CHAPTER 07
kintoneの入力チェック|標準機能でできること
この章で分かること
- kintoneの標準で止められるもの・止められないものの全体像(目的別の表)
- ブラウザ側のチェックがすり抜ける3つの経路と、その埋め方
- 入力の守り方の点検12項目と、守る場所が画面だけになっていないかの確かめ方
この章の目次(9)
- 1守る場所は3つある
- 2標準でできること(サーバー側で効く)
- 3標準でできないこと(と、その埋め方)
- 4見本の3業種は、どう守っているか
- 5知らないと事故になる仕様
- 6厳しさと手間を、どこで釣り合わせるか
- 7よくある間違いを5つ
- 8費用について
- 9この章の出口
入力を守るとき、最初に決めるのは「何をチェックするか」ではなくどこで守るかです。 kintoneのチェックには、サーバー側で必ず効くものと、ブラウザの画面でしか効かないものがあります。後者は、CSV取り込み・API・同時保存の3つの経路ですり抜けます。これを知らずに「プラグインを入れたから大丈夫」と思っているアプリは、必ず汚れます。 この章は、標準でできること・できないことの地図を作り、項目ごとに守る場所を決め切るための章です。
この章で分かること
- kintoneの標準で止められるもの・止められないものの全体像(目的別の表)
- ブラウザ側のチェックがすり抜ける3つの経路と、その埋め方
- 入力の守り方の点検12項目と、守る場所が画面だけになっていないかの確かめ方
守る場所は3つある
同じ「重複を止める」でも、守る場所によって強さがまったく違います。
| 守る場所 | 何が効くか | 画面から | CSV取り込み | API | 同時保存 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1. サーバー側(kintoneの設定) | 必須・値の重複を禁止・数値の最大最小・文字数・アクセス権 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 2. 画面(プラグイン・JavaScript) | 条件付き必須・組み合わせの重複・形式・範囲・期間の重なり・整形・採番・編集禁止 | ○ | × | × | △ |
| 3. 運用(人の手順) | 取り込み前の掃除・承認・月1回の点検 | ― | ○ | ○ | ○ |
2の行が、この章でいちばん大事な事実です。 プラグインもJavaScriptも、動いているのはブラウザの中だけです。CSV取り込みは画面を通らないので、Excelから100件入れれば重複も形式違いもそのまま入ります。API(外部連携・他社ツール)も同じです。同時保存では、2人がまったく同じ瞬間に保存したときに両方が「重複なし」と判定してすり抜けることがあります。
だから設計の順番はこうなります。まず標準(サーバー側)で守れるものを全部守る。残ったものだけをプラグインで埋める。それでも残るものを運用で拾う。 逆順にやると、標準で守れたはずのものまで画面任せになります。とくに移行の取り込みは、画面のチェックが1つも効かない経路です。取り込む前にExcel側を掃除する手順(11章)が、そのまま入力の守りの一部になります。
標準でできること(サーバー側で効く)
2026年9月時点で、kintoneがアプリの設定として持っている入力の制約です。ここに書いてあるものは、どの経路から入れても効きます。
| 目的 | 標準機能 | 設定場所 |
|---|---|---|
| 必ず埋めさせる | 必須項目にする(常時のみ。条件は持てない) | フォームの各フィールド |
| 1つの項目の重複を止める | 値の重複を禁止する | フォームの各フィールド |
| 値を決まった選択肢に限る | ドロップダウン/ラジオボタン/チェックボックス | フィールドの型 |
| 数値の上限・下限 | 最大値・最小値 | 数値フィールド |
| 文字数の上限・下限 | 最大文字数・最小文字数 | 文字列フィールド |
| 手入力させない(計算で出す) | 計算フィールド | フィールドの型 |
| マスタにある値から選ばせる | ルックアップ | 6章 |
| 見せてはいけない情報を守る | フィールドのアクセス権 | アプリの設定 → アクセス権 |
| 条件によってレコード全体を編集させない | レコードのアクセス権(フィールドの値を条件にできる) | アプリの設定 → アクセス権 |
| 承認の流れで担当を回す | プロセス管理 | 9章 |
最後から2番目は見落とされがちです。フィールドのアクセス権は条件を持てませんが、レコードのアクセス権は条件を持てます。 「ステータスが承認済のレコードは、一般社員は編集できない」はサーバー側で作れます。ただし単位はレコード全体で、「金額の項目だけ触らせない」はできません。
標準でできないこと(と、その埋め方)
ここからが実務でつまずく部分です。埋め方は3列目のプラグインか、同じことをJavaScriptで書くかの二択になります(書く前に読むことは13章)。
| 目的 | 標準 | 埋め方(当社の無料プラグイン) |
|---|---|---|
| 条件によって必須を切り替える | できない | 条件付き必須 |
| 複数項目の組み合わせで重複を判定する | できない | 重複チェック Pro |
| サブテーブルの中の重複行を見つける | できない(テーブル内は重複禁止を設定できない) | 重複チェック Pro |
| 重複を「警告だけ」にして保存させる | できない(標準は常に止める) | 重複チェック Pro |
| メール・電話・郵便番号・法人番号の形を確かめる | できない | 入力形式チェック |
| 全角半角・空白・カナの表記ゆれをそろえる | できない | 入力値の整形 |
| 日付の範囲(今日より後、開始<終了)を止める | できない | 範囲チェック |
| サブテーブルの合計に上限を付ける | できない | 範囲チェック |
| 同じ人・同じ部屋の時間の重なりを止める | できない | 期間重複チェック |
| 独自の形の番号を自動で振る | レコード番号のみ(形を変えられず、年度で1に戻せない) | 自動採番 |
| サブテーブルに行番号を振る | できない | テーブル行番号 |
| 条件によって項目を編集させない | できない(フィールドのアクセス権は条件を持てない) | 条件付き入力禁止 |
| 条件によって項目を出し分ける | できない | 項目の表示切替 |
| 入力漏れをまとめて画面の上に出す | できない(項目ごとに「必須です」のみ) | 入力漏れサマリー |
この表の3列目は、すべてブラウザ側です。 つまり、上の「守る場所」の2行目に入ります。CSVとAPIの経路では効きません。
1つ1つの設定手順と、同じことをJavaScriptで書く場合のコード・落とし穴は、個別の記事にまとめてあります——重複を禁止・チェックする/条件によって必須にする/連番・自動採番を作る/サブテーブルに行番号を付ける/予約のダブルブッキングを防ぐ/条件によって項目を出し分ける。この章が担当するのは、どれを・どこで守るかの判断だけです。
なお、プラグインを使うにはスタンダードコース以上が必要です(ライトコースではプラグインを使えません)。スタンダードは1ユーザー月1,800円・税抜・最小10ユーザーからなので(2026年9月時点)、入力チェックのためだけにコースを上げる判断が要ることもあります。当社の無料プラグインはいずれもkintoneの公式APIだけで動き、外部のサーバーと通信しません(LGWAN環境でも使えます。12章)。
見本の3業種は、どう守っているか
当社の見本スペースの実際の設定です。常時必須がほとんど無いことに注目してください。
常時の必須は、1アプリあたり0〜2項目しかありません。不動産の ① 物件台帳 は 物件コード と 物件名 の2つ、製造の ④ 工程実績 は 工程名 と 作業者名 の2つ、製造の ⑤ 在庫入出庫 は 区分 と 日付 の2つ、建設の ⑤ 作業日報 は 作業日 と 作業者名 の2つ。残りは全部、条件付き必須に回しています。
| 守りたいこと | 見本の実際の設定 |
|---|---|
| キーの重複(標準・サーバー側) | 物件コード・顧客番号・契約番号・品番・受注番号・指示番号・案件番号・見積番号 に重複禁止 |
| 組み合わせの重複(保存を止める) | 不動産①=物件名+部屋番号/製造⑤=品番+区分+日付+ロット/建設③=案件番号+業者名+発注日/建設⑤=作業日+作業者名+案件番号 |
| 条件付き必須 | 製造②=状況が「キャンセル」なら キャンセル理由/不動産②=対応状況が「成約」なら 成約日・物件コード(ほか4件は9章に一覧) |
| 確定後の編集禁止 | 建設②=「受注」なら明細の 単価・数量/製造③=「完了」なら 指示数量・工程の 予定時間 ほか |
| 時間の重なり(警告) | 不動産③=開始〜終了×担当者/建設④=×担当職人/製造④=×作業者 |
| 採番 | 契約 K-FY2026-0001/受注 SO-FY2026-0001/製造指示 MO-FY2026-0001/案件 C-FY2026-0001(年度・4桁・年度開始4月で1に戻す) |
| サブテーブルの行番号 | 不動産⑥ 工事明細 の No/建設② 明細/製造③ 工程 |
3つ、読み取ってほしいことがあります。
1つ目、不動産の ① 物件台帳 が「物件名+部屋番号」で重複を見ている理由。 物件名 単独では重複禁止を掛けられません。「サンプルハイツ大井町」には101号室も203号室もあるからです。かといって何も掛けなければ、同じ部屋が二重に登録されます。標準の重複禁止が1項目しか見られない限界が、そのまま現れている箇所です。だから 物件コード を別に持たせ、そちらに標準の重複禁止(サーバー側)を掛けています。キーは標準で守り、業務上の重複はプラグインで見る——この二段構えが実務の形です。
2つ目、時間の重なりが「止める」ではなく「警告」になっている理由。 現場では、同じ担当者の予定が本当に重なります(立ち会いと移動、前の内見が延びる)。止めると、事実を入力できません。事実を記録できなくするチェックは、入れてはいけないチェックです。 「絶対に間違い」だけを止め、「たぶん間違い」は警告にします。
3つ目、見本に入れていないもの。 形式チェック・範囲チェック・入力値の整形・入力漏れサマリー・項目の表示切替は入れていません。見本のデータが架空で最初から整っているためです。実務で最初に入れるべきなのは入力値の整形です。表記ゆれが残っていると、重複チェックも、ルックアップのキーも、集計も、全部が静かに効かなくなります。
知らないと事故になる仕様
| 仕様 | 何が起きるか |
|---|---|
| 隠した項目の値は保存される | 区分を「法人」にして法人番号を入れ、あとから「個人」に変えると欄は消えるが、値は残る。一覧の列に出せば見えるし、CSVにも出る |
| 表示制御はアクセス権の代わりにならない | 隠した項目の値は、開発者ツールを使える人には見える。給与・評価・個人情報は必ずフィールドのアクセス権で守る |
| 隠した項目が標準の必須だと保存できない | 画面に見えないのにエラーが出て、入力する人は何が起きたか分からない。条件で出し分ける項目は、標準の必須を外す |
| 空欄は重複とみなされない | 「値の重複を禁止する」を掛けても、空欄のレコードは何件でも作れる。必須とセットで掛ける |
| 重複データがあると重複禁止をONにできない | 既存データを掃除してからでないと設定できない。運用を始めたあとでは手遅れになりやすい |
| モバイル画面で動かないプラグインがある | 当社の自動採番 0.1.0 はPC画面のみ。現場がスマホで入力する業務は、必ず実機で試す |
1行目と2行目は、実務でいちばん多い誤解です。見えないことと、入っていないことは別です。 「見せる必要がない」なら表示切替、「見せてはいけない」ならアクセス権。迷ったらアクセス権にしてください(詳しくは条件によって項目を出し分ける方法、設計は10章)。
厳しさと手間を、どこで釣り合わせるか
チェックを足すほど品質が上がる、ではありません。入力が続かなくなった時点で、品質はゼロになります。
線引きは、その項目が「あとで数える値」かどうかです。
| 項目の性格 | 守り方 |
|---|---|
| 集計・検索の軸になる(品番・工程名・区分・日付) | 止める。選択肢かマスタ参照にして、そもそも自由に入れさせない |
| 業務の証跡になる(契約金額・承認者・完了日) | 確定後はロックする。条件付き必須で、状態が進んだときだけ縛る |
| 補足・備考(希望条件・作業内容・原因) | 何も掛けない。自由に書かせる |
5章では「常時の必須は10個以内」と書きました。この章の答えはもっと強く、見本では1アプリ2項目までです。残りは「状態が『完了』になったとき」のように、入力の途中では縛らず、状態が進んだときだけ縛っています。これなら現場は書きかけで保存でき、それでも完了した記録には必ず対策と確認者が入ります。状態が進んだときの縛り方(条件付き必須と編集禁止の使い分け)は、9章で見本の全設定を一覧にしています。
よくある間違いを5つ
1. 漏れが怖いので全部必須にする——個人のお客様に法人番号が必須だと、現場は「-」「なし」「0000000000」を入れます。入力は通りますが、「本当に無いのか、入れ忘れたのか」が永久に分からなくなります。 → 直し方:常時必須はキーと日付くらいに絞り、残りは条件付き必須で状態が進んだときだけ縛ります。
2. 画面のチェックだけで守ったつもりになる——プラグインを入れた翌月に、Excelから300件を取り込んで台無しになります。 → 直し方:項目ごとに守る場所(サーバー側/画面/運用)を書き出し、CSV・APIの経路があるなら取り込み前の掃除を手順にします(11章)。1項目で足りる重複は、必ず標準の「値の重複を禁止する」に寄せます。
3. 重複チェックの掛け方を間違える——物件名 や 会社名 だけで重複禁止を掛け、同じ建物の別部屋や支店違いが登録できなくなる。逆に、何も掛けずに同じ取引先が3件並ぶ。
→ 直し方:キーには標準の重複禁止、業務上の重複には組み合わせのチェックと二段構えにします。見本の不動産が 物件コード(標準)と 物件名+部屋番号(プラグイン)を併用しているのがその形です。
4. 表示制御を「隠す」目的に使う——表示切替で給与欄を隠して守ったつもりになる。値は保存され、CSVにも出ます。 → 直し方:見せてはいけない情報はフィールドのアクセス権で守ります。あわせて、条件で出し分ける項目から標準の必須設定を外してください。隠したまま必須だと、誰も保存できなくなります。
5. 何でも「止める」にする——重なりも形式も範囲も全部ブロックにすると、現場は事実を入力できず、別の欄に嘘の値を入れ始めます。 → 直し方:「絶対に間違い」だけを止め、「たぶん間違い」は警告にします。当社のプラグインは重複・期間重複・範囲チェックでルールごとに止める/警告を選べます。
費用について
必須・値の重複を禁止・数値の最大最小・文字数・アクセス権はすべて標準機能で追加費用なしです。この章で挙げた埋め方(条件付き必須・重複チェック Pro・入力形式チェック・入力値の整形・範囲チェック・期間重複チェック・自動採番・テーブル行番号・条件付き入力禁止・項目の表示切替・入力漏れサマリー)は当社の無料プラグインで、無料・会員登録不要・外部と通信しません(プラグインの利用はスタンダードコース以上)。
kintoneのライセンス料はスタンダードコース 1ユーザー月1,800円(税抜)・最小10ユーザーでサイボウズ社とのご契約、当社の構築は1業務1アプリまで最大1か月0円、使うと決めていただいた段階で月5万円から(最低12ヶ月)です。
この章の出口
標準で守る項目の一覧(必須・重複禁止・最大最小・アクセス権)、プラグインで埋める項目の一覧とその設定、止める/警告の使い分け、CSV・APIの経路の有無と取り込み前の手順、そして点検リストの結果(1・3・9・11 が○)。
入力が守られると、溜まったデータが初めて信用できるものになります。表記が揃い、重複がなく、集計の軸が選択肢になっている。ここまで来て、ようやく次の話ができます。その信用できるデータを、どう見えるようにするか。 一覧・色・期限・グラフで、毎朝見る画面を1つ作ります。
この章の点検リストを開く(自社の状態を○×で判定する用)
点検リスト:入力の守り方の点検(12項目)
アプリ1つごとに○×を付けます。該当しない項目は「―」にして構いませんが、11と12は全アプリで必ず付けます。
| # | チェック項目 | ○の条件 |
|---|---|---|
| 1 | 同じものが2件登録されるのを保存前に止められるか | キーに標準の重複禁止が掛かっている |
| 2 | 複数項目の組み合わせ(会社名+電話など)の重複を見ているか | 見ている、または不要と判断した |
| 3 | 条件によって必須になる項目を、条件付きで必須にできているか | できている(全部必須になっていない) |
| 4 | 全角・半角・空白の表記ゆれが自動でそろうか | そろう(キーの項目は必須) |
| 5 | メール・電話・郵便番号の形式を保存前に確かめているか | 確かめている、または不要と判断した |
| 6 | 数値・日付の範囲(開始<終了、上限下限)を止めているか | 止めている |
| 7 | 同じ人・同じ時間の重なりを見ているか | 該当業務なら見ている(止める/警告を選んである) |
| 8 | 採番が必要な業務で、レコード番号以外の番号を自動で振れるか | 振れる(手入力になっていない) |
| 9 | 承認・確定後に金額等が編集できてしまう状態になっていないか | 編集不可になっている |
| 10 | 隠した項目に値が残る仕様を理解し、権限で守っているか | 表示制御を秘匿目的に使っていない |
| 11 | 項目ごとに「守る場所」を書き出したか | サーバー側/画面/運用のどれで守るかが項目ごとに決まっている |
| 12 | CSV取り込み・APIで入れる経路があるか。あるなら取り込み前の手順があるか | 経路の有無を確認し、ある場合は掃除・点検の手順が決まっている |
合格ライン=該当する項目のうち9割。ただし1・3・9・11 は該当すれば必須。
11が×のアプリは、いくらプラグインを入れても守れていません。「このチェックは画面だけか、どの経路でも効くか」を言えない状態が、いちばん危ない状態です。 スマホで入力する業務なら、実機で1件登録して、チェックが動くことも確かめてください。
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更新日 2018年10月20日
