広告代理店を選ぶときに確認することは、実質2つです。アカウントが誰の名義かと、手数料の中身です。
この2つを契約前に押さえておかないと、成果が出なかったときに動けなくなります。成果が出ないこと自体は起こり得ますが、動けなくなることは避けられます。
手数料の仕組みと代理店の選び方は費用と発注(Web広告運用の教科書 12章)にまとめています。この記事は、契約前と乗り換え時に絞った実務の手順です。
契約前に聞く5つの質問
| # | 聞くこと | 望ましい答え |
|---|---|---|
| 1 | アカウントは誰の名義で作りますか | 御社名義。既存アカウントがあればそれを使う |
| 2 | 手数料はどう計算しますか | 計算式と下限が明示されている |
| 3 | 広告費は誰が媒体に払いますか | 御社が直接払う(実費が請求書で確認できる) |
| 4 | 解約するとき、何が残りますか | アカウント・履歴・データがすべて残る |
| 5 | 毎月、何を報告しますか | 検索語ごとの費用と成果、変更した内容 |
この5つを口頭ではなく、書面かメールで答えてもらってください。 濁される項目があれば、その項目が後で問題になります。
1. アカウントの名義
いちばん重要です。広告アカウントには所有者がいます。代理店が自社名義で作ったアカウントで運用していると、解約したときに配信の履歴も蓄積されたデータも引き継げません。
確認の仕方は単純で、管理画面に自社のアカウントでログインできるかを聞けば分かります。
| 状態 | 解約時に起きること |
|---|---|
| 御社名義で、御社が管理権限を持っている | 権限を外すだけ。配信は止まらない |
| 御社名義だが、権限は代理店だけが持っている | 権限を渡してもらえば移せる。交渉が必要 |
| 代理店名義のアカウントで運用されている | 作り直しになる。過去のデータは引き継げない |
すでに契約している場合も、今日確認してください。 3行目だった場合、乗り換えるかどうかに関係なく、次の契約更新のタイミングで自社名義に作り直す交渉をする価値があります。
当社は当社名義では作りません。 データも履歴も御社に残るので、合わないと思われたらそのまま他社に引き継げます。
2. 手数料の中身
手数料の決め方は会社によって違います。他社がいくらかを調べるより、目の前の見積の計算式を確かめるほうが早いです。
聞くべきことは4つです。
- 計算方法(広告費に対する割合か、固定額か、併用か)
- 下限があるか(割合だけの契約に見えて、最低額が設定されていることがあります)
- 初期構築費が別にかかるか(かかる場合はいくらで、何が含まれるか)
- 広告費を誰が媒体に払うか
4番目は見落としやすい項目です。代理店を経由して広告費を払う形だと、媒体に実際いくら払われたかを自社で確認できません。 自社のカードや請求書で直接払う形なら、実費が自社に残ります。
参考までに当社の場合は、運用代行費が広告費の20%または月10万円のいずれか高い方(初期構築は20万円〜、すべて税別)で、広告費は媒体への実費として御社が直接支払い、当社を経由しません。
3. 報告書のどこを見るか
毎月の報告書で見るべきなのは、表示回数でもクリック数でもありません。
| 載っているべきもの | なぜ |
|---|---|
| 実際に検索された語ごとの費用と成果 | 無駄がどこで出ているかは、ここにしか出ない |
| 今月変更した内容 | 運用されているかどうかが分かる |
| 来月変える予定と、その理由 | 次の手があるかどうかが分かる |
| 成果0のまま費用を使っている語 | 止める判断の材料 |
検索語ごとの数字が載っていない報告書は、無駄になっている費用を隠せます。 全体のクリック単価だけを見せられていると、関係のない検索に費用が流れていても気づけません(→除外の設計(6章))。
数字の羅列だけで、変更の記録が一度も書かれていない報告書が続いているなら、設定した後に誰も触っていない可能性があります。
自分で判断できない場合は、第三者に見てもらう方法があります。当社の広告アカウント診断は1媒体5万円から、3媒体まで12万円から、5営業日でお返しします。単発で終わって構いません。 点検の観点は広告アカウントの点検手順(2章)に全部公開しています。
契約書で確認する4つの条項
提案書ではなく、契約書のほうを読んでください。 見る場所は4つです。
| 条項 | 確認すること |
|---|---|
| 契約期間と解約の予告 | 最低契約期間は何か月か。解約の申し出は何か月前か |
| 成果物の権利 | 作った広告文・バナー・LPを、契約終了後も自社で使えるか |
| 再委託 | 実際に運用するのは誰か。別会社に丸ごと出していないか |
| 報告の頻度と内容 | 月1回以上か。何を報告するかが書いてあるか |
とくに2番目です。広告用に作ったLPやバナーの権利が代理店側に残る契約だと、乗り換えるときに作り直しになります。LPを1枚作り直すと、当社の場合でも40万円からかかります。契約前に「終了後も使える」と書いてもらってください。
3番目の再委託も確認する価値があります。提案に来た人と、実際に管理画面を触る人が違うこと自体は問題ありませんが、質問したときに何日で答えが返るかは変わります。
4. 乗り換えの段取り
名義が自社であれば、配信を止めずに乗り換えられます。 順番は次のとおりです。
- 現契約の解約条件を確認する(予告期間・最低契約期間・違約金)
- アカウントの名義と管理権限を確認する
- 新しい依頼先に、現アカウントを見てもらう(診断だけ先に依頼する形が安全)
- 自社の管理権限を確保する(この時点で、自社が所有者であることを確定させる)
- 旧代理店の権限を外す
- 新しい依頼先に権限を渡す
- 計測の設定が引き継がれているかを確認する
7番を飛ばすと、移した翌月から件数が数えられなくなります。計測の設定は代理店側のアカウントに紐づいていることがあるためで、ここは移管前に必ず確認してください(→コンバージョンを正しく数える(3章))。
3番の「診断だけ先に」は、乗り換え先を見極める方法としても使えます。現状を見て何を直すかを具体的に言える会社かどうかが、提案書を読むより早く分かります。
乗り換えないほうがよい場合
| 状況 | 判断 |
|---|---|
| 成果が出ていないが、受け皿が壊れている | 先にフォームと導線を直す(→最初に見る5つ) |
| 何を1件と数えるかが社内で決まっていない | 先に計測を決める。代理店を変えても同じ議論になる |
| 広告費が月10〜20万円しかない | 代理店を付けず、自社で出す(→月10万円で何ができるか) |
| 担当者と合わないだけで、数字は出ている | 担当の変更を先に相談する |
代理店を変えても、広告の外にある原因は直りません。 受け皿・計測・商品の競争力は、どの会社に頼んでも同じ条件です(→受け皿で決まる部分(10章))。
自社でやるという選択肢
広告費が少ないうちは、代理店を使わないほうが成立します。判断の目安はこうです。
| 広告費 | 現実的な形 |
|---|---|
| 月10〜20万円 | 自社で出す。迷った箇所だけ単発で診断を頼む |
| 月20万円〜 | 代行を付ける意味が出てくる |
| 月20万円〜で、社内に担当者を置ける | 代行を受けながら、手順を引き継いで内製化する |
当社では運用の手順と数字の見方を渡す前提で受けており、インハウス化支援も行っています。外注を続けるかどうかは、費用対効果を見て決めていただく形にしています。
まとめ
- 契約前に確認するのは、アカウントの名義と手数料の計算式の2つ
- 代理店名義のアカウントは、解約時に履歴もデータも引き継げない
- 広告費を代理店経由で払うと、媒体への実費を自社で確認できない
- 報告書は、検索語ごとの費用と成果、変更した内容が載っているかを見る
- 名義が自社なら、配信を止めずに乗り換えられる。計測の引き継ぎだけ必ず確認する
- 受け皿・計測が原因のときは、代理店を変えても結果は変わらない
よくある質問
広告代理店を選ぶとき、契約前に必ず確認すべきことは何ですか
アカウントが誰の名義で作られるかと、手数料の計算方法の2つです。名義が代理店側だと、解約時にデータごと失う可能性があります。手数料は、広告費に対する割合なのか固定額なのか、下限があるのか、初期構築費が別にかかるのかを書面で確認してください。
今の代理店から乗り換えると、広告は止まりますか
名義が自社であれば止めずに移せます。権限の付け替えだけで済むためです。代理店名義の場合は新しくアカウントを作り直すことになり、過去のデータが引き継げません。乗り換えを考えた時点で、まず名義を確認してください。
報告書のどこを見れば、ちゃんと運用されているか分かりますか
実際に検索された語ごとの費用と成果が載っているかです。ここが載っていない報告書は、無駄になっている費用を隠せます。あわせて、今月何を変えて来月何を変えるかが書いてあるかを見てください。数字の羅列だけで作業の記録がない報告書は、運用されていない可能性があります。


