株式会社COTSUBU
中小企業DX

IT外注vs内製化|中小企業はどちらを選ぶべきか

宇田川 将也|9分
IT外注内製化中小企業システム開発コスト

「外注か内製か」は、実際には二択ではありません。1つのシステムには決める・作る・直す・運用するの4つの層があり、どの層を社内に残すかの組み合わせで決まります。

エンジニアを採用できない中小企業でも、「決める」と「直す」を社内に残すことは可能です。ここを外に出してしまうと、規模に関係なくベンダーロックインになります。

4つの層に分けて考える

層 やること 社内に残せるか
決める どの業務を、どう変えるかを決める 必ず社内。ここを外注したら主導権がない
作る 画面・データベース・処理を作る 道具による。kintoneなら社内でも可能
直す 項目を足す、条件を変える、帳票を変える できれば社内。ここが外だと毎回お金と時間がかかる
運用する アカウント管理、権限、問い合わせ対応 社内

「直す」が社内にあるかどうかが、その後の数年を左右します。「担当者を1人追加したい」「ドロップダウンに選択肢を1つ足したい」のたびに見積を取って発注するなら、業務改善は止まります。

判断の軸は「改修の頻度」

判断基準 外注が向く 内製が向く
改修の頻度 年に数回 月に何度も
技術の専門性 決済・認証・大量処理など専門的 標準的な業務アプリ
求めるスピード 早くリリースしたい 早く直せるようにしたい
業務との距離 経理・人事などの定型業務 自社の競争力に直結する業務
仕様の確からしさ 仕様が固まっている 使いながら決めたい

「仕様が固まっているか」が実務では効きます。 固まっていないものを請負で発注すると、追加要望のたびに変更契約になり、双方が疲れます。使いながら決めたい業務は、内製か、月額の伴走型の契約が合います。

コスト構造の違い

外注 内製
初期 見積額がそのまま出ていく 採用・育成・学習の時間
改修 都度の見積・発注 人件費の中(追加費用なし)
止めるとき 契約を切れば止まる 人は残る
属人化 外注先に集中 担当者1人に集中
見えないコスト 要件を伝える時間、検収の時間 担当者が本業をできない時間

どちらも属人化します。違うのは「誰に依存するか」だけです。外注なら外注先、内製なら社内の1人。どちらを選んでも、その人がいなくなったときに引き継げる形(手順書、設定の記録、アカウントの管理台帳)を作る必要があります。

内製化が失敗する原因

原因 起きること
担当者が兼任で、時間を確保していない 本業に押されて進まない
「作れる人」を採用しただけで、決める人がいない 何を作るか決まらないまま時間が過ぎる
1人に任せきりにする その人が辞めた瞬間に誰も触れなくなる
手順や設定を記録していない 半年後に自分でも理由が分からなくなる
道具の選定を間違える(自由度が高すぎる) 保守できない規模のものが出来上がる
外注をゼロにしようとする 専門性の要る部分で止まる

「時間を確保していない」が最多です。内製化を決めたら、担当者の業務のうち何を減らすかを同時に決めてください。

ハイブリッドの3パターン

パターン1: 外注で構築 → 内製で運用・改善

いちばん現実的な形です。最初の設計と構築を外部に任せ、項目の追加や条件の変更は社内でできる状態で引き渡してもらうのが条件です。

kintoneのようなノーコードの道具が向いています。画面の項目を足す、選択肢を増やす、一覧の条件を変えるといった作業は、設定画面から行えます。標準で足りない部分も、無料プラグインの設定で埋められる範囲が広く、コードを書かずに済みます。

パターン2: コア業務は内製、定型業務はSaaS

会計・給与・勤怠のように、どの会社でもやることが同じ業務は既製のクラウドサービスに任せます。自社の競争力に直結する部分(受注の取り方、施工の管理、顧客対応)だけを自分たちで作ります。

パターン3: 社外CxO・IT顧問+社内担当者

「決める」を外部の知見と一緒にやり、「直す」「運用する」を社内で持つ形です。フルタイムのCTOを雇わずに、判断の質だけを上げられます。COTSUBUの社外CxO・IT顧問は月15万円から(月2回の定例とチャット相談が基本)です。詳細は社外CxO・IT顧問をご覧ください。

kintoneが内製に向く部分と、向かない部分

内製でできる 外部の手が要りやすい
項目の追加・変更、選択肢の追加 JavaScriptでのカスタマイズ
一覧・グラフの作成と変更 外部システムとのAPI連携
プロセス管理のステータス変更 大量データの移行設計
プラグインの設定(必須・色分け・重複チェックなど) アプリ全体の設計の作り直し
CSVでの取り込み・書き出し 権限設計の見直し
権限の付け替え

左の列は、ITの専任者でなくても1〜2週間で覚えられます。 ここが社内でできるだけで、改修の依頼の8割は消えます。内製化の進め方は15章 運用・定着と内製化に、判断に必要な費用は2章 費用の全体像にまとめました。

外注するときに、契約で決めること

見積の金額より先に、次の7つを決めてください。ここを曖昧にしたまま発注すると、あとから交渉材料がなくなります。

決めること 具体的に
1. アカウントの名義 クラウドサービスの契約は自社名義にする。ベンダー名義にしない
2. 管理者権限 自社の担当者を管理者にする。「運用は任せる」でも権限は持つ
3. 引き渡すもの 設定の一覧、手順書、カスタマイズのソースコード、データの書き出し方
4. 自社で変えてよい範囲 どこまで自分で触ってよいか。触ったら保守対象外になるか
5. 契約形態 請負(成果物に責任)か準委任(作業に責任)か
6. 保守の範囲 障害対応だけか、改修も含むか。月何時間か
7. 終了時の扱い 解約後のデータの渡し方、移行の協力範囲

1と2を押さえておけば、最悪の事態は避けられます。 契約が自社名義で、自社の担当者が管理者なら、ベンダーを変えてもデータと環境は残ります。

外注先を選ぶときに見ること

見るところ 確認のしかた
同業種・同規模の実績 「うちと同じくらいの会社で、同じ業務をやった例」を聞く
説明の分かりやすさ 専門用語を使わずに説明できるか。できない相手とは長く続かない
断ってくれるか 「それは作らないほうがいい」と言えるか。全部Yesの相手は危ない
引き渡しの姿勢 内製化に協力するか、囲い込むか
連絡の速さ 見積依頼への返信の速さは、そのまま障害時の速さ
費用の出し方 何にいくらかかるかを分解して出せるか

3つめが意外と効きます。要望をそのまま全部作る相手より、「その機能は運用で吸収できます」と言える相手のほうが、結果的に安く済みます。

ベンダーロックインを外すためにやること

すでにロックインされている場合でも、次の順で動けます。

  1. 契約の名義とアカウントを確認する。ベンダー名義なら自社名義への変更を依頼する
  2. データを書き出せるか確認する。CSVで全件出せるかを実際に試す
  3. 設定の一覧をもらう。画面のスクリーンショットでも構わない
  4. 次の改修を、自社でできる形で依頼する(設定変更で済む形にしてもらう)
  5. 並行して、次の道具で1業務だけ試す

いきなり全部を乗り換えないでください。 1業務だけ動かして、運用が回ることを確かめてから広げます。セカンドオピニオンとして相談を受けることもあります(→システムのセカンドオピニオン)。

引き継げる形にするために、社内に置く4点

外注でも内製でも、担当者が替わったときに止まらないよう、次の4つを社内に置いてください。凝ったドキュメントは要りません。

置くもの 中身 更新のタイミング
アカウント台帳 使っているサービス、契約名義、管理者、請求先、更新日 契約したとき
設定の記録 画面のスクリーンショットと、なぜその設定にしたかの1行 設定を変えたとき
やってはいけないこと 触ると壊れる設定、消してはいけないデータ 事故が起きたとき
困ったときの連絡先 ベンダー、担当者名、対応時間、契約している保守の範囲 契約が変わったとき

「なぜその設定にしたか」の1行が効きます。設定の内容は画面を見れば分かりますが、理由は誰の頭にも残りません。半年後に「この必須項目は外してよいのか」で止まります。

費用の目安

進め方 費用
kintoneの構築をCOTSUBUに依頼 1業務1アプリまで最大1か月0円。使うと決めた場合だけ月額5万円から(最低契約12ヶ月)
kintoneライセンス(サイボウズ社) スタンダードコース 1ユーザー月1,800円・税抜/最小10ユーザー
社外CxO・IT顧問 月15万円から(月2回の定例+チャット相談)

COTSUBUは、作って引き渡すだけでなく、社内で直せる状態にして渡すことを前提にしています。詳細は料金をご覧ください。

まとめ

  • 外注か内製かの二択ではなく、「決める・作る・直す・運用する」のどこを社内に残すかで考える
  • 「決める」は必ず社内。「直す」も社内に残せると、その後の数年が変わる
  • 判断の軸は改修の頻度と、仕様が固まっているかどうか
  • 外注も内製も属人化する。違うのは誰に依存するかだけ
  • 内製化の失敗は技術力ではなく、担当者の時間を確保していないことが原因
  • 契約ではまず「アカウントの名義」と「管理者権限」を自社に置く
  • 全部Yesと言う外注先より、「それは作らないほうがいい」と言える相手を選ぶ

→ 中小企業まるごとDX → 社外CxO・IT顧問 → DXとは?中小企業のための超わかりやすい解説 → 15章 運用・定着と内製化 → 料金

よくある質問

システム開発は外注と内製のどちらを選ぶべきですか

開発頻度で決めるのが一番わかりやすい判断軸です。年に数回の開発・高度な専門スキルが必要・すぐリリースしたい・非コア業務なら外注が適切。日常的に改善が必要・標準的な技術で対応できる・継続的に改善したい・コア業務に直結するなら内製が向きます。

IT開発を外注するデメリットは何ですか

ノウハウが社内に残らないことが最大の欠点です。開発知識が外注先に蓄積されるため、改修のたびに費用が発生し、特定の外注先に依存するベンダーロックインのリスクも生まれます。要件を伝えるコミュニケーションコストも常にかかります。

中小企業が内製化するときの注意点は

採用・育成コストと属人化リスクです。エンジニアの採用は競争が激しくコストが高く、スキルアップにも時間がかかります。少人数だとキーパーソンへの依存が高まり、小さな組織では新しい技術のキャッチアップも難しくなります。

外注と内製を組み合わせることはできますか

できます。中小企業にはハイブリッドアプローチをおすすめしています。初期構築を外注して運用・改善は社内で行う(kintoneのような運用しやすいプラットフォームと相性が良い)、コア業務は内製で非コア業務はSaaS、IT顧問が戦略・設計を担って社内担当者が実行する、の3パターンです。

外注先はどう選べばいいですか

同業種・同規模の実績があるかをまず確認します。次にレスポンスの速さと説明のわかりやすさ、準委任か請負かという契約形態と保守契約の有無、最新技術への対応力。そして契約終了時にドキュメントとソースコードを引き渡してもらえるかを、発注前に決めておきましょう。

宇田川 将也/ 代表取締役

2024年に総務省の地域活性化起業人として島根県海士町に着任。役場に住み込んで業務改善に従事し、kintoneで電子決裁や定期健診管理を構築しました。

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