MCP連携とは、AIと社内のツールを、MCP(Model Context Protocol)という共通の決まりごとでつなぎ、AIとの会話からデータを読み書きさせることです。 MCPは2024年11月にAnthropic社が公開したオープンな仕様で、つなぐ先ごとに専用の連携を作らずに済むことから「AIのUSB-C」にたとえられます。
Claude Code や Claude のデスクトップアプリのほか、ChatGPT や Cursor など他社のAIツールにも対応が広がっています(対応の範囲は製品やプランで違うため、各社の公式で確認してください。2026年10月確認)。
MCPでつなぐと、AIとの会話の中から「タスクを追加して」「今週の予定を出して」と頼むだけで、AIが外部ツールを読み書きします。便利な反面、AIが実際にデータを書き換えられる状態になります。この記事では、つなぐ手順と、権限をどう絞るかを、当社の自作TODOアプリの実例で説明します。
MCPの仕組み(3つの役割)
| 役割 | 何をするか | 例 |
|---|---|---|
| MCPクライアント | AIの側。会話の中でどの操作を呼ぶか決める | Claude Code、Claude のデスクトップアプリ |
| MCPサーバー | 「できる操作の一覧」を公開し、呼ばれたら実行する | 当社のTODOアプリの /api/mcp |
| つながる先 | 実際のデータがある場所 | TODOのデータベース、kintone、カレンダー |
ポイントは、AIができることはMCPサーバーが公開した操作だけという点です。サーバーが「一覧の取得」しか公開していなければ、AIは読むことしかできません。権限の絞り方は、ほぼここで決まります。
MCP連携でできること
つなぐ先と、会話から頼める仕事の典型例です。kintone・Slack・Google Drive などよく使う業務ツールには、提供元や有志が作ったMCPサーバーが公開されているものがあります。
| つなぐ先 | 会話から頼める仕事の例 | 最初に許す範囲 |
|---|---|---|
| 業務データベース(kintoneなど) | 「今月の未対応の案件を出して」「この顧客の履歴をまとめて」 | 読み取りだけ |
| チャット(Slackなど) | 「昨日の#営業の話をまとめて」「この下書きを投稿して」 | 読み取りだけ。投稿は確認つき |
| ファイル・ドキュメント | 「先月の議事録から宿題を拾って」 | 読み取りだけ |
| タスク管理 | 「来週金曜までの見積をタスクに追加」 | 追加・完了まで |
| 開発の道具(GitHubなど) | 「このイシューの内容で修正の下書きを作って」 | 下書き・提案まで |
| 会計・決済 | 「先月の売上を科目別に表にして」 | 読み取りだけ。登録はさせない |
共通するのは、人が会話の中で頼み、その場で結果を見る仕事だという点です。どの範囲から許すかは、後の「権限の絞り方」で詳しく書きます。
従来のAPI連携との違い
| 自前でAPI連携を作る | MCPでつなぐ | |
|---|---|---|
| 誰が呼び出すか | 人が書いたプログラムが決まった順で呼ぶ | AIが会話の内容から判断して呼ぶ |
| 動きの予測 | 毎回同じ | 指示の解釈で呼ぶ操作が変わる |
| 向く仕事 | 毎日同じ時刻に同じ処理をする | 人が会話しながら、その場で頼む |
| 失敗の気づき方 | エラーの通知を仕込む | 会話の画面で、人がその場で見る |
MCPは「毎晩決まった集計を回す」ような仕事の置き換えではありません。人が会話の中で頼み、その場で結果を見る使い方に向きます。人が見ていない時間に動かす処理は、通常のプログラムと通知で組むほうが安全です(→ 道具の分類と自動化の前に用意するものは教科書 4章 道具の選び方、定期の自動化の例はAIで業務自動化)。
当社でのやり方:自作TODOアプリにMCPサーバーを持たせた
当社では、代表が使う個人用のTODOアプリを自作し、そこにMCPサーバーを持たせています。Claude との会話の中から、そのままタスクを追加・完了できます(経営者の仕事のどこでAIを使っているかは一人社長のAI活用に書きました)。毎朝 Slack に、期限切れ・今日・7日以内のタスクのまとめが届きます。
公開している操作は次の6つです。
| 操作 | 中身 | 区分 |
|---|---|---|
list_tasks |
未完了・完了のタスクを、カテゴリや期限で絞って取得 | 読み取り |
list_categories |
カテゴリの一覧 | 読み取り |
add_task |
タスクを追加(期限・優先度・チェックリスト付き) | 書き込み |
update_task |
渡した項目だけ変更 | 書き込み |
complete_task |
完了にする(未完了に戻すこともできる) | 書き込み(取り消せる) |
delete_task |
削除する | 書き込み(取り消せない) |
設計で効いた点が3つあります。
1. 鍵を使う人ごとに分けた。 画面はパスコード、Claude からの接続はAPIトークン、毎朝のまとめを送る定期実行は別の鍵、と3つに分けています。どれか1つが漏れても、その鍵だけ差し替えれば済みます。
2. 操作の説明文にルールを書いた。 AIは操作の説明文を読んで呼び方を決めます。add_task の説明に「明日・来週金曜のような相対日付は、日本時間の今日を基準に日付に直して渡す」と書き、delete_task の説明には「元に戻せない」と書いています。説明文は、AIへの指示文の一部です。
3. 日付を文字列で持った。 期限を時刻付きの日時型で持つと、日本時間と世界標準時のずれで1日ずれる事故が起きやすいため、期限日は「2026-09-22」の形の文字列、時刻は別の項目にしました。
一方で、読み取りと書き込みの権限はまだ分けていません。 個人のタスクだけを扱い、使うのが本人1人なので、1本のトークンで6つの操作すべてを許しています。これが他の人のデータや顧客の情報を扱うものなら、この形にはしません。次の節の考え方で分けます。
権限の絞り方:読み取りと書き込みを分ける
| 段階 | 許す操作 | 向く場面 |
|---|---|---|
| 1 読み取りだけ | 一覧・検索・取得 | 最初につなぐとき。顧客データ・会計データ |
| 2 取り消せる書き込み | 追加・完了・下書きの保存 | 読み取りで使ってみて、呼び方に問題が無かったあと |
| 3 取り消せない書き込み | 削除・送信・確定 | 原則許さない。許すなら実行前に人が確認する設定にする |
分け方の具体策は次のとおりです。
| やり方 | 中身 |
|---|---|
| トークンを2本にする | 読み取り用と書き込み用のトークンを発行し、サーバー側で操作ごとに受け付けるトークンを変える |
| つなぐ先の権限で絞る | 連携用のアカウントを作り、そのアカウントに閲覧権限だけを付ける(kintone ならアプリごとの権限など) |
| 公開する操作を減らす | 使わない操作(削除など)は、MCPサーバーから外す |
| 実行前の確認を残す | Claude Code などクライアント側の、操作の実行前に確認を求める設定を外さない |
いちばん確実なのは、つなぐ先の側で権限を絞ることです。 MCPサーバーやAIの設定は変わることがありますが、連携用アカウントに閲覧権限しか無ければ、どう呼ばれても書き換えは起きません。自社の会計データも、当社は freee の API を叩く自前のスクリプトで読み取りだけを行い、仕訳の登録はさせていません。
つなぐ手順
| # | やること | 確認すること |
|---|---|---|
| 1 | つなぐ目的を1文で書く(例:会話からタスクを追加したい) | 読み取りだけで足りるか |
| 2 | 使うMCPサーバーを決める。公開されているものか、自作か | 提供元、公開している操作の一覧 |
| 3 | 連携用のアカウントとトークンを発行する | 権限が必要最小限か |
| 4 | トークンを設定ファイルに置く | git に入るファイル、CLAUDE.md に書いていないか |
| 5 | クライアントに登録する | 登録後、操作の一覧が見えるか |
| 6 | テスト用のデータで読み取りを試す | 本番データで試していないか |
| 7 | 書き込みを1件だけ試し、つなぐ先の画面で結果を見る | 意図した項目だけ変わったか |
| 8 | 使い方と止め方を1枚に書く | トークンの無効化の手順があるか |
当社のTODOアプリの場合、手順5は Claude Code に次のコマンドで登録しています。
claude mcp add --transport http todo <アプリのURL>/api/mcp --header "Authorization: Bearer <APIトークン>"
登録の書き方は、道具の更新で変わることがあります。最新は公式のドキュメントで確認してください(2026年9月確認)。トークンの実値は、手元の設定と _secrets/ にだけ置き、案件の説明ファイル(_env.md)には「どこに置いたか」しか書きません。
試すときの指示文の型
つないだ直後は、書き込む前に、AIに何ができるかを言わせます。
今つながっている todo の操作を一覧にしてください。
それぞれ「読み取り/書き込み(取り消せる)/書き込み(取り消せない)」に分けてください。
まだ何も実行しないでください。
書き込みを試すときは、実行前に確認させます。
「見積書を送る」を来週金曜の期限でタスクに追加したいです。
追加する前に、渡す内容(タイトル・期限の日付・カテゴリ)を見せてください。
私が「OK」と言ったら追加してください。
相対日付の変換は間違えやすいので、日付はここで人が見ます。
起きやすい失敗と、人が確かめる場所
| 失敗 | 起きること | 人が確かめる場所 |
|---|---|---|
| 最初から全操作を許す | 指示の読み違いで、別のデータを更新・削除する | 公開されている操作の一覧。削除があれば外す |
| トークンを指示書やリポジトリに書く | 共有した相手や履歴から漏れる | CLAUDE.md・git の差分にトークンが無いか |
| 本番データで試す | 試しの追加・更新が取り消せず残る | 試す前に、つなぐ先がテスト用か |
| 相対日付をそのまま任せる | 期限が1日ずれる | 追加前に日付を目で見る |
| 実行結果を会話の文面だけで信じる | 「追加しました」と出ても、実際には違う項目に入っている | つなぐ先の画面で1件開いて見る |
| 出どころの分からないMCPサーバーを入れる | 意図しない送信先にデータが渡る | 提供元、ソースが読めるか、送信先 |
| 止め方を決めていない | 担当が抜けた後もトークンが生きている | トークンの無効化の手順と、発行した人 |
外部のMCPサーバーを入れるときは、それが何をどこへ送るかを確認できるものに限ってください。社内ルールで入れてよい情報を決めていない場合は、先に決めます(→ 入れてよい情報の線引きは教科書 3章 生成AIの社内ルール)。
まとめ
- MCPは、AIと外部ツールをつなぐ共通の決まりごと。AIができるのは、MCPサーバーが公開した操作だけ
- 最初は読み取りだけでつなぐ。書き込みは取り消せる操作から。削除・送信は許さないか、実行前に人が確認する
- いちばん確実な絞り方は、つなぐ先の連携用アカウントに閲覧権限だけを付けること
- トークンは使う人・用途ごとに分け、git や CLAUDE.md に書かない
- 操作の説明文はAIへの指示文の一部。日付の扱いや「取り消せない」ことを書いておく
- 実行結果は、会話の文面ではなく、つなぐ先の画面で確かめる
MCPサーバーの設計や、Claude Code の導入と社内の型づくりはClaude Code導入支援でお手伝いしています(導入と型づくりは無料、利用開始後 月5万円〜・税別)。
→ AI活用支援 → Claude Codeとは?中小企業のための完全入門ガイド → CLAUDE.mdとは?AIに仕事を覚えさせる方法 → 一人社長のAI活用|任せる業務・任せない業務と始め方 → AIで業務自動化|中小企業が今すぐ始められる5つのこと → 中小企業のAI導入セキュリティリスクと対策 → 教科書 8章 開発の仕事
よくある質問
MCPを使うのにプログラミングは必要ですか
既に公開されているMCPサーバーをつなぐだけなら、設定ファイルかコマンド1行の登録で済むことが多く、コードを書く必要はありません。自社のシステムにつなぐMCPサーバーを新しく作る場合は開発が要ります。どちらの場合も、認証情報の置き場所と、AIに許す操作の範囲は人が決めます。
MCPでつなぐと、AIが勝手にデータを消したりしませんか
書き込みや削除の操作を許していれば、指示の読み違いで起きることはあります。最初は読み取りだけの権限でつなぎ、書き込みを許すのは取り消せる操作から、削除は許さないか実行前に人が確認する形にしてください。どの操作を許しているかは、MCPサーバーが公開している操作の一覧で確認できます。
APIトークンはどこに保存すればいいですか
ホームディレクトリの設定ファイルや、共有しない専用フォルダに置き、gitで管理するファイルやAIへの指示書(CLAUDE.mdなど)には書かないでください。当社は実値を _secrets/ というフォルダに分け、接続先の説明には「どこに置いてあるか」だけを書いています。
MCP連携とAPI連携の違いは何ですか
API連携は、人が書いたプログラムが決まった順番でAPIを呼びます。MCP連携は、AIが会話の内容から判断して、MCPサーバーが公開した操作を呼びます。毎回同じ処理を自動で回すならAPI連携、人が会話しながらその場で頼むならMCP連携が向きます。MCPサーバーの中では、多くの場合つなぐ先のAPIを呼んでいます。
MCP連携は無料で使えますか
MCPの仕様そのものはオープンで、使うのにお金はかかりません。費用がかかるのは、AIツール側の契約(Claudeの有料プランなど)と、つなぐ先のサービスの利用料、自社用のMCPサーバーを作る場合の開発です。公開されているMCPサーバーにも、提供元のサービスの契約が前提のものがあります。


