株式会社COTSUBU

CHAPTER 12

計測設計を続ける体制と内製化

この章で分かること

  • 所有者一覧(アカウント・名義・ログインできる人)の作り方と、名義を自社に戻す理由
  • 月次30分・年1回の手順と、変更履歴を1か所に集める形
  • 内製する範囲と頼む範囲の線引き、壊れたときの連絡先
この章の目次(11)
  1. 1名義が自社でないと、全部が消える
  2. 2所有者一覧(この章の主成果物)
  3. 3月次30分の手順
  4. 4年1回の手順
  5. 5変更履歴は1か所に
  6. 6引き継ぎ資料は、この本の成果物そのもの
  7. 7内製する範囲と頼む範囲
  8. 8壊れたときの連絡先
  9. 9よくある間違いを5つ
  10. 10この章の出口
  11. 11この本の締め

計測の価値は、作った日ではなく、1年後に生きているかで決まります。 設定が完璧でも、アカウントの名義が委託先で、見る人が決まっておらず、触った記録が残っていなければ、担当が1人替わった日に全部が分からなくなります。 この章は、所有者・月次の手順・変更履歴・引き継ぎを決めて、計測を人から切り離すための章です。そして本の最後に、全体の締めを置きます。

この章で分かること

  • 所有者一覧(アカウント・名義・ログインできる人)の作り方と、名義を自社に戻す理由
  • 月次30分・年1回の手順と、変更履歴を1か所に集める形
  • 内製する範囲と頼む範囲の線引き、壊れたときの連絡先

名義が自社でないと、全部が消える

計測の資産は、アカウントの中にあります。 名義が委託先だと、契約が終わった日に、過去のデータごと触れなくなります。復旧できません。 作り直せるのは設定だけで、データはさかのぼって入りません。

状態 契約終了時に起きること
自社名義。委託先はユーザーとして追加 権限を外すだけ。データはそのまま残る
委託先名義。自社はユーザー 移管の交渉が要る。 断られると過去のデータを失う
委託先の個人アカウントの配下 担当者の退職でも同じことが起きる

この表の3行は、順に悪くなるのではなく、2行目と3行目の間に大きな段差があります。委託先が会社として名義を持っているなら、少なくとも交渉の相手はいます。担当者の個人アカウントの配下にある場合、相手がその会社を辞めた時点で、会社に頼んでもどうにもなりません。自社が契約している会社の名前ではなく、実際に誰のアカウントの下にぶら下がっているかまで確認してください。

たとえば、広告アカウントも解析も、代理店の担当者個人のアカウントの下にあったとします。代理店を替えることになり、移管を依頼すると、その担当者はすでに退職している。代理店の側も手を出せず、結果として何年分もの履歴を失う——こういう形で起きます。設定は短期間で作り直せても、前年同月と比べる、という判断の仕方がその年はできなくなります。

失われるのがデータだけなら、まだ痛みは限定的です。実際に効くのは、判断の材料が消えることです。この本の10章は、比較の相手を決めて毎月同じ形で判断する、という話でした。過去が消えると、その仕組みが1年間動きません。名義を自社に戻すというのは、データを守る作業ではなく、判断を続けられる状態を守る作業です。

直すのは早いほどよいです。 移管の際、タグを作り直す必要はありません(5章)。

所有者一覧(この章の主成果物)

使っているもの1つにつき1行、次の欄を埋めます。

欄 書くこと 例
何 ツール・サービス名 解析ツール/タグ管理ツール/広告アカウント/フォーム/サーバー/ドメイン
名義 誰の名義か 自社
管理者 最上位の権限を持つ人 ◯◯(自社)
ログインできる人 全員の氏名 ◯◯・△△・(委託先)□□社
支払い 支払っている主体と方法 自社/法人カード
契約の更新日 日付 毎年4月1日

この表は、記録を残すための表ではなく、その場で異常を見つけるための表です。埋めながら読んでください。名義の欄に自社以外が入った行、ログインできる人の欄に心当たりのない名前が入った行、支払いの欄に個人名が入った行——この3つだけを探せば足ります。全部の欄を完璧に埋めることが目的ではありません。

埋める順番は、上から1行ずつではなく、欄ごとに横断してください。まず全ツールの「名義」だけを埋め、次に全ツールの「ログインできる人」だけを埋める、という進め方です。同じ欄を続けて見るほうが、おかしい行が目に留まります。1行ずつ丁寧に埋めると、6欄を埋める作業に意識が向いて、異常に気づかないまま最後まで行きます。

「ログインできる人」の欄を埋めると、たいてい1〜2人、心当たりのない名前が出てきます。 退職者、契約が終わった会社、テスト用に作ったアカウントです。その場で外してください。

支払いの欄を入れている理由は、支払いが止まると計測も止まるからです。 担当者の個人カードで払っているサービスは、退職日に止まります。

月次30分の手順

紙に書いて、同じ日に、同じ人がやります。 順番も固定します。

# やること 時間 章
1 本番で1件送り、6か所をたどる。記録を1行書く 15分 8章
2 見る画面を開き、5つの数字を写す 5分 9章
3 台帳・媒体と突き合わせ、差の理由を1行書く 5分 6章・7章
4 報告テンプレートを埋め、判断を1行書く 5分 10章

合計30分です。 この30分が、計測が壊れていないことの証明であり、月次の報告であり、判断の記録でもあります。別々の作業にしないでください。 分けると、実送信だけが省かれます。

順番を固定している理由は、1番が最も省かれやすいからです。数字を見る作業と判断する作業には、それ自体に手応えがあります。1件送ってたどるだけの作業には、ありません。正常だった場合、何も起きずに終わります。手応えの無い作業は、忙しい月から順に落ちていきます。先頭に置いて、これを終えないと2番に進まないと決めておくのが、いちばん確実な防ぎ方です。

もうひとつ、この4つを1つの作業として扱う理由があります。担当を分けられなくなるからです。実送信は計測担当、画面を見るのは営業、報告は管理部門——と分けると、つなぎ目で止まります。30分を1人が通しでやるなら、担当は1人で足り、引き継ぎも「この手順書を渡す」だけで済みます。

年1回の手順

やること 章
2章の14項目を通す(60分) 2章
権限の一覧を見直し、不要なアカウントを外す この章
送信先の一覧を作り直し、ポリシーと突き合わせる 11章
1件の重みを再計算する(受注率×平均粗利) 4章
目標値を引き直す 10章
定義書・設計シートを最新に更新する 1章・4章

この6つは、1日でまとめてやってください。半日で終わります。分散させると、権限の見直しだけが毎年残る、という形になりがちです。6つのうち4つは前半の章で作った資料を開き直すだけなので、続けて手をつけたほうが速く終わります。

日付を決めてください。 「年度初め」「決算後」など、毎年必ず来る日に紐づけると忘れません。

変更履歴は1か所に

8章で作った履歴を、この一覧と同じ場所に置きます。 場所は表計算ソフトでも社内のドキュメントでも構いません。分かれていないことだけが条件です。

分けてはいけない理由
段差の原因を探すとき、複数の場所を突き合わせることになる
委託先が書く場所が分からなくなる
引き継ぎのときに、渡し忘れが出る

委託先にも、触った日を1行書いてもらってください。 発注時の約束に1行入れるだけで済みます。書いてもらえない場合は、自社側で「◯月◯日、□□社が作業」と書くだけでも構いません。

引き継ぎ資料は、この本の成果物そのもの

新しく作るものはありません。 各章の出口を1つのフォルダに集めれば、それが引き継ぎ資料です。

# 資料 章
1 計測設計シート(8欄) 1章
2 1件の定義書(成果ごとに8欄) 4章
3 命名規則・登録したパラメータの一覧 3章
4 タグの一覧・データレイヤーの仕様・公開手順5行 5章
5 突き合わせ表(経路別・媒体別) 6章・7章
6 検査の記録・変更履歴・復旧手順 8章
7 見る画面のURLと共有先 9章
8 送信先の一覧・相談先 11章
9 所有者一覧 この章

この表の使い方は、上から作っていくことではありません。すでにある資料を1つのフォルダに集めて、欠けている番号を数えるだけです。9点すべてが揃っている会社は多くありませんが、揃っていない番号がそのまま、読み飛ばした章の一覧になります。引き継ぎ資料の点検が、この本の進み具合の点検を兼ねている、ということです。

担当が替わる日に渡すのではなく、常に最新にしておいてください。 替わる日が、いつ来るか分からないからです。

内製する範囲と頼む範囲

全部を内製する必要はありません。 線を引くときの基準は1つ、「毎月発生するか、一度きりか」です。

作業 内製 頼む 理由
設計を決める(1章・4章) 内製 — 自社の商売を知らないと決められない
月1回の実送信・突き合わせ(8章) 内製 — 受信箱と台帳は自社にしかない
数字を読んで判断する(10章) 内製 — 判断は外注できない
GA4・GTMの初期設定(3章・5章) 場合による 頼んでよい 一度きり。失敗すると全データに影響する
実装(データレイヤー・完了ページ) — 頼む 制作側の作業
見る画面の作成(9章) 場合による 頼んでよい 一度作れば、以降は開くだけ
同意・ポリシーの判断(11章) — 専門家に確認 法的な判断

この表で迷いが出るのは、「場合による」と書いた2行です。初期設定と画面の作成は、技術の難易度ではなく、時間と失敗の代償で決めてください。初期設定は一度きりですが、間違えると以降のデータ全体が狂い、しかもさかのぼって直せません。社内に経験者がいないなら、ここは頼む側に倒す価値があります。画面の作成は、間違えてもいつでも作り直せます。時間が取れるなら内製で構いません。

より根本的な基準は、止めたときに何が残るかです。毎月の作業を外注していると、その契約を止めた月から、社内には何も残りません。数字も、読み方も、判断の癖も、全部相手の側にあります。一度きりの作業を外注しても、成果物は自社に残ります。「毎月か、一度きりか」という線引きは、突き詰めるとこの違いを言っています。

「毎月やること」は内製に寄せてください。 毎月の作業を外注すると、止めた月から何も分からなくなります。一度きりの作業は、頼んだほうが速く、確実です。

当社のアクセス解析・計測設計では、計測診断を無料で行い、GA4・GTM設定は15万円から、レポート画面の作成は10万円から、月次レポートと改善提案は月5万円から承っています。内製に寄せる場合は内製化支援(環境整備 15万円〜/伴走支援 月10万円〜)があります。すべて税別です。

壊れたときの連絡先

症状 連絡先
サイトが表示されない・フォームが送れない 制作・保守の担当(社名・氏名・電話)
通知メールが届かない 同上、またはメールの管理者
成果が0件になった 計測の担当(社内/委託先)
広告の成果が渡っていない 広告の担当
データを消してしまった 各ツールの窓口。復旧できないことが多い

この表を、所有者一覧と同じ場所に置いてください。 壊れたときに探し始めると、それだけで半日かかります。

よくある間違いを5つ

「アカウントが制作会社の名義のままになっている」 ——契約が終わった日に、過去のデータごと失います。直し方:自社名義のアカウントを作り、移管を依頼する。以降、委託先はユーザーとして追加する。

「担当者が替わったら、何も分からなくなった」 ——引き継ぎ資料が無い状態です。直し方:各章の出口を1つのフォルダに集める。新しく作るものは無い。

「月次の確認を、忙しい月に1回飛ばしたら、そのままやらなくなった」 ——手順が紙になっていないと、再開できません。直し方:30分の手順を紙にし、毎月同じ日に予定として入れる。

「委託先が何をしたか分からない」 ——履歴に委託先の行がありません。直し方:作業した日に1行書いてもらう約束を、発注時に入れる。

「毎月のレポート作成まで外注したので、社内に数字を読む人がいない」 ——止めた月から、何も分からなくなります。直し方:受け取って読む人を自社に1人置く。判断の1行は自社が書く。

この章の出口

手元に残っているべきものは4つです。

  1. 所有者一覧(名義・管理者・ログインできる人・支払い・更新日)
  2. 月次30分の手順書と、年1回の見直しの日付
  3. 変更履歴(1か所。委託先の行も入っている)
  4. 引き継ぎフォルダ(9点)

この本の締め

12章でやったこと

計測の事故は、必ず前の区分に原因があります。 だから区分は、作業の順ではなく原因の順に並べました。

区分 章 何を手に入れる区分か 点検項目
決める 1・2 何を1件と数えるかの決めと、いまの計測の診断 26
作る 3・4・5・6 GA4の土台・成果の定義・実装の管理・Webで完結しない問い合わせ 48
確かめる 7・8 媒体との突き合わせと、壊れたことに気づく仕組み 26
使う 9・10 開けば終わる画面と、判断が1行出る読み方 20
続ける 11・12 外に何を送っているかの把握と、人・権限・手順 22
合計 142

どこから読むか

状況 読む順
計測がすでに入っている 2章(60分の点検)から。 ×が出た章だけを読む
これから入れる 1章 → 3章 → 4章 → 5章 の順
数字は出ているが信用できない 2章 → 4章 → 7章
電話・来店が主導線 1章 → 6章 → 10章
レポートが読まれていない 9章 → 10章 → 12章

1章と2章で、この本の半分の価値があります。 初回の計測診断では、1章・2章・4章の38項目を先に通してください。

この本の原則(5つ)

  1. 画面のメニュー名と階層を書きませんでした。 半年で嘘になるからです。代わりに「何を確かめたいか」「合格ラインはどこか」と、探す言葉を置きました
  2. 出典のない統計・相場を書きませんでした。 自社の計測が正しいかは、自分で1件送れば判定できます。 他人の平均は要りません
  3. 合格ラインは、その場で○×が付く粒度にしました。 「正しく計測されていること」ではなく「1件送って、6か所すべてに現れた」です
  4. 台帳が正です。 解析ツールも広告媒体も、必ず何かを取りこぼします。突き合わせる相手を持たない計測は、検証できません
  5. 取れないものは、取れないと確定させました。 通話の成立数も来店数も、Webでは取れません。確定させて台帳で数えるほうが、早く結論が出ます

繰り返し出てきた作業は1つだけ

自分で1件送って、たどる。 2章の工程2、4章の重複の確認、6章の外部フォーム、7章の媒体の二重、8章の検査、11章のURLの確認——全部これです。

15分でできて、費用がかかりません。 この本を読んで1つだけ持ち帰るなら、これです。

更新の約束

計測の情報は、他の分野より古くなるのが速い領域です。この本は、半年ごとに見直します。

見直すもの 方針
ツールの仕様変更 該当章と、探す言葉を直す。画面名を書いていないので、直す箇所は限られます
点検リスト 実務で使って、○×が付けにくかった項目を書き直す
当社の料金 サービスページの実値と一致させる
他の教科書との境目 重複が出たら、どちらが持つかを決め直してリンクにする

変更は、index.md の更新履歴に残します。

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相談するとき

設定を足す前に、いまの数字が信用できるかを先に確認します。ここは無料です。 これが当社の決めごとです。

使いどころ サービス 金額(税別)
いまの計測が信用できるか 計測診断 無料
設定を入れる・直す GA4・GTM設定 15万円〜
毎月見る画面を作る レポート画面の作成 10万円〜
読んで判断するところまで伴走 月次レポートと改善提案 月5万円〜
自社でできる状態にする 内製化支援 環境整備 15万円〜/伴走支援 月10万円〜

点検リストの○×を付けてから相談してください。 ×の項目だけを頼めば足ります。診断だけで終わって構いません。

詳しくはアクセス解析・計測設計をご覧ください。

この章の点検リストを開く(自社の状態を○×で判定する用)

点検リスト:続ける体制(10項目)

# チェック項目 合格ライン
1 所有者一覧がある ツールごとに、名義・管理者・ログインできる人・支払いが表になっている
2 数字を見る人が決まっている 氏名と頻度が書いてある(「代理店」は不可)
3 月次の手順が紙になっている 30分で終わる手順書がある
4 変更履歴が1か所にある サイト・フォーム・タグ・広告・設定が同じ場所に書かれている
5 1件の定義書が最新 直近の変更が反映されている
6 引き継ぎの資料がある 9点が1つのフォルダに揃っている
7 委託先の権限を定期的に見直している 見直しの日が決まっている
8 年1回の見直しの日が決まっている 日付が書いてある
9 内製する範囲と頼む範囲が線引きされている 表がある
10 壊れたときの連絡先が決まっている 社内・委託先の連絡先が1か所にある

合格ライン=10項目中8以上。ただし 1・2・4 のどれかが×なら、点数に関係なく先に直します。

  • 1が×:名義が自社でない場合、ある日すべてを失います。復旧できません
  • 2が×:壊れても誰も気づきません。計測の事故は静かに起きます(1章)
  • 4が×:段差の原因を永久に特定できません。次に壊れたときも同じことになります

2は、その場で決められます。 1と4は、一覧と履歴を作るだけで、半日で終わります。

読んでも決めきれないところは、一緒に決めます

30分の相談は無料です。いまの計測が信用できるかの点検から引き受けます。引き受けられる範囲はアクセス解析・計測設計にまとめています。

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更新日 2018年10月20日