株式会社COTSUBU

CHAPTER 12

AIの内製化|外注で終わらせない道筋

この章で分かること

  • 内製化で自社に持つべき3つと、外に頼み続けてよい部分
  • 4段階の自己診断と、段階ごとの次の一手
  • 続けるために月にどれくらいの時間を確保するか
この章の目次(9)
  1. 1自社に持つのは3つだけ
  2. 2外に頼み続けてよい部分
  3. 34段階の自己診断
  4. 4段階ごとの次の一手
  5. 5月にどれくらい時間を使うか
  6. 6道具を乗り換えられる状態を保つ
  7. 7全部を内製化しないほうがよい場合
  8. 8よくある間違いを5つ
  9. 9本全体の締め

内製化とは、全部を自社でやることではありません。決める部分と、直す部分を自社に置くことです。 作る部分は外に頼んで構いません。ただし、指示文を自社で直せない状態と、使える人が1人しかいない状態は、どれだけ道具が動いていても内製化とは呼べません。 この章は、自社がいまどの段階にいるかを判定し、次の1年でやることを3つに絞るための章です。そして、この本全体の締めです。

この章で分かること

  • 内製化で自社に持つべき3つと、外に頼み続けてよい部分
  • 4段階の自己診断と、段階ごとの次の一手
  • 続けるために月にどれくらいの時間を確保するか

自社に持つのは3つだけ

内製化という言葉が誤解されやすいのは、程度の話だと受け取られるからです。半分は自社でやっているから半分内製化できている、という数え方をすると、どこを自社でやるかの議論が抜けます。実際には、自社が持つべき部分と、外に出してよい部分ははっきり分かれていて、割合の問題ではありません。持つべき部分を1つでも外に出していれば、残りをすべて自社でやっていても、業務は止まる側に倒れます。

分かれ目は、変化が起きたときに誰が動けるかです。業務は必ず変わります。様式が変わり、担当が変わり、取引先の要求が変わる。そのとき、自社だけで直せるなら内製化できています。外に依頼して見積を待ち、作業の順番待ちに並ぶなら、できていません。動いているかどうかではなく、変えられるかどうかで判定してください。

この判定の仕方には利点があります。導入直後は、どんな形でも動いて見えるので、内製化できているかどうかが分かりません。半年後に最初の変更が必要になった日、その判定は一瞬で出ます。そして、その日に外注費と待ち時間が発生すると分かったなら、それは導入時の契約の作り方の問題です。だからこの章は、本の最後に置きながら、実際には契約を結ぶ前に読むべき章でもあります。

全部を抱え込むと、人が足りずに止まります。持つのはこの3つです。

# 自社に持つもの 無いとどうなるか どの章で作ったか
1 決めごと(線引き・社内ルール) 判断する人ごとに答えが変わる。事故の責任が宙に浮く 1章・3章
2 指示文と手順を直せること 業務が変わるたびに外注費と待ち時間が発生し、現場が使うのをやめる 5章・9章
3 使える人が複数いること 1人の異動で止まる。改善も止まる 9章

この表は、3行そろって1つの条件です。上から順に達成する段階ではありません。3つのうち2つができている状態は、3分の2できているのではなく、単に止まる原因が1つある状態です。真ん中の列を読めば分かるとおり、それぞれ違う壊れ方をするので、他の2つで埋め合わせが効きません。

自社の現状を当てはめるときは、右端の列を使ってください。該当する章の成果物が現物として手元にあるかを確かめる、という形です。頭の中にあるものは数えません。1の決めごとなら紙かファイルがあるか、3なら氏名が書いてあるか。この確かめ方にすると、判定に主観が入りません。

2が分かれ目です。 作ってもらった仕組みが動いていても、直せないなら、それは買っただけです。

たとえば、受注処理の一部を自動化する仕組みを外部に作ってもらい、半年ほど問題なく動いていたとします。ところが取引先の1社が注文書の様式を変えると、読み取りが通らなくなります。自社で直せなければ、作った会社に依頼して、見積と作業で数週間かかります。その間、その取引先の分だけは手作業に戻すことになります。

金額としては大きな出費でないことが多いです。効くのは別のところです。現場が「また変わったら数週間止まる」と考えるようになり、新しい業務に広げる話が社内で通らなくなります。1度の待ち時間が、その後の展開を止めるわけです。防ぐには、契約(や更新)のときに、指示文の直し方を教わる時間を条件として入れておきます。

作ってもらうこと自体は、まったく問題ありません。問題は、引き渡しの条件に「自社で直せる状態にすること」が入っていないことです。これは発注時にしか交渉できません。納品後に「直し方を教えてください」と頼むと、追加の作業として見積が出ます。 業務は必ず変わります。様式が変わる、担当が変わる、取引先の要求が変わる。変わったときに自社で直せるかどうかが、内製化の定義だと考えてください。

外に頼み続けてよい部分

内製化の反対語は外注ではありません。頼む範囲を自社が決めている状態なら、頼み続けて構いません。

範囲 自社 外
任せる範囲の線引き・社内ルール ◯ 必ず自社 相談相手としてなら
業務の選定 ◯ 自社が決める 棚卸しの進め方は頼める
指示文の作成 最初は一緒に、直すのは自社 型づくりは頼める
開発・連携の作り込み 直せる人がいなければ外 ◯
道具の選定 ◯ 自社が決める 確認観点の整理は頼める
効果の判定 ◯ 自社 数え方の設計は頼める
事故対応の初動 ◯ 必ず自社 —

「必ず自社」が2つあります(決めごとと初動)。 どちらも、外の人には判断できないものです。契約と、社内の事情と、責任の所在が絡むためです。 頼む範囲を決めたら、金額と期間も書いてください(9章の点検項目9)。範囲が曖昧な委託は、毎年少しずつ広がります。

4段階の自己診断

いまどこにいるかで、次の一手が変わります。上から順に判定してください。

段階 状態 判定の条件
1 試した 何人かが使っている。業務としては回っていない 線引きも社内ルールも無い、または配っていない
2 1業務が回っている 対象業務が決まり、手順と確認箇所がある 担当者1人で回っている
3 複数業務・2人目がいる 業務ごとに2人目がいて、置き場所が1か所 指示文の更新を外に頼んでいる
4 自社で増やせる 新しい業務を自社だけで追加できた 指示文を自社で直した履歴がある

この表は、上から順に読んで、最初に当てはまらなくなった行の1つ上が自社の段階です。右端の「判定の条件」は、その段階に留まっている理由を書いてあります。つまり、判定の条件の欄がそのまま、次に潰すべき1つになっています。段階を上げるためにやることを探す必要はありません。

段階3で止めるか、4を目指すかは、多くの会社が迷う分かれ目です。迷ったら、段階3で止めてください。判断の基準は意欲ではなく、業務の数です。自社で新しい業務を追加できる状態が価値を持つのは、追加したい業務が次々に出てくる場合だけです。対象が2つか3つで安定しているなら、段階3のまま、変更が必要になったときだけ自社で直せれば十分に回ります。

逆に、段階4を目指す価値がはっきりある場合もあります。似た形の業務が部門をまたいで並んでいて、1つ増やすたびに外注費が発生している、という形のときです。このときは段階4が費用の話になるので、社内で説明できます。説明できる理由があるかどうかで決めてください。「自走できる組織にしたい」という理由だけで進めると、途中で担当者の負荷が上がり、元の委託に戻ります。

段階1で道具を増やさないでください。 よくある停滞は、段階1のまま道具だけが増え、誰が何に使っているか分からなくなる形です。 段階3から4に進めない原因は、ほぼ1つです。指示文を外に持たれていること。 契約の形を変えるか、直し方を教わるかを、次の更新のときに交渉してください。

段階ごとの次の一手

いまの段階 次にやること 使う章
1 → 2 線引きの表を配る。最初の1業務を決め、着手前の数字を取る 1章・2章・3章
2 → 3 2人目を決めて、1人でやってもらう。置き場所を1か所にする 9章
3 → 4 指示文を自社で1回直す。新しい業務を自社だけで追加する 5章・2章
4 半年ごとに点検リストを通す。道具の見直しをする 3章・4章・10章

段階を飛ばさないでください。 1から3に飛ぼうとすると、決めごとが無いまま複数業務に広がり、事故が起きたときに全部を止めることになります。

月にどれくらい時間を使うか

続かない一番の理由は、時間を確保していないことです。新しい会議体は作りません。 既存の定例に足します。

いつ 何分 やること
月1回 15〜30分 うまくいかなかった記録の読み合わせ、指示文の更新(9章の点検項目10)
四半期に1回 2時間 線引きの表の見直し、1章・9章の点検リストを通す
半年に1回 2時間 社内ルールと10章の点検リストを通す。道具の条件を公式ドキュメントで確認し直す
年1回 半日 次の1年でやること3項目を決め直す

当社の決めごと:見直しの日付を、決めた日にカレンダーに入れる。 理由は、「そのうち見直す」は実行されないためです。日付が入っていない見直しは、無いのと同じです。

道具を乗り換えられる状態を保つ

契約先が変わる、値上げされる、機能が終了する。これは必ず起きます。備えは1つだけです。

保つもの 確かめ方
指示文が道具の外にある 共有フォルダやリポジトリから開ける(4章の点検項目9)
手順書が道具の外にある 操作の名前ではなく、材料・確認箇所・やり直す条件で書いてある(9章)
出したデータを取り出せる 解約時のデータの扱いを公式資料で確認してある(4章の点検項目8)
特定の道具でしかできない作り込みの範囲が分かる どこまでが移せないかを一覧にしてある

手順書を操作の名前で書かないでください。 画面名やボタン名で書かれた手順書は、道具が変わった時点で全部が無効になります。自社で決めたことだけを書いていれば、移すときに書き直す量はわずかで済みます。

全部を内製化しないほうがよい場合

内製化そのものが目的になると、かえって高く付きます。

状況 判断
対象業務が1つで、月の件数も少ない 内製化まで持っていかない。手順書だけ残す
社内に直せる人が1人もおらず、採用の予定も無い 委託を続ける。ただし決めごとと初動は自社に置く
専門的な資格・責任が伴う領域 外の専門家に頼む。判断も含めて任せる範囲を明記する
作った道具を持ち切れない 8章に戻る。本数を減らす

2行目が現実的な落としどころです。決めごとと初動さえ自社にあれば、作る部分を頼み続けても運用は壊れません。

よくある間違いを5つ

「内製化=全部自社でやること、だと考えた」 ——人が足りず、途中で止まります。直し方:自社に持つのは3つ(決めごと・直せること・複数人)に絞る。残りは範囲と金額を決めて頼む。

「仕組みは納品されたが、直し方を教わらなかった」 ——業務が変わった時点で使われなくなります。直し方:引き渡しの条件に「指示文を自社で直せること」を入れる。受け取った後に1回、自社だけで直してみる。

「詳しい1人がいるので、内製化できていると考えた」 ——その人の異動で全部止まります。直し方:業務ごとに2人目の氏名を書く(9章の点検項目3)。

「点検リストを1回通して、それで終わりにした」 ——半年で実態とずれます。道具の条件も変わります。直し方:四半期と半年の見直し日をカレンダーに入れる。

「次の1年の計画に、10項目を並べた」 ——実行されるのは、多くても3つです。直し方:3項目以内に絞る。残りは次の年に回す。

本全体の締め

この本で埋めた12枚

区分 章 手元に残るもの 点検リスト
決める 1 線引き 業務・任せ方・人が見る場所の3列表 12項目
2 業務探し 最初の1業務と、着手前の数字 12項目
3 社内ルール A4 1枚(情報4段階・窓口・責任) 14項目
4 道具 契約前の確認記録と、止め方 10項目
任せる 5 指示 ファイルになった指示文と置き場所 10項目
6 文章 種類×確認の重さの表、出典欄 12項目
7 データ 正本と検算の形(件数・合計・抜き取り) 12項目
8 開発 1枚の仕様と、戻し方を試した記録 12項目
守る 9 社内に残す 置き場所・2人目・引き継ぎ物の一覧 10項目
10 やってはいけない使い方 確認先一覧と初動3手 12項目(全項目必須)
続ける 11 効果 着手前後の数字と、続ける/戻すの判定 10項目
12 内製化 段階の判定と、次の1年の3項目 10項目

合計12本・136項目です。 全部を一度に通す必要はありません。

読む順番(もう一度)

  • 最初に通すのは1章と3章です(26項目)。 経営者と管理部門で2時間あれば通せます。ここが×のまま道具を配ると、後の章が全部やり直しになります
  • 次が2章(業務探し)と4章(道具)。 業務を決めてから道具を選びます。逆にすると、道具に業務を合わせることになります
  • 5〜8章は、選んだ業務の種類だけ読めば足ります。 文章の仕事なら6章、数字なら7章、開発が絡むなら8章です
  • 9章と10章は全員。 属人化と事故は、業務の種類に関係なく起きます
  • 11章・12章は、3ヶ月後と1年後に開きます

この本の原則(守ったこと)

  1. 出典のない数字を書きませんでした。 効果の数字は、読者が自分の会社で数える手順として書いています(11章)
  2. 製品の画面名・料金・モデル名に依存しない形で書きました。 確認が要る箇所は「提供元の公式ドキュメントで確認」+探す言葉+確認日を記録するという形にしています
  3. 法的な判断を書きませんでした。 10章は、確認先と問いだけです
  4. 「AIで全部できる」と書きませんでした。 各章に「使わないほうがよい場合」を置いています。ここがこの本の中身です

更新の約束

道具は変わります。それでも、点検リストの項目は、道具が変わったという理由では変えません。 項目が「管理者が利用状況を見られるか」のように、製品が変わっても残る形で書いてあるためです。 変えるのは、運用してみて足りないと分かったときだけです。変えたときは、index.md の更新履歴に、何をなぜ変えたかを書きます。 読む側でやっていただきたいことが1つあります。公式ドキュメントで確認した項目には、確認日を残してください。 提供元の条件は変わります。確認日が無いと、変わったことに気づけません。

分からないところ、作れないところ

この本は、読んだ人が自分で決められる状態になることを目的にしています。それでも、決められないところと、作れないところは残ります。

残りやすいところ 相談先
判断する相手が社内にいない(1章・3章) 社外CxO・IT顧問
業務の棚卸しが進まない(2章) 業務の棚卸し(1部門は無料・全社30万円〜)
最初の1業務を回す型がほしい(4章・5章) Claude Code導入支援(導入と型づくりは無料・利用開始後 月5万円〜)
業務の仕組みを作る(6〜8章) 業務効率化(構築まで無料・利用開始後 月5万円〜)/既存システム連携
見積の妥当性が分からない(8章) 見積のセカンドオピニオン
計画にして、実行まで伴走してほしい(12章) DX推進の計画づくり(50万円〜/計画づくり+実行の伴走 月15万円〜)

金額はすべて税別です。内製化の進め方そのものの考え方は、記事(AI活用のインハウス化支援とは?自走できる組織の作り方)にもまとめています。

最後に1つだけ。 この本に書いたことのうち、AIが無くても価値があるものが半分以上あります。業務を数えること、確認の場所を決めること、2人目を作ること、記録を残すこと。 AIは、それらが揃っている会社で、はじめて効きます。 順番はこの本のとおりです。

この章の点検リストを開く(自社の状態を○×で判定する用)

点検リスト:内製化の到達点(10項目)

年1回、半日で通します。 これがこの本の最後の点検リストです。

# チェック項目 合格ライン
1 線引きの表が自社で更新されている 直近3ヶ月以内に更新された記録がある
2 社内ルールが自社で更新されている 直近6ヶ月以内
3 指示文を自社で直せている 自社だけで直した履歴がある
4 新しい業務を自社で追加できた 1つ以上、自社だけで追加した
5 使える人が3人以上いる 氏名がある
6 月次で見る時間が確保されている 既存の定例に組み込まれ、日付がある
7 道具を乗り換えられる状態にある 指示文と手順が道具の外にあり、操作名で書かれていない
8 外部に頼む範囲が決まっている 範囲・金額・期間が書いてある
9 事故ゼロで運用できている 3章・10章の点検を通している
10 次の1年でやることが書いてある 3項目以内

合格ライン=10項目中8以上。ただし 3・5・7 のどれかが×なら、内製化とは呼ばない。

  • 3が×:買っただけの状態です。業務が変わった日から、費用と待ち時間が発生し続けます
  • 5が×:1人の予定で会社の業務が止まります。人事の判断も縛られます
  • 7が×:道具の都合が、そのまま自社の業務の都合になります。値上げにも終了にも対応できません

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更新日 2018年10月20日