AI導入の計画で決めるべきなのは、フェーズの名前ではなく、各期間の終わりに手元に何が残っているかです。成果物が決まっていない計画は、半年後に「使ってはいる」以外に何も言えなくなります。 この記事は、準備から6ヶ月目までを期間ごとに区切り、具体的な作業・成果物・次に進む条件を表にしたものです。 任せる範囲の線引きはAI活用の教科書 1章、内製化の段階の判定は12章にあります。ここでは、それを実際の週と作業に落とします。
全体の作業表
| 期間 | 主な作業 | 手元に残る成果物 | 次に進む条件 |
|---|---|---|---|
| 準備(1〜2週) | 対象業務を1つ決める。着手前の時間を記録する。線引きと入力してよい情報を1枚にする | 業務名、着手前の数字、A4 1枚のルール | 3つがそろっている |
| 1ヶ月目 | 1人分だけ契約し、同じ業務を繰り返し回す。指示文をファイルにする | 指示文のファイル、うまくいかなかった記録 | 同じ手順で回るようになった |
| 2〜3ヶ月目 | 手順書を作り、2人目に1人でやってもらう。置き場所を1か所にする | 手順書、2人目の氏名、置き場所 | 2人目が1人で回せた |
| 4〜6ヶ月目 | 着手前後の数字を比べて続ける/やめるを決める。2つ目の業務か、業務ツールとの接続に進む | 判定の記録、2つ目の業務の着手前の数字 | 判定の記録がある |
右端の列を満たさないまま次に進まないでください。 期間は目安で、1ヶ月目が2ヶ月かかっても構いません。飛ばすと、後の期間で同じ作業をやり直すことになります。
準備(1〜2週)
| やること | やり方 | 成果物 |
|---|---|---|
| 対象業務を1つ決める | 月に何度も発生し、元の事実(音声・元データ)と照らせる業務から選ぶ。議事録やメールの下書きが選ばれやすい | 業務名1つ |
| 着手前の時間を記録する | 2週間、その業務にかかった時間と件数、やり直しの回数をメモする | 着手前の数字 |
| 線引きと情報の範囲を決める | 任せる範囲と、入力してよい情報を1枚に書く | A4 1枚 |
| 回す人を決める | 業務の担当者本人にする。社長が代わりに回さない | 担当者の氏名 |
業務の選び方は教科書 2章、ルールの中身は3章にまとめています。着手前の数字だけは、後からは作れません。 ここを飛ばすと、6ヶ月目に何も判定できなくなります。
1ヶ月目:1人・1業務で回す
| 週 | 作業 | 残すもの |
|---|---|---|
| 1週目 | 1人分だけ契約する。最初の指示文を書き、実際の業務で使う | 指示文の初版 |
| 2週目 | 毎回の出力のどこを直したかをメモする | 直した箇所の記録 |
| 3週目 | 直した箇所が減るように指示文を直す。直した理由を1行残す | 指示文の第2版、変更の理由 |
| 4週目 | 着手前と同じ形で時間と件数を記録する | 1ヶ月目の数字 |
指示文は、会話の履歴ではなくファイルに残します。 会話の中にしか無い指示文は、次の人が使えません。
振り返りを残す指示文の型
今日この業務でAIを使いました。次の3点を、記録用に1行ずつまとめてください。
- 出力のうち、人が直した箇所(どこを、なぜ)
- 指示文に足すべき一文の案
- 次回、同じ業務で最初に確かめるべき箇所
推測で書かず、下に貼るやりとりに書かれていることだけで書いてください。
(ここにやりとりと、直した後の完成物を貼る)
この記録が3週目の指示文の直しの材料になります。直した箇所が減らない場合は、業務の選び方か材料の渡し方を見直します。
2〜3ヶ月目:2人目と置き場所
| 作業 | やり方 | 成果物 |
|---|---|---|
| 手順書を作る | 画面名やボタン名ではなく、渡す材料・確かめる場所・やり直す条件で書く | 手順書(1枚) |
| 置き場所を1か所にする | 指示文・手順書・記録を、共有フォルダの1つの場所にまとめる | 置き場所のパス |
| 2人目に1人でやってもらう | 説明はせず、手順書だけ渡して回してもらう。詰まった箇所を手順書に足す | 2人目の氏名、手順書の修正 |
| 月1回の見直しを決める | 既存の定例に15〜30分足す。新しい会議は作らない | カレンダーの予定 |
2人目には説明しないでください。 横について説明すると、手順書に書いていないことが伝わってしまい、手順書の抜けが見つかりません。
4〜6ヶ月目:判定と2つ目
| 作業 | やり方 | 成果物 |
|---|---|---|
| 着手前後を比べる | 時間・件数・やり直しの3つを、着手前と同じ形で比べる。確認にかかった時間も足す | 判定の記録 |
| 続ける/やめるを決める | 確認時間を足しても減っていれば続ける。増えていれば範囲を狭めるか、やめる | 決めた理由の1行 |
| 2つ目に進む | 準備の作業を2つ目の業務でもう一度やる。着手前の数字から取る | 2つ目の着手前の数字 |
| 業務ツールとつなぐ(任意) | つなぐなら読み取りだけから。書き込みは取り消せる操作に限る | つないだ範囲の一覧 |
効果の数え方は教科書 11章にあります。やめる判断も成果です。 効いていない業務を続けるより、2つ目に時間を回すほうが先に進みます。
費用の見積もり方
金額は製品とプランで変わるので、この記事では数字を置きません。最新は各社の公式サイトで確認してください(2026年9月確認)。見積もりは次の式で作ります。
| 費目 | 計算 | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| ツールの利用料 | 月額 × 人数 × 月数 | 1ヶ月目は1人分だけ |
| 社内の作業時間 | 記録・指示文の直し・月1回の見直しの時間 | 準備の2週間の記録の手間 |
| 確認の時間 | 出力を人が確かめる時間 × 回数 | ここが抜けると、効果が実際より大きく見える |
| 外部の支援(使う場合) | 範囲・金額・期間を書いて頼む | 指示文を自社で直せる状態にすることを条件に入れる |
製品ごとの料金の比べ方はAI導入の費用比較にまとめています。
当社でのやり方
当社は、開発・記事や教科書の執筆・社内業務の自動化を Claude Code で日常的に回しています。上の「置き場所を1か所にする」は、当社では作業フォルダの形として決めています。
| 置くもの | 当社の置き方 |
|---|---|
| 概要とルール | 1案件=1フォルダ。直下に CLAUDE.md(概要・ルール)を置き、AIは作業のたびにこれを読んでから動く |
| 接続先 | _env.md に接続先だけを書く。秘密の値は書かない |
| トークン・接続文字列 | _secrets/ に分け、git に入れない |
| 成果物と記録 | docs/ に置き、記録は日付で始まるファイル名にする |
| 受け取った資料 | inputs/ |
| 繰り返す仕事 | 手順書ファイル(スキル)にしてAIに読ませる。議事録から課題管理の更新と宿題の切り分けまで、など |
ルールは最初から完成していたわけではありません。長い作業のあとのまとめが英語に切り替わる事故が繰り返し起きたので、CLAUDE.md の先頭に「返答は必ず日本語で書く」を足しました。フォルダ名を英小文字+ハイフンにしているのも、日本語名だとAIのメモリがフォルダに紐づかなかったためです。うまくいかなかった記録を1行のルールにするのが、1ヶ月目の振り返りと同じ作業です。
失敗例と、人が確かめる場所
| 失敗 | 起きること | 人が確かめる場所 |
|---|---|---|
| 着手前の数字を取らずに始めた | 6ヶ月目に続けるか決められない | 準備の成果物に数字があるか |
| 全員に一度に配った | 誰が何に使っているか分からない | 1ヶ月目は1人・1業務か |
| 指示文が個人の会話履歴にしかない | 担当者が休むと止まる | 置き場所のパスに指示文のファイルがあるか |
| 確認時間を数えなかった | 効果が大きく見え、実際は遅くなっている | 判定の記録に確認時間が入っているか |
| 期間どおりに進めることを優先した | 成果物がそろわないまま広がる | 次に進む条件を満たしたか |
| 最初から書き込みでつないだ | 誤った登録を取り消せない | つないだ範囲が読み取りか |
まとめ
- 計画は、フェーズ名ではなく「期間の終わりに残る成果物」で書く
- 準備で、業務1つ・着手前の数字・A4 1枚をそろえる
- 1ヶ月目は1人・1業務。指示文はファイルに残し、直した理由を1行書く
- 2〜3ヶ月目は、説明せずに手順書だけで2人目に回してもらう
- 4〜6ヶ月目は、確認時間を足して判定する。やめる判断も成果
- 費用は「利用料×人数×月数+社内の時間+確認の時間」で見積もる
各期間の作業を一緒に進める場合は、インハウス化支援(伴走 月10万円〜、税別)やClaude Code導入支援(導入と型づくりは無料・利用開始後 月5万円〜)でご相談ください。
→ AI活用支援 → AI活用の教科書 12章 AIの内製化 → 2026年のAI活用トレンド|中小企業が注目すべき5つの変化 → AIで業務自動化|中小企業が今すぐ始められる5つのこと → AI活用のインハウス化支援とは?自走できる組織の作り方
よくある質問
AI導入は最初の1ヶ月で何をすればいいですか
対象業務を1つ決め、着手前の所要時間を記録し、1人分だけ契約して同じ業務を繰り返し回します。月末には、使った指示文のファイルと、うまくいかなかった記録と、着手前後の数字が手元に残っている状態を目指します。
全社員にAIアカウントを配る必要はありますか
最初は必要ありません。1人が1業務で回し、指示文と手順書がファイルになってから、2人目に同じ手順で1人でやってもらいます。2人目が回せたことを確認してから人数を増やすほうが、使われないアカウントが残りません。
費用はどれくらい見ておけばいいですか
ツールの利用料×人数×月数に、社内の作業時間を足して見積もります。利用料は製品とプランで変わるので、最新は各社の公式サイトで確認してください。見落としやすいのは確認にかかる時間で、出力を人が確かめる時間を必ず計画に入れてください。


