計測(3章)と受け皿(10章)だけ先に整える。まだ出稿しない |
| 3つ以下 | 広告以外を先にやる(窓口の整備・LPの用意・粗利の把握) |
ただし、1・2・6 のどれかが×なら、○が何個でも出しません。 1が×なら訴求が定まらず、2が×なら上限額を計算できず(=赤字かどうかを永久に判定できない)、6が×なら払った費用が全額捨て金になるためです。
○が4〜6でも進めてよいのは、3章・10章がほぼ無料で自分でできる作業だからです。計測の確認はフォームを1件送るだけ、受け皿の点検はスマホで自分のページを見るだけで半分は終わります。 当社も初回相談とアカウント診断は無料で、運用代行は月10万円から(広告費の20%または月10万円の高い方)、初期構築は20万円からです。調べるところまでは、お金をかけずに判断できます。
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30分相談を予約する更新日 2018年10月20日
