CHAPTER 11
GA4の同意管理・プライバシー・保存期間
この章で分かること
- 自社サイトが何を外部に送っているかの一覧の作り方(タグごとに1行)
- プライバシーポリシーの記載と、実際に動いているものを突き合わせる手順
- 保存期間・書き出し・委託先・海外移転について、確認先と、持っていく問い
この章の目次(11)
- 1なぜ、把握が先なのか
- 2送信先の一覧を作る(1〜2時間)
- 3ポリシーの記載と実態を突き合わせる
- 4同意の前に何が動くかを確認する
- 5個人情報を計測に載せない
- 6保存期間を決める
- 7委託先・海外移転・書き出し
- 8確認先と、持っていく問い
- 9見直しの頻度
- 10よくある間違いを5つ
- 11この章の出口
この章は、法的な助言ではありません。何が適法かの判断は書きません。 書くのは2つだけです。①自社サイトが何を外部に送っているかを把握する方法と、②判断が要る箇所を、誰に・どの資料で確認すればよいか。 判断そのものは、弁護士・専門家と、各ツールの公式の規約・ヘルプに委ねてください。この章の目的は、相談できる材料を1枚にまとめることです。
この章で分かること
- 自社サイトが何を外部に送っているかの一覧の作り方(タグごとに1行)
- プライバシーポリシーの記載と、実際に動いているものを突き合わせる手順
- 保存期間・書き出し・委託先・海外移転について、確認先と、持っていく問い
なぜ、把握が先なのか
同意の取り方をどうするか、ポリシーに何を書くか——これらは、何が動いているかを把握していないと決められません。
この順番を逆にすると、相談が空回りします。専門家に「うちは大丈夫でしょうか」と聞いても、何が動いているかを答えられなければ、相手は「まず調べてください」としか返せません。相談料を払って「調べてください」と言われて帰ってくる——この領域で最も多い時間の使い方がこれです。専門家が判断できるのは、材料が揃ってからです。そして材料を揃える作業は、外注できそうに見えて、実は自社にしかできません。タグを入れた経緯も、誰に頼んだかも、社内にしか残っていないからです。
もうひとつの理由は、把握そのものが答えの半分を占めることです。当社が計測の診断で入った会社では、一覧を作った時点で「これは何のタグですか」と社内で誰も答えられないものが、ほぼ必ず出てきます。用途を説明できないタグは、残す理由も無いので消せます。消せば、同意の設計もポリシーの記載も、その分だけ軽くなります。判断が要る箇所を減らしてから相談に行くほうが、結果として早く終わります。
この章を読み終えたときに手元にあるべきものは、法的な結論ではありません。1枚の一覧と、その一覧に対する質問リストです。結論は、それを持っていった先で出ます。
| よくある状態 | 起きること |
|---|---|
| 何のタグが入っているか分からない | 何を外部に送っているか説明できない。相談しても答えが出ない |
| ポリシーに「Googleアナリティクスを使用しています」とだけ書いてある | 他のタグが入っていれば、記載と実態が食い違う |
| 代理店から渡されたタグをそのまま入れた | 送信先も用途も分からない(5章) |
この表は、自社がどの状態にあるかを最初に見分けるために使います。3行のうち1つでも当てはまれば、同意やポリシーの検討に進む前に、送信先の一覧づくりから始めてください。3行とも当てはまらない——つまり、入っているタグを全部言えて、ポリシーの記載とも一致していると即答できる場合は、この章の作業は突き合わせの確認だけで終わります。
把握は自社にしかできません。 一覧を作るところまでが、この章の作業です。
送信先の一覧を作る(1〜2時間)
タグ1本につき1行、次の欄を埋めます。5章で作ったタグの一覧に、列を足す形で構いません。
| 欄 | 書くこと | 例 |
|---|---|---|
| タグの名前 | 管理画面上の名前 | GA4 - form_submit - 問い合わせ |
| 送信先 | どのサービスか | 解析ツール |
| 何を送っているか | イベント名とパラメータ | form_submit(form_id) |
| いつ動くか | 同意の前か、後か | 同意の後 |
| 入れた人・日 | 氏名と日付 | ◯◯/2026-04-01 |
| 用途 | 1行 | 問い合わせ件数の計測 |
この表は、埋めながら考える表ではなく、埋まらない欄を見つけるための表です。6欄のうち「用途」と「入れた人・日」が、最も埋まりません。逆に言えば、この2欄が埋まらないタグが、この章で扱うべき対象そのものです。全部をきれいに埋めようとして止まるより、埋まらない行に印を付けて先へ進んでください。印の付いた行が、そのまま相談事項の候補になります。
用途を1行で書けないタグは、入れたままにしないでください。 何のためのタグか説明できない状態が、この章で最も直すべきところです。
探し方:タグ管理ツールの一覧、ページのソース(script で読み込んでいる外部のアドレス)、ブラウザの開発者向け機能で外部への通信先を見る、の3通りです。3つとも見てください。 タグ管理ツールを通さずに直接埋め込まれているものが、たいてい1本はあります。
この一覧を作ると、たとえばこうなります。タグ管理ツールの一覧には7本が並んでいる。ところがページのソースを開くと、管理ツールを通していない外部の読み込みが、さらに数本ある。そのうちのいくつかは、数年前に契約が終わった広告代理店のもの——契約は終わっているのに、タグだけがサイトに残って動き続けていて、担当者も経営者もその存在を知らない、という状態はめずらしくありません。
こうしたタグは、タグ管理ツールの一覧だけを見ていたら、いつまでも見つかりません。探し方を3通り挙げているのは、そのためです。とくに、サイトを一度作り直した会社、制作会社を途中で替えた会社、広告代理店を替えた会社は、直接埋め込みが残っている可能性が高いと考えてください。入れた人がもういない、という形で残ります。
探す順番で迷ったら、ページのソースから見てください。ソースには「いま実際に読み込まれているもの」しか載りません。実態を先に見てから管理ツールの一覧と突き合わせるほうが、差分が浮き上がります。逆の順番だと、管理ツールに載っているものを確認できた時点で満足してしまい、載っていないものを探す動機が消えます。
ポリシーの記載と実態を突き合わせる
一覧ができたら、プライバシーポリシーと並べます。見るのは3点だけです。
| 見る点 | 確かめること |
|---|---|
| 一覧にあって、ポリシーに無いもの | 記載が足りていない可能性がある |
| ポリシーにあって、一覧に無いもの | 使っていないサービスが書かれたままになっている |
| 送っている内容の説明 | 何を、何のために取得しているかの説明が、実態と合っているか |
この3点は、優先度が同じではありません。上から順に見るのではなく、2行目——ポリシーに書いてあるが実際には使っていないサービス——から潰してください。使っていないサービスの記載を消すのは、自社の判断だけで完結します。1行目と3行目は、書き足すか書き換えるかの判断が要るので、専門家に持っていく側に回ります。自社で終わる分を先に片づけておけば、相談に持っていく差分がそれだけ短くなります。
「記載を直すべきか」「どう書くべきか」は、この本では判断しません。 差分の一覧を作り、弁護士・専門家に持っていってください。 差分が1枚になっていれば、相談は短時間で終わります。
同意の前に何が動くかを確認する
同意の仕組み(バナー等)を入れている場合、同意する前に動いているものがあるかを確認します。
| 確認すること | 方法 |
|---|---|
| 同意する前に、どこへ通信しているか | ブラウザの開発者向け機能で、同意前の通信先を見る |
| 同意の仕組みを通していないタグはあるか | タグ管理ツールを経由せず、直接埋め込まれたタグが無いか |
| 同意の状態によって、計測がどう変わるか | 同意しない場合に、何が取れなくなるかを把握する |
この3つは、同じ日にまとめて見てください。1つ目だけを確認して「同意前の通信は無い」と結論を出しても、2つ目——管理ツールを通していないタグ——が残っていれば、その確認は無効になります。直接埋め込まれたタグは、同意の仕組みの外側で動くからです。
同意の仕組みを入れたこと自体が、計測の数字を変えます。 導入した日を変更履歴に記録し、その日を比較の起点にしてください(8章・10章)。
ここを理解しておかないと、あとで数字が下がったときに原因を取り違えます。たとえば、観光サイトに同意バナーを入れた翌月から、集計上の訪問数が2割ほど落ちたとします。実際に来訪者が減ったのではなく、同意しなかった分が集計に載らなくなっただけです。それを「広報が効かなくなった」と読むと、翌年度の広報予算を削る話に進みかねません。
数字が変わること自体は避けられませんし、避けるべきものでもありません。避けられるのは、読み違いのほうです。導入した日を変更履歴に書いておけば、翌月の段差を見たときに「この日から数え方が変わった」と即座に言えます。10章で段差を変更履歴と突き合わせると書いているのは、こういう場面のためです。
何をもって同意とするか、どの範囲に同意が要るかは、この本では判断しません。 確認先は下記の表です。
個人情報を計測に載せない
この節が他と違うのは、判断の余地がほとんど無い点です。適法かどうかを議論する前に、各ツールが自社の規約で禁じています。禁じられていることをしている状態は、法的な結論を待たずに止められます。だからこの節だけは、この本でも「確認してください」ではなく「やめてください」と書けます。
実際に多いのは、悪意でも無知でもなく、単に誰も見ていないケースです。フォームを作ったのは制作会社、計測を入れたのは別の代理店、URLに入力内容が載ることは双方の担当範囲の外——という分担の隙間で起こります。だからこそ、自分で1件送って自分の目で見る確認が効きます。
これは判断ではなく、各ツールの利用規約に書かれている禁止事項です。(規約は変わります。最新は各ツールの利用規約で確認してください。 探す言葉:「個人を特定できる情報 送信 禁止 利用規約」)
| 載せてしまいがちな場所 | 起きること |
|---|---|
完了ページのURLに、入力内容が付いている(?email=…) |
メールアドレスが、そのまま計測ツールに記録される |
| パラメータに氏名・電話番号を入れている | 同上 |
| 検索ボックスに個人情報を入力された | サイト内検索の記録に残る |
| エラーメッセージにメールアドレスが出る | 画面のタイトルとして記録される |
1行目が最も多い事故です。 フォームの送信方式によっては、入力内容がURLに載ります。自分で1件送って、完了ページのURLを見れば、その場で分かります(2章・工程2のついでに確認できます)。
送ってしまったデータを後から消すのは、送らないより何倍も大変です。 気づいた時点で、①送信を止める ②各ツールの手順で削除を依頼する ③記録を残す、の順で動き、対応の要否は専門家に確認してください。
保存期間を決める
| 決めるもの | 書くこと |
|---|---|
| 解析ツールの保持期間 | 設定値と、その理由(例:前年同月と比べるため最長にする) |
| 台帳(受付記録)の保存期間 | 期間と、廃棄の方法・担当 |
| 書き出したデータ | 保存先と期間(外部に書き出している場合) |
解析ツールの保持期間は、選べる中で最長にするのが実務上は無難です(2章・工程8)。さかのぼって復元はできません。 一方、台帳や書き出したデータをどれだけ残すかは、自社の方針と、法令・契約の話です。 期間と理由を書いて、専門家に確認してください。
長くするか短くするかで迷ったとき、解析ツールと台帳では答えの向きが逆になります。解析ツールの数字は集計であり、かつ過去にさかのぼって復元できません。短くして困るほうが大きいので、長い側に倒します。台帳は氏名や連絡先そのものです。持っている限り、守る責任も、漏れたときの影響も続きます。使う理由を説明できない期間は、短い側に倒すのが筋です。この「ツールは長く、台帳は短く」という向きだけ覚えておけば、具体的な年数は専門家と詰められます。逆向き——解析ツールを既定の短い期間のまま放置し、台帳だけを無期限に貯めている——になっている会社が、実際には少なくありません。
委託先・海外移転・書き出し
判断は書きません。把握する項目だけを挙げます。
| 項目 | 書き出すこと |
|---|---|
| 委託先 | 誰が、どのデータに、どの権限で触れるか(5章・12章の所有者一覧と同じ表で構わない) |
| 書面 | 契約・覚書があるか。データの扱いが書かれているか |
| 外部への書き出し | 有無、保存先、誰が見られるか |
| 海外への移転 | 使っているサービスのデータの保管先を把握しているか(各サービスの公式資料で確認) |
「把握していない」が一番まずい状態です。 把握したうえで問題が無いのか、対応が要るのかは、専門家が判断します。
確認先と、持っていく問い
| 確認したいこと | 確認先 | 持っていくもの |
|---|---|---|
| 同意の取り方・ポリシーの記載 | 弁護士・専門家 | 送信先の一覧/ポリシーとの差分 |
| 計測ツールで何が禁止されているか | 各ツールの利用規約・公式ヘルプ | 送っているパラメータの一覧 |
| 自社の業界に固有の決まり | 業界団体・所管の公的機関の公表資料 | 取得している項目の一覧 |
| 台帳の保存期間 | 顧問(税理士・弁護士)・社内規程 | 台帳の項目と件数 |
| 委託先の扱い | 契約書・覚書 | 権限の一覧 |
この表の左の列は、そのまま相談の議題になります。ただし5行すべてを1人に聞こうとしないでください。2行目は専門家ではなくツールの規約に答えがあり、4行目は顧問の税理士のほうが早いことがあります。行ごとに行き先が違うことを先に分けておくと、「弁護士に聞いたが、それはツール側の話だと言われた」という往復が減ります。
相談先が決まっていないまま、この章の×を埋めようとしても進みません。点検リストの11番を必須にしているのは、そのためです。顧問弁護士がいない会社でも、入口はあります。商工会議所や自治体の相談窓口、加入している業界団体の窓口——どこでも構いません。聞ける先を1つ決めて、氏名か社名を書いてください。書いた時点で、残りの×は全部「持っていく先が決まっている宿題」に変わります。
相談は、一覧を持っていくかどうかで所要時間が変わります。 「何か問題がありますか」ではなく、「この12本のタグで、これを送っています。この記載で足りますか」と聞ける状態にしてください。
見直しの頻度
| いつ | やること |
|---|---|
| 年1回 | 送信先の一覧を作り直し、ポリシーと突き合わせる |
| タグを足したとき | その場で一覧に1行足す |
| サイトを作り直したとき | 一覧を作り直す(直接埋め込みが増えやすい) |
| 委託先が変わったとき | 権限と書面を見直す |
年1回の日付を決めてください(12章の年次の見直しと同じ日で構いません)。
よくある間違いを5つ
「同意バナーを入れたので、対応は終わったと思った」 ——バナーを入れても、同意の前に動いているタグがあれば、実態は変わっていません。直し方:同意前の通信先を確認し、タグ管理ツールを通していないタグを洗い出す。そのうえで判断は専門家に確認する。
「ポリシーに『Googleアナリティクスを使用』とだけ書いてある」 ——他のタグが入っていれば、記載と実態が食い違います。直し方:送信先の一覧とポリシーを並べ、差分を1枚にして専門家に相談する。
「完了ページのURLに、入力内容が付いていた」 ——個人情報が計測ツールに記録されます。直し方:自分で1件送って完了ページのURLを見る。付いていたら、送信方式かページの作りを変える(制作側の作業)。
「代理店から渡されたタグを、用途を聞かずに入れた」 ——何を外部に送っているか説明できません。直し方:用途と送信先を1行で書いてもらってから入れる。説明できないタグは入れない(5章)。
「保存期間を決めていないので、とりあえず全部残している」 ——残す判断も、消す判断もしていない状態です。直し方:期間と理由を書き出し、専門家に確認する。解析ツールの保持期間は別問題として、最長に設定しておく。
この章の出口
手元に残っているべきものは3つです。
- 送信先の一覧(タグごとに、送信先・内容・いつ動くか・用途)
- ポリシーとの差分(一覧と記載を突き合わせた結果)
- 相談先と、次の確認日(氏名・社名と、年1回の日付)
この3つが、専門家に持っていく材料です。 判断はここではしません。
最後は、誰が続けるかです。計測は、作った日ではなく、1年後に生きているかで価値が決まります。人と権限と手順を決めます。
次の章へ:12章 計測設計を続ける体制と内製化
この章の点検リストを開く(自社の状態を○×で判定する用)
点検リスト:同意・保存期間(12項目)
この点検は、○×を付けることが目的です。 ×の項目が、そのまま専門家への相談事項になります。
| # | チェック項目 | 合格ライン |
|---|---|---|
| 1 | 自社サイトが何を外部に送っているかの一覧がある | タグごとに、送信先・内容・用途が書いてある |
| 2 | プライバシーポリシーに計測の記載がある | 記載がある |
| 3 | 記載と実態が一致している | 一覧とポリシーを突き合わせ、差分を出した |
| 4 | 同意の取り方を決めている | 決め方と、決めた根拠(誰に確認したか)が書いてある |
| 5 | 同意の前に何が動くかを把握している | 同意前の通信先を確認した |
| 6 | 個人情報をパラメータ・URLに入れていない | 実送信して完了ページのURLとパラメータを確認した |
| 7 | データの保存期間を決めている | 期間と理由が書いてある(解析ツール・台帳の両方) |
| 8 | 外部への書き出しの有無と保存先を把握している | 有無と保存先が書いてある |
| 9 | 委託先とのデータの扱いを書面にしている | 契約または覚書がある |
| 10 | 海外への移転の有無を把握している | 使っているサービスの保管先を確認した |
| 11 | 相談先が決まっている | 弁護士・専門家の氏名または社名が書いてある |
| 12 | 見直しの頻度が決まっている | 年1回以上。日付が書いてある |
合格ライン=12項目中9以上。ただし 3・6・11 のどれかが×なら、点数に関係なく先に直します。
- 3が×:書いてあることと、やっていることが違う状態です。突き合わせは自社にしかできません
- 6が×:規約で禁止されている送信をしている可能性があります。送ってからでは、消すのに手間がかかります
- 11が×:判断できる人がいません。この章の×は、相談先が無いと1つも解消できません
6は、自分で1件送ってURLを見れば判定できます。 5分です。
更新日 2018年10月20日
