株式会社COTSUBU

CHAPTER 10

アクセス解析の数字の読み方

この章で分かること

  • 判断の単位を月にする理由と、日次の数字を何に使うか
  • 率を語ってよい分母の下限の決め方と、下限未満のときにやること
  • 段差の読み方・平均の危うさ・報告テンプレート(毎月同じ形で出す)
この章の目次(12)
  1. 1判断は月単位。日次は監視にだけ使う
  2. 2率を語ってよい分母を決める
  3. 3目標値は、月初に決めておく
  4. 4件数が減ったとき、見る順番
  5. 5段差は、変更履歴と突き合わせる
  6. 6平均で判断しない
  7. 7台帳と照合してから報告する
  8. 8判断を1行にする
  9. 9報告テンプレート(毎月同じ形)
  10. 10読まなくてよい数字
  11. 11よくある間違いを5つ
  12. 12この章の出口

数字を読む作業の目的は、説明することではありません。「続ける・やめる・変える」のどれかを1行で決めることです。 決まらない読み方には、共通する原因が3つあります。判断の単位が短すぎる、少ない件数で率を語っている、台帳と照合せずに報告している。 この章は、この3つを潰して、毎月15分で判断が1行出る状態にするための章です。

この章で分かること

  • 判断の単位を月にする理由と、日次の数字を何に使うか
  • 率を語ってよい分母の下限の決め方と、下限未満のときにやること
  • 段差の読み方・平均の危うさ・報告テンプレート(毎月同じ形で出す)

判断は月単位。日次は監視にだけ使う

判断の単位を先に決める理由は、単位によって同じ出来事の見え方が変わるからです。問い合わせが3日間ゼロだった、という事実は本当です。しかしその3日を切り出して「反応が落ちた」と読むか、月全体の中の偶然の偏りと読むかで、次の行動が正反対になります。単位を決めていないと、都合のよい単位が後から選ばれます。悪い月は「四半期で見れば横ばいです」になり、良い週は「今週は絶好調です」になる。どちらも嘘ではないので、誰も反論できません。

読み方の技術というのは、実はこの「後から単位を選ばせない」ことがほとんどです。統計の知識ではなく、先に決めて動かさない、という運用の話です。この章で扱う3つの原因——単位が短い、分母が小さい、台帳と照合していない——は、どれも先に決めておけば防げるものばかりです。

もうひとつ、中小企業に固有の事情があります。件数が少ないことです。月に数百件、数千件の問い合わせがあるなら、日次でも傾向は読めます。月に20件であれば、1日あたり1件未満です。この規模では、日次のグラフに意味のある形は現れません。現れるのは、曜日と、たまたま同じ日に2件来たかどうかだけです。

単位 使いみち 使ってはいけないこと
日次 0件になっていないかの監視(8章) 増減の判断。当日・前日の数字は後から確定します(3章)
週次 施策の実行状況の確認 率の判断(分母が足りない)
月次 判断(続ける・やめる・変える) —
四半期・年 方針の見直し、重みの再計算(4章) 日々の改善

この表は、右端の列のほうが本体です。左の列だけを読むと「どの単位も使い道がある」という当たり前の話にしか見えませんが、価値があるのは、使ってはいけない用途をあらかじめ封じている点です。会議で日次のグラフが映され、その場の空気で判断が動きそうになったときに、この表の2行目を指させる状態にしておいてください。

日次で判断すると、必ず振り回されます。 問い合わせは、届く日が偏ります。3日間0件でも、月で見れば平年並み、ということが普通に起きます。

当社の決めごとは、「判断は月単位。日次は0件の監視にだけ使う」です。 理由は、中小企業の問い合わせ件数では、日次の変動のほとんどが偶然だからです。

率を語ってよい分母を決める

最も多い読み間違いは、少ない件数で率を語ることです。

見え方 実際に起きたこと
「CVRが2%から4%に倍増した」 訪問100に対し、2件が4件になっただけ
「広告のCVRが0%になった」 今月の広告経由の訪問が12しかなかった
「このページのCVRが高い」 そのページからの問い合わせが2件

1件増えただけで率が倍になる分母では、率は判断に使えません。

当社の決めごととして、分母が30に満たないときは率を判断に使わず、件数の実数だけを見ます。 30という数字に理論的な根拠はありません。「これ未満だと、1件の増減で率が大きく動きすぎて、施策の良し悪しと区別できない」という実務上の線引きです。社内で別の数字に決めても構いません。大事なのは、下限を先に決めて、毎月同じ基準で判断することです。

分母が下限未満のとき やること
率を出さない 件数だけを書く(「今月は3件」)
期間をまとめる 3か月分を合算して率を見る
それでも足りない 判断しないと書く。無理に結論を出さない

「判断しない」と書くことは、サボりではありません。 根拠の無い判断を記録に残すほうが、後で害になります。

たとえば、ある月、特定の広告のCVRが他より明らかに高く出たとします。月次の会議でその数字が示され、予算をそこに寄せる判断が出る。分母を確認すると、その広告経由の訪問は18、問い合わせは1件。翌月、予算を寄せた結果はゼロ件で、さらに翌月も低いまま、何か月かかけて元の配分に戻す——分母を見ないと、こういうことが起きます。

このとき失うのは、広告費だけではありません。「数字を見て決めたのに外れた」という経験が社内に残り、次から数字が信用されなくなります。数字で判断する習慣は、当たった回数ではなく、明らかに無理のある判断をしなかった回数で育ちます。分母の下限を決めるというのは、当てるための仕組みではなく、この信用を守るための仕組みです。

下限をいくつにするかで迷ったら、社内で議論せずに30で始めてください。根拠が無いのは承知のうえで、数字が決まっていることのほうが、最適な数字であることより重要だからです。半年運用してみて、下限未満の月が多すぎて何も判断できない、という状態になったら下げてください。そのときには、自社の件数の実感が手元にあります。

目標値は、月初に決めておく

月が終わってから「良かった・悪かった」を決めると、どんな数字でも説明が付きます。 先に決めておくのが唯一の防ぎ方です。

目標は、1章で書いた逆算をそのまま使います。新しい計算は要りません。

段 使う数字 例
1 年間の必要な粗利 会計から
2 必要な受注件数 1件あたりの平均粗利で割る
3 必要な問い合わせ件数 受注率で割る
4 月の目標(出口の件数) 3を12で割る(季節性があるなら月ごとに配分する)
決めごと 理由
目標は出口の件数1つ 複数あると、達成・未達の解釈が割れる(1章)
期の途中で変えない 変えた瞬間、前月との比較が成り立たなくなる
変えたら日付を記録する 段差の理由として残す(8章)

目標が無い画面は、増減は分かっても良し悪しが分かりません。 目標線を1本引くだけで、報告の1行が書けるようになります。

比較の相手を前月にするか前年同月にするかは、多くの会社が毎月ぶれる点です。決め方は単純で、季節によって件数が動く商売なら前年同月、動かないなら前月にしてください。判断に迷うくらい季節性が読めない場合は、前年同月を選びます。前年同月のほうが、外れたときの被害が小さいからです。前月比は、季節の山と谷をそのまま成果として読んでしまうので、繁忙期に入っただけで「施策が効いた」という結論が出ます。

前年同月を選ぶには、前年の数字が信用できる必要があります。計測を始めて1年経っていない、あるいは去年のどこかで計測が止まっていた——という場合は、前年同月では比べられません。そのときは前月比を使い、季節の影響を1行添えて報告してください。「3月は例年多い月であり、増加の一部は季節によるものです」と書いておけば、読み手は割り引いて読めます。書かずに増加だけを示すより、正直で、後から訂正が要りません。

件数が減ったとき、見る順番

原因を探す順番を決めておくと、毎回同じ時間で終わります。 上から順に、否定できたら次へ進みます。

順 確かめること 否定できたら
1 計測が壊れていないか 1件送って6か所に現れる(8章)→ 次へ
2 どの経路が減ったか 経路別の内訳(9章)→ 減った経路に絞る
3 訪問が減ったのか、訪問はあるのに送信が減ったのか 入口の数と出口の数を並べる
4 その経路で何をしたか 変更履歴・広告の停止・順位の変動

1を飛ばさないでください。 「施策が効かなくなった」と判断して半年を使い、実は計測が止まっていた、という事故が最も高くつきます。

3で「訪問はあるのに送信が減った」と分かった場合、直す場所はサイトの側です。どこをどう直すかはサイト制作の教科書11章が扱います。

段差は、変更履歴と突き合わせる

グラフに段差があったら、まず施策を疑うのではなく、計測を疑ってください。

段差の形 先に疑うもの 確かめ方
ある月からゼロが続く 計測が止まった 変更履歴(8章)・実送信
ある月から倍増 タグの二重、成果の定義の変更 1件送って1件か
ある月から緩やかに減少 施策・季節・競合 ここで初めて中身の話
特定の月だけ突出 キャンペーン、報道、テスト送信の混入 その月に何をしたか

この表は、上から順に当てはめてください。3行目まで来て初めて、施策や市場の話ができます。順番を逆にして、最初に「競合が広告を強めたのでは」「検索の順位が落ちたのでは」と考え始めると、そこから抜けられなくなります。仮説は無限に立つうえ、どれも反証しにくいからです。計測側の原因は数が限られていて、実送信と変更履歴で1時間以内に潰せます。潰せるほうを先に潰す、というだけの順番です。

段差の月に何をしたか答えられない場合、その段差は読めません。 変更履歴が無いという状態そのものが、点検リストの×です(8章)。

平均で判断しない

平均は、内訳が均質なときにしか使えません。

平均だけを見ると 実際
「今月の問い合わせは20件。先月と同じ」 検索が半減し、広告が倍増していた
「CVRは3%で安定」 指名検索が5%、それ以外が0.5%
「1件あたりの費用が下がった」 価値の低い成果(資料請求)が増えただけ(4章)

必ず、経路別(9章の4分類)と、成果の階層別(4章の主要・副次)に割って見てください。 割るのは2つまでで十分です。3つ以上で割ると、どの区画も分母が下限を下回ります。

台帳と照合してから報告する

報告の前に、必ず台帳と突き合わせます(6章・7章)。順番はこうです。

# やること
1 画面の数字を出す(9章)
2 台帳の件数と並べ、差の理由を1行書く
3 差が許容範囲を超えていたら、報告より先に原因を調べる
4 台帳を正とし、画面の数字は併記する

照合前の数字を報告に使うと、あとで「その数字は違った」と訂正することになります。 一度訂正すると、以降すべての数字が疑われます。

判断を1行にする

読んだ結果は、次の3つのどれかに落とします。

判断 書き方の例 次にやること
続ける 「検索経由の問い合わせが前年同月比で増加。現状の更新頻度を維持する」 何もしない(触らないことを決める)
やめる 「◯◯媒体は3か月連続で0件。11月末で停止する」 停止日を決める
変える 「広告経由の件数が半減。着地ページを◯◯に変更して1か月見る」 変更日と、次に見る日を決める

「様子を見る」は判断ではありません。 様子を見るなら、いつまで・何を見て・どうなったら変えるかを書いてください。それを書けば「続ける」になります。

1か月に変える施策は1つまで。 同時に2つ変えると、翌月の数字がどちらの結果か分かりません。

報告テンプレート(毎月同じ形)

形を固定すると、作る時間も読む時間も短くなります。

【2026年9月の計測報告】
1. 出口の件数:◯件(前年同月◯件/±◯%)
2. 経路別:検索◯/広告◯/SNS・LINE◯/直接・その他◯
3. 台帳との差:◯件(理由:◯◯)
4. 先月決めたことの結果:◯◯(実施日:◯/◯)
5. 今月の判断:続ける・やめる・変える のどれか+1行
6. 次に見る日:◯月◯日

4行目が最も省かれ、最も重要な行です。 先月決めたことの結果を書く欄が無いと、毎月「今月はこうでした」を繰り返すだけの報告になります。

5行目と6行目を書いたら、議事の1行として残してください(12章の変更履歴と同じ場所で構いません)。

読まなくてよい数字

数字 理由
直帰率・滞在時間 増えた理由が2通り以上ある(1章)
日次のグラフの上下 偶然の変動が大半
分母が下限未満の率 1件で倍になる
媒体の件数の合計 媒体をまたぐ二重計上が入る(7章)
前月比だけの増減 季節性を分離できない

読む数字を減らすほど、判断は速くなります。 毎月15分で終わらない報告は、いずれ作られなくなります。

よくある間違いを5つ

「今週は問い合わせが少ないので、広告を止めた」 ——週単位では、偶然の変動と施策の効果を区別できません。直し方:判断は月単位に固定する。週次は0件の監視だけに使う。

「CVRが倍になったので、施策が当たったと報告した」 ——分母が小さいと、1件で倍になります。直し方:分母の下限を決める(当社は30)。下限未満なら件数の実数だけを書く。

「数字に段差があったので、施策のせいだと考えた」 ——段差の大半は計測側の変更です。直し方:変更履歴と突き合わせてから、中身の話をする。履歴が無ければ、まず履歴を作る(8章)。

「レポートに数字は並んでいるが、結論が書かれていない」 ——読んでも何も決まらない報告です。直し方:最後に「続ける・やめる・変える」を1行書く。書けないなら「分母不足のため判断しない」と書く。

「毎月、先月決めたことを覚えていない」 ——決めたことが記録されていません。直し方:報告テンプレートの4行目(先月決めたことの結果)を必須の欄にする。

この章の出口

手元に残っているべきものは3つです。

  1. 判断の決めごと(単位=月/分母の下限/比較の相手)
  2. 今月の判断1行(続ける・やめる・変える+次に見る日)
  3. 報告テンプレート(6行の型。先月決めたことの結果の欄を含む)

読んで決められる状態になりました。次は、外に何を送っているかを把握する番です。計測は、自社のデータを外部のサービスに渡す行為でもあります。ここは判断が要る領域なので、この本は判断を書かず、確認する場所だけを書きます。

次の章へ:11章 GA4の同意管理・プライバシー・保存期間

この章の点検リストを開く(自社の状態を○×で判定する用)

点検リスト:数字の読み方(10項目)

# チェック項目 合格ライン
1 判断の単位が月になっている 日次・週次で施策の可否を決めていない
2 率を語る分母の下限を決めている 下限の数値と、「下限未満なら判断しない」が書いてある
3 目標値を先に決めている 月初(または期初)に決めた数字がある
4 比較の相手を決めている 前月/前年同月のどちらかに固定されている
5 段差は変更履歴と突き合わせている 段差のある月に何をしたかを確認した
6 平均だけで判断していない 経路別・成果の階層別の内訳を見ている
7 台帳と照合してから報告している 照合済みの数字で報告している
8 判断を1行で書いている 続ける・やめる・変えるのどれかが書いてある
9 決めたことを記録している 議事または履歴に1行残っている
10 報告のテンプレートがある 毎月同じ形で出せる(6行の型がある)

合格ライン=10項目中8以上。ただし 2・5・7 のどれかが×なら、点数に関係なく先に直します。

  • 2が×:少ない件数の率で判断し続けることになります。偶然に合わせて施策を変える状態です
  • 5が×:計測の事故を、施策の成果として読みます。最も高くつく読み間違いです
  • 7が×:訂正が発生します。一度訂正すると、以降すべての数字が疑われます

2は、今日その場で決められます。 数字を1つ決めて書くだけです。

読んでも決めきれないところは、一緒に決めます

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更新日 2018年10月20日