株式会社COTSUBU

CHAPTER 04

業務で使うAIツールの選び方

この章で分かること

  • 道具の3分類と、それぞれ「失敗したときに誰がどう気づくか」の違い
  • 対話 → 業務組み込み → 自動化 の順で入れる理由
  • 契約前に確認する10項目と、製品名に依存せず調べる方法
この章の目次(9)
  1. 1この本が製品を比べない理由
  2. 2道具の3分類
  3. 3自動化に行く前に必ずやること
  4. 4契約前に確認する(製品が変わっても残る観点)
  5. 5試用の1ヶ月をどう使うか
  6. 6無料のまま使ってよい範囲
  7. 7道具を増やさないほうがよい場合
  8. 8よくある間違いを5つ
  9. 9この章の出口

道具は3種類しかありません。人が開いて使うもの(対話)/既存の画面の中で動くもの(業務組み込み)/人がいなくても動くもの(自動化)です。 この順番で入れます。いきなり自動化から入ると、間違いに気づく人がいないまま動き続けることになります。 この章は、製品を比べるのではなく、契約の前に自社が確認する10項目を持つための章です。

この章で分かること

  • 道具の3分類と、それぞれ「失敗したときに誰がどう気づくか」の違い
  • 対話 → 業務組み込み → 自動化 の順で入れる理由
  • 契約前に確認する10項目と、製品名に依存せず調べる方法

この本が製品を比べない理由

AIの製品は数ヶ月単位で変わります。料金表も、画面の名前も、できることも変わります。 比較記事の結論は、その記事が書かれた時点のものです。半年前の比較を信じて選ぶと、すでに前提が変わっています。

変わるもの 変わらないもの
料金、プラン名、無料枠 費用がどう増えるか(人数か、使った量か)
モデルの名前、性能 間違いがゼロにならないこと
画面の名前、メニューの位置 管理者が利用状況を見られるかどうか
できることの範囲 自社が何を任せたいか(1章)

だからこの章では、変わらない側だけを書きます。 製品ごとの最新情報は、必ず提供元の公式ドキュメントで確認してください。探すときの言葉は3章の表に置いてあります。 ツールの比較そのものに関心がある場合は、当社の記事(ChatGPT vs Claude・AI導入の費用比較)を参照してください。ただし記事にも更新日が付いています。読んだ日と更新日の差を見てください。

道具の3分類

① 対話 ② 業務組み込み ③ 自動化
どう使うか 人が画面を開いて指示する 既存の業務システム・社内ツールの中で呼び出す 条件が満たされると人がいなくても動く
起動するのは 人 人(操作の流れの中で) 時刻・イベント(メール受信、データ登録など)
失敗したときの気づき方 その場で見える 操作した人が気づく 誰も見ていないと気づかない
止め方 使うのをやめる 機能を切る 止める手順を作っておかないと止まらない
費用の出方 人数で増えることが多い 人数+開発費 使った量で増えることが多い
向く仕事 下書き、点検、調べもの 入力補助、分類、定型文の生成 定期の集計、通知、取り込み
1章の段階 段階1・2 段階1〜3 段階3

最初に入れるのは① です。 理由は2つあります。1つは、人が出力を毎回見るので、間違い方を社内が学べること。もう1つは、合わなかったときに止められることです。

②に進む判断は、「同じ指示を毎日10回以上書いている」かどうかで決めます。毎回同じことを人が打ち込んでいるなら、業務の画面の中に入れたほうが速く、入力の揺れも減ります。当社の既存システム連携や kintone のカスタマイズはこの範囲です。

③に進む判断は、「人が見なくても、間違いに気づける仕組みがあるか」だけです。件数の一致、合計の一致、エラーの通知——この3つが用意できないなら、自動化しないでください。

自動化に行く前に必ずやること

自動化は、効果が最も大きく、事故も最も大きい分類です。次の3つを先に用意します。

用意するもの 中身 確かめ方
失敗したときの通知 どこに通知が飛ぶか(メール・チャット) わざと失敗させて、届くことを確認する
止め方 誰が、どうやって止めるか 担当者名と手順を書き、実際に止めてみる
実行の記録 いつ・何件処理したか 記録が残る設定になっているか確認する

「わざと失敗させて確認する」を省かないでください。通知設定は、設定したつもりで届かないことがよくあります。届かない通知は、無いのと同じです。 当社が受託で自動化を組むときも、この3つが揃うまで本番に出しません。

契約前に確認する(製品が変わっても残る観点)

契約前に見るのは、性能ではなく次の観点です。3章で確認した内容と重なる部分は、そこで作った記録を使い回します。

観点 何を見るか ×だったときの手当て
データの取り扱い 入力が学習に使われるか、保存期間、削除 入れてよい情報を A・B に限る(3章)
管理者の可視性 誰がいつ使ったか見られるか 見られない場合、業務データを入れない
記録 利用の記録が残るか 残らない場合、段階3(実行)に使わない
権限 人ごとに使える範囲を分けられるか 分けられない場合、Cの情報を扱わない
止め方 止める手順と担当 手順が無いなら契約しない
費用の増え方 人数か、使った量か。上限を決められるか 上限が決められないなら、少人数で試す
解約時のデータ 取り出せるか、消えるか 取り出せないなら、指示文と手順を外に置く
乗り換えやすさ 指示文・手順が道具の外にあるか 必ず外に置く(5章・9章)

最後の行が、この章で一番長持ちする助言です。道具は必ず変わります。 指示文・手順・決めごとを道具の中だけに保存していると、乗り換えのたびに資産がゼロに戻ります。 ファイル(テキスト)で、自社の共有フォルダかリポジトリに置いてください。これだけで、道具の選定を間違えても致命傷になりません。

試用の1ヶ月をどう使うか

試用期間は、性能を眺める期間ではありません。2章で選んだ1業務を、本番と同じ材料で回す期間です。

週 やること 終わりに残るもの
1週目 担当者1人が、その業務を5回やってみる どこで詰まるかの記録
2週目 詰まった点を指示文に反映する(5章) 指示文ファイルの第1版
3週目 本人以外が、その指示文だけで1回やる 再現できたかどうかの判定
4週目 着手前の数字と比べる(2章で取ったもの) 続ける/やめるの判定

3週目が判定の本体です。本人しか回せない状態のまま契約すると、その人が離れた時点で契約だけが残ります。 4週目の比較では、確認にかかった時間を必ず足してください(2章・11章)。作る時間だけを比べると、ほぼ必ず「速くなった」という結論になります。

この4週間で判定できない場合は、業務の選び方が合っていません。道具ではなく、2章に戻ってください。

無料のまま使ってよい範囲

無料で試すこと自体は勧めます。ただし、業務のデータを入れる段階で、契約を見直してください。

状態 判断
1人が、公開情報(3章のA)だけで試している 無料のままでよい
業務の文書(B)を入れ始めた 管理者が利用状況を見られる契約に移す
顧客名・個人情報(C)を扱う 会社契約。権限と記録が要る。窓口の確認も要る
複数人が使い始めた 会社契約。個人アカウントの持ち込みは3章の方針に従う

「無料でどこまでできるか」を追いかけると、判断がずれます。 見るのは金額ではなく、入れる情報の段階です。 月額数千円を惜しんで、顧客情報を管理できない契約のまま使い続けるのは、費用の判断としても合いません。取引先から情報の扱いを聞かれたときに、答えられる状態かどうかで決めてください。

道具を増やさないほうがよい場合

道具は少ないほうが回ります。次の場合は増やさないでください。

状況 判断
いま入れている道具を、週1回も使っていない 増やしても使われない。2章の業務選定に戻る
「あの製品のほうが賢いらしい」が理由 賢さより、確認の仕組みが揃っているかで決める
部署ごとに別々の道具を入れたい 指示文と手順が共有できなくなる(9章で詰まる)
試用期間の終了日と判定者が決まっていない そのまま課金が続く。決めてから契約する

当社の決めごと:道具を1つ増やすときは、同時に1つ減らせないか見る。 理由は、置き場所と手順がばらけると、9章(社内に残す)が成立しなくなるためです。

よくある間違いを5つ

「性能が一番高いものを選ぶ」 ——性能は数ヶ月で入れ替わります。しかも、自社の業務で差が出るとは限りません。直し方:確認する10項目で選ぶ。性能は試用期間に、自社の実データ(3章のA・B)で1業務だけ試して比べる。

「安いほうを選んだら、社内の誰が使っているか分からなくなった」 ——個人向けの安い契約は、管理者が利用状況を見られないことがあります。直し方:業務データを入れる段階で、管理者の可視性がある契約に移す。

「いきなり自動化から入った」 ——動いている間は誰も見ないので、間違いが数ヶ月ぶん溜まってから発覚します。直し方:対話から入る。自動化するのは、件数・合計の一致とエラー通知が用意できる業務だけ。

「指示文を道具の中に保存していたら、乗り換えで全部消えた」 ——実際によくあります。直し方:指示文はテキストファイルにして、自社の共有フォルダかリポジトリに置く(5章)。

「試用を始めたが、終了日を誰も見ていない」 ——判定されないまま課金が続き、使われていない契約が残ります。直し方:試用の開始時に、終了日と判定者の氏名を決めてカレンダーに入れる。

この章の出口

この章を終えたとき、手元に残っているべきものは3つです。

  1. 入れる道具と分類(対話/業務組み込み/自動化のどれか)と、選んだ理由(業務名)
  2. 確認記録(データの取り扱い・管理者の可視性・解約時の扱いと、それぞれの確認日)
  3. 試用の終了日と判定者の氏名、指示文を置く場所

ここまでが「決める」区分です。線引き・業務・ルール・道具が揃いました。 次からは実際に使う話に入ります。最初にやるのは、うまくいった1回を、他人が再現できる形にすることです。ここを飛ばすと、詳しい1人だけが使える状態のまま止まります。

次の章へ:5章 AIへの指示(プロンプト)の書き方

この章の点検リストを開く(自社の状態を○×で判定する用)

点検リスト:道具の選定(10項目)

契約書に署名する前、無料試用を業務に使い始める前に通します。 30分で通ります。

# チェック項目 合格ライン
1 3分類のどれを入れるか決まっている 対話/業務組み込み/自動化 のどれかが書いてある
2 その分類を選んだ理由が業務に紐づいている 2章で選んだ業務名が書いてある
3 データの取り扱いを公式資料で確認した ページと確認日が記録してある
4 管理者が利用状況を見られる 見られる。見られない場合は、入れる情報をA・Bに限ると明記
5 誰がいつ使ったかの記録が残る 残る/残らない を確認して記録した
6 止め方が分かっている 手順と担当者名がある。自動化の場合は、わざと失敗させて通知が届くことを確認した
7 費用の増え方が分かっている 人数で増えるか、使った量で増えるかを確認した
8 解約したときのデータの扱いを確認した 公式資料で確認し、確認日を記録した
9 指示文と手順が道具の外に置いてある 共有フォルダかリポジトリにファイルがある
10 試用期間の終了日と判定者が決まっている 日付と氏名がある

合格ライン=10項目中8以上。ただし 3・6・9 のどれかが×なら契約しない。

  • 3が×:自社の情報がどこへ行くか分からないまま業務に使うことになります。取引先に説明できません
  • 6が×:おかしくなったときに止められません。自動化では特に致命的です
  • 9が×:乗り換えのたびに資産がゼロに戻ります。この本の9章(社内に残す)が成立しません

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更新日 2018年10月20日