株式会社COTSUBU
自治体DX

自治体の施設予約・貸出管理をkintoneで作る|重複予約・減免・鍵の受け渡し

宇田川 将也|8分
自治体DX施設予約kintone貸出管理住民サービス

公民館・体育館・会議室の予約、プロジェクタや公用車の貸出。どの庁舎にもあり、どの庁舎でも紙の予約簿とExcelで回っています。

この記事は、この2つをkintoneで管理するときに何を決めるかを書いたものです。住民向けサービスを作る前の判定は自治体DXの教科書 10章にあるので、ここでは予約と貸出に固有の論点だけを扱います。

なお、使用料・減免の可否・使用許可の扱いについて、この記事は判断を書きません。 すべて自庁の条例・規則・要綱で定まっていることなので、確認する相手だけを書きます。

「予約」と「使用許可」は同じではない

最初につまずくのがここです。画面上の「予約完了」が、その施設の手続き上の何に当たるのかを決めないまま作ると、後から巻き戻しになります。

施設によっては使用許可の手続きが定められており、申込を受け付けた状態と、使用を許可した状態は別です。何をもって許可とするか、許可証をどう交付するか、取り消すときはどうするか。これは自庁の条例・規則で決まっています。

確認する相手 聞くこと
施設の所管課 いまの手続きの実際の流れ。申込から使用までに何が発生しているか
法規の担当 使用許可に関する定め。電子で行う場合に直すものがあるか
会計の担当 使用料の納付の方法。前納か、当日か

聞き方は「オンライン予約はできますか」ではありません。「この施設の予約と使用許可を電子で扱う場合、庁内のどの規程を直す必要がありますか」です。できるかどうかではなく、何を直すかが答えとして返ってきます。

探す言葉:「(自庁名)(施設名)設置及び管理に関する条例」「使用許可 申請 様式」。

段階を3つに分けて、1つずつ開ける

一度に全部を作ろうとすると、どこかで止まります。分けてください。

段階 何ができる状態か 住民から見た変化
1. 空き状況が見える 庁内の台帳が1本になり、空きを画面で見られる 「空いていますか」の電話が減る
2. 申込を受け付ける 申込を画面から出せる。受付後の事務も台帳の上で回る 来庁しなくても申込ができる
3. 許可・使用料・鍵まで回る 許可の記録、使用料の状態、鍵の受け渡しが1本になる 窓口に来る回数が減る

段階1だけでも、効果は出ます。 施設の予約で職員がいちばん時間を取られているのは、電話で「◯日の午後は空いていますか」と聞かれて、予約簿を見に行って答える作業だからです。

段階2を先に開けないでください。 受け付けた後の事務が用意できていない状態で入口だけを開けると、問い合わせが増えて紙より手間がかかります。段階1を数か月回して、台帳が実態と合っていることを確かめてから2に進んでください。

重複予約を、どうやって防ぐか

正直に書きます。kintoneの標準機能だけでは、同じ時間帯の予約を自動で弾くことはできません。 重複しない値を1つの項目に対して禁止する設定はありますが、「日付と時間帯の組み合わせ」のような複数の条件では使えません。

防ぎ方は2つあります。どちらか、または両方です。

方法 やること 向く施設
時間帯を選択肢に区切る 午前/午後/夜間、あるいは1時間単位の枠を選択肢にする。自由な時刻入力にしない 枠が決まっている施設
申込を確定にしない 申込は「受付中」で入り、職員が確認して「確定」にする。確定は職員しか変えられない 許可の手続きがある施設

2行目のほうが、自治体には合います。 使用許可の手続きがある以上、申込がそのまま確定になる設計は取れないことが多いからです。確認する職員の作業が1手増えますが、その1手はもともと発生しています。

そのうえで、確定済みの予約を日付と時間帯で並べた一覧を作ってください。同じ枠が2件並んでいれば、そこが重複です。一覧の作り方はkintoneの教科書 8章 一覧・グラフ設計にあります。カレンダーの形で見せたい場合はプラグインを使うことになるので、入れる前の判断は12章 プラグインの選び方を見てください。

減免の区分は持つ。金額の判定は持たせない

多くの施設には、使用料の減免の定めがあります。ここで、金額の計算を画面に作り込もうとしないでください。

持つもの 持たせないもの
利用者の区分(地域の団体/市内の団体/それ以外 など、自庁の区分名をそのまま) 区分から金額を自動で出す計算
減免の申請の有無、決定の状態 減免に当たるかどうかの判定
使用料の額(確定した額を入力する) 条例の表を画面に写したもの

理由は2つです。ひとつは、減免の可否は所管課が判断することで、画面が判断するものではないこと。もうひとつは、使用料の定めは改正されることです。画面に金額の表を作り込むと、改正のたびに作り直しになり、改正に気づかないと間違った額が出続けます。

画面には区分と確定額だけを持たせ、判定は人が行う。 これが、制度が変わっても壊れない形です。減免の可否と額は、自庁の条例・規則で確認してください。

貸出物品は「いま誰が持っているか」だけを見る

プロジェクタ、ノートパソコン、公用車、貸与品。貸出の管理で本当に必要な情報は、1つだけです。

いま誰が持っていて、いつ返る予定か。

持つもの なぜ要るか
物品のマスタ(品名、管理番号、保管場所) 同じ品名のものが複数ある。番号で特定する
貸出の記録(誰に、いつ、いつまで、返却日) 1レコード=1回の貸出
状態(貸出中/返却済/修理中/廃棄) 貸せるものだけを一覧で出す
返却期限を過ぎたものの一覧 督促の一覧がそのまま作れる

物品と貸出記録を分ける理由は、kintoneの教科書 5章 1レコードの決め方の「マスタと記録を分ける」と同じです。1つのアプリに「品名と、いまの借り主」だけを持たせると、過去に誰が借りたかが残りません。

公用車のように運行の記録が要るものは、貸出の記録に走行距離や行き先を足します。三重県名張市で支援している案件にも公用車の運行管理が並んでいます。多くの課が使う業務なので、庁内に存在を知ってもらう1件目として向いています(自治体DXの教科書 2章の「庁内での見えやすさ」)。

キャンセルと当日変更が、いちばん電話を生む

作った後に効いてくるのがここです。予約は、取るより変えるほうが多く発生します。

起きること 先に決めること
前日・当日のキャンセル いつまでなら画面で取り消せるか。それ以降は電話か
利用時間の変更 変更を新規の申込として扱うか、同じレコードを直すか
代表者の交代 団体の代表が変わったとき、過去の予約をどう扱うか
天候による中止 施設側の都合で中止した記録を、どう残すか

2行目を決めておかないと、記録が壊れます。 同じレコードを直す形にすると、元の予約が何時だったかが残りません。使用料が絡む場合は、変更前と変更後の両方が残る形にしてください。変更履歴を残す設定は標準でできます。

4行目も忘れられがちです。中止した回を記録に残さないと、後から稼働率を見たときに「使われなかった日」と区別が付きません。

溜まった記録は、施設の議論の材料になる

1年回すと、その施設が実際にどれだけ使われているかのデータが溜まります。

  • 時間帯ごとの利用状況(夜間はほとんど使われていない、など)
  • 利用している団体の顔ぶれと回数
  • 申込を断った件数(=需要があるのに枠が足りない)

3つめは、台帳を作っていないと絶対に残りません。 断った申込は紙の予約簿に書かれないからです。断った記録を残す欄を最初から作っておくと、翌年度以降の議論の材料になります。

公共施設の配置や運営の見直しは、どの自治体でも議題に上がります。そのときに手元にあるのが体感なのか記録なのかで、話の進み方が変わります。 ただし、公表する粒度は所管課と個人情報保護の担当に確認してください(自治体DXの教科書 6章)。

当社が自治体の業務をkintoneで構築する場合は1業務30万円(税込33万円)、3業務パックで75万円です(自治体向けkintone構築)。施設予約と貸出物品は業務の形が近いので、まとめて発注いただくことが多い組み合わせです。

まとめ

  • 画面の「予約完了」が手続き上の何に当たるかを、所管課・法規・会計に先に確認する
  • 空き状況の公開→申込の受付→許可・使用料・鍵、の3段階で1つずつ開ける
  • 重複予約は標準機能では弾けない。時間帯を選択肢に区切り、職員の確認で確定させる
  • 減免は区分と確定額だけを持つ。金額の判定を画面に作り込まない
  • 貸出物品は、物品マスタと貸出記録を分ける。返却期限切れの一覧が督促に使える
  • キャンセル・時間変更・中止の扱いを先に決める。変更前の記録を消さない
  • 断った申込も記録に残す。翌年度の議論の材料になる

→ 自治体向けkintone構築(1業務30万円から) → 自治体DXの教科書 10章 住民向けサービス|申請・予約・通知 → kintoneの教科書 8章 一覧・グラフ設計|期限と色で気づく → 自治体のペーパーレス化|紙・Excel業務をデジタル化する具体的な方法 → 自治体の補助金の申請受付をデジタル化する|様式・添付・審査の記録 → 自治体DX支援・地域活性化起業人

よくある質問

kintoneで施設予約を作ると、ダブルブッキングは防げますか

標準機能だけでは、同じ時間帯の予約を自動で弾くことはできません。防ぎ方は2つあります。ひとつは時間帯を選択肢として区切り、日付と時間帯の組み合わせで重複を見つけやすくすること。もうひとつは、入力の直後に職員が確認して確定させる段取りにすることです。申込をそのまま確定にしない形にしておけば、重複は職員の確認で止まります。

施設の予約をオンラインにすると、使用許可もオンラインで出せますか

予約と使用許可は別の手続きです。施設によっては使用許可の手続きが定められており、その扱いは自庁の条例・規則で決まっています。何をもって許可とするか、許可証をどう交付するかは所管課と法規の担当に確認してください。この記事では判断を書きません。

まず何から始めるのがいいですか

空き状況を見られるようにするところからです。申込の受付を先に開けると、受け付けた後の事務が用意できていないまま問い合わせが増えます。空き状況の公開だけなら庁内の台帳を整えれば実現でき、窓口での「空いていますか」という電話が減ります。

宇田川 将也/ 代表取締役

2024年に総務省の地域活性化起業人として島根県海士町に着任。役場に住み込んで業務改善に従事し、kintoneで電子決裁や定期健診管理を構築しました。

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