CHAPTER 11
自治体の外部IT人材と地域活性化起業人
この章で分かること
- 外部人材の種類と、立場・費用・指示のしかたの違い
- 受け入れる前に自庁で決める6つと、選ぶときの5つの問い
- 「入れたこと」ではなく何で成果を判定するか
この章の目次(10)
- 1この章は法的な助言ではありません
- 2種類によって、できることが違う
- 3地域活性化起業人は、型が分かれている
- 4受け入れる前に、自庁で決める6つ
- 5選ぶときの5つの問い
- 6「入れたこと」を成果にしない
- 7最初の3か月の置き方
- 8終わり方を、最初に決める
- 9よくある間違いを5つ
- 10この章の出口
外部人材は、入れること自体が成果ではありません。 1人が入って1人分の仕事をするなら、委託と変わりません。中にいる意味は、職員に移せることだけです。 この章は、種類の違いを押さえ、受け入れる側が先に決める6つと、終わり方を決めるための章です。
この章で分かること
- 外部人材の種類と、立場・費用・指示のしかたの違い
- 受け入れる前に自庁で決める6つと、選ぶときの5つの問い
- 「入れたこと」ではなく何で成果を判定するか
この章は法的な助言ではありません
制度の要件・手続き・支援の額は変わります。この章には、制度の判断を書きません。
書いてあるのは、確認する場所と、確認するときの問いだけです。
| 確認する場所 | 何を見るか |
|---|---|
| 総務省の公表資料(制度の所管) | 制度の要件、型、支援の考え方と額、様式、最新の実績 |
| 自庁の人事・総務担当 | 受け入れの庁内手続き、身分の扱い、席と設備 |
| 自庁の財政担当 | 費用の出どころ、協定の額、年度の扱い(3章) |
| 自庁の情報政策担当 | アカウント・権限・ネットワークの扱い(5章・8章) |
| 都道府県の市町村支援の窓口 | 県の制度、広域の枠組み、他団体の事例 |
探す言葉:「地域活性化起業人 制度概要」「地域活性化起業人 受入可能団体」「CIO補佐官 設置」「デジタル人材 確保 支援」「(自庁名)任期付職員 募集要項」。
種類によって、できることが違う
「外部人材」とまとめて呼ぶと、指示できる範囲と費用の出どころを取り違えます。
そもそも、なぜ外部の人を庁内に入れるのかを、先に言葉にしておいてください。手が足りないから、であれば委託で足ります。委託のほうが手続きも短く、責任の所在もはっきりしています。庁内に席を置いてまで入れる理由は、ひとつしかありません。職員のとなりで作業して、やり方ごと職員に移すためです。これは納品物のやり取りでは起こりません。画面を一緒に見て、「いまどこを触ったんですか」と聞ける距離が要ります。
この前提を共有していないと、受け入れは静かに失敗します。庁内では「優秀な人が来たので任せよう」となり、外から来た人は期待に応えようとして手を動かし、成果物は積み上がります。そして期間が終わると、全部が止まります。残ったのは、誰も直せないアプリと、厚い報告書です。委託でも同じ結果になるのなら、庁内に席を置いた分だけ損をしたことになります。
だから、この章で扱うのは人選の話ではありません。受け入れる側が先に何を決めておくか、という話です。相手の力量より、受け入れの設計のほうが、結果を左右します。
| 種類 | 立場 | 費用の出どころ | 向く使い方 |
|---|---|---|---|
| 地域活性化起業人(総務省の制度) | 民間企業の社員等のまま、協定に基づいて自治体で働く | 自治体が企業に負担金。その負担分を国が支援 | 庁内に入って、職員と一緒に作る |
| CIO補佐官・アドバイザー | 外部の助言者。非常勤の位置づけが多い | 報酬・謝金 | 判断の助言。計画・調達のレビュー |
| 任期付職員・会計年度任用職員 | 自治体の職員として採用 | 人件費 | 長期に庁内で回す。募集と選考が要る |
| 副業・兼業人材 | 本業を持ちながら関わる | 報酬・謝金、または制度の枠組み | 月数日で、特定の分野を見てもらう |
| 業務委託・請負 | 外部の事業者 | 委託料 | 成果物を納めてもらう(7章) |
この表は、上から順に検討する表ではありません。右端の「向く使い方」を先に読んで、自庁がやりたいことに一番近い行を選び、そこから左へ戻って立場と費用を確認する、という読み方をしてください。逆順に読むと、費用の出どころが決まっている行から選ぶことになり、やりたいことと合わない形に落ち着きます。
行をまたいで組み合わせても構いません。判断の助言をもらう相手と、手を動かす相手を別に置くのは、むしろ自然な形です。1人にすべてを求めると、どちらも中途半端になります。
いちばん多い取り違えは、委託と混ぜることです。 業務委託では、日々の作業を職員が指示する形にはなりません。「一緒にやってほしい」なら、委託ではない形を選んでください(7章の契約の形の表)。
もう1つは、助言者に作らせようとすることです。 アドバイザーは判断の助言をする立場で、手を動かして納品する立場ではありません。両方が欲しいなら、2つの形を組み合わせてください。
地域活性化起業人は、型が分かれている
総務省が示している制度には、協定の相手と勤務の要件が違う型があります。 令和6年度から、企業に所属する個人と自治体が協定を結ぶ型(副業型)と、退職したシニア人材の型が加わりました。
| 型 | 協定の相手 | 勤務の要件(総務省の公表資料による) |
|---|---|---|
| 企業派遣型 | 企業と自治体 | 受入自治体の区域内での勤務が月の半分以上 |
| 副業型 | 企業に所属する個人と自治体 | 月4日以上かつ月20時間以上。区域内の滞在は月1日以上 |
| シニア型 | 退職したシニア人材 | 副業型に準じる |
費用は、派遣期間中の給与等に係る経費を原則として自治体が負担し、その自治体負担分を国が支援する形です。企業派遣型で1人あたり年間610万円が上限 等とされています(総務省)。実額は企業と自治体の協定で決まります。
要件も額も改定されます。必ず総務省の最新の公表資料で確認してください。 当社も、自社の説明では年度と出典を添える方針にしています。当社が受け入れをお引き受けするときの型の選び方・協定までの6ステップ・構築の費用は、地域活性化起業人の受け入れ支援に年度と出典を添えて置いてあります。
当社の決めごととして、勧めているのは副業型から始める形です。 常駐は受け入れる側の負担が大きく、庁内の合意にも時間がかかります。月数日から始めて、成果が出てから常駐型に切り替える順番のほうが、庁内で通りやすいからです。
なお、制度が使える団体の一覧と、すでに活用している団体の一覧は、総務省が公表しています。 自庁が対象かどうかも、そこで確認できます。探す言葉:「地域活性化起業人 受入可能団体一覧」「活用自治体及び派遣企業一覧」。
受け入れる前に、自庁で決める6つ
人が来てから決めると、最初の1か月が消えます。
| 決めること | 中身 |
|---|---|
| 1. 所属と上長 | どの課に置くか。誰が日々の相談相手か |
| 2. 席と設備 | 執務の場所、庁内のネットワークに繋がる端末(5章) |
| 3. 業務の範囲 | 何をしてもらうか。業務名で書く(「DX推進」ではなく「◯◯課の受付管理の構築と職員への引き継ぎ」) |
| 4. アカウントと権限 | 庁内のシステム・メール・グループウェアの扱い。個人名義にしない(8章) |
| 5. 決裁と文書の扱い | 起案できるか。文書を扱えるか。扱えないなら誰が代わるか |
| 6. 振り返りの場 | 月1回、四半期に1回、何を見て続けるかを判断する(9章の定例) |
3が最重要です。 「DXを進めてほしい」という範囲で受け入れると、最初の数か月が現状把握と庁内の挨拶回りで終わります。 2章の棚卸しを先にやって、着手順の付いた1枚の表を持った状態で受け入れてください(2章の点検12)。
たとえば、委嘱の期間が1年、範囲が「デジタル化の推進」だったとします。着任した人は真面目に各課を回り、聞き取りをして、課題の整理表を作る。その作業に4か月かかる。整理ができた時点で「では何から手を付けるか」の庁内調整が始まり、合意がつくのが8か月目。実際に何かが動き出す前に、期間が終わる——誰も手を抜いていなくても、こうなります。順番の問題です。
この4か月は、庁内の職員がやれば2週間で済んだ作業でもあります。どの課が何に困っているかは、外から来た人より庁内のほうが知っています。外から来た人にしかできないのは、それを形にする部分です。棚卸しを先に済ませておくというのは、要するに、外の人の時間を外の人にしかできない作業に使う、ということです。
迷ったときは、範囲を狭くする側に倒してください。「◯◯課の受付管理をkintoneにして、職員2人が自分で直せる状態にする」まで絞ると、狭すぎるように見えます。ところが実際にやってみると、この1件に半年かかります。そして1件が回り始めれば、他の課から相談が来ます。広く始めて何も終わらないより、1件を終わらせて次を呼び込むほうが、庁内での信用が早く貯まります。
逆に言うと、その表が無いまま外部に相談すると、相手の得意な範囲に話が寄ります。
選ぶときの5つの問い
相手(企業・個人)を選ぶときに聞くことです。
| # | 問い | 弱い答え |
|---|---|---|
| 1 | 自治体の中で働いた実績があるか | 「自治体向けの製品を売っています」 |
| 2 | 何を、どれだけの期間で作った実績があるか | 「多数の実績があります」 |
| 3 | 職員に移すことを、業務の中に入れられるか | 「研修は別料金です」 |
| 4 | セキュリティと個人情報の手続きに、自分で答えられるか | 「御庁の指示に従います」 |
| 5 | 終わった後、何が残るか | 「報告書を納めます」 |
右の列に「弱い答え」を並べているのは、良い答えを例示すると、そのとおりの答えが返ってくるようになるからです。弱い答えの形だけを覚えておいて、当てはまるかどうかで判断してください。共通しているのは、主語が自分でない点です。「実績があります」「指示に従います」「別料金です」——どれも、自分が何をするかを言っていません。
5つのうち、どれか1つだけを重く見るなら3番です。職員に移すことが業務の範囲に入っているかどうかは、契約の書き方で確認できるので、面談の印象に左右されません。3番が「研修は別料金です」であれば、その相手とは委託の形で付き合うほうが、双方にとって正直です。
4が意外に効きます。 情報政策担当との事前協議で、事業者が自分で説明できないと、職員が代わりに説明することになり、往復が増えます(5章)。当社が事前協議に同席する形を取っているのは、このためです。
同じ質問を、複数の相手に同じ形で聞いてください。 比較できる形で聞くこと自体が、4章の「なぜその相手か」の答えになります。
「入れたこと」を成果にしない
受け入れの成果は、活動報告の分量では測れません。判定は3つで足ります。
| 判定 | 合格の形 |
|---|---|
| 触れる職員が増えたか | 層1(自分で直す)を担当する職員が2人以上になった(7章) |
| 庁内から相談が来るようになったか | 他の課から相談が来ている(2章の軸4) |
| いなくなっても回るか | 引き継ぎの6つが共有の場所にある(9章) |
3つめを、着任の日から意識してください。 島根県海士町では、職員と大人の島留学の若者への研修を行い、以降の改修は庁内で回っています。(そのとき何を作り、押印と要配慮個人情報をどう扱ったかは自治体のkintone活用事例:海士町で作った3つのアプリにあります。)三重県名張市では、着任の前から「担当室が自らアプリを作成し、困った部分を支援側がサポートする」という方針が庁内で決まっており、支援はその方針に沿って組まれています。
どちらも、外部の人がやる範囲を最初から限定しています。 全部をやってくれる人を入れると、いなくなったときに全部が止まります。
最初の3か月の置き方
期間の短い受け入れほど、立ち上がりの遅さが致命的になります。 先に置いておくものがあります。
| 時期 | 外から来た人がやること | 庁内が用意しておくこと |
|---|---|---|
| 着任の前 | 情報政策担当と、クラウド利用の庁内手続きとセキュリティ要件を確認する(5章) | 端末・アカウント・席。着手順の表 |
| 1か月目 | 対象の課に行き、実物の紙とExcelを見る(2章) | 所管課への紹介。定例の日程 |
| 2〜3か月目 | 1件目を形にする。 職員が触る状態まで持っていく | 層1を担当する職員を2人決める(7章) |
| それ以降 | 2件目と、引き継ぎの文書を並行して作る | 他の課からの相談を受ける窓口 |
「着任の前」の行が、この表でいちばん効きます。 庁内の手続きは、着任してから調べ始めると1か月が消えます。当社が自治体に入るときに、クラウド利用の庁内手続きとセキュリティ要件を着任前に確認することを決めごとにしているのは、このためです。
そして、お客さま扱いをしないでください。 外部の人を来客として扱うと、庁内の困りごとが耳に入りません。席を執務室の中に置き、日常の会話が届く場所にすることが、いちばん効く受け入れ準備です。
終わり方を、最初に決める
外部人材は、必ずいなくなります。終わり方を決めていない受け入れは、終わるときに事故になります。
| 決めること | 中身 |
|---|---|
| 期間と更新の判断時期 | いつ、誰が、何を見て判断するか |
| 引き継ぎ先 | 誰に引き継ぐか。その人はいつから関わるか |
| アカウントと権限の扱い | 終了時に外す手順(8章) |
| 作ったものの扱い | 設定・手順書・記録が自庁に残るか(4章の仕様書12行) |
| 終了後の相談 | 有償か無償か。窓口は誰か |
この5つは、受け入れが決まった日に埋めてください。終わりの話を最初にするのは気が引けますが、逆です。期間の終わりが見えている前提で動くからこそ、引き継ぎを業務の中に織り込めます。終わりを決めずに始めると、「もう少し居てもらえないか」という話が毎年繰り返され、結局その人がいないと回らない状態が固定されます。それは受け入れが成功したのではなく、委託先が1社増えただけです。
「引き継ぎ先」を、終わりの直前に決めないでください。 期間の後半は、引き継ぎ先の職員と一緒に作業する時間にしてください(9章)。
よくある間違いを5つ
「業務の範囲を『DX推進』と書いて受け入れる」 ——最初の数か月が現状把握で終わります。直し方:2章の棚卸しを先にやり、着手順の付いた1枚の表を持った状態で受け入れる。業務名で範囲を書く。
「助言者に、作ることまで期待する」 ——アドバイザーは判断の助言をする立場です。手を動かす前提の契約になっていないと、双方が困ります。直し方:助言と構築を分け、必要なら2つの形を組み合わせる。
「委託と同じつもりで日々の指示を出す」 ——業務委託では、日々の作業の指示を職員が出す形にはなりません。直し方:一緒にやってほしいなら、委託ではない形を選ぶ。契約の形と、指示できる範囲を先に確認する(7章)。
「制度の数字を、記事や本の記述で判断する」 ——要件も額も改定されます。直し方:総務省の公表資料で確認する。探す言葉は「地域活性化起業人 制度概要」「受入可能団体一覧」。自庁の財政・人事担当にも確認する。
「成果を活動報告の分量で見る」 ——報告書が厚くなるだけで、庁内には何も残りません。直し方:判定を3つに絞る。触れる職員が2人以上になったか、他の課から相談が来ているか、いなくなっても回るか。
この章の出口
この章を終えたとき、手元に残っているべきものは3つです。
- 業務の範囲(業務名で書いてある。着手順の表と対応している)
- 終わり方の取り決め(期間・引き継ぎ先・アカウント・作ったものの扱い)
- 10項目の○×(必須3項目がすべて○)
ここまでで、前提・決める・守る・作る・続けるの一通りが揃いました。最後に残るのは、これを来年度も続ける形です。自治体では、続かない理由も止まる場所も決まっています。最終章で、月次・年次に見る場所と、この本全体の使い方をまとめます。
この章の点検リストを開く(自社の状態を○×で判定する用)
点検リスト:外部人材の受け入れ(10項目)
受け入れを決める前に、人事・財政・情報政策の担当と一緒に通します。
| # | チェック項目 | 合格ライン |
|---|---|---|
| 1 | 制度の要件・額を、所管の公表資料で確認した | 確認した日付と資料名がある(伝聞ではない) |
| 2 | 業務の範囲を業務名で書いた | 「DX推進」ではなく、対象の課と業務が書いてある |
| 3 | 着手順の付いた1枚の表を持っている | 2章の点検12が○になっている |
| 4 | 所属・上長・席・端末を決めた | 受け入れの前に決まっている |
| 5 | 職員に移すことを、業務の中に入れた | 研修・引き継ぎが業務の範囲に書いてある(別料金の前提になっていない) |
| 6 | アカウントと権限の扱いを決めた | 自治体名義。終了時に外す手順がある(8章) |
| 7 | 決裁・文書の扱いを決めた | 起案できるか、できないなら誰が代わるかが決まっている |
| 8 | 終わり方を決めた | 期間・更新の判断時期・引き継ぎ先・作ったものの扱い |
| 9 | 振り返りの場を置いた | 月1回または四半期に1回。日程が決まっている |
| 10 | 成果の判定を3つで決めた | 触れる職員/他課からの相談/いなくなっても回るか |
合格ライン=10項目中8以上。ただし 2・5・8 のどれかが×なら受け入れない。
- 2が×:最初の数か月が現状把握で消えます。期間の短い受け入れでは、それで終わります
- 5が×:いなくなった時点で、全部が止まります。委託と同じ結果になります
- 8が×:終わるときに、アカウント・権限・作ったものの扱いが宙に浮きます
7は、起案や文書の取扱いが不要な範囲での受け入れでは対象外として構いません。ただし「不要」と判断したこと自体を、総務担当に確認してください。
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更新日 2018年10月20日
