株式会社COTSUBU
AI活用

AIで採用業務を効率化|求人票から面接まで

宇田川 将也|8分
AI採用人事求人票業務効率化

採用でAIを使うとき、最初に決めるのは道具ではありません。どこまでを下書きにして、どこからを人が決めるかです。

採用の仕事は、文章を作る作業(求人票・質問・連絡文)と、人を評価する判断(書類選考・面接の合否・条件の提示)が混ざっています。前者はAIがよく効き、後者は任せてはいけません。この2つを分けずに「採用をAIで効率化」と始めると、効率化したつもりの場所で、説明できない判断が生まれます。

この記事では、採用の流れを6つの作業に分け、それぞれでAIに渡すもの・渡さないもの・人が確かめる場所を具体的に書きます。

採用のうち、どの作業から手を付けるかは会社によって違います。年に数回しか求人を出さない会社なら、求人票より先に、毎週発生している連絡文や面接メモの整理から始めたほうが効果を測れます。 → 最初の1つの選び方は教科書 2章 生成AIの業務活用|どの作業から始めるか

先に線を引く:AIに任せる作業と、任せない判断

採用の作業 AIに任せてよい範囲 人が決めること
求人票 箇条書きの条件から文章の下書きを作る 条件が実態と合っているか。出してよい表現か
書類の読み込み 人が決めた評価項目に沿って、該当する記述を抜き出す 合否。抜き出しに漏れがないか
面接質問 評価項目ごとに質問の候補を出す どの質問を使うか。聞いてはいけない質問が混ざっていないか
面接メモの整理 メモを評価項目ごとに並べ直す 評価(点数・ランク)と合否
連絡文 日程調整・お見送り・内定連絡の下書き 送る内容、送ってよいか
内定の条件 使わない 給与・入社日・条件のすべて

線は「AIにできるかどうか」ではなく、応募者に不利益が出る判断かどうかで引いています。書類選考や面接の合否は、AIに評価させればそれらしい理由つきで答えが返ってきます。しかし応募者から理由を聞かれたとき、「AIがそう判定しました」は説明になりません。

AIに点数やランクを付けさせないことも大事です。抜き出しだけなら人が元の書類と照らせますが、点数が付いた時点で、読む人はその点数に引っ張られます。

→ 業務ごとに任せ方を4段階で決める考え方は教科書 1章 生成AIに任せてよい業務の線引きにまとめています。

応募者情報を渡す前にやること

履歴書・職務経歴書は、個人情報のかたまりです。そのまま貼り付けないでください。 評価に使わない情報を削ってから渡します。

項目 扱い
氏名 削る。「応募者A」「No.012」のように番号で呼ぶ
住所・電話番号・メールアドレス 削る
生年月日・年齢・性別・写真 削る。評価に使わない情報は渡さない
前職の社名 業務内容の理解に要る場合だけ残す。要らなければ「IT企業」などに置き換える
職務経歴・スキル・資格 残す。ここが読ませる本体
志望動機・自己PR 残す。ただし本文中の氏名や学校名は伏せる

番号と実名の対応表は、AIに渡すファイルとは別の場所に置きます。入れてよい情報の範囲そのものは会社ごとに決めることなので、ここでは結論だけ書きます。

→ 応募者情報のような個人情報を、どの条件なら入れてよいかは教科書 3章 生成AIの社内ルールで線を引いています。

採用業務でAIを使う手順

1. 求人票の下書き

箇条書きの条件を渡して文章にさせます。「魅力的に」とだけ頼むと、実態にない魅力が書かれます。 書いてよい材料を渡し、それ以外は書かせないのが要点です。

以下の条件で求人票の下書きを作ってください。
・職種/雇用形態/勤務地/勤務時間/給与の範囲(ここに書いた数字だけを使う)
・仕事内容(入社後3か月でやること、1年後にやること)
・この会社で働く良い点(下に書いたものだけ):〇〇、〇〇
・合わない人(正直に書く):〇〇
ここに書いていない制度・福利厚生・数字は書かないでください。
年齢・性別・国籍を限定する表現は使わないでください。

「合わない人」を1行入れておくと、応募後のミスマッチが減ります。AIは放っておくと良いことしか書きません。

2. 書類から該当箇所を抜き出す

評価項目を先に人が決め、書類のどこがそれに当たるかを抜き出させます。判定ではなく引用をさせるのが形です。

以下は応募者No.012の職務経歴です(個人を特定する情報は削ってあります)。
次の評価項目ごとに、該当する記述を原文のまま抜き出してください。
1. 顧客対応の経験 2. 表計算ソフトでの集計経験 3. 後輩の指導経験
該当する記述がない項目は「記載なし」と書いてください。
良い・悪いの評価、点数、合否の意見は書かないでください。

最後の行が重要です。これを書かないと、頼んでいない評価まで付けてきます。

3. 面接質問の候補を出す

評価項目ごとに質問の候補を出させ、人が選びます。「過去に実際にやったこと」を聞く質問(いつ・何を・どうしたか)に寄せると、答えを比べやすくなります。

候補の中に、家族構成・出身地・思想や信条などに触れる質問が混ざることがあります。本人の適性や能力と関係のない事柄を聞く質問は、使う前に人が削ってください。 何が聞いてはいけない質問に当たるかは、都道府県労働局やハローワークに確認できます。

4. 面接メモを項目ごとに並べる

面接官の手書きメモや打ち込んだメモを渡し、評価項目ごとに並べ直させます。評価欄は空けたまま出させ、人が埋めます。

以下は面接のメモです。評価項目ごとに、応募者が話した内容を並べ直してください。
メモに書いていないことは補わないでください。
各項目の最後に「評価:」の欄を空欄で置いてください。評価は書かないでください。

面接官が複数いるなら、それぞれのメモを別々に並べさせてから人が比べます。混ぜて1つにまとめさせると、誰がどう見たかが消えます。

5. 連絡文の下書き

日程調整・書類の受領・お見送り・内定の連絡は、下書きをAIに作らせてかまいません。ただしお見送りの理由は書かせないでください。それらしい理由を作ってしまい、事実と違う理由が応募者に届くことがあります。

失敗例と、人が確かめる場所

失敗例 起きること 人が確かめる場所
求人票に書いていない制度が載る 入社後に「聞いていた話と違う」になる 給与・勤務時間・休日・制度を、社内の規程と1行ずつ照らす
抜き出しにない経験を補う 書類にない経歴で評価してしまう 抜き出した文が元の書類に本当にあるか
頼んでいない評価や点数が付く 読む人がその点数に引っ張られる 出力に評価の言葉が混ざっていないか。混ざっていたら指示文を直す
聞いてはいけない質問が混ざる 応募者に不信感を持たれる。問題になることがある 使う前に質問を全部読む
お見送りの理由を作る 事実と違う理由が伝わる 理由は書かない形に固定する
実名のまま貼り付ける 社内ルールで入れない情報が入る 貼る前に氏名・連絡先・生年月日を消したか

当社でのやり方

当社は、記事の執筆や開発、社内業務の自動化を Claude Code で日常的に回しています。採用に限らず、AIには洗い出しをさせ、決めるのは人という形を固定しています。

たとえばこのサイトの記事94本をAIで全件点検したときも、AIに出させたのは「出典のない数字がある」「廃止したサービス名が残っている」といった指摘の一覧までです。直すかどうかは人が1件ずつ決めました。 採用で書類から該当箇所を抜き出させ、合否は人が決めるのと同じ形です。

もう1つは、秘密の情報を置く場所を分けることです。当社の作業フォルダでは、AIが毎回読む指示書(CLAUDE.md)とは別の場所に、接続情報などの実値を分けて置き、指示書には書きません。採用でも、番号と実名の対応表はAIに渡すファイルと別に置く、という同じ考え方で運用できます。

まとめ

  • 採用でAIに任せるのは文章の下書きと、書類からの抜き出しまで
  • 書類選考・面接の合否、評価の点数、内定の条件は人が決める
  • 応募者情報は、氏名・連絡先・生年月日などを削って番号で渡す
  • 指示文に「評価・点数・合否の意見は書かない」「書いていないことは補わない」を入れる
  • 求人票の表現が法令上問題ないかは、労働局・ハローワーク・社労士に確認する

採用の文面の型づくりや、応募者情報の扱いを含めた社内ルールづくりはインハウス化支援(伴走 月10万円〜・税別)でご相談いただけます。

→ AI活用支援 → 教科書 1章 生成AIに任せてよい業務の線引き → 教科書 3章 生成AIの社内ルール → 教科書 2章 生成AIの業務活用|どの作業から始めるか → AIでメール業務を効率化する方法 → AI活用のセキュリティリスクと対策

よくある質問

応募書類をAIに読ませて、書類選考を任せてもいいですか

合否を決めさせるのはやめてください。応募者に不利益が出る判断で、理由を説明できないからです。AIに任せてよいのは、人が決めた評価項目に沿って書類から該当箇所を抜き出す作業までです。抜き出した結果を読んで合否を決めるのは人で、決めた人の名前を記録に残します。

応募者の履歴書をそのままAIに入力してもいいですか

そのままは入れないでください。氏名・連絡先・生年月日・写真など、評価に使わない情報を先に削り、応募者は番号で呼びます。どこまで入れてよいかは社内ルールで決めておく必要があり、契約しているサービスで入力内容がどう扱われるかも公式の記載で確認してください。

AIで作った求人票をそのまま出していいですか

出す前に人が確認してください。給与・勤務時間・勤務地などの条件が実態と合っているか、年齢や性別を限定する表現が入っていないかは必ず目で追います。表現が法令上問題ないかの判断はAIに頼らず、ハローワークや都道府県労働局、社会保険労務士に確認してください。

宇田川 将也/ 代表取締役

2024年に総務省の地域活性化起業人として島根県海士町に着任。役場に住み込んで業務改善に従事し、kintoneで電子決裁や定期健診管理を構築しました。

経歴を見る

この記事について相談する

貴社・貴団体の状況に合わせて、最適な進め方をご提案します。

30分相談を予約する