起業人制度とは?
起業人制度とは、民間企業の社員を一定期間、地方自治体に派遣する制度です。総務省が推進する「地域活性化起業人制度」として知られ、民間のノウハウや専門知識を行政に活かすことを目的としています。
派遣期間中の社員の給与等に係る経費は原則として自治体が負担し、その自治体負担分を国が支援します。企業派遣型で上限は年間610万円/人 等です(総務省)。実額は企業と自治体の協定で決定します。
近年、この制度をIT・DX分野で活用する自治体が急増しています。本記事では、起業人制度を使って自治体DXを推進する方法を詳しく解説します。
起業人制度の基本的な仕組み
制度の概要
- 派遣期間:6ヶ月〜3年(更新可能)
- 対象:民間企業等の社員
- 費用負担:自治体が企業へ負担金を支払い、その自治体負担分を国が支援(企業派遣型で上限 年間610万円/人 等)
- 派遣形態:フルタイム常駐、週数日勤務、リモート併用など柔軟に設計可能
3つの型があります
令和6年度から副業型とシニア型が加わりました。
| 型 | 協定の相手 | 勤務要件 |
|---|---|---|
| 企業派遣型 | 企業と自治体 | 受入自治体の区域内での勤務が月の半分以上 |
| 副業型 | 企業に所属する個人と自治体 | 月4日以上かつ月20時間以上。区域内滞在は月1日以上 |
| シニア型 | 退職したシニア人材 | 副業型に準じる |
副業型は自治体側のハードルが低いのが特徴です。常駐が難しい規模の自治体でも、月4日から専門人材を入れられます。
令和7年度の実績は企業派遣型904名、副業型299名、シニア型12名、合計1,215名で過去最高でした。
地域おこし協力隊との違い
よく比較される地域おこし協力隊との主な違いは以下の通りです。
| 項目 | 起業人制度 | 地域おこし協力隊 |
|---|---|---|
| 身分 | 民間企業の社員のまま | 自治体の会計年度任用職員等 |
| 専門性 | 企業での実務経験を活かす | 幅広い活動(必ずしも専門特化ではない) |
| 期間 | 6ヶ月〜3年 | 1年〜3年 |
| 給与 | 派遣元企業が支払う | 自治体が支払う |
起業人制度はより高い専門性を持った人材を確保しやすいという特徴があります。
なぜ自治体DXに起業人制度が有効なのか
理由1:即戦力のIT人材を確保できる
自治体内部でIT人材を採用・育成するには時間がかかります。起業人制度を活用すれば、すでにIT企業で実務経験を積んだ人材をすぐに迎えられるため、DXの推進スピードが格段に上がります。
理由2:財政負担を抑えられる
外部のITコンサルティング会社に依頼すると高額な費用がかかりますが、起業人制度では特別交付税による費用補填があるため、自治体の実質的な負担を大幅に抑えることができます。
理由3:「作って去る」を防げる
一般的なITコンサルティングでは、レポートやシステムを納品して終了というケースが少なくありません。起業人制度では一定期間自治体内で働くため、以下が実現しやすくなります。
- 庁内の業務を深く理解した上でDXを設計できる
- 職員と日常的にコミュニケーションを取りながら進められる
- 知識やスキルを職員に移転し、自走体制を構築できる
起業人制度を活用した自治体DXの成功パターン
パターン1:庁内業務の効率化
IT人材が庁内に常駐することで、日常的に職員の困りごとを拾い上げ、デジタルで解決していくアプローチが可能になります。
具体的な取り組み例は以下です。
- 紙の申請書をkintoneなどのノーコードツールでオンライン化
- Excel管理していたデータをクラウドデータベースに移行
- 定型業務のRPA化(データ転記、レポート作成など)
- 庁内の情報共有基盤の構築(グループウェア導入など)
パターン2:IT人材育成の推進役
起業人として派遣された人材が、庁内の「DX推進リーダー」を育てるパターンも効果的です。
- 職員向けのデジタルスキル研修の企画・実施
- 各課にDX推進担当を配置し、継続的にサポート
- 最新技術のトレンドを庁内に共有する勉強会の開催
パターン3:住民サービスのデジタル化
外向けの取り組みとして、住民向けサービスのデジタル化を推進するケースもあります。
- オンライン申請・届出の仕組み構築
- 住民向けアプリやLINEでの情報発信
- デジタルデバイドへの配慮を含めた設計
起業人制度を導入する際のステップ
自治体が起業人制度を活用してDXを推進する際の推奨ステップを紹介します。
- 課題の明確化 — DXで解決したい業務課題をリストアップする
- 受入体制の整備 — 起業人の配属先、業務範囲、目標を設定する
- 派遣元企業の選定 — IT・DX分野の実績がある企業を探す
- 協定の締結 — 自治体と派遣元企業で協定を結ぶ
- 総務省への届出 — 特別交付税措置に必要な手続きを行う
- 派遣開始 — 現場で活動を開始する
- 定期的な振り返り — 四半期ごとに成果を評価し、活動内容を調整する
起業人制度を成功させるポイント
「お客さま扱い」しないこと
起業人を外部の人として扱うのではなく、チームの一員として庁内に溶け込んでもらうことが大切です。日常的なコミュニケーションの場を設け、職員との信頼関係を築くことが成果に直結します。
活動の自由度を確保すること
あまりに細かく活動内容を規定しすぎると、起業人の強みである柔軟な発想や行動力が発揮できなくなります。大枠の方向性は合意しつつも、具体的な施策は現場で判断できる裁量を持たせましょう。
ゴールを「自走」に設定すること
起業人の派遣期間は限られています。派遣期間が終わった後も、庁内の職員だけでDXを継続できる体制を作ることを最終的なゴールとすべきです。
まとめ
起業人制度は、IT人材の確保が難しい地方自治体にとって、DXを推進するための強力な仕組みです。財政負担を抑えながら即戦力のIT人材を迎えられ、かつ庁内の人材育成にもつなげられるという点で、大きなメリットがあります。
成功の鍵は、コンサルではなく実行まで伴走する人材を選ぶこと、そして自走できる組織を作ることをゴールにすることです。
株式会社COTSUBUでは、起業人制度のIT/DX版として、社員を全国の自治体に派遣する事業を展開しています。海士町・西ノ島町・名張市での実績をもとに、庁内のDX推進と人材育成を一体で支援しています。制度の活用方法からご相談いただけますので、お気軽にお問い合わせください。
実際に制度を使った事例
株式会社COTSUBU(東京都千代田区、代表:宇田川将也)の代表は、2024年に本制度で島根県海士町に着任し、役場でkintoneによる電子決裁、入札関連情報の一元管理、健康福祉課の定期健診管理を構築しました。
あわせて、職員と、大人の島留学で島に来ている若者を対象にkintoneの研修を行いました。以降の改修は庁内で回っています。
2026年6月1日には、三重県名張市と本制度に基づく派遣協定を締結しました。海士町で育った人材が、次の自治体の戦力として着任しています。
制度の詳しい費用の内訳と手続きは地域活性化起業人の受け入れ支援で解説しています。


