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AI活用

プロンプトエンジニアリング入門|AIを使いこなす技術

宇田川 将也|7分
プロンプトエンジニアリングAI活用ChatGPTClaudeテクニック

プロンプトエンジニアリングは、AIへの指示の書き方の技術です。特別な言い回しを覚えることではありません。AIが自分の知識で埋めてしまう隙間を、指示でどれだけ減らせるか、がほぼすべてです。

この記事では、実務で効く技法を5つに絞り、それぞれ直す前と直した後の指示文を並べます。ChatGPT・Claude のどちらでも同じように効きます。

→ うまくいった指示をファイルにして、別の人でも同じ結果が出るようにする話は教科書 5章 AIへの指示の書き方

5つの技法と、効く症状

技法 効く症状 効かない場面
1. 材料を渡す 事実が違う・内容が一般論 材料そのものが手元に無い問い
2. 例を見せる 形式や言い回しが毎回ばらつく 例が1つも無い、初めての成果物
3. 作業を分ける 長い資料で抜けが出る・途中から雑になる 1往復で終わる短い作業
4. 禁止事項を書く 数字・出典・担当者が作られる 禁止だけで、代わりにどうするかが無い場合
5. 出力形式を指定する 毎回人が整え直している 形式が決まっていない考えごと

症状から逆引きしてください。全部を毎回入れる必要はありません。

1. 材料を渡す

AIは、材料が無いと自分の知識から書きます。事実誤認のほとんどはここから入ります。

直す前:

来週の営業会議で使う、先月の売上の振り返りを書いてください。

直した後:

以下の <売上データ> だけを材料に、先月の売上の振り返りを書いてください。
読み手は営業部の5人で、来週の会議で10分で読みます。
<売上データ>
(ここに表計算からコピーした表を貼る)
</売上データ>

ポイントは2つです。「〜だけを材料に」と書くことと、材料を記号で囲んで、指示と区別することです。囲まないと、貼った資料の中の文章を指示と取り違えることがあります。

材料を渡せない問い(「この業界の市場規模は?」など)は、指示の工夫では解決しません。人が一次情報を探し、それを材料として渡します。

2. 例を見せる

形式を言葉で説明するより、過去の完成物を1つ貼るほうが早く伝わります。

直す前:

日報をまとめてください。簡潔に、要点が分かるように、敬語は控えめで。

直した後:

以下の <メモ> を、<良い例> と同じ形の日報にしてください。
項目の順番と1項目あたりの長さは <良い例> に合わせてください。
<良い例>
■やったこと:A社へ見積提出(再提出2回目)
■気づいたこと:納期の質問が多い。FAQに足す候補
■明日やること:B社の請求書発行
</良い例>
<メモ>
(ここに今日のメモを貼る)
</メモ>

注意点は、例の中身まで写されることです。例の固有名詞が出力に混ざることがあるので、例は社名を伏せたものにするか、「例の内容は使わず、形だけ合わせて」と一言添えます。

3. 作業を分ける

「読んで・整理して・文章にして」を1回で頼むと、長い資料ほど抜けが出ます。抜き出す→並べる→書くの順に分け、各段階の出力を人が見てから次に進みます。

段階 指示の中身 人が見ること
1. 抜き出す 「決定事項と担当者を、発言の引用つきで一覧にして」 抜けがないか
2. 並べる 「1の一覧を、期限の早い順に並べ替えて」 期限が発言どおりか
3. 書く 「2を材料に、参加者向けの共有文を書いて」 1〜2に無いことが足されていないか

判断を伴う作業では、結論の前に根拠を並べさせるのも分割の一種です。「先に判断の材料を箇条書きにし、そのあとに結論を書いて」と頼むと、結論がどの材料から出たかを人が追えます。

4. 禁止事項を書く

禁止事項は、代わりにどう書くかとセットにします。逃げ道が無いと、AIはそれらしい答えで埋めます。

直す前:

この議事録から、宿題の一覧を作ってください。

直した後:

この議事録から、宿題の一覧を作ってください。
・議事録に無いことは書かないでください。
・担当者や期限が明言されていない項目は「担当未定」「期限未定」と書いてください。
・出典のない数字は書かないでください。

「担当未定と書いて」の1行が無いと、会議に出ていた誰かの名前がもっともらしく埋められます。禁止事項は、実際に起きた失敗から1行ずつ足すのがいちばん効きます。

5. 出力形式を指定する

形式を決めると、人が整え直す手間が消え、確かめる場所も決まります。

指定のしかた 例
表の列を決める 「列は『項目/現状/直す案/根拠の行番号』の4つ」
長さを数字で決める 「各項目40字以内」「全体で400字前後」
順番を決める 「重要度の高い順。同じなら期限の早い順」
取り込み先に合わせる 「表計算に貼るので、タブ区切りで。見出し行を1行目に」

「簡潔に」「分かりやすく」は形式の指定になりません。数字か、列名か、例で指定してください。

仕上げに:出力を材料と突き合わせさせる

5つの技法の仕上げとして、書かせたあとに、同じ会話の中で点検させるやり方があります。書く指示と点検する指示を分けるのがコツです。

いま書いた文章の中の数字と固有名詞を、すべて一覧にしてください。
それぞれについて、<売上データ> のどこに書いてあるかを示してください。
<売上データ> に見つからないものは「材料に無い」と書いてください。

これで、人が確かめる場所が一覧になります。ただし、点検させた結果も材料と照らすのは人の仕事です。AIが「材料にある」と書いた箇所が、本当にあるとは限りません。点検の一覧は、人が見る順番を決めるために使ってください。

当社でのやり方

当社は、記事や教科書の執筆・点検を Claude Code で回しています。記事を追加・更新したときは、サイト全体の記事をAIで点検し、出典のない数字・古いサービス名・リンク切れなどを洗い出しています。直すかどうかは、人が1件ずつ決めています。

このときの指示は、上の5つの技法をそのまま組み合わせた形です。

content/blog/ の記事を1本ずつ読み、次の3種類を探してください。
1. 出典の書かれていない数字(「◯%」「◯割」「平均◯時間」など)
2. 以下の <旧サービス名> に載っている名前
3. 存在しないページへのリンク
出力は表にし、列は「ファイル名/種類/該当箇所の引用/行番号」の4つにしてください。
該当箇所は記事の文をそのまま引用し、要約しないでください。
見つけても記事は書き換えないでください。
<旧サービス名>
(一覧を貼る)
</旧サービス名>

「書き換えないで」と「引用して」が効いています。書き換えまで任せると、どこを直したかを人が追えなくなります。引用があると、人は元の記事を開かずに要否を判断できます。

失敗例と、人が確かめる場所

失敗例 原因 人が確かめる場所
数字がもっともらしいが、元データと合わない 材料を渡していない/計算をさせた 数字を1つずつ元データと突き合わせる
例に入れた社名が出力に混ざった 例の中身が写された 固有名詞を全部目で追う
長い資料の後半が薄い 1回で全部頼んだ 段階ごとの一覧で抜けを見る
担当者と期限が埋まっている 「未定と書いて」が無い 議事録の該当発言を探す
毎回形がばらつく 形式を言葉でしか指定していない 列名・長さを数字で入れたか見直す

まとめ

  • 技法は「材料・例・分割・禁止事項・出力形式」の5つで足りる。症状から逆引きして選ぶ
  • 材料は「〜だけを材料に」と書き、記号で囲んで指示と分ける
  • 形式の説明より、過去の完成物を1つ貼る。ただし例の中身が写ることに注意
  • 長い作業は「抜き出す→並べる→書く」に分け、段階ごとに人が見る
  • 禁止事項には「代わりにどう書くか」を添える
  • 数字と固有名詞は、どの技法を使っても人が確かめる

社内で指示の型を作る勉強会は、Claude Code導入支援の中で行っています(社内勉強会10万円〜/回・税別)。

→ AI活用支援 → AIで業務自動化|中小企業が今すぐ始められる5つのこと → CLAUDE.mdとは?AIに仕事を覚えさせる方法 → AIで提案書・報告書を自動作成する方法 → 教科書 5章 AIへの指示の書き方

よくある質問

「あなたは〇〇の専門家です」と役割を与えるのは効果がありますか

役割だけでは出力はあまり変わりません。効くのは、元データや過去の完成物といった材料を渡すことと、良い例を1つ貼ることです。役割を書くなら、誰に向けた成果物かという読み手の情報と組み合わせてください。

指示は長く詳しく書いたほうがいいですか

長さより中身です。材料・出力の形・禁止事項が入っていれば、短い指示でも出力は安定します。説明を何行も足すより、完成物の例を1つ貼るほうが早く伝わります。一度に頼む作業が多すぎる場合は、指示を長くするより分割してください。

AIが事実と違うことを書くのは指示で防げますか

減らせますが、ゼロにはなりません。「材料に無いことは書かない」「分からない場合は分からないと書く」と指示に入れると、作り話の余地は小さくなります。それでも数字と固有名詞は、人が材料と突き合わせて確かめてください。

宇田川 将也/ 代表取締役

2024年に総務省の地域活性化起業人として島根県海士町に着任。役場に住み込んで業務改善に従事し、kintoneで電子決裁や定期健診管理を構築しました。

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