CHAPTER 07
GA4と広告の数字が合わない理由
この章で分かること
- 媒体とGA4が別々の立場で数えている構造と、一致しないことが正常である理由
- ずれの原因の6分類(仕組み上で直せない3つ/直すべき3つ)と、そのうち自社の実装で直せる4つ(タグの二重・識別子の欠落・参照元の消失・数え方の設定)の見分け方
- 月1回15分の突き合わせ表と、「媒体の数字を使う場面/台帳を使う場面」の線引き
この章の目次(11)
- 1媒体とGA4は、別々の立場で数えている
- 2ずれの原因は6つに分類できる
- 3この章で直せるのは、次の4つ
- 4把握しておく設定は3つ
- 5識別子を手で付ける場合の決めごと
- 6媒体をまたぐ二重計上
- 7突き合わせ表(月1回・15分)
- 8判断にどの数字を使うか
- 9やらなくてよいこと
- 10よくある間違いを5つ
- 11この章の出口
広告媒体の管理画面に出る成果件数と、GA4に出る成果件数は、正しく設定しても一致しません。 数える立場が違い、日付の付け方が違い、寄せ方の設定も違うからです。一致させようとすると、作業が永遠に終わりません。 この章は、ずれを「仕組み上のもの」と「自社の実装が原因のもの」に切り分け、判断にどの数字を使うかを決めるための章です。
この章で分かること
- 媒体とGA4が別々の立場で数えている構造と、一致しないことが正常である理由
- ずれの原因の6分類(仕組み上で直せない3つ/直すべき3つ)と、そのうち自社の実装で直せる4つ(タグの二重・識別子の欠落・参照元の消失・数え方の設定)の見分け方
- 月1回15分の突き合わせ表と、「媒体の数字を使う場面/台帳を使う場面」の線引き
広告を出す側の判断(入札に使う成果を2種類以内に絞る、媒体の管理画面のどこを見るか)と、ずれの許容範囲を±20%に置く考え方は、Web広告運用の教科書3章が扱います。同じ話を2冊に書きません。 この章は、ずれの分類そのものと、そのうち自社の計測側で直せる部分に責任を持ちます。
媒体とGA4は、別々の立場で数えている
この章を設けている理由は、ずれそのものが問題だからではありません。ずれを説明できないことが、社内の意思決定を止めるからです。数字が2つあって、どちらが正しいか誰も言えない状態になると、会議は毎回「その数字は信用できるのか」から始まります。施策の良し悪しを議論する前に時間が尽きて、結局、声の大きい人の感覚で決まります。計測を入れたのに判断が変わらない会社は、たいていここで止まっています。
そして、この問題は一致させることでは解決しません。媒体とGA4は、そもそも別の問いに答えているからです。媒体が答えているのは「この広告は貢献したか」で、GA4が答えているのは「自社サイトで何が起きたか」です。問いが違えば答えも違います。売上と粗利が一致しないのと同じで、一致しないこと自体は正常です。
だから、この章の目標は一致させることではなく、差を説明できる状態にすることです。差の大きさが同じでも、理由を言える会社と言えない会社では、次の一手がまったく違います。理由が言えれば、直すべき差と放っておく差を分けられます。言えなければ、全部が不安要素として残り続けます。
| 広告媒体 | GA4 | |
|---|---|---|
| 数える立場 | 自分の広告の貢献を数える | 自社サイトで起きたことを数える |
| 1件の起点 | 広告がクリック(または表示)されたこと | サイト上でイベントが起きたこと |
| 日付の付け方 | クリックした日にさかのぼって計上することがある | 起きた日 |
| 他社・他経路 | 見ない | 同じサイトの出来事なので全部入る |
| 寄せ方 | 設定で「1回だけ/毎回」を選べることがある | 起きた回数を記録する |
媒体は自分の手柄を数え、GA4は自社の出来事を数えています。 立場が違うものを引き算しても、差の意味は出てきません。差は「どちらが正しいか」ではなく、「どの要因でいくつ違うか」で読みます。
ずれの原因は6つに分類できる
差を見たら、まずこの表のどれに当たるかを決めます。どれにも当てはまらない差は、まだ調べ切れていない差です。
| # | ずれの原因 | 何が起きているか | どちらが多くなるか | 直せるか |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 日付の取り方が違う | 媒体はクリックした日にさかのぼって成果を計上することがある。GA4と台帳は起きた日・届いた日で数える | 月末・月初で両方ずれる | 直せない |
| 2 | 端末をまたいだ | スマホで広告を見て、後日PCから問い合わせた | 媒体が少なくなる | 直せない |
| 3 | ブラウザ側の制限・同意の取得状況 | そもそも計測できないアクセスがある(11章) | 媒体が少なくなる | 直せない |
| 4 | 重複計上 | 完了画面の再読み込み、計測タグの二重設置(4章) | 媒体・GA4が多くなる | 直せる |
| 5 | 社内に届いていない | 送信はされたが、迷惑メール振り分け・通知の失敗で台帳に載らない(6章・8章) | 台帳が少なくなる | 直せる |
| 6 | 媒体をまたいだ二重計上 | 検索広告とSNS広告が、同じ1件を両方とも自分の成果に数える | 媒体の合計が多くなる | 直せる(足し算をやめる) |
この表は、右から2列目——どちらが多くなるか——を先に見るのが早道です。手元の突き合わせ表で、媒体とGA4と台帳のどれが多いかは一目で分かります。その向きに合う行だけを候補として残せば、6つのうち2つか3つに絞れます。左から順に検討する必要はありません。
そのうえで、右端の列で仕分けます。直せない3つに当たるなら、そこで調査は終わりです。理由を1行書いて、次の月からは同じ理由で読み続けます。直せる3つに当たるなら、次の節に進んで具体的な原因を特定します。調査を終わらせる基準を先に決めておかないと、原因を探す作業は無限に続きます。
1〜3は仕組み上のずれです。 直そうとすると作業が永遠に終わります。4〜6は直すべきずれです。 ここを分けて考えるのが、この章の要点です。
差の説明には、必ずこの番号を書いてください。 「原因は不明だが20%くらいずれている」と「原因は1と2で、20%ずれている」は、同じ数字でもまったく別の状態です。前者は点検が終わっていない状態、後者は点検が終わった状態です。
この章で直せるのは、次の4つ
上の4〜6のうち、自社の計測の作りが原因になっている部分は、さらに次の4つに分かれます。この章はここだけを扱います。
| 原因 | 症状 | 見分け方 | 直し方 |
|---|---|---|---|
| ① 媒体の計測タグが二重 | 媒体側の件数だけが、きれいに2倍・3倍 | 自分で1件送り、媒体側でも1件かを見る | 片方を消す。誰がいつ入れたかを確かめてから消す(5章) |
| ② 広告の識別子が着地していない | 広告から来たはずの人が「直接」や検索として記録される | 広告のリンクをクリックし、着地したURLに識別子が付いているかを見る | 自動のタグ付けを有効にする/手動で付けているなら全広告に付ける |
| ③ 参照元が途中で消えている | 成果の参照元が、フォーム・決済・予約サービス名になっている | 実送信して参照元まで確認する(2章・工程2) | 参照元の除外とドメインまたぎの設定(3章)。外部フォームは自社の完了ページへ戻す(6章) |
| ④ 数え方の設定が把握されていない | 同じ月で、媒体とGA4の件数が常に一定の比で違う | 設定値を書き出す(下記) | 設定を直すのではなく、違いを表に書いて、毎月同じ読み方をする |
④だけは「直す」のではなく「把握する」が正解です。 媒体側の数え方は、媒体ごとに思想が違います。そろえようとすると、どちらかの数字が使い物にならなくなります。
この4つのうち、どれから手を付けるか迷ったら③です。③は被害の範囲が最も広いからです。①は該当する媒体の数字だけが狂いますが、③は参照元そのものが壊れるので、広告もSEOもSNSも、すべての経路の評価が同時に失われます。しかも数字はゼロではなく「直接」として出るため、壊れているように見えません。
③を1年放置したときの形は、6章に書いたとおりです。成果の参照元がすべて外部フォームサービスの名前になり、広告経由も検索経由もゼロに見える。社内では「広告は効かない」という結論が出て出稿を止め、止めた月の減少は季節のせいとして処理される。
③の恐ろしさは、金額ではなく判断の連鎖にあります。1年分の広告費を無駄にするのではなく、1年分の判断がすべて逆向きに積み上がります。突き合わせ表を作る目的は、こうした連鎖を最初の1か月で止めることにあります。
把握しておく設定は3つ
媒体ごとに、次の3つを書き出してください。設定の場所と呼び名は変わるので、最新は各媒体の公式ヘルプで確認してください(探す言葉:「コンバージョンのカウント方法」「計測期間 クリック後」「アトリビューション」)。
| 設定 | 何が変わるか | 書き出す内容 |
|---|---|---|
| 数え方(1回だけ/毎回) | 同じ人の複数回を1件にするか | どちらに設定されているか |
| 成果とみなす期間 | クリックから何日後までを自分の成果にするか | 日数 |
| 日付の付け方 | 成果を「クリックした日」に付けるか「起きた日」に付けるか | どちらか |
この3つを書き出していない状態で「媒体の数字はおかしい」と言うのは、まだ点検が始まっていない状態です。 3つ目が「クリックした日」の場合、月末・月初の数字は後から動きます。 締めた翌日に見た数字と、1週間後に見た数字が違うのは正常です。
識別子を手で付ける場合の決めごと
多くの媒体には、クリックに識別子を自動で付ける仕組みがあります。有効になっていれば、それだけで経路が分かります(探す言葉:「自動タグ設定」「クリック識別子」)。
自動の仕組みが無い経路——メール・紙のQRコード・提携先からのリンク・SNSの投稿——は、リンクの末尾にパラメータを手で付けて区別します。 ここで表記が揺れると、同じ経路が別々の行に分かれて集計できなくなります。
| 決めごと | 内容 | 理由 |
|---|---|---|
| 小文字だけを使う | Facebook と facebook を混ぜない |
大文字小文字は別の値として扱われます |
| 使う値を先に一覧にする | 媒体名・施策名の書き方を紙に固定する | 付ける人が複数いると必ず揺れる |
| 自社サイト内のリンクには付けない | 社内の回遊に付けると、そこで訪問が切れる | 参照元が自社に書き換わります(3章) |
| 自動の仕組みと二重に付けない | 自動で付く媒体に手で足さない | どちらが優先かが媒体ごとに違い、読めなくなる |
| 付けたリンクを1か所に記録する | 発行したURLの一覧を残す | 後から「この流入は何か」を追える |
3行目は事故が多い場所です。 社内の案内メールやバナーに付けたつもりが、自社ページ間のリンクに付いていて、そこで訪問が新しく始まってしまう——広告から来た人の成果が、広告に戻らなくなります。
媒体をまたぐ二重計上
複数の媒体に出稿していると、同じ1件を、複数の媒体が自分の成果として数えます。
| 起きること | 見え方 |
|---|---|
| 検索広告を見てクリックし、後日SNS広告からも来て問い合わせた | 両方が1件ずつ計上する |
| 媒体の合計が、GA4の成果件数を上回る | 「広告が効いている」ように見える |
媒体の件数を足し算してはいけません。 合計はGA4側、または台帳の側で見ます。各媒体の件数は、その媒体を止めるかどうかを決めるときにだけ使います。
突き合わせ表(月1回・15分)
媒体ごとに1行、次の形で並べます。並べるだけで、①〜④のどれが起きているかが見えます。
| 月 | 媒体 | 媒体の件数 | GA4の件数 | 台帳の件数 | 差の率 | 差の理由(6分類の番号) |
| 見るところ | 読み方 |
|---|---|
| 媒体だけが突出して多い | ①(タグの二重)または媒体をまたぐ二重計上 |
| GA4に広告経由の成果がほとんど無い | ②または③。広告の評価が丸ごと壊れています |
| 台帳だけが多い | 電話・紹介など、Webで取れない経路(6章) |
| 毎月おおむね同じ比で違う | ④。設定の違い。表に理由を書いて、そのまま使う |
| 先月まで合っていたのに急にずれた | 直前の改修を疑う(8章・変更履歴) |
許容範囲は、自社で決めて、毎月同じやり方で見ます。 範囲の決め方(当社は±20%を線にしています)と、その根拠は広告3章にあります。ここでは繰り返しません。
担当者と実施日を決めてください。 6章の経路別の表と、同じ日にまとめて15分で終わります。
判断にどの数字を使うか
ずれを説明できるようになったら、最後に使う数字を決めます。 ここを決めていないと、会議のたびに「どの数字が本当か」から始まります。
| 判断する場面 | 使う数字 | 理由 |
|---|---|---|
| 広告の配信を調整する(入札・予算の配分) | 媒体の数字 | 媒体はその数字で最適化している。別の数字で指示しても伝わらない |
| 広告全体を続けるか止めるか | 台帳の件数と受注 | 最終的に商売になったかは、台帳にしかない |
| 経路別の内訳を見る(検索・広告・SNS・直接) | GA4 | 媒体をまたいで同じ物差しで並べられる |
| 社内・社外への報告 | 台帳を正として、媒体・GA4は併記 | 数字が3つあることを隠さない |
この表を、月次報告の作り方の設計図として使ってください。1枚の報告の中で、場面ごとに使う数字が切り替わるのが正しい姿です。すべてを1つの数字に統一しようとすると、どこかの場面で必ず無理が出ます。広告担当には媒体の数字で話し、経営会議には台帳の数字で話す——それは二枚舌ではなく、相手が下す判断に必要な数字が違うからです。
どの数字を使うか迷う場面が出てきたら、「この数字を見て、誰が、何を決めるのか」を先に決めてください。決める人と決める内容が定まれば、使う数字は自動的に決まります。逆に、決める人も内容もはっきりしない数字は、報告に載せる必要がありません。
当社の決めごとは、「報告の数字は台帳を正とし、媒体とGA4は参考として併記する」です。 理由は、台帳だけが「本当に商売になったか」を持っているからです。併記するのは、隠すと必ず後で食い違うからです。
やらなくてよいこと
| やらなくてよいこと | 理由 |
|---|---|
| 媒体の数字とGA4の数字を一致させる | 立場が違うので一致しません。時間だけがかかります |
| 媒体ごとの件数を足して「広告の成果」とする | 媒体をまたぐ二重計上が入ります |
| 日次でずれを追う | 後から確定します。判断は月単位です(10章) |
| 媒体の数え方の設定をそろえる | 入札の挙動が変わります。設定はそのまま、違いを表に書きます |
よくある間違いを5つ
「媒体の件数とGA4の件数が合わないので、GA4が壊れていると思った」 ——立場が違うので合いません。合わないこと自体は異常ではありません。直し方:突き合わせ表に並べ、差を6分類で仕分ける。①〜④に当たるものだけを直す。
「媒体ごとの成果件数を足して、広告全体の成果として報告していた」 ——同じ1件を複数の媒体が数えています。実力より多く見えます。直し方:合計はGA4か台帳で見る。媒体の件数は、その媒体単体の判断にだけ使う。
「広告から来ているのに、GA4では『直接』が大半だった」 ——②(識別子が着地していない)か③(参照元の消失)です。この状態では、広告もSEOも成果が自分に戻ってきません。 直し方:広告のリンクを実際にクリックして着地のURLを見る。外部フォームを経由しているなら6章の設定を先に直す。
「月初に締めた数字と、1週間後の数字が違った」 ——媒体が「クリックした日」に成果をさかのぼって付けている場合、後から増えます。直し方:締める日を固定する(例:翌月10日)。その日の数字を正として記録し、以降は直さない。
「媒体の数え方の設定を、GA4に合わせて変えた」 ——媒体はその数字で配信を最適化しています。変えると配信の挙動が変わります。直し方:設定は触らず、3つの設定値を表に書き出し、違いを前提として読む。
この章の出口
手元に残っているべきものは3つです。
- 突き合わせ表(媒体・GA4・台帳の3列/差の理由に分類番号)
- 媒体ごとの設定値(数え方・成果とみなす期間・日付の付け方)
- 判断に使う数字の決め(場面ごとに、どれを正とするか)
外から来る数字との関係が整理できました。次は、この状態を維持する番です。計測は、改修のたびに静かに壊れます。壊れたときに音が鳴らないので、気づく仕組みを先に作ります。
この章の点検リストを開く(自社の状態を○×で判定する用)
点検リスト:媒体との突き合わせ(12項目)
| # | チェック項目 | 合格ライン |
|---|---|---|
| 1 | 媒体ごとの成果の定義を書き出した | 何が起きたら1件かが、媒体ごとに1行ある |
| 2 | 媒体の成果とGA4の成果を月次で並べている | 突き合わせ表がある(媒体・GA4・台帳の3列) |
| 3 | 差の原因を6分類で仕分けている | 直近3か月について、差の理由に分類番号が書いてある |
| 4 | 媒体の計測タグが二重に入っていない | 1件送って、媒体側も1件だった |
| 5 | 媒体が数える日付の取り方を確認した | クリック日基準か発生日基準かを書き出している |
| 6 | 成果とみなす期間の設定を確認した | 日数を書き出している |
| 7 | 広告の識別子が付いた状態で着地している | 広告を実際にクリックし、着地URLで確認した |
| 8 | 参照元「直接」が不自然に多くない | 比率を見て、理由を説明できる |
| 9 | 媒体をまたぐ二重計上を確認した | 媒体の件数の合計と、GA4・台帳の件数を比べた |
| 10 | 許容範囲を決めている | 範囲と、超えたときにやることが書いてある |
| 11 | 突き合わせの担当と実施日が決まっている | 氏名と日付が書いてある |
| 12 | 判断に使う数字を決めている | 場面ごとに「媒体/GA4/台帳」のどれを使うかが書いてある |
合格ライン=12項目中9以上。ただし 2・7・10 のどれかが×なら、点数に関係なく先に直します。
- 2が×:比べていないので、壊れても気づけません。表を作るだけで半分は終わります
- 7が×:広告の成果が広告に戻っていません。 配信の良し悪しを判定する手段が無い状態です
- 10が×:毎月「多い・少ない」の感想で終わります。基準が無いと、異常に気づけません
7は、自分で広告を1回クリックすれば判定できます。 5分の作業です。
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更新日 2018年10月20日
