レインズとは
レインズ(REINS: Real Estate Information Network System)は、国土交通大臣から指定を受けた地域ごとの不動産流通機構が運営するネットワークシステムです。宅建業者が利用する、不動産取引の情報基盤です。
レインズには、売出中の物件情報だけでなく、過去の成約事例も蓄積されています。このデータを同じ条件で集計し続けると、市場の動きを数字で追え、根拠を示した営業提案ができるようになります。
ただし、データの使い方には利用規程があります。 この記事は分析の手順を書くもので、規程の解釈は書きません。
使う前に確認すること
| 論点 | 確認する場所 | 聞くこと |
|---|---|---|
| データをお客様に示してよい範囲・形 | 所属する指定流通機構の利用規程、所属団体 | 成約事例を資料に載せてよいか、どの形なら可か |
| データの取得・保存の方法 | 同上(機構の利用案内) | どの形式で取り出せ、社内でどう保管してよいか |
| 社内でのアクセス | 社内規程、機構の利用規程 | 誰のIDで使うか、退職者のIDをどう止めるか |
| 登録・成約報告の義務 | 国土交通省の公開資料、所属団体 | 自社の登録・報告の期限と手順 |
| お客様向けの価格の説明 | 不動産公正取引協議会連合会の資料、所属団体 | 相場の示し方で気をつけることは何か |
一般向けに公開されている成約価格の情報(国土交通省の不動産情報ライブラリなど)もあります。お客様と一緒に見る資料は公開情報、社内の判断材料はレインズと分けると、規程を確認する前でも動けます。
レインズで取得できるデータ
売出中の物件情報
- 物件所在地、価格、面積、間取り
- 登録日、元付業者
- 物件の特徴(設備、リフォーム状況等)
成約事例データ
- 成約価格、成約時期
- 売出価格との差
- 売出期間(登録から成約までの日数)
- 物件の属性情報
どの項目がどの粒度で見られるかは、機構の案内で確認してください。レインズに登録・報告された取引だけが集まる点は、分析の前提として押さえておきます。
市場分析の具体的な方法
分析1:エリア別の相場把握
特定エリアの成約事例を集計し、相場を把握します。
| 分析項目 | 具体的な方法 |
|---|---|
| 単価の中央値 | エリア・物件種別ごとに中央値を出す(平均は1件の高額物件に引っ張られる) |
| 価格帯の分布 | 価格帯別の成約件数を棒グラフにする |
| 築年数別の単価 | 築年数を横軸、単価を縦軸に点を打つ |
| 階数別の単価 | マンションで、階数によって差があるかを自社のエリアで確かめる |
件数が少ない区分は数字を出さないと決めておきます。成約が数件しかない区分の中央値は、1件で大きく動きます。何件未満なら出さないかは、社内で1つ決めて表の注記に書いてください。
分析2:売出期間の分析
物件がレインズに登録されてから成約するまでの日数を集計します。
- エリア・物件種別ごとの中央値
- 価格帯別の日数(価格帯で差があるかを自社のエリアで確かめる)
- 月別の日数(時期による差があるかを、1年以上記録してから見る)
この分析があると、「このエリアのマンションは、直近の成約事例では登録から成約まで○ヶ月ほどでした」と、期間と件数を添えて説明できます。
分析3:値引き率の分析
売出価格と成約価格の差を集計します。
値引き率 = (売出価格 - 成約価格) ÷ 売出価格 × 100
値引き率はエリア・物件種別・時期で違うので、一般的な相場は書きません。自社の主力エリアで中央値を月ごとに記録し、売出期間との関係(長く売り出した物件ほど差が大きいか)を自社のデータで確かめてください。
分析4:在庫の推移
エリア内の売出中物件数を、毎月同じ日に記録します。
- 在庫が増えている → 買い手が選べる状態に近づいている
- 在庫が減っている → 売り手が選べる状態に近づいている
在庫の数だけでは価格の方向は決まりません。成約件数・売出期間と並べて読むのが前提です。
業態で何が変わるか
| 業態 | 主に見る数字 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 売買仲介 | 同じ建物・近隣の成約事例、売出期間 | 査定・売出価格の相談、価格変更の提案 |
| 賃貸仲介・賃貸管理 | 賃貸の成約事例(取り扱いの範囲は機構で確認) | 募集条件の見直し、オーナーへの報告 |
| 買取再販 | 仕入れ候補の近隣の成約単価、売出期間 | 仕入れ価格の上限と、再販までの期間の見込み |
買取再販は、仕入れの判断に使う数字と、販売時に説明する数字を分けて持ちます。仕入れの検討資料には社内の見立て(リフォーム後の想定単価)が混ざるからです。
当社も、空き家を再生した一棟貸しの宿(AKIYATO)で、予約データから繁閑を分析し価格を決める基盤を作っています。数字で値付けをするときに効くのは、抽出の条件を固定して、毎月同じ形で取り続けることです。
営業提案への活かし方
売却提案時
売主には、次のような形で数字を示せます(示してよい範囲は上の確認先で確かめてください)。
- 「同じマンションの直近の成約事例は○○万円〜○○万円の幅でした」
- 「このエリアの登録から成約までの期間は、直近では○ヶ月ほどでした」
- 「直近3ヶ月の成約件数は、前の3ヶ月より増えています(件数を添えて)」
「この価格なら○ヶ月で売れます」とは言い切らないでください。過去の事例は将来を約束しません。「過去の事例ではこうでした」の形で伝えます。
購入提案時
- 「このエリアの直近の成約単価の中央値は○○万円でした。この物件の単価はその上/下です」
- 「同じマンションの過去の成約価格は、売出価格から○%ほど下で決まっていました」
価格の割安・割高を断定する表現や、決断を急がせる言い方は避けます。表示や説明で気をつけることは、不動産公正取引協議会連合会の資料と所属団体で確認してください。
データ分析を効率化するコツ
Excelでの集計テクニック
- ピボットテーブルでエリア別・物件種別の集計
- 中央値は MEDIAN、条件つきの件数は COUNTIFS
- グラフ機能で月ごとの推移を見る
- 条件付き書式で外れ値に色を付ける(外れ値は消さず、理由を確かめる)
定期的なレポート作成
月次でエリアの市場レポートを作り、社内で共有します。
レポートに含める項目:
- 新規登録物件数の推移
- 成約件数と成約単価(中央値)の推移
- 在庫物件数の推移
- 抽出条件と作成日(毎月同じ条件で取ったことを示す)
1枚の画面に数字を絞る考え方は教科書 計測設計 9章が参考になります。
注意点
- データの取扱い: 利用規程で定められた範囲で使う。確認先は上の表
- データの限界: レインズに登録・報告されない取引は含まれない
- 個別事情: 成約価格には売主・買主の個別事情が反映されている場合がある
- 時期: 市場は変わるので、何ヶ月分のデータで集計したかを必ず書く
失敗例
従業員10名ほどの売買仲介会社で、営業担当がそれぞれ自分の条件でレインズから事例を拾い、査定書に載せていた、という形の失敗です。同じマンションでも担当者によって拾う期間と範囲が違い、売主から「前に聞いた担当者と数字が違う」と指摘されました。
原因は、抽出条件を会社として決めていなかったことです。エリア・物件種別・期間・件数の下限を1枚に書き、全員が同じ条件で集計していれば、数字の食い違いは起きませんでした。
まとめ
- 使う前に、データを示してよい範囲を指定流通機構の利用規程と所属団体で確認する
- 単価・売出期間・値引き率は中央値で。件数が少ない区分は数字を出さない
- 値引き率や売出期間の「相場」は一般論ではなく、自社のエリアで記録して出す
- 業態で見る数字が違う。買取再販は仕入れ用と販売説明用を分ける
- 「この価格なら売れます」と言い切らない。過去の事例として伝える
- 抽出条件を会社で1つに決め、毎月同じ条件で取る
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よくある質問
レインズの成約事例をお客様に見せてもいいですか
この記事では判断を書きません。レインズの情報をどの範囲・どの形でお客様に示してよいかは、所属する地域の指定流通機構の利用規程と、所属団体の案内で確認してください。確認するまでは、お客様と一緒に見る資料には国土交通省の不動産情報ライブラリなどの公開情報を使い、レインズは社内の判断材料にとどめます。
レインズの分析は何から始めればいいですか
自社の主力エリア・主力の物件種別を1つに絞り、直近の成約事例を同じ条件で集計するところからです。見る数字は、単価の中央値・登録から成約までの日数・売出価格と成約価格の差の3つで足ります。条件を毎回変えると前月と比べられないので、抽出条件を文書にして残します。
値引き率の相場はどれくらいですか
エリア・物件種別・時期で違うので、一般的な数字は出せません。自社の主力エリアの成約事例から「(売出価格−成約価格)÷売出価格」を計算し、中央値を月ごとに記録してください。件数が少ないエリアでは1件の影響が大きいので、件数も一緒に書いておきます。


