株式会社COTSUBU
中小企業DX

DXとは?中小企業のための超わかりやすい解説

宇田川 将也|9分
DXデジタルトランスフォーメーション中小企業入門IT化

DXという言葉の定義を正確に覚えても、明日やることは決まりません。中小企業で本当に必要なのは、「今どの段階にいて、次の1手は何か」を決めることです。

この記事は、言葉の説明を最小限にして、自社の段階を測る表、最初の1業務の選び方、そしてやらないほうがよい条件を並べたものです。

IT化とDXの違い(最小限)

IT化 DX
目的 今の仕事を速くする 仕事のやり方そのものを変える
範囲 一部の業務 業務のつながり全体
例 紙の日報をExcelにする 日報をやめて、作業記録から自動で原価を出す
効果 時間が減る 意思決定が変わる

中小企業は、IT化から始めて構いません。 いきなりビジネスモデルを変えようとすると、手元の非効率が残ったまま話だけが大きくなります。ただし、IT化のときに「あとで数字として使える形で記録する」ことだけは意識してください。ここがDXに進めるかどうかの分かれ目です。

自社がどの段階にいるか

当てはまるものを数えてください。

段階 当てはまること
0 紙・FAX・電話が業務の中心。同じ内容を何度も書き写している
1 Excelに入っているが、ファイルが人ごと・拠点ごとに分かれている
2 クラウドに1つのデータがあり、複数人が同時に触れる。履歴が残る
3 記録が自動で集計され、数字を見て来月の判断を変えている
4 データをもとに、今までなかったサービスや料金の形を作っている

段階を飛ばせません。 0の会社が3の話(データドリブン経営)から入ると、集めるデータが無いところで止まります。まずは1つの業務を、0→1→2と上げてください。

何から手をつけるか

業務を並べて、次の3つで点を付けます。

見るところ 点の付け方
頻度 毎日=3/毎週=2/毎月=1
人数 3人以上=3/2人=2/1人=1
転記の回数 同じ内容を3回以上書き写す=3/2回=2/1回=1

積(頻度×人数×転記)が大きいものから着手します。毎日3人が3回書き写している業務は27点、月1回1人が1回書き写す業務は1点です。効果の差はこれくらい開きます。

よく上位に来るのは、受注・発注の記録、問い合わせ対応、日報・作業記録、見積作成、勤怠と作業時間の突き合わせ、点検・検査記録です。

やらないほうがよい条件

条件 理由
現場が「今のやり方で困っていない」と言っている業務 入れても使われない。困っている業務が他にあるはず
3ヶ月以内に組織や業務そのものが変わる予定がある 作ったものが無駄になる
進める担当者が決まっていない 「みんなでやる」は誰もやらない
補助金の申請が目的になっている 補助金は手段。通ったあとに使わないものが残る
経営者が「とりあえずAI」と言っているだけ 課題が特定されていない
業務が1人で完結していて、その人が辞める予定もない 効果が出にくい。ただし属人化のリスクは別途考える

「担当者が決まっていない」がいちばん致命的です。DXは道具の話ではなく、決める人の話です。兼任でよいので、名前を1人決めてください。

よくある失敗と、その手前で止める方法

失敗 起きること 手前で止める方法
全社一斉に導入する 誰も使い方を聞ける相手がいない 1部署・1業務から始める
要件を全部決めてから作る 検討だけで半年が過ぎる 1週間で動くものを見せる
例外をすべてシステムに入れる 分岐だらけで誰も使えない 例外は備考欄と運用で吸収する
道具だけ導入して運用ルールを決めない 3ヶ月で元のやり方に戻る 「いつ誰が入力するか」を決めてから配る
効果を測らない 続ける理由も止める理由も説明できない 導入前に今の作業時間を2週間記録する
ツールを増やしすぎる 情報がツール間に散る 「正はどこか」を1つに決める
現場に相談せず情シス・経営者だけで決める 使われずExcelに戻る 作った翌週に現場に触ってもらう

90日の進め方

期間 やること 終わりの状態
1〜2週目 業務を書き出し、上の点数で1つ選ぶ。担当者を決める 対象業務と担当者が決まっている
3〜4週目 今の作業時間を記録する。同時に、動くものを作る 比較の基準と、触れるものがある
5〜8週目 現場10人以内で使い、出た不満を直す 業務が回る形になっている
9〜12週目 全員に広げる。入力ルールを文書にする 元のやり方に戻らない
以降 月1回、数字を見る会を持つ 次の業務が決まる

3〜4週目の「今の作業時間を記録する」を飛ばさないでください。 これが無いと、半年後に「で、効果は出たの?」と聞かれて答えられません。ストップウォッチは要りません。「この作業に何分かかったか」をメモするだけで十分です。

段階0→1:紙をやめる順番

紙が中心の会社が最初にやることは、いきなりシステムを入れることではありません。紙をやめる順番があります。

順番 やること 判断の目安
1 「書き写している紙」を探す 同じ内容が2枚以上の紙に書かれていたら対象
2 最後に書き写した先だけをデジタルにする 現場のメモは紙のままでよい
3 その1枚を、スマホかPCから入力する形にする 入力するのは1人でよい
4 手前の紙を1枚ずつ減らす 現場が慣れてから

2が要点です。 現場に「今日から紙をやめてスマホで入力」と言うと、まず失敗します。事務所側の転記を先に消し、現場の紙は最後に手を付けます。

建設業の作業日報がこの典型で、紙の日報を集めて事務所でExcelに打ち直している会社が多くあります。実際の作り方は建設業の作業日報をkintoneでスマホ入力にする方法に書きました。

道具の選び方

価格やプランは変わるので、選ぶときは必ず各社の公式サイトで最新を確認してください。判断の軸は次の3つです。

軸 見ること
データを取り出せるか CSVで出せるか、APIがあるか。出せないツールは乗り換えられない
自社で直せるか 項目や画面を自分たちで変えられるか。毎回ベンダーに頼むと止まる
無料プランで試せるか 契約前に1業務だけ通して試せるか

1つめが最も重要です。データを取り出せないツールは、どれだけ安くても選ばないでください。 数年後に必ず動けなくなります。

領域ごとの考え方です。

領域 考え方
会計・給与 専用のクラウドソフトを使う。自作しない
社内の連絡 1つに決める。メールとチャットの二重運用をやめる
自社だけの業務(受注・案件・点検・日報) パッケージに合わないので、kintoneのような自分で作れる道具
資料作成・要約・下書き AI(→AIで業務自動化)
Webサイト・広告 作って終わりにせず、数字を見て直す前提で

kintoneを使う場合の費用は、ライセンスがスタンダードコース 1ユーザー月1,800円・税抜/最小10ユーザー(サイボウズ社へのお支払い)です。COTSUBUに構築をご依頼いただく場合は、1業務1アプリまで最大1か月0円、使うと決めていただいた場合だけ月額5万円から(最低契約12ヶ月)です。

補助金をどう扱うか

補助金は使えるなら使うべきですが、「通ってから何をするか」が先です。申請に合わせて計画を作ると、実態と合わないものが出来上がります。

順番としては、上の90日を回して「これは続けたい」と分かったものを、次の年度に広げる費用として申請するのが無理がありません。制度と申請の実務は中小企業のDXに使える補助金にまとめています。

現場での実例

COTSUBUは島根県海士町の役場で、kintoneによる電子決裁、入札関連情報の一元管理、定期健診管理を構築しました。健康福祉課では、電話受付のメモとExcelの名簿を突き合わせる作業が毎日発生していたものを1つのアプリに統合し、料金判定の自動化と案内の一括出力までを1本にしています(→海士町の事例)。

業種ごとの実際の画面も公開しています(データはすべて架空です)。

進める体制をどうするか

社内に専任のIT担当を置けない場合、次の3つのどれかになります。

体制 向いている規模 注意
兼任の担当者を1人決める 〜30名 本業の合間になるので、月の時間を決めて確保する
外部に作ってもらい、運用は社内 30〜100名 引き渡しの範囲(設定変更の権限、手順書)を契約時に決める
社外CxO・IT顧問と進める 意思決定から相談したい場合 月15万円から(→社外CxO・IT顧問)

外注と内製の切り分けはIT外注vs内製化|中小企業はどちらを選ぶべきかに詳しく書きました。

まとめ

  • 言葉の定義より、自社が0〜4のどの段階にいるかを決める。段階は飛ばせない
  • 着手する業務は「頻度×人数×転記の回数」の積が大きいものから
  • 現場が困っていない業務、担当者が決まっていない業務には手をつけない
  • 全社一斉・要件を固めきる・例外を全部入れる、が3大失敗
  • 導入前に今の作業時間を2週間だけ記録する。これが無いと効果を説明できない
  • 道具は「データを取り出せるか」で選ぶ。出せないものは乗り換えられない
  • 補助金は目的にしない。続けると決まったものを広げる費用に使う

→ 中小企業まるごとDX → 中小企業のDX、最初の一歩 → 中小企業のDX予算|いくらかけるべきか → IT外注vs内製化 → kintone導入支援の詳細

よくある質問

DXとIT化の違いは何ですか

IT化は既存の業務をデジタルで効率化することで、DXはデジタルを前提に業務やビジネスモデルを根本から見直すことです。目的はIT化が効率化、DXが変革、範囲はIT化が一部の業務、DXがビジネス全体という違いがあります。ただし中小企業では、まずIT化から始めて段階的にDXへ進化させるアプローチが現実的です。

中小企業にもDXは必要ですか

必要です。理由は4つあり、採用が困難になる中で1人あたりの生産性を上げる必要があること、大手がDXを進める中で旧来の方法では競争力を保てないこと、属人化した業務が担当者の退職で崩壊するリスクを減らせること、そしてクラウドの普及でIT投資が月額数千円から始められるようになったことです。

DXは何から始めればいいですか

まず「何に困っているか」「何に時間がかかっているか」を書き出すところから始めます。次に効果が大きく実現が容易なものから優先順位をつけ、1つの業務・1つのツールで小さく始めます。導入前後で時間やコストを比較して効果を数字で確認し、うまくいった取り組みを他の業務へ横展開していきます。

DXは全社一斉に導入したほうがいいですか

全社一斉導入は避けたほうがよいです。1つの業務、1つのツールから小さく始め、効果を測定してから横展開するのが基本です。完璧を目指すのではなく、小さく始めて継続的に改善することが大切です。

中小企業のDXツールは月額いくらぐらいですか

無料から使えるものが多く、有料でも月額数千円から始められます。SlackやMicrosoft Teamsなどのコミュニケーションツール、AsanaやNotionなどのプロジェクト管理ツールには無料プランがあり、freeeやマネーフォワードなどの会計ソフトは月額2,000円台から、ClaudeやChatGPTなどのAIは月額3,000円台からが目安です。

宇田川 将也/ 代表取締役

2024年に総務省の地域活性化起業人として島根県海士町に着任。役場に住み込んで業務改善に従事し、kintoneで電子決裁や定期健診管理を構築しました。

経歴を見る

この記事について相談する

貴社・貴団体の状況に合わせて、最適な進め方をご提案します。

30分相談を予約する