CHAPTER 09
Looker Studioのダッシュボードに何を置くか
この章で分かること
- 画面に載せる数字を5つに絞る決め方と、一番上に何を置くか
- 経路の分け方・比較の取り方・期間の既定値という、画面の3つの決めごと
- 画面に必ず書いておく2行(数字の出どころと作成日)と、作ってはいけない画面
この章の目次(12)
- 1何のツールで作るか
- 2載せる数字は5つまで
- 3経路の分け方を先に決める
- 4台帳の件数を、同じ画面に載せる
- 53つの決めごと(比較・期間・共有)
- 6画面に必ず書いておく2行
- 7作ってはいけない画面
- 8詳しく見たいときは、別のページに置く
- 9誰が開くか
- 10作る順番(半日で終わる)
- 11よくある間違いを5つ
- 12この章の出口
毎月の確認が続かない理由は、やる気ではありません。数字を毎回探しに行っているからです。 探す作業が10分あると、忙しい月に飛ばされ、2か月飛ばすと見なくなります。開いたら終わっている画面を1枚作ると、これが解決します。 この章は、何を載せるかを決め、載せないものを決め、5つの数字だけの画面を作るための章です。
この章で分かること
- 画面に載せる数字を5つに絞る決め方と、一番上に何を置くか
- 経路の分け方・比較の取り方・期間の既定値という、画面の3つの決めごと
- 画面に必ず書いておく2行(数字の出どころと作成日)と、作ってはいけない画面
画面の作り方(どのボタンを押すか)は書きません。 ツールの画面は変わります。書くのは、載せるものの決め方です。ここさえ決まっていれば、どのツールでも同じ画面が作れます。
何のツールで作るか
画面を作る目的は、数字を美しく見せることではありません。毎月の確認を、意志の力に頼らずに続けることです。人は、面倒な作業を意志で続けられません。解析ツールを開き、期間を設定し、指標を選び、別の画面で広告費を確認し、台帳を開いて件数を数える——この一連が10分あると、忙しい月には飛ばされます。1回飛ばすと、翌月は2か月分を見ることになり、さらに面倒になります。2か月飛ばした時点で、見る習慣は消えます。
だから、この章で作るものは「レポート」ではなく「開いたら終わっている状態」です。開く、読む、判断を1行書く。この3つだけが毎月の作業になるように、前もって画面の側に手間を寄せておきます。作るのは半日ですが、効くのは以降の何年かです。
この目的から、画面の良し悪しの基準も決まります。載っている情報量ではなく、開いてから判断が出るまでの時間です。項目が多い画面は、その時間を延ばします。丁寧に作ったつもりの画面が読まれなくなるのは、作り手が情報量を基準にしているからです。
無料で使える代表的な道具が、Google の Looker Studio です。GA4のデータをそのまま読み込めて、共有もURLで済みます。当社が受託で作る画面も、原則これです。
| 作り方 | 向く場合 | 注意 |
|---|---|---|
| Looker Studio | ほとんどの中小企業 | 無料で使える範囲が広い。GA4と直接つながる |
| 表計算ソフトに手で貼る | 作る余力が無い場合の暫定 | 続きません。 貼り忘れた月に穴が開く |
| 解析ツールの中に画面を作る | 見る人が計測担当だけの場合 | 権限が無い人に見せにくい |
| 委託先のレポートを受け取る | 自社に作る人がいない場合 | 受け取って読む人を自社に1人置く(1章) |
この表は、4つから選ぶための表ではありません。1行目を選べない理由があるかどうかを確かめる表です。作る余力がまったく無いなら2行目、見る人が計測担当1人だけなら3行目、社内に作れる人がいないなら4行目——という順で、消去法に使ってください。最初から比較検討すると、それぞれの長所が並んで決められなくなります。
自分で作るか、頼むかで迷ったら、一度は自分で作ってみてください。半日かかりますが、作る過程で「この数字は何を数えているのか」を全部自分で決めることになります。その決定こそが、後で数字を読むときの土台になります。頼んで出てきた画面は、きれいでも、数字の意味が自分のものになりません。時間がどうしても取れない場合だけ、頼む側に倒してください。
手で貼る方式は、暫定としてだけ使ってください。 手作業が入る画面は、忙しい月に必ず止まります。
載せる数字は5つまで
6つ以上並べると、どれが大事なのか分からなくなり、結局どれも見られません。
| 順 | 載せるもの | なぜ |
|---|---|---|
| 1 | 出口の件数(1章で決めた出口) | これが動いたかどうかだけで、最初の判断はできる |
| 2 | 経路別の内訳(検索・広告・SNS・直接) | 件数が動いた理由の当たりが付く |
| 3 | 主な入口ページの件数 | どのページから来ているか |
| 4 | 副次の成果(資料請求・電話リンクのクリック等) | 主要と混ぜず、別枠で置く |
| 5 | 広告費(広告を出している場合) | 件数と並べて初めて、費用の判断ができる |
この表は、上から順に置く場所が決まっていると読んでください。順位そのものが設計です。1を一番上に置き、2から5を下に並べる。この配置を決めてしまえば、あとは自社の出口の名前を当てはめるだけで画面ができます。迷う余地を残さないために順位を付けています。
5つに満たなくても構いません。広告を出していなければ5は不要ですし、副次の成果が無ければ4も空きます。3つの画面は、5つの画面より優れています。逆に、6つ目を足したくなったときは、どれかを2ページ目に移してから足してください。足すだけなら誰でもできるので、入れ替えの手間を挟むことが、歯止めになります。
1番目が一番上、一番大きい文字です。 開いて最初に目に入るものが、毎月の判断の主語になります。ここにセッション数やPVを置くと、判断の主語がそれになります。
訪問数・PV・滞在時間・直帰率は、この5つに入れません。 見たいときに別のページを作って置きます(下記)。
経路の分け方を先に決める
経路の内訳は、分け方を決めておかないと毎月ラベルが変わります。当社は4つに固定しています。
| 経路 | 中身 |
|---|---|
| 検索 | 検索結果からの流入(広告を除く) |
| 広告 | 広告の識別子が付いている流入(7章) |
| SNS・LINE | SNSアプリ・LINEからの流入 |
| 直接・その他 | 直接入力・ブックマーク・判別できないもの |
4つに固定する理由は、毎月同じ形で並べるためです。 細かく分けるほど、月によって内訳の行数が変わり、比較できなくなります。細かい内訳が必要になったら、その月だけ別のページで見ます。
「直接・その他」が不自然に多い場合は、画面ではなく計測の問題です(3章・7章)。
台帳の件数を、同じ画面に載せる
この本の立場では、報告の正は台帳です(7章)。ところが台帳は解析ツールの外にあるので、放っておくと別の資料になります。別々の資料になった時点で、突き合わせは行われなくなります。
| 載せ方 | 内容 | 手間 |
|---|---|---|
| 表計算ソフトの1シートをつなぐ | 月・経路・件数の3列だけのシートを作り、画面から読み込む | 月1回、行を1つ足すだけ |
| 台帳のシステムから書き出す | CRM・kintone 等から月次で出す | 仕組みによる |
| 画面に載せず、隣に並べる | 月次報告のときだけ並べる | 続かないことが多い |
1行目を勧めます。 「月・経路・件数」の3列だけなら、入力は1分で終わります。この1シートがあると、6章・7章の突き合わせが画面の上で終わります。
3つの決めごと(比較・期間・共有)
| 決めごと | 内容 | 理由 |
|---|---|---|
| 比較の相手 | 前月と前年同月のどちらかに固定する | 毎月違う相手と比べると、良し悪しが操作できてしまう |
| 期間の既定値 | 開いたときの期間を固定する(例:先月1か月) | 人によって見ている期間が違うと、会議で話が噛み合わない |
| 共有先 | 開ける人の一覧を作る | 「見られると思っていた」を防ぐ。退任時に外す |
季節性のある商売では、前年同月を既定にしてください。 前月と比べると、毎年同じ月に「悪化した」という結論が出ます。
画面に必ず書いておく2行
作った本人以外が開いたときに、その数字が何なのかを説明するものが要ります。 画面の隅に、次の2行を置いてください。
| 書くもの | 例 |
|---|---|
| 数字の出どころ | 「問い合わせ件数=form_submit(form_id=contact)。定義は1件の定義書の1行目」(4章) |
| 作成日と最終更新日 | 「2026-09-20 作成/2026-09-20 更新」 |
この2行が無い画面は、担当が替わった時点で意味を失います。 「この数字は何を数えているのか」に誰も答えられなくなり、結局、別の画面が新しく作られます。
作ってはいけない画面
| やってはいけないこと | 何が起きるか |
|---|---|
| 1枚に20個の数字を並べる | どれも見られない。作った人だけが読める画面になる |
| 手作業の貼り付けを含める | 忙しい月に止まる。止まったことに誰も気づかない |
| 目標線の無いグラフだけを並べる | 増減は分かるが、良いのか悪いのか判断できない(10章) |
| 委託先しか開けない場所に置く | 契約が終わった日に見られなくなる |
| 毎月レイアウトを変える | 前月と同じ場所を見られない。比較の手間が毎回かかる |
「たくさん載っているレポート」は、たいてい読まれていません。 項目数は、丁寧さの指標ではありません。
よくあるのは、代理店から毎月30ページほどのレポートを受け取っている形です。数字は正確で、グラフも整っている。ところが社内の打ち合わせで実際に開かれるのは、最初の1ページだけ。残りの29ページは、誰も開かないまま毎月たまっていきます。作るほうも読むほうも時間を使っているのに、判断は1ページ目から出ているわけです。
このときにやるべきなのは、レポートを厚くすることではなく、1ページ目に何が載っているべきかを決め直すことです。出口の件数がそこに無いことが多いからです。1ページ目に出口の件数を置き、残りを2ページ目以降に移せば、毎月の打ち合わせは短く済みます。数字は1つも増えません。置き場所を変えるだけです。
5つという上限に理論的な根拠はありません。当社の決めごとです。理由は、それ以上並べると、どれから読むかを毎回考えることになり、その迷いの分だけ開くのが億劫になるからです。数を先に決めておけば、載せるものを選ぶ議論が起きます。その議論こそが、自社にとって何が大事かを決める作業になります。
詳しく見たいときは、別のページに置く
5つに絞ると、「もっと見たい」が必ず出ます。同じ画面に足さず、2ページ目に置いてください。
| ページ | 中身 | 開く頻度 |
|---|---|---|
| 1ページ目(本体) | 5つの数字・経路別・比較 | 毎月 |
| 2ページ目(詳細) | ページ別・端末別・検索語句・時系列 | 件数が動いた月だけ |
1ページ目は判断のため、2ページ目は原因を探すためです。 目的が違うので、同じページに置きません。
数字を見てサイトのどこを直すかは、サイト制作の教科書11章が扱います。この本は、判断できる形で数字を出すところまでです。
誰が開くか
画面を作る前に、開く人を決めてください。 開く人が決まっていない画面は、作った翌月から誰も開きません。
| 決めること | 合格の状態 |
|---|---|
| 開く人 | 氏名。役職名や「営業部」では不可 |
| 頻度 | 月1回以上。曜日か日付まで決める |
| 所要 | 15分で終わる構成になっている |
| 共有の形 | そのまま月次報告に使える(印刷・PDFで出せる) |
当社では、レポート画面の作成を10万円からで承っています(アクセス解析・計測設計。税別)。ただし、作るのは1章の設計シートと4章の定義書が埋まってからです。 何を数えているか決まっていない状態で画面だけ作ると、きれいな画面に意味の無い数字が並びます。
作る順番(半日で終わる)
| 順 | やること | 時間 |
|---|---|---|
| 1 | 載せる5つを紙に書く(1章の設計シートと4章の定義書から写す) | 15分 |
| 2 | データをつなぐ(解析ツール・広告・台帳のシート) | 30分 |
| 3 | 1ページ目に5つを置き、出口の件数を一番上・最大にする | 60分 |
| 4 | 比較列・期間の既定値・経路の4分類を設定する | 30分 |
| 5 | 出どころの2行を書き、共有先を決めて渡す | 15分 |
| 6 | 開く人に、実際に開いてもらう | 15分 |
6を省かないでください。 渡したつもりで権限が無い、スマホで開くと崩れる、といったことがその場で分かります。作った人ではなく、毎月開く人が開けて初めて完成です。
よくある間違いを5つ
「代理店のレポートをそのまま使っている」 ——項目は、その会社が作りやすい項目です。自社の出口と一致しているとは限りません。直し方:1章の設計シートに無い項目には「参考」と明記してもらう。自社の出口の件数を一番上に置いてもらう。
「20個の数字が並んだ立派な画面を作った」 ——どれも見られません。直し方:5つに削る。削った分は2ページ目に移す。消すのではなく移すと、合意が取りやすい。
「毎月、表計算ソフトに手で貼っている」 ——忙しい月に止まります。直し方:データを直接つなぐ。つなげない数字(台帳・電話)だけを手入力にし、入力する列を最小にする。
「数字の意味を聞かれて、誰も答えられなかった」 ——出どころが画面に書かれていません。直し方:各数字に、定義書のどの行かを書く。書けない数字は、そもそも載せない。
「前月比と前年同月比を、都合のよいほうで毎月選んでいた」 ——比較の相手を選べる状態では、どんな月も良く見せられます。直し方:比較の相手を1つに固定し、画面に明記する。変えるなら年1回、理由を記録する。
この章の出口
手元に残っているべきものは3つです。
- 5つの数字が載った画面(出口の件数が一番上)
- 共有先の一覧(氏名・頻度)
- 画面上の2行(数字の出どころ/作成日・更新日)
見る場所ができました。次は、読み方です。同じ画面を見ても、判断に使える人と使えない人がいます。差は才能ではなく、判断の単位と、率を語ってよい分母の下限を決めているかです。
次の章へ:10章 アクセス解析の数字の読み方
この章の点検リストを開く(自社の状態を○×で判定する用)
点検リスト:見る画面(10項目)
| # | チェック項目 | 合格ライン |
|---|---|---|
| 1 | 画面に載る数字が5つ以内 | 6つ以上並んでいない |
| 2 | 出口の件数が一番上にある | 開いて最初に目に入る位置にある |
| 3 | 経路別の内訳が出る | 検索・広告・SNS・直接の4つに分かれている |
| 4 | 前月・前年同月と比べられる | 比較列があり、どちらと比べるかが固定されている |
| 5 | 期間の既定値が決まっている | 開いたときの期間が固定されている |
| 6 | 開ける人が決まっている | 共有先の一覧がある(氏名) |
| 7 | 数字の出どころが書いてある | 各数字に、定義書のどの行かが書いてある |
| 8 | 更新が自動 | 手作業の貼り付けが無い(台帳の列を除く) |
| 9 | 共有・印刷の形が決まっている | 月次報告にそのまま使える |
| 10 | 作成日と定義書へのリンクがある | 画面上に書いてある |
合格ライン=10項目中8以上。ただし 1・2・7 のどれかが×なら、点数に関係なく先に直します。
- 1が×:見られない画面になります。項目を減らすのは、今日その場でできます
- 2が×:判断の主語が、出口以外の数字になります
- 7が×:担当が替わった瞬間に、数字の意味が失われます。画面が作り直され続ける原因です
更新日 2018年10月20日
