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AI活用

AIでデータ分析|Excelデータをもっと活用する方法

宇田川 将也|8分
AIデータ分析Excel中小企業BI

Excelのデータを AI に読ませると、それらしい表とグラフと考察が数十秒で返ってきます。難しいのは、その表が元の Excel と同じ数字になっているかを確かめられる形で渡すことです。

うまくいかない原因の多くは、AIの性能ではなく渡し方にあります。結合セルや小計行が混ざった表、単位の書いていない列、何を聞きたいのか決まっていない指示——これらは人が読んでも迷う表で、AIも同じところで迷い、しかも迷ったことを言いません。

この記事では、実際に読ませるまでの手順を ①整える ②渡す ③指示する ④突き合わせる の4段階で書きます。

AIに向く分析と、向かない分析

先に、何を聞くかを決めます。

聞きたいこと AIに向くか 使い方
月別・商品別・顧客別に集計した表を作る 向く 集計の軸と期間を指定する
集計の式(ピボットの設定や関数)を作る 最も向く 式を自分の Excel で動かせば、何度でも同じ数字が出る
表から「目立つ動き」を挙げる 向く 挙がった点を人が元の表で確かめる
列の表記ゆれ(社名・商品名)を洗い出す 向く 直す規則は人が決める
来月の売上の予測 向かない 確かめる先がない。参考にもしない
「なぜ売上が落ちたか」の原因 向かない 人が仮説を立て、その確認に使う

いちばん効くのは2行目です。AIに数字を出させるのではなく、数字を出すための式を作らせる。式が手元に残れば、来月も同じ手順で集計でき、別の人がやっても同じ数字になります。

→ 出てきた数字を信じてよいかの決め方(件数・合計・抜き取りの検算)は教科書 7章 AIでExcelデータを集計・分類するにまとめています。この記事では読ませる手順に絞ります。

手順1:データを整える

AIに渡す前の整形が、結果の良し悪しをほぼ決めます。次の形に直してから渡します。

整えること よくある元の形 直した形
1行に1件 1つの取引が2行にまたがっている 1取引=1行
見出しは1行だけ 見出しが2段になっている、結合されている 1行目だけに見出し。2行目からデータ
小計・合計の行を消す 途中に「小計」行、最後に「合計」行 明細だけにする。合計は後で自分で出す
1つのセルに1つの情報 「東京・法人・新規」が1セル 「地域」「区分」「新規/既存」の3列に分ける
単位を見出しに書く 「金額」列に税込と税別が混在 「金額_税別_円」のように見出しに書き、どちらかに揃える
日付の形を揃える 「9/1」「2026年9月1日」「R8.9.1」が混在 「2026-09-01」の形に揃える
不要な列を消す 担当者のメモ、氏名、電話番号 分析に使う列だけ残す。個人を特定する列は消す

小計行は必ず消してください。 残したまま集計させると、小計と明細を両方足して、合計が倍近くになることがあります。見た目はきれいな表なので、読んでも気づけません。

形が汚い表を毎月整えているなら、整え直すより元の台帳の形を直すほうが早くなります(→kintoneとExcelの違い)。

手順2:渡し方を決める

渡し方 向く場面 注意
CSVファイルで渡す ほとんどの場合 文字化けしたら文字コードを変えて書き出し直す
Excelファイルのまま渡す シートが1枚で、整えてある場合 複数シートだとどれを読んだか曖昧になる。読むシート名を指定する
表を貼り付ける 数十行程度の小さな表 長い表を貼ると、途中が省略されることがある
列の説明を別に付ける 列名だけでは意味が分からない場合 「区分:1=法人 2=個人」のように1列1行で書く

列の説明は、表と一緒に必ず渡してください。 「区分」「フラグ」「コード」といった列は、人間でも社外の人には読めません。AIは読めないまま、それらしく解釈して先に進みます。

大きなファイルは、期間や店舗で分けて渡します。分けたときは、それぞれの行数を控えておいてください。後で突き合わせに使います。

手順3:指示文の型

指示には期間・集計の軸・出してほしい形・やってはいけないことを入れます。

添付は2025年4月〜2026年3月の売上明細(CSV・1行1取引)です。
列の意味は下に書きました。
1. 最初に、読み込んだ行数と「金額_税別_円」の合計を出してください。
2. 月別×商品区分別の売上合計を表にしてください(税別・円)。
3. その表を Excel で作るためのピボットテーブルの設定、
   または SUMIFS の式を書いてください。
4. 前年同月より大きく動いた月を3つ挙げ、どの列のどの値が
   動きに効いているかを書いてください。
理由の推測は書かないでください。データから言えないことは
「データからは分からない」と書いてください。

1番目の「行数と合計を最初に出させる」が要です。自分で数えた行数・合計と違っていたら、その先は読まずにやり直します。3番目で式を出させるのは、次の突き合わせのためです。

仮説を確かめたいときは、聞き方を変えます。

「雨の日は来店客数が減っている」という仮説を確かめたいです。
添付の日別データ(天気の列あり)で、天気別の平均来店客数と日数を
表にしてください。仮説が正しいかどうかの判断は書かないでください。

判断は人がします。AIには、判断に使う表だけを作らせます。

手順4:元の表と突き合わせる

出てきた表を資料に貼る前に、元の Excel と照らします。

順 やること 合わなかったら
1 AIが答えた行数と、Excel の行数を比べる 読み込みで欠けている。分けて渡し直す
2 AIが答えた合計と、Excel の SUM を比べる 小計行の混入・税込税別の混在を疑う
3 手順3で出させた式を Excel に入れて、同じ表を作る 式のほうを正とする。AIの表は捨てる
4 「大きく動いた月」を Excel で絞り込んで、実際に動いているか見る 挙げられた理由の部分は採用しない

3番目が肝心です。最終的に資料に載せるのは、自分の Excel で式から出した数字にします。AIの表は、式が正しいかを見るための見本として使うだけです。これなら、来月は式を再計算するだけで済み、AIに毎回数字を出させる必要もなくなります。

よくある失敗と、人が確かめる場所

失敗 起きること 人が確かめる場所
小計行を残したまま渡す 合計が膨らむ 渡す前に「小計」「合計」の行を検索して消したか
列の説明を付けない コードの意味を取り違えた集計が出る 出力の区分名が自社の区分と一致しているか
長い表を貼り付ける 途中が省略されたまま集計される 最初に答えさせた行数が元と同じか
原因や予測をそのまま資料に書く 確かめられない話が社内の共通認識になる 資料に載せた文が、表の数字だけで言えることか
毎月AIに集計させ続ける 月によって作り方が変わり、前月と比べられない 式を一度作ったら、翌月からは式で出しているか
氏名や電話番号の列ごと渡す 入れてはいけない情報が入る 渡す前に個人を特定する列を消したか

当社でのやり方

当社は開発や社内業務の自動化を Claude Code で日常的に回していて、データの仕事も同じ形でやっています。共通しているのは、AIに数字を出させるのではなく、数字を取ってくる手順を作らせて残すことです。

  • 自社の会計:会計は freee です。API から数字を取る自前のスクリプトで、損益計算書・貸借対照表・融資の審査で見られる項目を3期分並べて出しています。スクリプトは読み取りだけで、仕訳の登録はさせていません
  • SEOの定点観測:サイトマップの全ページの技術的な点検、Search Console の流入キーワード、GA4 の数字を取り、前回との差分をつけてレポートにする手順を、手順書(スキル)にしてAIに読ませています
  • 広告のレポート:Meta広告・Google広告の API からレポートを取る手順も、同じく手順書にしています

どれも、手順が残っているので同じ手順を再実行すれば同じ数字が出ます。前回と数字が違えば、元データが変わったと分かります。手元の Excel でやる場合も、考え方は同じです。式を残し、式で出した数字を使います。

まとめ

  • 読ませる前に、1行1件・見出し1行・小計行なし・単位は見出しに、の形に整える
  • 列の説明を表と一緒に渡す。大きなファイルは分けて、行数を控える
  • 指示文の最初で「読み込んだ行数と合計」を答えさせる
  • 数字そのものより、Excel で再現できる式を出させる。資料に載せるのは式で出した数字
  • 予測や原因の推測は結論にしない。人の仮説を確かめる集計に使う

Excel の台帳の整え方から、集計の手順を残す仕組みづくりまでは業務効率化(構築まで無料・利用開始後 月5万円〜・税別)でご相談いただけます。

→ AI活用支援 → 教科書 7章 AIでExcelデータを集計・分類する → 教科書 2章 生成AIの業務活用|どの作業から始めるか → AIで経理業務を効率化する方法 → kintoneのグラフ・レポート機能

よくある質問

Excelファイルをそのまま渡しても分析できますか

読み込むこと自体はできますが、結合セル・小計行・1つのセルに複数の情報が入った表は、読み違いの原因になります。1行に1件、見出しは1行だけ、単位は見出しに書く、の3つに整えてから、CSVで書き出して渡すのが確実です。

AIに売上の予測や原因の分析をさせてもいいですか

出てきた予測や原因を、そのまま結論として資料に書くのはやめてください。確かめる先がないからです。使うなら、人が立てた仮説(たとえば「雨の日に来店が減っている」)を、データで確かめるための集計をさせる形にします。

顧客名や個人名が入った表を渡してもいいですか

分析に名前は要らないことがほとんどです。顧客名は顧客番号に置き換え、氏名・電話番号・住所の列は削ってから渡してください。どの情報を入れてよいかは社内ルールで先に決めておき、契約しているサービスでの入力内容の扱いも公式の記載で確認してください。

宇田川 将也/ 代表取締役

2024年に総務省の地域活性化起業人として島根県海士町に着任。役場に住み込んで業務改善に従事し、kintoneで電子決裁や定期健診管理を構築しました。

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